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開業以来10年が過ぎた [日記、雑感]

 人生が折り返しを過ぎたせいもあって時間が過ぎていくのは早い。

 新年度となってそういえば商売を始めてからどれくらい経ったかと数えてみると昨年度が丁度10年目だった。野良犬生活も色々失いながらどうにか10年は継続できたわけだ。
 会社勤めが約20年,自営業で10年,厨房屋みたいなヤクザな業界で結局30年飯を食い続けているわけだから俺の人間性もきっとかなりの擦れっ枯らしになっている事だろう。

 俺の開業は遅く,年齢で言うと40代の半ばくらいだった。
 ある程度の得意先を抱えての開業だったから商売ネタがなくて困る事は若いうちの独立に比べれば少なくて済んだのかもしれないが、それでも決して順風満帆とは言い難かった。
 
 今更考えても詮無い話だが,独立開業のタイミングというのは結構難しい。
未知の分野について勉強したり,資格を取ったりというのは開業後は難しい。得意先を作っておくのも勤め人のうちにしておいた方が楽だと思う。
 しかし,必要な資格は充分に取得した,スキルも身に付いた,得意先もバッチリとなった時には既に人生下り坂で馬力が落ち始めており,体力任せの荒稼ぎは出来ない年齢,というのもあるわけで俺などはそのケーズに該当しているのではないか。

 10年やってみて振り返ると色々なものが変化している事に気づく。
何といっても人心の劣化が凄い。製品作りも販売の姿勢も,購入者の考えや使い方も荒廃の一途を辿るばかりである。手抜きや揚げ足取り,はぐらかしや誤摩化しは色々な形で横行しており,正直者が馬鹿を見る風潮は強まるばかりである。

 家の外で,代価を払って食事をするという行為にまつわる関係者はこの十年で確実に皆不幸になりつつある。デフレ経済下で底辺層の足元を見るかのように安い賃金で従業員を死ぬまでこき使う事で国会議員にまで成り上がったワタミの社長のような野郎にしたところでああいう輩にはいずれ何らかの形で報いがあるだろうから幸福な人生模様とは言えないだろう。

 誰もが不幸になっていく最も根本的な原因とは何なのか?
それは、24時間365日、いつでも好きな時に二千円で飲み放題の宴会をやりたいとか680円でうまいものを腹一杯食いたいとかいった消費者の低劣でわがままな欲望にただ迎合しようとしかしない業界の姿勢にありそうに思う。
 それは外食産業に限った話ではなく,全てに於いて安ければ良しとする時代の風潮とまで話を拡大しても良さそうに思う。

 ワタミで宴会をやり,吉野家で飯を食う事で自営の飲食業は衰退していく。
車で郊外のホームセンターまで出かけて買い物をする事で地元の雑貨店は衰退していく。
ユニクロに繰り出して衣類を買う事で地元の衣料品店は衰退していく。
その一方で海外に事業展開する体力がある大手の製造業はコスト低減のお題目のもとに国内の工場をどんどん海外に移転する事で日本人社員の首を切り,人の生活をより貧困な方向へと押しやっていく。
そんな循環がバブル崩壊以来もう20年以上も続いているのだから疲弊しない方がどうかしている。

 厚みのある中間層を持ち,余剰を誇っていた頃の資産を食い潰しながらこの二十数年社会がひたすら荒廃し,劣化する流れの中で俺の自営業10年は過ぎ,恐らくまだ地獄巡りは終わらない。日々劣化してく自分の身体と荒んでいく市場の一体どちらが先に音を上げるのか。明けない夜はないとは言うが一体いつになったら明け方が来るのかは今のところ全く見えていない。

 そんな心象風景の中で開業10年目が過ぎました。年金生活までにはまだ長い時間があり,俺はまだまだ稼がねばならんのです。我慢の日々はまだまだ続く,というか死ぬまでヒイヒイ言いながら働かなければならんのだろうな。
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すき家のバイト経験者は語る [日記、雑感]

 すき家に仕事で行った事はないが,修理屋にとってああいう営業形態の店舗(年中無休で24時間営業)は関わりたくない業態ではないだろうか。

 店内で働くスタッフにしてもすき家は決して快適な就労環境の職場ではないらしい。 



 吉牛だろうが松屋だろうが事情はどこも似たり寄ったりではないかと思うが大体,ごく僅かな例外を除けばナショナルチェーンの従業員というのはモラルが低いものだと俺は見ている。
 まあ,激安の一膳飯屋ってのはこういうものだろう。
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ワタミの裁判で思う事(伝搬するキチガイ菌) [日記、雑感]

 今更田舎住まいの俺がここでどうこう言うまでもなく、ネット上ではこのクソ企業に関する情報は幾らでも手に入る。

 こんな近況も目にする。 これは酷い ワタミ裁判で傍聴席をワタミの社員が占領!法廷入り口を塞ぐ!怒号が飛び交う騒動に!
http://www.asyura2.com/14/senkyo163/msg/423.html

 修理屋の立場からこの会社の事を少し書いておく事にする。
何を隠そう、俺の元の職場はこのブラック企業を得意先としておるのだw
本格的な取引が始まったのはここ数年の事であり、幸いな事に俺が退社してからだ。
何が幸いだったかというと、ワタミの鬼畜ぶりは従業員に対してだけでなく、出入り業者に対しても遺憾なく発揮されるからで、俺はその場面を免れたというわけだ。

 出入り業者に対する鬼畜ぶりとはどういうものかというと,機器類の故障対応についてオンコールから何時間以内に現場訪問します,といった約束を厨房業者に迫るらしい。そのことだけでも胸焼けがしそうだが,店舗のマネージャーからの修理依頼が厨房業者の携帯電話に直接入る。しかも営業している真っ最中の深夜一時とか二時がザラにあるらしいのだ。
 普通,会社員の生活を考えてみればそれは就寝の最中であること位は諸兄にも簡単に察しがつくだろう。申し訳ないが対応は明日にして頂きたい旨を担当サービスマンは寝ぼけ眼をこすりながら伝え,何とかかんとか店長には下がって頂いて再び眠りにつき,翌朝出社する。
 すると何と,本社のサービス統括部門から前日深夜の対応についてお叱りの電話が入り,雷が落とされる。深夜一時の修理対応を断ったことが怠慢でけしからんと店舗からワタミの本社にすかさず通報され、翌朝一番に厨房屋の本社にワタミの本社から苦情が入ると言う流れらしい。

 創業者の渡辺美樹という男は開業資金を稼ぐために佐川急便のセールスドライバーをやって一年で三百万円貯めたらしい。さぞかしキチガイ的な働きっぷりだっただろうことは容易に想像できるし,キチガイぶりを今に至るまで増幅させ続けていることは良くも悪くも驚嘆に値する。
 しかしだ。仕事だの金儲けだのが死ぬ程好きなら幾らでもキチガイになって勝手に死ぬ程働けばいいのだが、給料で雇っている従業員やバイトにまで自分と同じキチガイ的な働きっぷりを迫るのはやっぱりおかしいだろう。居酒屋の売り上げが幾ら天井知らずに上がろうが従業員の給料が正比例するわけなどないのだしな。


 深夜の一時や二時に厨房屋の社員個人宅に電話をかけて修理対応を迫るなどという非常識極まりないワタミのクソ店長の意識構造とはどのようなものか。
 俺個人の見え方として,店長どもそれぞれの本来的な人格がそのようなものだったとは思えない。彼らはワタミの組織人として,その職務としてこういう無茶苦茶な要求を外部の業者に押し付けてくるのだと俺は見ている。他人の生活に対する配慮が常識的に働くはずだった誰かさんがブラック企業に入社して組織人となり,キチガイ創業者のキチガイ菌に感染すると職場の部下や後輩はおろか社外の人間にまでキチガイのモラルを強要するようになってくるのだと思っている。
 厨房機材の業者にしてみれば,確かに諸々の機材の納入させて頂くことで何がしかの利潤は得ているにしろ,それはその時だけの話に過ぎない。機械化された厨房で時給の安い従業員を雇うことで購入元はそれ以上の利益を得ているのだし,店舗の売り上げが好調だったからといって厨房屋に配当金があたるわけでもなし,都合の悪い出来事が起きたときだけ業務に支障が出ただの営業補償だのとがなり立てやがる。迷惑な話だぜ。

 これに類する記事を以前書いたことがある。
記事名:『外食産業の裏側』を読む その2
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04
hこ ワタミ従業員の劣悪な就労環境に対して俺は勿論同情するか気持ちがあるし,創業者の渡邊美樹という男に対する義憤も勿論ある。
 しかしこれは経験則として書いておきたいし,断言しても良いのだが,彼らワタミの従業員は自分たちが組織から迫られている人間性を無視した理不尽さ転嫁するかのように社外の人間に対して同じようなありようを迫る。これはワタミに限った話ではない。会社とか組織というのはどこも,大なり小なり,従業員の職能の部分だけでなく人間性そのものにまで手を突っ込んで組織に都合のいいように作り変えたがるものだ。ブラック企業の極端な例としてワタミが取り上げられているに過ぎず,現在自営業の俺などから見れば企業というのはどこも,大なり小なりブラックなもので,その組織人は全て大なり小なりキチガイ菌を外部にまき散らしている(この項続く)



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困ったときのサーモアイ,だが・・・ [お仕事上のぼやき]

 本日は祝日であり,俺のような性分の者としては誰にも顔を合わせずに一日ゴロゴロしながら怠慢に過ごしたいところだがクソ忌々しい消費税率アップを控えた年度末だけあって駆け込みの依頼が押し気味であり,金もないので気乗りしないが無理矢理スイッチを入れてとにかく働くことにした。

 場所も場所で,これまで何度か取り上げたことのある某総合病院の手術室だ。
厨房屋の俺が一体全体何の因果で某総合病院の手術室をうろつき回るようになったかについてはいずれ機会を見てぼやくことにして,元来筋金入りの怠け者であるこの俺がどうして土日や祝祭日に手術室での仕事のために重い腰を上げるかと言えばやはり金の力の偉大さによる。とは言え,病院の事務屋によれば俺の修繕費など医療商事会社から回ってくる請求書に比べると感涙ものの安さであるらしい。こんな事なら最初に手がけた時にもう少し高い単価設定にしておくべきだったと後悔するがもう手遅れだ。
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毎度の使い回し画像である。本文とは関係ありません。


 某総合病院には手術室が2ブロックあり一つは救命救急用のセクションが救急車の乗入れ箇所近くに3室とその二つ上のフロアーにICUと隣り合った手術科というセクションがある。こちらは全12室で各室に冷凍庫,冷蔵庫,保温庫が壁面埋め込みで取付けられており,その他血液保存や解凍,薬品類の保管などなど結構な数の冷蔵庫や温蔵庫があり,俺にとっては意外と稼ぎどころなのですよ。

 手術室の造作はセントラル・ユニという会社が手がけている。
URL:http://www.central-uni.co.jp/

手術室関連の施工や機材については
http://www.central-uni.co.jp/products/operation/modular-system/

 施工は13年前で,保温庫や保冷庫のスペアパーツについては数年前に供給が止まった。何でもそうだが俺のような野良犬業者に持ちかけられる相談にはこういう類いが多い。製造元はリプレースが進んで管理台数が減少してくると最低保有期間を盾に使用者をバンバン切り捨てていく一方,使用者は設備投資を惜しんで俺のようなもののところに無理難題を持ち込んでくる。俺は板挟みやら目先の金欲しさやらでもがきながらない知恵を絞る。

 保冷庫が冷えないという依頼があり,現調してみるとサーモスタットがいかれていた。ならばそのサーモを取り替えれば良い,簡単な話だがそれは製造元が普通に補修パーツを供給する体勢を整えていてくれれば、という前提があってのことだ。
 使用されていたサーモは既に補修用の在庫がないと製造元からはアナウンスがあった。組み込み用のカスタムパーツと思われ,汎用パーツメーカーのカタログにはまず出ていなさそうなものだ。
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画像は本文とは関係ありません。


 困ったことにこのカスタムパーツであるサーモは庫内の温度調整だけでなく,複数の開閉接点を持ち,庫内温度の異常を感知して警報を働かせる役割を兼ねている。一つのサーモが三つの機能に関わることになる。
 しかしこの、警報機能は結構てきとうであり,低温警報,高温警報共に感知温度に達したら間髪入れずにブザーが鳴るだけの代物だ。凍結を防ぐためにコンプレッサーを停止させる制御回路にはなっているわけではないし,設定温度10℃の高温警報にしてもドアを開いて物の出し入れをしていればそのくらいの庫内温度には簡単になってしまうだろうが、製品のパネルに印刷された能書きを眺めてみるとその時には警報を手動解除して放置しておくか、電源を一旦切って再投入すれば良いとあり、少々拍子抜けした。

 少なくとも,これら壁面埋め込みの一見立派な保温庫や保冷庫は,現在温度がナースセンターでモニタリングされており,以上温度となった場合には移報機能が働いて修繕の対応を促すといった機能はない。
 俺の考えは,この病院はあと数年後には移転してしまうのでその間冷える機能だけ働かせておけばいいではないかというものだった。大体,試しに警報を出してみて,それもブザーの音量を最大にしてみても手術室の自動ドアは物凄く頑丈な鉄扉であるためにドアが閉まっていると廊下にいてもさっぱりブザーの音が聞こえないのだ。本当に何のための警報機能なんだかわからん。
 俺は手術科長殿と事務屋を相手に滔々と自説を述べ,ややこしい機能の同等品を探すのは手間取るし修繕費が高くつきそうなので今回は調達しやすい汎用品のサーモをを代替使用し,しょうもない警報機能は潔く諦めるべし,と押し切った。
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 それで修理は一月度に片付き,俺の口座には今月目出度くその金が振り込まれてくるわけだ,がしかし。
先月の中頃に手術科調には何か思うところがあったらしく警報機能を復旧するための追加作業を施してもらいたいとのリクエストが来た。追加の請求をあげさせてもらえるのかと事務方に尋ねてみると現場の要求だからいいようにしてあげてくださいとの気前のいい返事で、毎度ながら、日頃従事している給食分野での扱いとの落差に拍子抜けする。手術部門となるとやはり病院の中では稼ぎ頭だろうから言い分も通りやすいのだろう。
 金のためとは言っても手術室などあまり足を踏み入れたくないのは関わり始めた当初から変わることのない気分だ。

 庫内温度の低下、上昇の二温で警報を出すとなると更にサーモを二個追加となりそうだがここで俺はスケベ根性を出してもう少し気の効いた事をしてやろうとあれこれ思案した。
 回路は単純を良しとするのが俺のモットーだから、比較的簡単に構想はまとまった。
いかれたサーモ二つは潔く取り払い、こういう場面では毎度俺を救ってくれる鷺宮のサーモアイを使う。
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 温調機能と警報機能を併せ持つ。他社にも同等品はあるが俺の場合はサーモアイが使い慣れているのでこうした出番に投入される機会が多い。

 既に冷凍機の発停についてはサーモが一つついており,ここでサーモアイは内蔵する温調機能が重複することになる。1月につけたサーモを撤去しようかとも考えたがサーモアイの制御出力の接点容量は5Aで冷凍機の始動電流を考えると心許ない。
 一旦,材料を調達して介する形でのコンタクターを買ってこようかとも思ったが,追加コストが発生して話がややこしくなるのでやめた。

 サーモアイの実売価格は大体2万円くらいでインターフェイスはわかりやすく,ヤマ勘でいじくり回しても結構設定が容易であるがそれにしても、警報機能のためだけにこういう追加修理に決裁を頂けるとは,病院という組織の中で手術の現場スタッフの発言力は凄いものだと改めて妙に感心する次第。給食関連だったら絶対に撥ね付けられるに違いない。
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板厚2mmで製作するシンク [修理屋から見た厨房機材]

 シンクの排水共栓や排水トラップを交換する修理は10年前の開業以来減る一方だ。
こういう,設備屋だったら誰でもできるような仕事は俺のところにはなかなか回ってこない。他の同業者があらかた攫ってしまうからだ。

 それだけに,今日のようにシンクの排水トラップを交換する修繕に当たると結構嬉しい気分になる。こういう,なーんにも考えなくても勝手に身体が動いて終わるような作業は気楽でいい。どうもここ数ヶ月、俺が遭遇する修繕は切羽詰まっていたり難解だったりし過ぎる。俺の知能程度の限界を測られているようだ。
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画像は本文とは関係ありません


 シンクの排水トラップを交換する理由はその殆ど全てが取付け箇所からの水漏れである。皆の衆の家庭で使われているものもそうだが縁のつば状の部分は銀色をしており,一見,金属製に見えるがこれはコーティングであって材質そのものはポリエチレン(違うかもしれないが何しろ樹脂製だ)であるから熱には弱く,柔らかいので変形が起きやすい。つば状の部分がめくれ上がるように変形することで当たり面がなくなり,幾ら締め込んでも水漏れが起きる。

 トラップ自体の耐久性を求めると当然,金属製となるのだが鋳物,ステンレス,いずれも高価であり今日日は特注品として製作時に指定しない限り,組み込まれてくるトラップは樹脂製である。
 きちんとした接続工事が行われている前提で樹脂製トラップが変形する主な原因としては,
(1)シンクボウルに水をためて使う場面が多い
(2)熱湯を大量に流す場面が多い
(3)シンクボウルの板厚が薄い
以上3点がほぼ全てと言っていい。

(1)から(3)までを列記してみたが本当のところは(3)の板厚次第で不具合の現れ方は随分変わる。
ここで板厚ごとに比較してみると,
 まずは家庭用の流し台に使われているプレスシンク,俺の職分ではないが板厚はおよそ0,8mmが多いと聞いた。あの複雑多様な凸凹はプレス型によって成形されるものだ。シンクボウルの深さは大体180mm位だろうか。0,8mmの板をプレスして成形できるほぼ限界値がそれであり,当然ながらプレスされた箇所は引き延ばされるので板厚は薄く,200mm近辺にまでなると板材が裂けたりちぎれたりして製造上の歩留まりが悪化するので現状の深さが限度なのだと聞いたことがある。
 当選ながら,家庭用の流し台を裏から押したり叩いたりしてみれば歴然だがペコペコと薄っぺらい。煮立ったお湯をちょっと大きな鍋に一杯流してみると歴然だが『ボコン』と音がするはずで、これは板材が熱膨張を起こして膨らんだことを現している。

 業務用のシンクは標準的な板厚は1.0mmである。グレード分けされている場合は上級モデルだと1.2mmにスペックが上がる。メーカーの実名をここで挙げると例外的にフジマックのシンクは板厚の標準的なスペックが1.2mmで他社製品の上級グレード相当だ。このへんからは板厚があり過ぎてプレスが利かず,板材から切り出しては折り曲げ、小口を突き合わせて溶接する製法に変わる。

 画像に示したような樹脂製の排水トラップには特に家庭用とか業務用の区別はなく,どちらも同じようなものを組み込んでいるので、業務用の方がシンクボウルに水を溜めて使ったり熱湯をバンバン流したりする分、変形や破損は断然多い。

 ところでシンクボウルの板厚を1.2mm以上で製作するとどうなるかについて追記しておきたい。どのメーカーのカタログにも掲載されていない特注製作品のことで,納入される場所もごく限られる。
 俺個人の考えとしては,個人の営業店舗やスーパーのバックヤードのような場所以外では,シンクに限らず厨房板金のトップ板厚は1.2mmが好ましい。たったの0.2mm,と侮るなかれ,実際に出来上がったものを比較してみると歴然だが,例えばワークテーブルのトップが1.0mmだと下地材なしではぼこぼこに凹んで頼りない。業界の悪しき通例として下地材にはベニア板やチップボードを使ったりしてたことが多く,衛生のことを保健所が喧しく指導するようになった昨今こういう仕様は好ましくない。下地材なしである程度の剛性を確保しようとすればどうしても1.2mmは必要で,これはシンクボウルの剛性についても同様だ。
 正確に発生件数や頻度や確率をカウントしたわけではないが,冒頭書いたようなトラップ交換の発生頻度は薄い板厚のシンクで起こりやすそうに覚えている。(家庭用は除く)

 これが更に1ランク上がって板厚が1.5mmとなると、俺の経験した現場では景気が良かった頃のプリンスホテルチェーンで平準化されていたスペックだ。施工現場によっては搬入してレベルを出し終わり,接続工事が済むと溶接工を現場に動員して機材同士の合わせ目を溶接して研磨し,外見上は一繋がりにしてしまう。
 そのようにして収まったステンレス什器は当然ながら最早単体では室外への搬出はおろか取り外しが出来ず,ぶった切って解体する以外には撤去のしようがなくなる。継ぎ目にゴミがたまるのを嫌って行う施工なわけだが一旦収まったらその建物と同等の耐久性が求められるような現場の場合はこのような仕様となる。
 
 厨房板金として通常使用する最も厚い板厚は2.0mmではないかと思う。
これくらいになるともう,プラント設備のタンク並みの仕様だ。ホテルオークラあたりに納入された板金類がこの仕様だったと聞いている。当然ながら搬入後の溶接はお約束で建物が老朽化して取り壊されるまでリプレースなどありっこない。
 実は俺も会社員だった頃,某国立病院の統廃合プロジェクトを担当した際に新設品として材質はSUS304(18-8)板厚は2.0mmでの製作を提案し,医務局の決裁を頂いて納めたことがある。おまけに先方からは通常あるようなパイプ脚ではなく,すのこへの収納物が隠蔽できるようにキャビネットシンクとして製作してほしいというとんでもない注文がついた。やっぱり国というのは金があるもんだと俺は仰天したものだ。

 納入価はもう思い出せないが,通常カタログに載っている同サイズのシンクの4倍くらいはいったと思う。板厚があって剛性の高い板金製品はよく鎧に喩えられるが,通常の業務用板金の二倍も厚みがある上にキャビネットタイプ(外装板はさすがに1.2mmにしてもらったがそれにしたって破格のスペックだ)となると鎧だってもう少し華奢ではないかと思える。
 搬入の際には通常二人で運ぶようなサイズのシンクが4人掛かりでないとしんどくて仕方がないくらい重い。竣工後,ある調理員は使い回しの移設品である某メーカーの標準的な仕様のシンクをグニャグニャして頼りないと形容した。板厚1.0mmの、ごく一般的な業務用の流し台だ。

 板厚2.0mmのシンクとはどういうものかというと,例えば5升炊きの炊飯器の内釜をガンガン放り込んでも凹まないのは勿論のこと,沸騰したお湯を20リッターくらい一気にぶちまけてもウンともスンともいわない。シンクボウルに歪みが出ないので樹脂製の排水トラップも変形はまず起こらない。よって,俺の修理の機会もなくなってしまう。売れる時には有り難いがその後のビジネスはない。オーバースペックとはそういうものなのだがいいんだか悪いんだか。
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PBのショックレスハンマー [便利そうな商売道具]

 俺の修理屋稼業も実に30年目に入ろうとしている。
根気のない事にかけては人後に落ちないこの俺がよくまあこれだけ続いたものだと我ながら少しばかり驚く。

 しかし何だ,30年もこんな事を続けていると身体はそこら中ガタガタだ。
ここ数年,手持ち道具をあれこれ見直しているのもなるべくガタの来た身体に負担のかからない道具を求めてのことだ。
 痛いところはそこら中にあるのだが,例年悩まされるのが手首の腱鞘炎で一ヶ月くらいは手首をかばいながらの作業を余儀なくされるのが年中行事みたいになってきた。このことを指して俺の元の職場の後輩達はマンガのゴルゴ13に引っ掛けてギランバレー症候群と揶揄するのだがそんなにかっこいいものじゃねえんだよ。

 これまで何度か書いたと思うが,左の手首は注射で収まりがつかず,8年位前に手術して腱鞘を取った。医者は影響ないと言うが仕事の上ではやはりやや握力が落ちたように感じるし、他の筋が炎症を起こすので痛いことには変わりがない。だから右手首については毎度炎症が起きるたびに誤摩化し誤摩化し仕事を続けるのだが何せ不便だ。
 
 そもそも,どうしてこんな風に腱鞘炎がクセになってしまったのかを思い出すに大きな理由の一つにはハンマーの使い方がヘタだったからなのではないかと想像している。叩いた瞬間の反動で手首の筋を痛めた経験がある人は結構多いのではないだろうか。

 作業場で道具箱をほじくり返してみるとハンマーと名のつく物体が6個くらい出てきた。普通の金槌だったりゴムだったりプラスチックだったりで色々だ。そのうちの一つにはショックレスハンマーがあった,樹脂製のハンマーで中が空洞になっており,振るとサラサラ音がする。中身は見えないがこの粉が動き回ることで打撃のショックを吸収する理屈であり,確か腱鞘炎で悩ましい時期に買い込んだような記憶はある。しかも結構安くなかった。

 ハンマーは用途によって色々と使い分けるわけだが一本で色々なことに使え,しかもショックレスの構造を持つものは探してみると絶望的に少ない。ここ数年は片方は鉄,片方はプラスチックのコンビハンマーを愛用してきた。俺の体格からすると1ポンドくらいのものだと使い勝手がいい。

 ここ数年愛用し続けてきたのはオーエッチ工業のコンビハンマーでショックレスの構造ではないが柄の太さや重量バランスが俺にはちょうど良かった。

OH コンビハンマー#1/2 CH05

OH コンビハンマー#1/2 CH05

  • 出版社/メーカー: オーエッチ工業
  • メディア: Tools & Hardware



 かねがね気になり続けていたのがPBのショックレスハンマーだ。オーエッチ工業にもショックレスのコンビハンマーはあるが,本体内部の構造についてはPBの造りにより説得力を感じる。ここで俺があれこれと拙い文章を書くよりも動画を見て頂きたい。
)

 ワッシャーの動きは直線動作であり,ランダムに飛び散る粉体よりも衝撃の吸収能力には優れているというのが製造元の説明だ。
 通常のコンビハンマーとの比較が動画で上がっているので貼付けておく。
)

ドライバーをはじめとして品質には定評のあるPBなので調達ルートはさほど難しくなく,エスコのカタログには掲載されているしネットの通販でも買える。
 
PB(ピービー) 無反動ナイロンハンマー 300-4

PB(ピービー) 無反動ナイロンハンマー 300-4

  • 出版社/メーカー: PB(ピービー)
  • メディア: -



 使用感については,やはり素晴らしい。もっと若い頃にこれがあったら今はもう少し違った修理屋人生ではなかったかと,大袈裟な話でなく思う。何だかんだ言って身体が資本だ。
 俺なりのアレンジとして,樹脂製のハンマーヘッド形状は丸形が気に入らないので単売されている平らなものに付け替えようと思う。また,これまで使い慣れてきたオーエッチ工業の製品と比べると柄が細く,握り具合に今ひとつ馴染めないのとヒッコリーという材質のせいか滑りやすいのでグリップテープでも買い込んでくることにしよう。

オーエッチ工業,グリップテープのHP,ハンマー以外にも使い道は色々ありそうだ。
http://www.ohnet.co.jp/main/index14.html
 ところでオーエッチ工業というこの社名を目にして顔つきの緩む誰かさん,沢山はいないと思うが俺と同じような不謹慎な想像は止したまえ。ハンマーにかけては国内トップのまじめな会社であるぞ。
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理科の時間だぜ 2 [お仕事上のぼやき]

この記事は1月31日に書きかけたものに加筆したもので、冬の真っ最中だった事を事前にお断りしておく。尤も3月中旬の現在に於いても俺の生息地はそこら中アイスバーンだらけでまだ春は遠い

 前回の記事で水の氷結のことをすっ飛ばして目先の金や横着のために無茶な機材の導入を図る連中のことを書いたわけだが、もう一つ冬期間に起こりがちな不条理のことを思い出したので書いておこうと思う。

 俺の生息地では目下のところ、あまり冷え込まない冬が今のところ続いている。これは良い事だ。
ある種、心得のない使用者の現場では、意外だろうが冬期間に於いて燃焼器具のトラブルが出がちな傾向があり、それは例えば木造建築で空調設備があまり整っていない商業店舗で多い。
 
 不完全燃焼を起こして煤だらけになった燃焼器具を修理する場面で、上に書いたような環境下である場合、ある時期から俺は修理に取りかかる前に使用者に空調機器は正しく働いているのかと尋ねるようになった。
 すると結構な確率で、使用者からは何ら悪びれるふうもなく、寒いので換気扇などの吸排気は止めているという返事が返ってきて俺を絶句させるのである。

 こういうことを言う使用者の厨房にはある共通点がある。
そこは開業以来結構な時間が経過している店舗で、売り上げが上がって多忙な時期があった。そのため調理に必要な燃焼器具をどんどん増設している事が大変多い。更に付け加えると、空調設備は手つかずで開店当初のものが流用されており、ひどい時には排気フードも設けられないまま設置されている燃焼器具も珍しくない。
 要するにちょっと儲かったからというだけの事で出入りのある厨房屋の口車に乗せられてむやみと燃焼器具を増やした結果、換気量が追いつかずに酸欠の状態がそこでは発生しているのである。
 おまけに冬期間になると換気によって厨房内の室温が下がるのを嫌って空調を止めて煮炊きをする大馬鹿者さえ珍しくない。
 燃焼には酸素が必要である。酸素が不足すると一酸化炭素が発生する。

 小学校の理科の時間に教わる事だ。調理場が寒くなるからという理由で空調を止めてバンバン煮炊きをし、酸素が不足して不完全燃焼を起こした器具が煤だらけになると修理屋を呼びつけてあれこれ文句を抜かして不便を訴える我が何の事はない、自分たちがその不具合を引き起こしているという自覚が全くない、小学生並みの知識さえない大バカ者だ。
 酸素の不測が燃焼器具の不具合程度で納まるのならまだいい、それが人の生死に関わる状況という認識はこういう連中にはなさそうだ。
「そういえば変な匂いがしてたなあ」などと臆面もなく口にするのを目の当たりにするとこういう輩に義務教育を施すのは本当に税金の無駄遣いだったのだな、と複雑な思いに駆られる。

 笑い事ではなく、過去においてはある飲食店で一酸化炭素中毒による調理師の死亡事故が起きた。季節は確か春先で燃焼器具のメーカーは確かマルゼンだったと記憶しているが、実地検証によると従業員が外調機を働かせずに調理を行った結果だと判明した。おそらく調理場の温度が低いのを嫌って横着したのだろうという推測だ。
 疑いをかけられたマルゼンにしてみればたまったものではないだろう。PL法などという厄介な法律のおかげであちこちの納入先で同一機種のCoの発生状況を調査する事に随分手を取られたという噂を聞いた事がある。

 今日の厨房というのはれっきとした機械設備であり、就労する人間には機械と接するための最低限の知識くらい雇用なり教育する側からレクチャーされているべきだと俺は真剣に思う一方、機材を納入する側は周辺環境も考えずに何でもかんでもむやみやたらと押し込む不見識な商売は止めてもらいたい。
 水や電気、空気などなどその機材を取り付ける周辺環境が妥当であるか否かなど小学生程度の知識でもかなりの部分、判断がつくはずなのだが。
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在庫の現金化に励む 2 [日記、雑感]

 これまで何度か取り上げた事のある某国立病院で稼働中の温冷配膳車は松下電工製のもので,修繕の際に融通が利かないとか何とかいう理由である時期から俺が修理を受け持つようになった。
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画像は本文とは関係ありません

 不運なことに,その病院に収まったロットの個体は膨張弁が詰まって冷えない不具合が納入後二年くらいから多発した。

 膨張弁は配管溶接で取り付けられているため、修繕の道具立ては厨房屋にしては結構大掛かりなものになる。
 俺は商売だから金のために修繕を行うのだが、こういった比較的費用のかかる修繕を要する障害が保証期間が切れて幾らも経たないうちに多発するようでは使用者の立場としてはたまったものではないだろう。
 この配膳車は冷蔵室が3室独立しており、冷却器と膨張弁もそれぞれ3個ずつの構成である。納入されたのは3台で合計9カ所の膨張弁がついている事になる。
 正確な数は思い出せないが膨張弁の詰まる障害が起き始めたのは3年目位からで、その後3年くらいの間に5カ所かそこらは交換したと思う。

 製造元の松下電工は販売店でもない俺のような野良犬業者に対しては対応が大変冷たい。
まあ、松下という企業の技術的な問い合わせに対する対応の陰険さは昨日や今日の話ではないのであって今更ここでグダグダ言っても始まらないのだが、俺の知る限り国内電器メーカー中最低だと考えている。
 純正パーツである膨張弁を取り寄せるにしてもああでもないこうでもないと御託を並べ、散々待たせるだけ待たせておいて補修パーツは定価販売ときた。これが日立や東芝なら俺に対する仕切価格と末端宛の販売価格が明示されてくるのだが松下はそうではない。

 おまけに純正パーツであるのをいい事にその価格は安くない。純正とは言ったって勿論松下が社内で膨張弁を制作しているわけなどなく、冷媒管工事関係者にとってはお馴染みの富二工機製で、R-22,0.3t,内部均圧式で何の変哲もないカタログスペックである。
 汎用品として販売されている膨張弁との違いとはその外見で、本体と感温筒を結ぶキャピラリーが短い事と接続用の配管が短い事くらいしかない。要するに外寸を切り詰められるだけ切り詰めた、ただそれだけだ。
 しかしその実装は特段窮屈な場所でもなく、一度などは導入後4年ほどで故障した機体の膨張弁つまりで納期があんまりかかるので仕方なしに在庫していた手持ちのフレアー接続の膨張弁で代用した事があったがその後6年経っても何のトラブルも起きていない。パーツの価格は4割くらい純正品が高価なのだから笑わせる。

 実際のところ、今日日は配管のシール剤に優れた素材が沢山出回るようになってきたので接続箇所からのガス漏れの可能性を低減するために溶接タイプの膨張弁という仕様には大して説得力がないと俺は考えている。
 溶接だろうがフレアーだろうが取り付けスペースには差がないのだし、不具合があって交換する時には溶接機を持ち出さなくてもモンキー2丁で事が済むのだからかえってフレアー接続の方が有り難いくらいだ。

 そんなわけで俺は以後、その病院での配膳車修理の際には胸くその悪い松下電工から純正品の膨張弁を仕入れる事をやめて日頃取引のある問屋から汎用品を仕入れて済ませるようになった。
 修理屋の良心として、当然ながら仕入原価の低減は修繕費に反映させて頂く。配膳車に限った話ではないがどんな修理であれ同一スペックであれば代替品の方が安く済むと修理屋に言われて高価でも良いから安心のために純正品を使ってくれというリクエストは今のところまだない。
 
 但し、この修理が多発するせいで一個は持っておこうと数年前に取り寄せた純正品の膨張弁が一個、俺の作業場の肥やしのようになって眠り続けていた。俺はそれを大変忌々しく思い、なるべく思い出さないようにしていたのだった。何しろ奇矯な形状なので配膳車の補修用意外には殆ど使い道がなく、肝心の某国立病院でもここ3年くらいは同種の障害が起こっていない。

 そんな中で最近、数年ぶりに配膳車の膨張弁が詰まって冷えない故障が起きた。
当然俺は作業場の肥やしに成り果てた件の膨張弁の事を思い出して出庫する事にした。
IMG_3919.1.jpg

 画像は交換直後の様子である。左上に見える金色の物体が俺の長期在庫品で下方に見える同一形状のものが故障品だ。さすがに10年使っただけあって真っ黒に変色している。

 前段で書いたように純正品の膨張弁は外寸を無理矢理切り詰めているために接続用の配管が短く、溶接が大変やりにくい。同業の諸兄は既にご存知と思うが冷媒管のヤクモノを配管溶接する際にはトーチの熱で破損する事を防護するためにパーツに濡れた雑巾などを巻き付けておくが、接続配管があまり短いと接続箇所の温度がなかなか上がらず、溶接に手こずる。
 画像を見て頂ければ容易に判断できると思うが、膨張弁の周辺はスカスカに空いていて何もこんな、無理矢理小型化した特注品でなければならない必然性は全然ない。値段は高いし取り付けはやりにくいしていい事など一つもないのだ。

 ともあれ俺はこうして一点、作業場の肥やしをマネタイズできてちょっと嬉しい気分な訳だが、あらためてこういった有象無象を眺めていると俺の決して多くはない稼ぎがこういったわけのわからんパーツ類に化けて眠り続けている事にがっくり来る。商売を始めた頃からこういう状況を薄々覚悟はしていたがこんなやり方では俺は金持ちになれない事は間違いない。
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バーナー修理で悪あがき [含蓄まがいの無用な知識]

 更新をさぼり続けていると,再開するにも何だかバツが悪く,自分のブログページをブラウザで開くのが何だかおっかない。
  現実の世界でこのブログの読者とお会いすることもあり,『更新待ってますから』と言われることが時たまあるのだが仕事帰りの焼き鳥屋でグダを撒いているようなこんな糞ブログがそんなに値のあるものだとはいまだに思えないのだが,まあリップサービスということで有り難くそのお言葉は頂戴させて頂きます。

 13年前に俺がまだ会社員だった頃,それまでも長いことお世話になり続けていたある方のご紹介で横浜から帰省して開業される中国料理のレストランのオープンに関わらせて頂いた。

 今回の修理依頼は中華レンジのバーナーの不完全燃焼が収まらないというもので,エアーダンパーの開度を変えただけでは帳尻が合わないというのがオーナー殿から伺うところだ。
 このブログを読んでおられるご同業の諸兄にとっては,何を今更の内容だろうからこの先を読まれるのははっきり言って時間の無駄なのだが,使用者の方にとっては幾らかご参考になるかもしれないので一応,先を進めさせて頂く。

 ダンパーを調整しても不完全燃焼が収まらない,という症例の場合,俺の経験則から言うとかなり高い確率でバーナー自体が劣化しているのでこれを交換するのが定石である。
 鋳物バーナーは当然ながら長期の使用によって錆びてくる。燃焼によってバーナー自体の温度は上がるし,内部は燃料と空気の混合気体が流れ続けているので燃焼中はバーナーの内壁部分は水分に晒され続けることにもなる。これは決して誇張した表現ではない。

 バーナーが錆びることによって内壁部分は鉄粉だったりフレーク状の剥離物が溜まり,流路の抵抗となって混合気体の流速が低下する。そこで起こる不具合は,
(1)混合気体の流速<燃焼速度 となるので混合管内でのフラッシュバックやバックファイヤー
(2)一次空気,二次空気の不足による不完全燃焼
といったところか。

 燃焼器具メーカーのサービスマニュアルで、これまで俺が目にしたもののうちの殆どは不完全燃焼の対処法についてはダンパーの調整しか記述しておらず、バーナー本体や混合管の内壁面を点検した上での清掃を示唆するものは殆ど全くと言っていい程なく、技術資料としては全く不十分なものと言わざるを得ない。これは俺が会社員だった頃,この手の資料を作成する部署(俺の職場の場合は工場の製造管理部)に散々文句を言い続けたことのうちの一つでもあるのだが今に至るまで全く反映されることがない。

 いささか脱線めくが,どうしてこんな事を書くかというと,内壁面の錆によって不具合の発生したバーナーはコンディション次第では交換しなくても分解清掃によって個体の延命を図れる場合があるからで,それは技能職としての修理屋の見せ場にもなり得ると考えるからだ。
 技術職の中にあって修繕というのは低く見られがちな職種であり,単なるパーツ交換の作業員(Worker)としか見られない風潮に俺は異議を唱えたいのだ。

 とは言え,錆による剥離物が堆積したバーナーの分解というのはギャンブルがかった側面がどうしてもつきまとう。長期間使用したバーナーは先に書いたように剥離物が発生した分だけ内部は削れて肉厚が落ちている上に錆びによって塑性が変化しており,平たく言えば脆い。分解作業は余程慎重にやらないと混合管の接続箇所が折れてバーナーが使えなくなってしまうリスクは常にある。

 ガスレンジや中華レンジに使われる二重のトップバーナーで、外径が約200φくらいのものというとパーツとしての価格は混合管が付属した状態で大体¥15000から二万円強くらいだ。
 潔くバーナー交換に踏み切るか,分解清掃数千円で済むかもしれないが分解に失敗してバーナーをお陀仏にして数日間,火口一個を使えない不具合をかこつ憂き目に遭うかもしれないか,使用者としては考えどころだとは思う。

 今回俺は後者の,リスキーな方向で行くことにした。
実はこの中華レンジは別の火口の修繕で以前記事にしたことがある個体だ。

記事名:救えるときもある
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-05-01

 このときはバーナー本体にねじ込まれた混合管が折れてしまい,接続部分に折れ残った混合管のねじ切り部分を除去するところが作業上のポイントだった。
 
 製造元の考えとして,鋳物バーナーにねじ込まれた片ねじの短管(鋳鉄管)を取り外すという作業は想定していない。先に書いたマニュアルの手落ちと思われる一面はこういう,分解時の破損リスクを踏まえてのことではあるだろう。だからこれはどこの燃焼器具メーカーについても言える造作だが、混合管のねじ込み部分はシール剤による処理はされていない。つまり古くなったバーナー本体と混合管の接合部は錆びて固着しほぼ完全にといっていいくらい一体化しているので破損させずに分解できるかどうかは運次第。

IMG_7722.1.jpg

 ギャンブルは当たりと出た。
前掲記事の作業と同様のコツだ。
(1)分解前にワーク(ここではバーナー本体)は十分に熱しておく。ワークが熱膨張する事で片ねじ短管との噛み合わせ部分に剥離部分ができたらしめたものだ。
(2)潤滑用のスプレーは惜しみなく接合箇所にぶっかける。剥離箇所に浸透するまでには結構な時間がかかるので吹きかけた後5分以上は放置しておくのが好ましい。日常持ち歩いているのはごく一般的なもので、今回使用したのもそれだ。
 
 用途として最適なのかどうかはわからないが,何がしかのご利益はありそうに思える。

 バーナーから短管を取り外す際にはパイプレンチを二丁がけしておくのは絶対条件で、ただでさえガチガチにねじ込まれている短管が錆びているのだからこれはもう回らずに脆くなった配管がねじ切れてもおかしくない話であって、何しろ取り外しには馬力を要する。
 しかし馬力一辺倒で解決するかというとそうでもなく、ある種のコツも要する。今回で言えばパイプレンチの片方、短管側にかけた方だが回す過程で配管が歪み、断面が楕円状に潰れた。短管もまた鋳物だからして劣化してくればすが生じたりもするのだろうか。同じ箇所にレンチをかけず、一度に大きな角度を回そうと欲張らず、レンチをかける位置をずらしながら10°位ずつジワジワと回す。少し回ったら潤滑スプレーをねじ込み部分にかけながらこれをねじ込み半回転分くらいの間くり返す。

 このようにして短管を取り外してバーナーの内壁面を覗き込んでみると、剥離した錆がフレーク状になり内部を塞いでいる。
 錆もパウダー状であれば取り外して叩けばこんな面倒臭い作業をせずに済むのだが今回はそうではなかった。
IMG_9009.1.jpg

 屋外の駐車場で作業を行ったため錆びた剥離物が同色で見づらいだろうが、今回のケースで言うと外径約200φのバーナー内部におよそ一掴みと半分くらいの錆が溜まっていた。これだけあれば内部の流体抵抗にもなろうというものだ。

 結果についてはわざわざ画像で示すまでもなく,正常な燃焼状態が回復できた。
しかしこれは決して問題の解決ではなく、バーナー交換が先延べされたに過ぎない。
第一に,これだけの量の剥離物が発生しているということは,その分バーナー内空の容積が増えたことになるので,未燃焼ガスが多く残る分だけ消火時のフラッシュバックが起こりやすくなる。中華用のバーナーとなれば尚更だ。
第二に,剥離物が発生した分だけバーナーの肉厚は減少しているのでいずれどこかの時点でバーナーには穴が空き,それは修理のしようがないので問答無用で交換となる。

 色々とリスキーな割に修理屋の自己満足でしかなさそうな気はする。バーナー交換に比べて明らかに安い金額でないと使用者にとっての割安感は得られないだろうから大した修理代を請求するわけにもいかない。
 しかしまあ何というか,最も安価なやり方で対症療法を施す,という目的は達成できていると思う。繰り返すが今回のような処置は冷徹に考えてみれば単に修理屋の自己満足に過ぎない。
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在庫の現金化に励む [日記、雑感]

 この作業は先月末頃に行ったもので,ブログを再開するにあたって何だかバツが悪いのだが,更新のやる気を失ったわけではないという弁解みたいな記事だ。大した内容ではないし,長文化する俺の悪癖を踏まえ,手短にやっつけ記事みたいなことを書く。

 ある夜,夕食を摂りに行った某中国料理店でのこと,そのお店のオーナーは俺がもう20年以上もご厄介になっている方なのだが,ホールに出て来て飯を食っている最中の俺にタイマー制御されているはずの屋外照明が点きっ放しなので修繕しといてくれとの御依頼が来た。
 得意先というのは大事にしとくもんだな,と我ながら思うぜ,諸兄。

 最近,時間を見つけてはあれこれと制御回路を書いているPLCを活用する場面か!と俺は嬉しくなったが親方との相談によればあまり込み入った制御にはして貰わなくていいからとにかく安くあげてほしいとのご意向である。
 余談だが,打ち合わせをする上ではお金を出す側がどうして欲しいのかを明らかにしてもらうのは大いに助かる。それが金銭的に旨味がなかったり現実味がなかったりのものではあってもだ。

 3日後,現調もしないで俺は行き当たりばったりに作業場にあったデッドストックの部材を幾つか携えて件のお店に乗り込んだ。間違って買い込んだまま、材料屋に返品するのを忘れてデッドストックになってしまったタイムスイッチが俺の作業場には幾つか転がっていたのでどれかが使えれば儲け物だというスケベ根性が働いていたことは白状しておく。

 乗り込んでみると随分古めかしいタイムスイッチがついていた。100V仕様の同一回路で、俺の持ち込んだ部材に一致するものがあり、安価な材料でもあったのでそれを使うことにした。
IMG_6412.1.jpg

 交換後の様子だ。タイムスイッチ一個,開閉器一個の簡単な制御回路であり回路図は添付されていなかったがまあこの程度なら俺の頭でも目視で配線を追うことで何とかならないこともないが、手書きのスケッチ程度でもいいから添付しておくのが流儀だろう。俺は今回,書き残してボックスの蓋に貼付けておいた。

 電気の作業は無電圧で,というのは鉄則だが屋外照明をタイマー制御するこの回路がどのブレーカーであるのかが分電盤には記述されていない。営業中に背中を押されての作業だったので,仕方なしに今回は活線作業となった。本職の電気工事屋ではないのでビビりながらの修繕だ。
 幸い店内照明を落としたり爆弾スイッチをこしらえるようなチョンボはなく,試運転は無事に済んだ。

 親方は随分気前がよく,一週間程して見積書を届けに行った俺の前でいきなり財布を開けてお金をくれた。
修繕費は税別一万二千円也だ。廃版になったタイムスイッチの現行品との交換,回路図なし,活線作業と考えれば特段高くもないだろう,と俺は恩着せがましく考えておる。
 頂いたお金は翌日,京都から見えられたお仕事仲間との晩飯代としてこれまた俺のある得意先で消えた。

 修繕の依頼元は一万二千円で完了,俺はデッドストックをうまい具合に現金化,別の某得意先は売り上げが立ってそれぞれにハッピーなわけだw
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理科の時間だぜ [お仕事上のぼやき]

 某リサイクルショップからの依頼で,とあるペンションにスチームコンベクションオーブンの凍結防止の作業に出かけた。

 ブツはコメットカトウのCSS-2という製品で,2002年製。比較的初期の製品で随所に手探り風の設計仕様が感じられる。
IMGP0089.jpg

 インターフェイスには未消化な部分が散見されるが,お金のかかった手堅い造りのオーブンで素性はいい。

 実はこのオーブンはここに運び込まれる前,件のリサイクルショップで俺が一部補修と操作確認を行った物体だ。
 販売元はホシザキで,どこで稼働していたものなのかその来歴は不明であるが,リサイクルショップが買い取って動作確認を行ったところインバーター故障のエラーが出て運転できなかったのだ。
 コメットカトウの製品は伝統的に制御系統のパーツ類は富士電機製でほぼ統一されており、ここでは庫内ファンモーターの可変速用として汎用品が使われているのだが,何分インバーターというのはモデルチェンジのサイクルが早く,12年も前となると同一品は既にカタログ落ちしており,オーブンの製造元のコメットカトウにしても既に生産終了後10年程度を経過しているため同一品のストックパーツは既に在庫払底で、現行品のインバーターを送付するとのアナウンスがあった。

 汎用インバーターを単体使用ではなく,組み込み用として各種の付加機能を働かせるとなるとあれこれとややこしい内部設定を要するのは諸兄ご存知のことと思う。
 現場で手間取るのは避けたいので設定はコメットの側で済ませておいてほしい旨を伝えたがそれは叶わず,俺の手元には数十項目にも及ぶ内部設定の一覧表で、付属のマニュアルを見ながら現地で書き込みを行ってほしいとのことだった。
 俺が本職の計装屋で,年がら年中インバーターをいじくり回しているのならともかく,いきなりマニュアルと首っ引きで書き込みをしなくてはならないのだから大儀な話だ。
 大儀な話はそれとして,どうにかこうにか全部の動作確認にまではこぎ着けた,日頃触れることのない初見の機材というのはやけに手間取り,能率が上がらないものだ。
 それで、ようやく手を離れてやれやれと一安心していたところ約にヶ月経って再び俺のところには冒頭書いた依頼が来たというわけだ。

 リサイクルショップあてがいぶちの凍結防止ヒーターだけでは心許ない気がしたので俺も設備資材の問屋で同じものを一つ買い込み,多少の配管資材を携えて現場に乗り込んだのだが,入り組んだ内部配管を分解して凍結防止の処理をしているうちに何だかムカムカして来た。
IMGP0090.jpg

古い設計のため実装は筐体に収まりきらず,蒸気発生のためのスチームジェネレーターは架台の一部を利用して取付けられている。書き忘れたが,熱源はガス式であるため尚更大づくりになっている。

IMGP0092.jpg

 クエンチングの配管にテープヒーターを巻き付けて凍結防止処理をした図である。1/4インチの銅管がむき出しのまま機体内を走り回っているのだから水道の不凍栓を落とさなければならないような周辺環境下では凍結して配管がパンクするのは火を見るよりも明らか。

 厳冬期の寒冷地で,火の気のない設置場所で冷えきった床に寝っ転がり、手探り風に配管だのヒーター巻だのをしているうちに俺は何やら不条理を噛み締め始め,段々それは腹立たしいものに変わりつつあった。
 そんなところにこのペンションの従業員が現れ,今日は何時頃になったら取り扱い説明をしてくれるのかと訊ねて来たので俺はスイッチが入った。

 そんな依頼は受けていない,と俺は切り返した。
俺の受けた依頼内容は配管の凍結防止処理をしてくれというものであって,試運転だの取り扱い説明までの依頼は受けていないと言うと従業員はムキになってそのリサイクルショップが今日中に使える状態にすると約束したのだから時刻を明確にしろなどと抜かして詰め寄って来た。全くもってバカな奴らだ。

 いつの頃からか知らんがこういうバカが増えた。
ものを言いやすそうな奴を取っ捕まえて問いつめればそれで自分が何か大した仕事をしていて,自分の言い分が必ず実現するものだとでも思い込んでいるらしい大馬鹿者が本当に増えた。機会だの設備だのは理屈で動くものであって気合いだの願望だの感情論で何とかなるのなら誰も苦労なんかしないわい!
 床に這いつくばって配管作業をしていた俺がモンキーレンチを握って立ち上がると従業員どもの顔つきがこわばった。
 これが自分の得意先立ったら啖呵の一つも切ってやりたいところだが依頼元が介在しているのだからここは我慢、と自分に言い聞かせて俺は平常心を取り戻し、そのお話は納入元であるリサイクルショップとして頂きたいと伝えた。

 この剣呑さがどういう構図の元に成り立っているかというと、とどのつまりリサイクルショプのてきとうさ加減に尽きる。
 件の中古厨房機材屋は11月の末に動作確認が済んだこのスチコンを持ち込んだはいいが、冬期間には水道の不凍栓を落とさないとならないような周辺環境である事が考えに入っていなかった。それを従業員に指摘されて対策を講じると生返事をしてその場は切り抜けたものの他の事にかまけて放置しているうちに催促が入り、ペンションに対しては今日中に凍結防止の処置を終わらせて実用できるようにすると安請け合いをする一方で俺に対しては請け負った通りの依頼内容だと難色を示される懸念があるからさも簡単な仕事である風に頼み込んできた。それでこうして現場で従業員と依頼内容の齟齬についてもめる場面では頬被りを決め込んでいるという事らしいのだ。

 従業員との間の刺々しい場面はそのようにしてひとまず解消したわけだが、何度も来たくなる場所でもないので、理不尽な話だができるところまではやっていきましょうと俺はガスの開栓だの何だのと周辺の段取りをして試運転を始めた。
 10年以上も前に生産終了した旧型機であるせいもあって、試運転の際には幾つかの不具合が発生し、次に誰が来るのかは知らんがとにかく問題点の告知はし、時刻は既に夕方になっていたのでこの日はひとまず散開となった。

 帰り道で車を転がしながら俺は内心でモヤモヤしているものが何なのかと考え続けていた。
思い出してみるとそのオーブンは11月に俺がコメットカトウの依頼を受けて現調に行った時にも給水の銅管が変形して水漏れしていたのだった。
 最初に販売したのはホシザキで、最初の使用者の設置環境も冬期間には水道が凍結するような場所だった事をそれは示している。
 どんな因果か知らないが、廃却処分になるはずだっただろうそのオーブンを手に入れたリサイクルショップはこれまた寒村の山間にある掘建て小屋に毛の生えたような建物にこれを売り込む。

 世の中、電気製品だの住設機器だの、およそ給水配管接続が必要な機材全てについていえる事だが、氷点下の周辺環境でバンバン使ってくださいなどという謳い文句の商品などないと言っていいだろう。そして、
(1)大気圧のもとで水は0℃で凍る。
(2)氷結した水はある温度帯に於いて体積が膨張する
こんな事は小学校中学年くらいの理科の時間に教わる話だ。

 とどのつまり、給水配管のある機器類は氷点下となる環境に設置されるべきではない。水道の不凍栓を落とさなければならないような場所に置かれるべきではない。それは全くもって当たり前の大原則ではないのか。
 今回のオーブンに限らず、例えば食器洗浄機のポンプのケーシングに残ったお湯が凍結して翌朝運転したらサーマルトリップしただとか、製氷機の配水管が凍結してストッカーから排水が溢れて床が水浸しになっただとかいった間抜けな障害が俺の住む土地では後を絶たない。
 目先の金のためにとか、お手軽に横着をしたいとか言った低劣な願望は、高校や大学を出た立派な大人が小学校の理科程度の知識さえどっかに吹っ飛ばすくらい当事者を低能にさせるということだ。全くもって売る方も売る方だが買う方も買う方であって、こういう連中には『学校での勉強は社会での役に立たない事ばっかりだ』などと偉そうな口を叩く資格はない。
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ガチで凹む日々 [日記、雑感]

 考えてみると,日々の仕事に於いて快心の出来などというのは幾らもない。殆どないと言った方が正しそうに思う。実のところ,ぼろを出さずに済んだとか,何とかなったという程度の結果が大半ではないのか。

 日増しにややこしい仕事が増えつつあり,そこへ持って来てしくじる仕事だの手こずる仕事だのが出て来て,目下俺は結構凹んでいるのである。
 
 沈む気分に追い討ちをかけるように,しばらくぶりに結構気合いの入った修理記録を記事にしておこうと意気込んでいたのだが,一気に書き上げようとしてあと一息で長文をものにしかかっていたところ,So-netのサーバーエラーで俺の修理記録の記事は電脳世界にに於いて粉々に飛び散り,無情に消え去った。

 やる気がなくなるぜ,もう。
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FACOMのバックパックが届く [便利そうな商売道具]

先月記事にしたFACOMのバックパックが今日届いた。
先月の発注から待つこと約一ヶ月,はるばるイギリスからの送付である。
はじめに感想を書いておこう。待っただけの甲斐はあった。BST14を買って手に取ったときの驚きや感嘆が蘇って来た。
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 ここで買うと安い。いいバッグがない,とお悩みの諸兄は是非。
http://jp.rs-online.com/web/p/tool-bags/6698218/

 年が明けてから数度,仕事の上ではタラップを登って屋上に設置された冷凍機を修理する場面や手持ちのツールバッグには収まりきらない道具類を運搬する場面があり,俺は便宜的に身の回りにあるアウトドア用のバックパックを使っていた。
 手提げ式のツールバッグでは両手が使えないし,安全帯にくくりつけたツールホルダーでは持てる数がごく限られる。アウトドア用のバックパックはと言うと元々の用途が違っており,工具類が中で動き回ることで生地を内側から散々引っかくので傷みが激しく,場合によっては突き破って穴を明けたりする心配がある。
 メインで使うかサブで使うかは持ち主のお仕事のスタイル次第だが,俺の場合は高所での作業用とか長い距離を徒歩で移動する場合のサブバッグとしての必要に迫られていたので、この一ヶ月は首を長くして到着を待っていたのが実相だ。

 それで届いたブツだが,ダンボール箱を運送屋から受け取った時にその重量にかなりの違和感があった。バックパックにしてはやけに重いのだ。何か注文してもいない別のものが一緒に入っているのではないかと思える位重かったのだが箱を開けてみるとそうではなく,注文したバックパックだけが押し込められている。
 箱から商品を取出してみてそれが非常にゴワゴワした生地で出来ており,ボトムの部分はアウトドア用のバックパックとは異なって樹脂成形のがっちりしたものであることで疑問が解けた。
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 この商品は「ツールのホルダーの機能を持たせたバックパック』ではなくて「バックパックの形をしたツールバッグ」なのだ。ボトムの材質や生地の厚みはFACOMのツールバッグと全く同じで分厚いし縫製もがっちりしている。これに伴って各ファスナーも一般的なバックパックとは全く別物の太い(?)もので、ご丁寧なことに金属製やプラスチック製のツールボックス同様,盗難防止のためにファスナーには南京錠がかかるようにさえなっている。
 背負った時に背中に当たる面に入っているクッションは意外と薄いがそのかわり二重に縫製された生地の間には恐らく何か樹脂製と思われるが板状の芯材が入っており,工具の角が背中に当たることを想定した仕様になっている。そういった具合に全てのマテリアルがハンドツールという金属の塊を押し込むことを前提に構成されていくとこの重量にならざるを得ないということなのだろう。
 トップについている手提げ用の持ち手はこれまた樹脂成形のごついもので,先月なくした安物のツールバッグが使用後2ヶ月程度で持ち手が破れて中のプラスチック芯が飛び出てきたのとは大違い。
 おろし立て当初の感触としてはとにかくゴワゴワしていて硬い。

 内部は至る所道具を差し込むホルダーだらけだ。以前のせた画像をもう一度示す。
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 画像では見えないが,ご丁寧なことにウェストベルトに引っかけるスケールなど用のホルダーまでついている。ショルダーベルトやウェストベルトにもこれでもかというくらい小さいポケットが造作されているのは縦長のプロポーションのせいもあるのだろうが小さいものがバッグの底に沈んで取出す手間が面倒臭いことを予め配慮しているのだろう。

 近いうちにある某国営宿泊施設での冷凍機修理に於いて初の実戦投入となるが、そこでの使用感もいずれ記事にしてみたいと思っている。ツールバッグとして最初の一個とは言い難いが作業場所までの徒歩での移動距離が長いとか,移動経路の中に両手を使わなければならない場面がある方は検討に値するアイテムだと思う。
購入はこちら
http://jp.rs-online.com/web/p/tool-bags/7877504/

 以前のモデルが日本国内では4万円以上もしたことを思えば決して高くはない,はずだ。

 ここまで書いて思い出したが,FACOMの拠点であるフランスという国はクライマーの大定番バックパックであるMILLET(ミレー)を生み出した国でもある。
 
[ミレー] Millet MARCHE 20

[ミレー] Millet MARCHE 20

  • 出版社/メーカー: Millet(ミレー)
  • メディア: ウェア&シューズ



俺が学生の頃,山登りのためにせっせとバイトに精を出して買い込んだミレーのザックはその重量バランスと優れた収納性や耐水性など明らかに他メーカーとは一線を画する図抜けた存在で,30年近くたった今でも手放せないのだが,今回のお買い物といい,何か文化の深さと言うか凄みを感じる。物真似ではなくオリジンを生み出す英知がここにはある。
 そんなわけでどこにも類似品のないバックパックをいじくり回し,あれこれ道具を詰め込んでみては背負いをやっているうちに本日の俺は家から一歩も出ることなく一日を終えた。よって本日,俺の稼ぎはゼロである。さあ明日からはがめつく稼がなくては。
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得意先での外食で生じる副産物 [日記、雑感]

 俺の商売は飲食店を得意先とする事はあり、多くの人類がそうであるように一日に三度は腹が減り,飲食店での外食は当然あるし,日頃はお世話になっているので自分の得意先を利用する事もまた当然ある。

 昨日日曜日の夕食,俺は知人と一緒に晩飯を外で食う事にした。
どこに行こうかと思案した結果,俺がかれこれ二十年来お世話になり続けている某ステーキレストランに予約を入れた。
 このレストランは特にドレスコードがあるわけではないが,俺の住む田舎町では結構敷居の高そうな店で,ある種のお偉いさんたちの接待用に使われる事が多い。ホールの面積のうち半分はプライベートルームであると書けばどういう店であるか諸兄には大体ご想像がつくと思う。

 特段贅沢自慢をしたいわけではない。
長らく仕事でお世話になり続けていることもあって、恩返しとまではいかないまでもこちらの懐具合が悪くない時には何かしらお返しをしておきたいとは思う、その程度の倫理観は持ち合わせているつもりだということ。

 俺の連れは遠慮が働いたのか比較的簡素なセットメニューをオーダーしたのだが,出て来たのは俺と同じ内容でそのセットにはないはずの豪勢な前菜で,サーブに現れた店長が意味ありげな笑いを浮かべてウィンクしていった。何というか恐れ多い話で,役得と言えば役得ではあるがとにかく恐縮する。
 
 それでメインディッシュであるステーキを見て俺は仰天した。
お恥ずかしい話だが俺は身体に染み付いた貧乏根性が働いて部位はロース,ポーションは半ポンド(230g)でオーダーしていたのだがサーブされたステーキプレートに鎮座していたのは部位はサーロインでそのポーションは間違いなく2/3ポンドはありそうな代物だった。プレートからはみ出した巨大なステーキに俺は大いに怯んだ。
suteki.jpg

画像は本文とは関係ありません


 サーブに現れたのは日頃ホールに出てくるのが大嫌いなはずの料理長だった。彼もまた意味ありげな笑いを浮かべていた。プレートをテーブルにセットする彼に俺は部位もポーションも自分のオーダーとは違っている旨を伝えると料理長殿は薄笑いを浮かべながら「いやーこれは間違いで」と言い置いてそのままバックヤードに引っ込んだ。
 何か気を利かしてくれているのだとすれば大変有り難い話ではあるがしかし,人生の折り返しを過ぎてすっかり馬力の落ちたオヤジにでっかいステーキは物凄い威圧感を持って迫ってくるのである。見ているだけで腹一杯になりそうな物体だ。

 俺は必死の思いでそのステーキをどうにかこうにか平らげた。食い意地が張っているのは確かだがせっかくご好意を働かせてくれているのだから食べ残しては失礼だろう。
 会計はメニュー通りの値段で、ホールマネージャーである店長殿は至って事務的に特別なことはしていませんから、と恐縮する俺をたしなめた。そんなわけは絶対にないのだが。

 それで問題はそのレストランを出てからだ。 
 以前,別のあるところで似たような場面があったが同じポーションでも例えばハンバーグの350gとステーキの350gではわけが違う。正真正銘,350gの牛肉の塊は大いにヘビーなものだ。
 鶏や豚なら話はまた別だが牛の350gで、焼肉やハンバーグではなくステーキとなると猛烈に重い。胃にもたれることも胸焼けすることもないのだがとにかく丸一日くらいは食欲が全く湧かずに妙な満腹感が体中を支配する。
 ほぼ24時間後の今日の夕方,ようやく俺の体は幾らかの空腹感を訴え,俺は日常通りの貧乏飯を摂ることにした。何というか,非日常的な場所で非日常的な食事をとる経験は色々な意味で強い印象を残す。

タグ:ステーキ
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iPhone 5c [便利そうな商売道具]

 昨日,あるアクシデントによって俺の携帯電話は使えなくなった。
死んだ子の年を数えても始まらないのであって俺は携帯電話を更新しなければならなくなった。

 あれこれ考えた結果,いつかは乗り換える事になるのだろうとは考えていたがiPhoneを買う事にした。
所謂ガラケーを格段不便を感じる事もなしに使い続けて来たわけだが,ある頃から周囲を見回してみると誰も彼もが所謂スマホを手にしており,会う人ごとに『まだそんな古臭い携帯電話を使っておるのか』と珍しがられるので相手を違えて同じ返事ばかりを何度も繰り返す事にウンザリしていた昨今であり,まあ,いい機会だったと思えなくもない。

 これまで何度も書いてきたように俺の常用のコンピューターはMacであるから、同じアップルつながりで都合が良さそうに思えてiPhoneにしたわけだが,店頭で手渡されて家に持ち帰り,充電しながらあれこれいじっているが正直言って大変当惑している。
review-the-iphone-5c.jpg

画像は本文とは関係ありません


 これはもう何だか得体の知れない物体と言うしかなく,何をどうしたら何が出来るのかがさっぱりわからずに俺は大変困っている。
 かろうじて理解できたのは通話の仕方とメールの送信とカメラの機能くらいで,例えばネットの端末としての使い方などはチンプンカンプンでからっきし理解できない。スマホのスマホたる機能に手も足も出ないでいるザマでこれでは一体何のためのiPhoneなんだかわかったものではない。

 何だか色々ユーザーIDやらパスワードを打ち込まないとネットには繋がなさそうなのだが,そもそも端末を買い込んだのが10年近くも前でその時のIDなどとうの昔に俺の記憶に残っていないしどこかにメモしてもいない。
 自宅の無線LANルーターからネットに繋がらないかと試みてみるとこれまたパスワードを求められて俺はそれを覚えていないのだ。パソコンがMac、ルーターがAirMacだとアホみたいに呆気なく繋がるのに同じAppleの製品でiPhoneだといきなり敷居が高くなるのはどうしたわけなのか。

 とにかくまあ,訳が分からん。
かれこれ小一時間いじくり回してみて発見できたのはポケットライトのような使い方が出来るという事くらいだ。ああそれからきっとこの物体はiPodの機能を含んでいるらしい。
しかし俺の持っているiPodなど10年近くも以前の何とも原始的な物体であり,バッテリーの持ちが悪くなったので7年くらい前にぶっ飛ばしたままで以後iPodなど全く使っておらず,現行品とはそのインターフェイスに何の共通性もないと言っていいような代物だ。
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画像は本文とは関係ありません

 今のiPod Touchなどを見ていると俺は浦島太郎のような気分になる。

 要するに,目下のところiPhoneは俺にとって全く宝の持ち腐れとしか言いようのない物体であり,不慣れなタッチスクリーンの反応にイライラしながらにわか勉強の最中なのだ。
 このブログでのカテゴリーでは『便利そうな商売道具』としているが、目下iPhone 5Cは全然便利でないどころか大いに不便であり,何だかわけの分からん苛立で俺は何かに八つ当たりしたいような気分である。
 イヤしかし困った。大変困っている。
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篭城計画四日目 [日記、雑感]

 タイトルの通り。篭城は四日目を迎えた。何もなければこの後6日から仕事始めとなる。

 分刻みとか秒単位が仕事の中で出てくる関係で,こうしてのんべんだらりと時間を浪費する事で何か自分の時間感覚は幾らか補正されるように思う。
 暗くなったら眠り,明るくなったら目覚め,くたびれたら休み,腹が減ったら食う。元々人間の生活はそういうものではないのか。

 他人が休んでいる間にせっせと働くとか一円でも安くとかいうことが無条件の美徳のように褒めそやす価値観を突き詰めていくと,奴隷を山ほどかき集めてのべつまくなしにこき使うことで大儲けする誰かのビジネスモデルに行き着くに決まってる。
 
 こうして数日,ぼーっとしながらこれまでも自分の成り行きを思い返してみるに,世の中全てが段々上に書いたような状況に近づきつつあるように思う。そういう風潮は更に進んでいくだろう。
 大きな資本を持つ組織が二束三文の人件費で沢山の貧乏人をこき使って安い商品を大量に販売する。沢山の貧乏人は金がないので何でもかんでも安いものに飛びついて消費する。俺は経済については全く無知だがデフレスパイラルとか格差社会というのはそういう構造だと認識している。

 日曜とか祝日に俺の携帯電話に連絡を寄越して来て(お休み中のところ申し訳ないが)の一言もなしに切り口上でいきなりあれが故障したから今すぐ修理しに来いとか抜かす大馬鹿者は少なくない。という過去の手の輩は年々増えつつある。
 ついでに書くとこの手の連中は大体,俺が日曜だの祝日だのに対応した場面で(お休み中のところ無理を言って済まなかった)の一言もない。
 出向いて直に顔を合わせ,働いているところを仕事の傍ら横目で見ていると彼らの多くは上に書いたような奴隷のなりかけみたいな勤務形態の人間だ。手厚い保障があるわけでなく,年中無休の施設で時間から時間の労務に明け暮れ,金については何の決裁権もなく,決まりきった手順のルーチンワークを飽きる事もなく繰り返して安い給料に甘んじている。そういう人達だ。自分が雇い主からは半ば家畜やモノのように扱われているので他人にも同じように接する事に疑問を感じないのだろうと俺は常々見ている。

 しかし,こういう構図を良しとせずにその仕組みから脱却しようとする人達は一定の割合で必ず発生する。人にはやはり個人としての実存があるのであって,俺自身も以前はこういう人達に近い環境で社畜としてこき使われており,色々事情があってそこから抜け出した手合いである。

 今のところ篭城中はまとまった時間が出来ているので,学生の頃に一度読み,働くようになってから数年前に買い直した本をまた読み直している。


失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

  • 作者: ミルトン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/01/16
  • メディア: 文庫



失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)

失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)

  • 作者: ミルトン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/02/16
  • メディア: 文庫


自分を取り巻く仕組みを疑い,時に抗う事によって人は実存に目覚めていくものだ。自分で決断し,自分で責任を取る。自由というのはそういう事であって,重苦しく緊張したものだ。繰り返して読むに,改めてそう思う。

 そんな時間が今年の6月で10年目を迎える。こんな調子でどこまでやっていけるのか見当がつかないが9年と半年くらいは色々失いながらもどうにか続いた。
 人を家畜のように扱う事や家畜に甘んじる人達の構図は今年,消費税の増税を境にますますエスカレートするだろう。信念という程のものではないがそんな中で俺のやり方はどれくらい受け入れてもらえるのか,読了してから漠然とそんな事を思案した。年頭雑感のような記事だ。
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篭城計画 [日記、雑感]

 昨年の歳末は30日の夜まで修理に追われ,大晦日にはよりによって自動車のパワーウィンドウがぶっ壊れて閉まらなくなくなるという災難に見舞われ,まあひどい目にあった。
 少し前の記事に書いたように今年は秋口の終わり頃が忙しく,歳末は比較的落ち着いており,俺も結構のんびりしている。先の事はともかく、のんびりできる事自体は喜ばしい。

 例年そうであるように,12月31日から1月5日まで6日間の俺はタバコとコーヒーを沢山買い込んで引きこもり生活を決め込む。来客はお断り,出かけるのもイヤだ。俺は元々人好きのする性分ではない。日頃は生活のために愛想笑いしてるだけだ。この時期に俺に仕事をねじ込むと安くないぞ。
 例年の習慣として,深夜からの俺は菩提寺に除夜の鐘を突きに行き,本堂で勤行をあげてから帰宅して映画を見る。演目は大体以下の二つのうちのいずれか。
 
2001年宇宙の旅 [DVD]

2001年宇宙の旅 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


近年は生きる事に疲れてきたのでこちらが多いか。

惑星ソラリス [DVD]

惑星ソラリス [DVD]

  • 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー
  • メディア: DVD


 いずれも長編であり,何とも濃密なモチーフなので単純明快な娯楽映画ではなく二本立て続けに見るものではない。
 見終える頃には既に午前6時近くになっており,そのまま寝る。初詣はパス。俺は人ごみが嫌いだ。それからの五日間を出来るだけ家の中でゴロゴロして何もせずに過ごす。俺はこれをてきとうに篭城計画と名付けた。
 思うに,人間何が贅沢と言って長い時間を無為に過ごすくらい豪勢な事はないことにある時俺は気づいた。何も生み出さず,思い出も作らず、ただただのっぺらぼうな時間をやり過ごす日々を俺は決め込むのである。
 
 それでは諸兄,良いお年を。来年また会いましょう。
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防寒作業衣でエコな冬を過ごそう [便利そうな商売道具]

 この一年のちょっとした回顧みたいな記事だ。

 俺は開業以来,自慢じゃないが作業衣というものを自前で買った事がない。
作業衣は俺の元の勤務先が要望に応じて無償にて支給してくれるからだ。勤め人だった頃を思い返すとそれは上下で8千円と少しの社内振替請求が来るもので、社員でもない俺がそれをタダで頂戴できるというのは俺が角の立つような退社の仕方はしなかったことを現しているのだと思っている。

 タダで頂ける作業衣は大変有り難いものだがそれで全ての場面が事足りるというものでもないので、必要に応じて俺の持ち出しでこの手の衣類を買い込む事になるのは、まあ当然の事だ。
 まず必要だったのは冬期間に着る作業ジャンパーで、支給されたものは所謂ドカジャンだ。重い割に大して暖かくなく、屋外の作業では大変動きづらいので、たまたま暇つぶしで覗いてみたリサイクルショップで見つけたN-3Bの劣化模造品を千円で買った。 

(アルファ インダストリーズ)ALPHA INDUSTRIES INC ALPHA N-3B TIGHT ミリタリーアウタージャケット 20094-276

(アルファ インダストリーズ)ALPHA INDUSTRIES INC ALPHA N-3B TIGHT ミリタリーアウタージャケット 20094-276

  • 出版社/メーカー: ALPHA INDUSTRIES INC(アルファ インダストリーズ)
  • メディア: ウェア&シューズ

勿論、このリンクに示したものとは全然別物だがどうせ仕事で着潰すのだから何でも構わないと思いながら3年経った。ドカジャンよりは数段動きやすい。

 今年は秋口に、屋外の作業が多い年だった。
風の強い秋の終わり頃に建築現場の屋外作業をしていると身体が冷えて風邪を引く事がこれまでには何度かあったので、歳も歳だし今年は何か対策を講じておこうとは思い続けていた。
 これまで利用した事がなかったが、俺の家からはそれほど遠くないところに作業衣専門の衣料品店がある。恥ずかしながら実はこれまで俺はこの手の店舗を利用した事がなかったのだが、後々使い回しが効きそうなつなぎを買う事にした。屋外もそうだが竣工前の建設現場は屋内にいても寒いし、どうも腰の辺りから身体が冷え始めるように思えていたからだ。

俺のサイズはLだが、作業着の上から着る事と動き易さを考えて敢えてダブダブ気味の2Lにしてみた。初めて買ってみたにしてはなかなか具合が良く、施工現場以外でもその後、某病院での塗装作業の時には役に立った。

 そうして見るとこの衣料品店の品揃えが色々と気になってくる。
作業用の靴だの何だのと物色しているうちに、長靴を履いた時に足が冷えないように保護するためのインナーブーツだのズボンをはいた上からはくカーゴパンツだのとちょくちょく買い付けに足を運ぶようになった。
 主な利用客は土木建設関係の作業員らしく、防寒衣料の充実ぶりがなかなかのものだ。

 税込み¥1780円也のカーゴパンツは内側に何というのか知らないがもこもこした毛布のような生地が貼ってあり,軽いが暖かい。腰回りにはゴムが入っておりベルトは使わないので太めのものを選んでおいてズボンの上からはくことになる。冬期の屋外作業には役に立ちそうだ。 

カーゴパンツ ミリタリー 太い カーゴパンツ

カーゴパンツ ミリタリー 太い カーゴパンツ

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: ウェア&シューズ


(注)リンク先の商品は本文とは関係ありません。

冬期間の外作業で履く靴の事はかねがね思案のタネだった。

若い頃に「これは」と思うものを買い込んだ事があるが、仕事に使おうとして買ったものではない。



仕事で履き倒すには高額で,貧乏人の俺は仕事の場面ではもっぱら安物のゴム長靴だった。ソレルのブーツはカナダ本国では普通に作業靴として使われているそうだが実売価格が断然安いらしい。俺の周辺でこんな高額な靴を仕事用に履いている人はまだ見ていない。
 しかしこの防寒性は捨て難い。ソックスを重ねてゴム長靴を履いていてもソレルのブーツとは格段の差があるのだ、と,長い事引っかかり続けてきた。いっそのこと、別売しているインナーブーツだけ買って大きめのゴム長靴と組み合わせてみようかとも思ったがインナーブーツの方が主役の長靴よりも高価なので二の足を踏んでいた。



 それで,件の作業衣の店をうろつき回っていると近年は随分便利なものが安く販売されているようで,何でもウェットスーツに使われている素材であるところのクロロプレンで作られた中国製のインナーブーツが千円以下で売られていたので試しに買ってみた。

 その効果たるや絶大で,保温性が良過ぎて水虫の心配をしなければならない程だ。
こうしてあれこれと防寒衣料を買い込んでみてその便利さを実感した俺は,これを仕事ではなく自分の私生活で使ってみる事を思い立った。
 何故かというと俺の住む家は築年数が古く,冬の間は猛烈に寒いので暖房の灯油代が物凄くかかるからだ。どうせやもめオヤジの一人暮らしなのだし来客があるわけでもないのだから見てくれなんて関係ない,と,オーバーズボンにインナーブーツでゴロゴロしているが,ストーブの温度設定を5℃近く下げても全く苦にならない。かれこれ一ヶ月程が過ぎたが昨年に比べて灯油の消費量は明らかに下がった。
 近年の防寒衣料は軽くなってき易いし動き回るにも苦にならないのでこれを仕事だけでなしに部屋着として灯油代を思いっきりケチるせこい生活の目算が立った。
 浮いた金などどうせあぶく銭でわけの分からん事に消えていくのは必至だが,燃料消費が減る事は地球環境に対する負担減となっているのだ、と,少しはいい事をしている気分に浸っている。
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FACOMのバックパック [便利そうな商売道具]

 無様な話だが最近、サブのツールバッグを丸ごと紛失した。詳細は余りにも間抜けなので恥ずかしくてここでは書けない。

 これまで何度か書いてきたが俺もそろそろ歳だ。以前の馬力は望むべくもなく、衰えつつある身体を何とか道具で補えないかと小金を浪費しながら試行錯誤するここ3年ばかりである。
 常用の道具箱はこのブログで数度取り上げたフランスの会社、Facomの製品BS.T14でほぼ決まり、おそらく現状の腕力や握力が余程落ちない限りこの先変わる事はなさそうだ。
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過去記事名:ツールバッグを新調
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-10-06

 使用期間は2年を超えたがそれまで使っていた安物とは大違いで一向にすり切れたり穴が空いたりする様子はない。段々薄汚れてきておろしたての頃の鮮やかな外見ではなくなりつつあるが、まあ年季が入るというのはそういう事だ。

 ところで一昨年の歳末、俺は某リゾート施設のスキー場にある中腹あたりのロッジで冷凍庫の修理にはまりまくっていた。
 場所が場所だけに自動車で辿り着く事はできず、勿論徒歩で行けるような場所でもない。管理事務所の索道関係者が運転するスノーモービルの後ろに乗せてもらってのお仕事だった。
 常用のツールバッグに納めてある以外の工具やら冷凍機の資料やらで結構道具立てが派手になり、簡単に自分の車に道具や材料を取りに戻る事もできないのでこの時は納まりきらない諸々をナップザックに詰め込んでこれをサブのツールバッグとした。

 また、昨年の夏頃に某学校給食センターでの修理の時には冷凍機の設置場所が屋上であり、屋外のタラップを上っていかないと辿り着けない場所だったので岡持風のツールバッグではぶら下げてはしごを上るのは危険だし、持ち手にロープを結わえ付けて屋上からつり上げるのも重量バランスが不安定なのでこの時にもナップザックをツールバッグとして便宜的に使ったりした。

 そんな経験から、しばらく前からバックパックのツールバッグをあれこれと物色していたのだがなかなかこれという製品が見当たらない。Facomで製造している事を知り、色めき立ったがお値段は4万円以上もするので諦めていたのだった。

 それで冒頭書いたようなへマを俺はやらかし、日頃はイレギュラーな労務ばかりが多いので色々と常用しないハンドツールを納めておくサブのツールバッグの必要性は日々感じているので、やはり何か買っておこうとあれこれ物色しているとFacomの新製品が目に留まった。
URL:http://jp.rs-online.com/web/p/tool-bags/7877504/

 何と言っても一度は諦めたFacomのバックパックがこうして買いやすい値段で新製品としてリリースされた事を俺は単純に喜んでいる。
 赤と黒のコンビネーションがFacomのイメージを際立たせておる。
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 上部に持ち手がついており、手提げのツールバッグとして使う事も考えられている。内部は2ルームで色々と細工が細かい。
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内部には脱着式のオーガナイザーが組み込まれており、大変カッコいい。
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 仕事以外にも色々と使い道がありそうなので迷わずオーダーした。
国内在庫はなく、イギリスからの発送となるため手元に届くのは来年一月の下旬頃になりそうだが、何と言うか、待ち遠しい。
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2013年歳末の状況 [日記、雑感]

 例年になく静かな歳末を過ごしている。
静かである事と仕事が暇である事が同義であっては困るが幸い,そのような事にはなっていない。
これは修繕一件当たりの単価が上がってきている事を表している。

 全体的な状況としては,厨房機材のメーカーはメンテに力を入れており,利益額確保のためになるべく外注による処理を減らす方向で動いている。
 しかし一方で,使用者の側は以前に比べて機材の運用期間を長期化させる傾向があり,中々リプレースに踏み切らない場面が増えつつある。
 加えて,一部では納入業者である厨房メーカーの提示する修繕の所見に疑問を抱かれるケースが増えつつある。そこでセカンドオピニオンと言うか,俺のような野良犬業者の事をどこでどうして知ったのか,お声掛かりが出てくるわけだ。
 好意的に見て,メーカー側からすると既に補修パーツの最低保有期間を過ぎ,その対策もなされない状況下での障害となると改造によらざるを得なくなるわけで,PL法などという法制度が敷衍されている昨今に於いては尚更好き勝手な改造まがいの修繕を製造元の責任で行うのはリスクが高いので足踏みの場面が出てくる。

 ある時期まで、それは所有者がリプレースの決断を迫られている事を表していたが現在は所有者の自己責任で改造もどきの修繕を行う事で延命を計るユーザーも微々たる数だが現れるようになって来て、そこに俺のような者が食い扶持を稼ぐ余地も生まれて来た。
 要するに俺のお仕事の内容はますます裏街道のモグリ業者的性格を強め、メーカーサービスが見放した機材を漁るハイエナ的性格を強めつつある。

 メーカーは内作した故障診断資料の手順に則った定型業務(それはしばしば単なるパーツ交換作業に過ぎない労務だ)の範囲内で、取りこぼしを最小限に留める事に余念がない一方、定型から外れた処置を行わなければならない場面はどのようにして捌くかを未だに定めきれていないように俺には見える。

 しかし考えてみればこれはおかしな話で、通常一般に工業製品の故障に於いて製造元の所見というのは厳然たる規範であり、最終回答ではないのか。
 家電製品や住設機器で言えば、街の販売店や設備業者がご用聞きのようにして提携業務を行い、彼らの手に余るデリケートな所見を要する場面においてお出ましになるのがメーカーだと言うのが一般的な図式ではないのか。そこへ行くと俺のところに転がり込んでくる依頼ごとは上に書いたような厄介ごとが段々増えて来ており、困った時の神頼み的な、何とも虫のいい利用のされ方をしているもんだ。

 これまで色々書いて来たように、メーカーの尻拭いや身勝手な使用者の駆け込み寺のような仕事を積み上げていくうちに俺の人間観は段々、シニカルなものになりつつある。 
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飲食店の経営とネットの影響力について愚考する(2) [日記、雑感]

前記事「飲食店の経営とネットの影響力について愚考する」のURL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-10-20

 その後,ネット上で件のバカ学生の画像が拾えたので貼付けておこう。
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 記事には大型食器洗浄機と書かれていたので,俺などはコンベアータイプの食器洗浄機を想像し,どうして蕎麦屋にそんな大それたものが必要なのかと疑問に思い,そもそもそんなバカな買い物をする蕎麦屋だから潰れるのだとか何とか思いっきりここで嘲笑してやる腹づもりでいたのだがこの画像を見て,早まった事をせずに良かったとは思った。
 まあ、幾ら何でも蕎麦店にコンベアータイプはないわw

 それはそれとしてこのバカ学生だ。
聞くところによればこの大馬鹿者は閉店した蕎麦屋から営業保証だか損害賠償の請求を受けており、民事訴訟の相手方となってしまったらしい。
記事名:ツイッターおバカ画像でそば店が初の破産
記事URL:http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/196150/

 記事から読み取れるのは元々この蕎麦店は先代が亡くなった後、経営は傾き始めていたらしい。そこへ持って来てこのアホの所行によって更に評判を落とし、閉店と相成った次第のようだ。
 バカ学生はネット上で素顔を晒しており、在籍している大学や実名も特定された模様。
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 バイトとは言え、こんなたわけ者を雇っている店となればそりゃあ首を傾げたくはなる。

 しかし元々大して経営状態が良くないところへ持って来てこの騒ぎだ。
バカ学生の投稿は蕎麦屋に大きな災難をもたらしたわけだが果たしてそれが全てなのか。
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 損害賠償5千万円とは何とも凄い話で、まさかそのままの金額で判決が出るとは思えないが、このノータリンが一生かかっても返済できなさそうな賠償額となるのはまず間違いないだろう。判決に仮執行権は付与されるだろうからバカ学生はこの先一生、差し押さえの恐怖と戦いながらせいぜい返済に務めれば良い。持ち家は諦めた方がいいな。
 考えようによっては経営者にとってこのバカの出現は僥倖だったとも思える。どれくらい負債の穴埋めになるかは知らないが、とにかく国のお墨付きを貰った上でむしり取ることのできるカモの登場だったわけだが、自分らの経営の良くなさは棚に上げてこいつに責任を全部おっ被せるようなやり方はちょっとずるくはないかw

 俺個人の見方として、このアホ学生の親は自分らのしつけの悪さがこういうカスを生み出した事の責任を肝に銘じるべきだが、きっと両親にそういう感覚はなく、ただただ自分の愛しい伜が性悪な蕎麦屋にひっかけられたという被害者意識しか持ってないだろう。
 自分は無条件に素晴らしい人間で、世界中の全ての人から注目され愛されており、やる事なす事の全てが周辺を幸福にしたり面白がらせているのだというトンチンカンな錯覚を抱いている困った輩は世間中に溢れており、俺の周辺でもゲップが出るほど沢山見かけるが、無制限に肥大化した自我というのは本当に困ったもので、自制が効かないのであればそれは何らかの制限が外部から加えられるべきだが、こういう困った奴が生まれてくる背景をやれゆとり教育だとか日教組がどうのとかいった点に原因を求めたがる連中もまたこのバカ学生と同じくらい愚劣な脳味噌の持ち主だと日頃俺は内心で嘲笑しているのである。(この項続く、かも)
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ドライキッチンと燃焼器具との相性 [修理屋から見た厨房機材]

 某病院の給食室に設置された食器洗浄機は俺が会社員だった頃に納入させて頂いたIHI JMD-4Cで、丁度稼働歴が二十年となった。

 一年365日,三食欠かさずの病院給食用途で稼働し続けて20年、途中何度かマイナートラブルがあったとは言え,中々立派な戦績ではないか、と自画自賛してみたくなる。
 稼働歴20年の根拠として思いあたるのは設置場所がドライキッチンだから,というのは結構有力だと思う。4Cは制御用にプリント基板が本体に収まり,すすぎ湯の熱源はガス(はじめは4Cで後に13A)であるが,着火用のイグニッション動作と点火保持用に一つと,操作用とでガスブースターに二つの基盤が収まっている。
 いうまでもなく湿気はプリント基板にとっての天敵だからして,稼働条件としてドライキッチンは有利だ。他の強電系のパーツ諸々についても同様で,総じてドライキッチンは電気系のパーツにとっては有利である。
 但し燃焼機器にとってはどうかと言うと必ずしも好ましくないのではないか。

 某病院からの修理依頼は電源投入後,すすぎ湯のガスブースターの点火動作がされずにすぐに失火の警報が出るというものだった。
 現場に入ってガスブースターのケーシングを外してみると中々激しい状態だった。
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 ものの見事に煤だらけである。排気筒近くのタイル張りの壁にも煤けた跡がある。また,ガスブースターの表示灯はAC100Vで点灯する仕様だが電源投入と同時にうすぼんやりと光り,明らかに挙動としてしておかしい。

 外装板を取り外してみると理由が判明した。
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端子台に付着し,堆積した埃に不完全燃焼時に発生した埃が乗り,真っ黒になっている。諸兄ご存知の通り炭素には導電性があるのでμAオーダーのフレーム電流が正規の回路を経由せず,迷走するのでこのような誤動作が発生したというわけだ。

 バーナーを取り外してみるとこれもひどい状態で混合管の中にまでびっしりと綿埃が入り込んでいるので掃除は中々手がかかる。スパークロッドとフレームロッドはいずれも絶縁碍子まで煤だらけで俺は自分の所見に確信を持った。
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 修繕についてはここまでとして,どうもドライキッチンというのは誤解されていはしないか?
ドライだから床の水まき清掃をしなくていいという事にはならないという理解はどこまで周知されているのかという疑問を常々俺は抱いている。
 何を隠そうこの俺自身がそのような誤解をしたまま過去に於いては設備設計なり施工管理をしており、結果としてここにあげるような障害を生み出す周辺環境を提案していたのだから全くもって恥じ入るばかりと言うか自業自得と言うか,とにかくみっともない話だ。

 当然ながら燃焼器具は発熱のために空気を要する。そして大気は必ず埃を浮遊させている。
ドライキッチンという調理環境がまだなく,厨房という場所はゴム長靴をはいて歩き回り,清掃は必ず床に水を撒くものだというのが通念だった頃は埃の浮遊が押さえられていたためここで取り上げるような不完全燃焼によるトラブルはドライに比べて少なかった。代わりに湿気による錆などの劣化はドライよりも著しかったが。

 燃焼器具の多くはそういう時代背景のもとに作られているのであって,埃が多く浮遊しているような周辺環境を想定していない。石油ストーブなどの暖房機器は既に当然のように燃焼系統に埃が混入する事で発生する不完全燃焼を防ぐ意味で吸気箇所にフィルターが取付けられているが厨房機材の燃焼器具でそのような配慮はされていないのが現状だ。

 そうしてみると、少なくとも現状ではドライキッチンでの熱源は電気が無難ではある。というかドライキッチンだから衛生作業時に水を撒かなくても良い,掃き掃除だけで良いという考えがまかり通っているのだとすればそれは早急に改められなくてはならないだろう。煤だらけで真っ黒になった燃焼器具の整備費用は安くはないのだぞ。
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側湾 [日記、雑感]

 気付いたのは数年前の事だが、俺の脊椎は右側に湾曲しているのだそうだ。
健康診断の際にレントゲン写真を撮って医師に指摘された時、あらためて俺はこうして歳を取っていくのかなあと暗い気分になった。

 完全にまっすぐというのは現実にはなく、誰でも多少は湾曲はあると医者は言ったが俺の脊椎は指摘が出る程度の曲がり具合ということだ。
 障害が出る心配はない程度なので特に治療は必要ないとのことではあったが、歪んだ背骨の写真を目の当たりにしてこれが俺の身体なのだと思うとあまりいい気分ではない。

 仕事仲間にその話をすると、どうやら脊椎の即湾は俺だけではなく結構多いらしいことがわかった。
共通して言えることは現場施工よりも修理に従事する人に多い。それも定型作業が少ない人ほど多いようだ。
 
 改めて医者に聞いてみると、俺のように年がら年中道具箱をぶら下げて歩く人種の、一種職業病みたいなもので大体かばんは利き手で持つのでその方向に曲がってくるものらしい。
 ためしに俺が普段持ち歩くツールバッグの目方を量ってみると大体15kgあった。年がら年中、朝から晩まで、そういうものをぶら下げて歩き回る生活を30年も続けていればそりゃあ背骨だって歪もうというものではないか。

 身体をすり減らして働くというのは言葉の上だけの話ではない。
実際,俺の周囲を見回してみると仕事仲間は爆弾持ちだらけだ。やれ膝が痛い,腰が痛い,他にも色々ある。これまでの記事で何度か書いたと思うが俺は両側の手首で腱鞘炎がしょっちゅう起き,左側は7年ほど前に手術して腱鞘を切除してある。年に一度,一ヶ月程度は両手首の筋が炎症を起こして仕事に不便をかこつ。

 話題は少し飛躍するが,俺はきっと年金の恩恵にあずかる事の出来ない世代なのではないかとかなり前から確信に近いものを抱くようになった。
 社会保険庁から送られてくる案内を見るたびにこれこそ国家的な詐欺行為ではないかと腹立たしい気分になる。年金の積み立てなど本当に馬鹿馬鹿しいとしか思えないのだがサラリーマン時代から通算すれば鼻先に人参をぶら下げられた馬のような状況にあるので受給資格が得られるまでは我慢しいしい払い込みを続けておいた方が良いのだろうな,とは渋々思う。
 しかし,結局俺のような底辺層の住人はまともにおまんまを食い続けていこうと思えば受給される年金だけでやっていけるはずなどないのであって死ぬまで働き続けていかなければならないのは明白で,そうするとこうして日々,劣化していく身体がどこまで持ちこたえてくれるかが気になりはする。

 いずれどこかで野垂れ死に,というのが恐らく俺の終わり方だろう。
それがいつの事なのかを知る術はないのだが,とりあえず明日の飯の種のために壊れつつある身体をすり減らす毎日。そういう日常がこれから先も続く。
タグ:脊椎
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FACOMソケットレンチのセット [便利そうな商売道具]

 今更ソケットレンチもないもんだという気はするが、少し小金が出来たので3/8サイズのセットを買い込んだ。
J.4APB.jpg


 購入したのはネット通販で,ハラツールというサイトからだ。
URL:http://www.haratool.jp/SHOP/facom-j4apb.html

 日頃の労務内容から考えれば当然もっとも活用するはずなのにどういうわけだか今に至るまで俺は3/8サイズのソケットレンチを長期間にわたって使い込んだ事がない。最初の職場は絵に描いたようなどケチでサービスマンに支給される工具など必要最低限でしかなく,レンチといえばあたるものはモンキーとスパナだけだった。
 あれば色々便利かと思い,3/8サイズのセットを買い込んだ事はある。確か20代の後半で,どこかのディスカウントショップで投げ売りされていたものだ。値段は980円でミリサイズとインチサイズの2種類が収まっている,上っ面だけ見れば豪勢なものだが使ってみるとソケットは簡単にラッパ状に広がってすぐにボルトをなめさせるしハンドルは馬力をかけて錆びたナットを回すとすぐに山飛びを起こして使い物にならなくなった。買ってから3ヶ月目かそこらの事だったと覚えている。
 本来ならば安物買いの銭失いを地でいく俺自身を顧みるべきところだが,ないならないで何とか仕事ができなくもないのでそのままズルズル時間は過ぎて、その後幾つかの職場を変わり,どうにか自分の裁量である程度の物は経費購入できるようになった頃になって初めて俺はきちんとしたメーカー製のソケットレンチを買い込んだ。

 その時はドライブのサイズが1/2を仕入れ先に薦められた。9年前に独立開業してから今でも取引のある機械材料の商事会社である。少々ごつ過ぎるのではないかと俺は疑問だったが3/8ではすぐにぶっ壊れて使い物にならないと担当営業は主張したので大して知識がない上に過去の悪印象を抱いていた俺は簡単に彼の言い分に従った。
 当時は今のように良質な輸入工具が安価に入手できる状況になかったし,そもそも商品の情報自体が大変乏しかったので薦められるままにトップ工業の製品を買った。15,6年前,俺の住んでいる田舎町ではかなり画期的な存在だった,恐らく国内製では初めての72ギヤである。動かしたときの精密な感触は拝借した事のある人様の持ち物とは大違いで感心した。
rh-4_head.jpg

 こうしてメーカー資料を見ると,内部の構造はFACOMそのままである事がわかる。恐らくライセンスフィーでも払って内作したのではないだろうか。
 トップ工業の製品はモンキーレンチが俺の定番で建設作業や設備業者のユーザーが多いメーカーだ。全体に造りはやや粗いが,質実剛健で安いところが有り難い。

 1/2サイズのソケットレンチは何しろハンドル自体が重く,日常的にバンバン使いたくなるようなものではなかった。加えてその後,コンビネーションレンチの片側であるメガネの部分にラチェットギヤを組み込んだものが出回るようになってくるとますますソケットレンチの出番は減った。

 ソケットレンチを再評価するきっかけになったのは4年程前で,元の勤務先で行われたスチームコンベクションオーブンのサービス講習会にお呼びがかかって出席したときで,講師である担当者は分解整備の実演の殆ど全てを1/4のソケットレンチとビットドライバーのセットで行ってみせてくれた。
 シグネットのコンパクトなケースに収まったキットはかなりかっこ良く見えたのでいつかは俺もそういうものを調達しておこうと思ったのだ。
 それで一昨年,FACOM R2nanoというソケットセットを買い込んだ。

記事名:FacomのツールセットR2 nano
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12
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 セットの内容もさることながら同じ72ギヤでも国産品とは大違いのスムーズな挙動に強い印象があった。ジリジリとかガチガチといった感触が大変少なく,中でギヤがなめかかっているんじゃなかろうかと思えるくらい柔らかいタッチだ。
 更にソケットハンドルの細さといいソケットの肉厚の薄さといい,ごつい国内製を見続けていた俺からすれば不安感を抱く華奢さ加減なのだが使ってみるとそれらは全部杞憂だった事を実感し,これは自動車整備の仕事に携わる知人が絶対FACOMにしとけと力説するだけあるわいと彼の見識に感服した。

 それで,ここ2年ばかりソケットレンチはボルトサイズによって1/4と1/2のハンドルが場面によって使い分けられていたのだが,歳をとって馬力が落ちてくると1/2の重さが鬱陶しいし,硬めの挙動も気になる。
 考えてみると,俺の仕入れ元である機械材料商社は重機とか農機具の整備業者に得意先が多い。1/2を勧めたのはそういう商習慣に根差しているのではないかと今の俺には思える。
 コンビネーションギヤレンチのサイズを揃えたからといってソケットレンチの出番が皆無になるわけではない。ザグリの入った場所などではやはりソケットが必要になるのでやはり揃えておこうと思い立った,というのがこれまでの流れだ。

 何しろ値段が嘘みたいに安かった。 どういうルートでの販売なのかはよくわからないがホームセンターで乱売している粗悪品からもう少し頑張れば手が届くのだから買わない手はないだろう。
 一部例外を別として,俺はセット品をあまり好まない。理由は使いもしない道具を購入するのがあほらしいからで,実際のところ俺が日常使うレンチのサイズは5種類かそこらだ。
 今回の買い物でも明らかに使うことのないサイズのソケットが数個混じっているが,ケースが無用に重くなるのは好ましくないが何しろ値段が値段なので文句を言うのは控えておく。欲しいサイズの入っていないセットよりはまだマシだろう。

 驚異の72ギヤで一世を風靡したFACOMのソケットレンチだが,今となっては他メーカーに追いつかれてしまった感は否めない。
 とは言え,使用感についていえばやはり腐っても鯛であり,J.161は偉大なスタンダードである。
30d5d644442fbc85e68cb90e0258eb6d0fde016b_m.jpg

 3/8サイズであっても滑らかさを感じるラチェットギヤの挙動は変わらず,何故か他メーカーの72ギヤ製品よりも挙動が軽い。勿論無骨な国内製品に比べてその質量は明らかに実感できる軽さだ。

 161シリーズは時たま分解して内部をクリーニングしたりグリスアップする事が前提のソケットハンドルだが,使用するグリスの種類やヘッドプレート(銀色をしたドーナツ状のプレート)の絞め具合を調整する事で自分好みのタッチにチューニングできるところがちょっとした楽しみだ。 
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2013年夏の終わりに [修理屋から見た厨房機材]

 本記事は8月の終わり頃に書きかけたのだが,あれこれと忙しく書きかけのまま放置されていたものに加筆したものである。暮れも押し迫った今になって夏の終わりもないもんだがひとまず書き残しておく。

 勿論毎年夏はあり,その始まりも終わりもあるわけだが俺の生息地ではそろそろ半袖では心許ない時期に入りつつあり,特に今年思いあたることがあったので一つ書き留めておくことにした。

 冷蔵機器の修繕を生業とする者にとって夏はかき入れ時である。外気温に伴って室温も上がるので真夏日などは特に凝縮不良による障害が多発する傾向がある。
 凝縮不良が発生する原因は、冷蔵機器の導入直後である場合に於いては周辺環境を無視した無茶なセッティングであり,対処法としては修理以前の問題となる。それは納入業者の無知が招いた問題であって俺のような修理業者の知るところではない。
 一定期間以上の運転歴に於いて発生する凝縮不良の場合,多くは使用者側の杜撰な運用管理に問題があり、特に夏季の真夏日に於いて発生するのは殆どの場合コンデンサーの掃除をろくすっぽしないまま放置していた結果だ。怠慢な使用者の中にはコンデンサーフィルターの掃除さえもせず放ったらかしにし,障害が出てから慌てて修理屋に電話をかけてきて矢の催促をする。それで修理屋は現場に向かうわけだがフィルターの清掃で済む話だから作業などはものの10分程度で済んでしまう。それで出張経費を請求するとただ来ただけで殆ど何もしていないのに金を取る気かとか何とか抜かしていきり立つ大馬鹿者が多い。

 30年近く前に遡ると冷蔵庫の製造元にも問題があった。
使用していればだんだんコンデンサーは汚れてそのうち凝縮不良が起きることくらいわかり切っているにも関わらずコンデンサーフィルターを標準でつけずに別売部品とし続けていたからだ。せいぜい数百円のものなのだからタダでつけてくれても良さそうなものだ。
 得意先も得意先で,僅か数百円のフィルターでさえそれが別売だとなると販売元がまるで強欲な便乗商法であるかのような詰り方をする奴が少なくなかった。冷蔵庫の購入後,2年かそこらでコンデンサーの詰まりによる凝縮不良が起きるたところに呼び出されたサービスマンは全く気の毒というしかなく,一時間以上もかかるコンデンサー清掃の作業が終わってからバイヤーが代金のことでゴネまくり,作業費は請求できずに会社に戻れば無用のサービスということで上役には怒られで踏んだり蹴ったりという一幕はあった。

 製品に標準でコンデンサーフィルターが付属し,その定期的な清掃が使用者の責任として敷衍し、定着したたのはようやく20年くらい前だ。現在では余程横着な使用者でない限りコンデンサーフィルターが詰まって凝縮不良という場面は多くない。
 しかしフィルターは所詮網であり,網の目よりも細かいゴミはフィルターをすり抜けてコンデンサーに堆積し,どこかの時点で凝縮不良を引き起こすので修理屋が登場してコンデンサーの清掃をしなくても良くなったわけではない。この件についてのオンコール件数が減ったというだけであってこれがなくなることはない。

 使用者側の意識の変わり方は以上のようなものだが保全する側はと言うと,長らく頭の切り替えが出来ずにいた。
 諸兄にとっては意外かもしれないが,冷機器メーカー以外,厨房屋は冷機器の修理については貫徹できる会社がない。溶接機を持ち出してガス漏れやコンプレッサー交換の作業が出来るのは個人レベルのごく限られたケースであって、通常一般、厨房屋のサービスマンが出来る冷蔵庫の修理というのはせいぜいファンモーターの交換くらいであって、コンデンサーの清掃作業はようやくここ数年,自分たちで出来るようになり始めたというのが俺からの見え方だ。

 技術職の端くれとして言わせてもらえば,コンデンサーの洗浄や清掃などは修理のうちに入らない。そもそも,コンデンサーの凝縮状態が正常であるか否かは出口配管を触れば判別可能であって格段機材や判断基準を鍛えるためのトレーニングが必要なわけではないし、清掃作業自体もそれは単なる労務であって特段技能が要求されるわけではない。せいぜい脂汚れなどがひどく,薬品洗浄する際に電気部品に水がかかって漏電や短絡が起きないように注意深く養生する程度のことしかない。

 この程度の労務ではあるが、俺の周辺では昨年あたりからやっと,厨房屋であれば誰でも手がける仕事となったように見える。
 厨房屋というのは,俺自身が身を置いていながらこんな言い方で何だが貪婪な人種が多い。会社自体にそういう体質がある。一回手にしたものは何が何でも手放そうとしない傾向はある。
 冷凍機器のコンデンサー清掃という業務は今年,俺は一件も手がける事がなかった。という事はこれらは現在,厨房メーカーのサービスマンなら誰でも違和感なく,外注業者に依頼する事のない,自分たちで解決可能な作業となった事を表している。転じてそれは俺の収入源のうちが失われた事をも表しているわけで,貧乏自営業者である俺はこれを補填する収入源を求めてあちこちをうろつき回る事になる。

 これ以上の事は何か書いても収入源を失ったいかがわしい自営業者の負け惜しみとしか受け止められそうになく,俺としても不本意なのでここで終わり。まあ何かしら飯の種は転がっているだろう。
  


 
フィエスタ

フィエスタ

  • アーティスト: チャーリー・パーカー,ウォルター・ビショップJr.,ベニー・ハリス,テディ・コティック,ロイ・ヘインズ,ホセ・マンガル,マックス・ローチ,ラルフ・ミランダ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2012/06/13
  • メディア: CD



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とあるホテルのスカイラウンジにて [日記、雑感]

 本当に久々の更新。
書きたい事がなくなったわけではない。むしろその逆なのだが書き残しておきたい事が多過ぎてついズルズルと書きかけのテキストばかりがどんどん溜まっていく現況である。
尾籠な話で恐縮だが,俺にとって書く行為は一種,精神の排泄だとある時気づいた。排泄には快感が伴うべきだがどういうわけだかここしばらくの俺は書けば書く程ストレスの貯まるような精神生活が続いていてどうにも自分のブログページを開くのが億劫になっていたのでございます。頭の中ではうまく整理がつかないが,言ってみれば精神の糞詰まり状態がここ一ヶ月以上続いていたわけ。

 本日の俺は午前中,とあるホテルの最上階にいた。
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 そこは以前,立派なスカイラウンジだった。レストランとバーの併設された見晴らしのいい場所だった。上の画像はそのバックヤードである。

 左側に見える冷蔵庫を見て,同業者の諸兄であれば疑問を抱く事と思う。
通常,業務用の冷蔵庫は箱の上に冷凍機が乗っているわけだが画像に現れているものはそうなっていない。
この冷蔵庫は6枚ドア相当の外寸だが,画像にある通り右下ドア一枚分は食材を納める造りになっておらず,水冷式の冷凍機が取付けられているのだ。内部の冷却器は自然対流式のヘアピンコイルで、とどのつまり数十年も前によくあった町の冷凍機屋さんが製作,施工した特注品だ。
 
 このホテルのオープンは40年以上も前で、件の冷蔵庫はそれ以来ずっとここに鎮座している。分電盤の開閉器を投入すると無骨なコンプレッサーの回る音がしたが冷え方の確認はしていない。
 一度止まった時間がまた動き始めた,そんな物音に妙な感慨を覚えた。

 オープン当時,世の中は高度経済成長期を過ぎて第一次オイルショックの最中だったと覚えている。うなぎ上りの成長は影を潜めたものの日本経済はまだまだ上り調子であり,バブルの崩壊までにはあと20年くらいの時間がある,現在の視点で振り返ればそこがこのホテルの出発点だった。
 当時の俺はまだ小学校の高学年程度の年齢であり,ホテルとはどういうところなのかもろくすっぽ理解できていなかったが、件のホテルは単なる宿屋ではなく結婚式の披露宴や各種のパーティが行われるところでもあるらしいというのは周辺の大人達の会話から何となく察しがついた。

 その後数年して中学生になった俺は、ある日同級生と一緒にこのホテルに入ってみた。ロビーに敷き詰められたふかふかの絨毯の感触やフロントに立つスタッフの身なりからして俺達がおよそ場違いなクソガキである事は歴然で,事実その時の俺はロビーに隣接したコーヒーラウンジで飲むお茶代程の持ち合わせも所持していなかった。
 何の目的もなく単なる好奇心だけで俺と同級生はエレベーターで最上階に辿り着いた。外見からすると最上階には大きなガラス窓が巡らされており,そこに辿り着けばさぞかし結構な景色が眺められるだろうといった他愛もない気分でいた。
 最上階でエレベーターのドアが開くと広々としたフロアーであるはずのその階は3方向に豪華な雰囲気のドアで遮られていた。それぞれが何であったのかを今は正確に思い出せないが,真正面にあったのはフロスティガラス製のドアではなかったか。Sky Loungeと書かれていた事は覚えている。周囲の雰囲気は明らかに洟垂れ小僧が遊び半分で踏み込んではならない場所である事を滲ませており,どちらからともなくひそひそ声で下りるか,と言い出し,俺達は神妙な気分で下りのエレベーターに乗り込んだ。

 そのホテルは今から10年と少し前,デフレスパイラルの最中に業績悪化により倒産し,閉館となった。俺は結局,ガキの頃には別世界への入り口のように見えたフロスティグラスの向こう側を体験する事がなかった。

 ホテルは閉館後,数年して別の出資者によって再開された。請け負った運営会社の方向性は宴会や最上階のレストランなどは切り捨て,安価なビジネスホテルとしての営業に徹するというもので冷え込んだ世相が如実に反映されていた。
 しかし,出張客相手のビジネスホテルというのは大体,移動の便宜上は駅の直近に立地していた方が営業上有利なのは明らかで,市街の中心から少し離れたところに建てられたこのホテルが、幾ら減量経営に徹してロープライスを謳ったところで良い業績をあげられる目算が立たないのは明らかで,これに加えて運営会社のありようは随分と無茶苦茶なものであったらしく,再建の出資者は数年してホテルに見切りを付け,市内の某不動産業者にこのホテルを売却してしまったのだった。

 俺が今日,訪れたのはそういう流れの中での事だった。
厨房機材に関係した要件ではなく,畑違いの電気屋としてで、長くクローズしていた最上階のスカイラウンジだったフロアーを宴会場として使いたいのでワイヤレスマイクやミキサーアンプの設置や動作確認を依頼されたのだった。この商売ネタを俺のところに持ちかけてきたのは奇しくも中学生の頃,この最上階のスカイラウンジの入り口であるドアの前で回れ右をして退散した同級生その人である。

 テーブルや椅子の撤去されたホールはがらんとしており,二方向に大きなフィクスドガラスが巡らされた窓からはすっかりシャッター通りとなってしまった市街地が見下ろせる。ホールの奥にはバーカウンターがあり,夜景を見ながら一杯引っ掛けられるような造作だ。

 俺は脚立を担いであれこれと作業をしながらかつてここで展開されていたであろう風景の事を想像していた。ドレスアップした身なりで予約待ちの間バースツールに腰掛け,夜景を眺めながらカクテルなんぞを嗜み,テーブルに案内されてディナーと相成る。特別な時間と場所、非日常の世界を満喫し,記憶に刻み込んだ人達は今,どこでどうしているのか。
 自分自身のこれまでを振り返ってみて,ホテルのスカイラウンジにはおよそ似つかわしくないありようだったと思う。これから先の短い時間の中でそういう場所にふさわしい者になる事はない。たまさか小金を手にして見栄を張ろうと思ってもそれが実現できる場所は俺の住む田舎町にはもうない。視界に入るもの全ては貧相になり,荒廃していって以前の賑わいを取り戻す事はない。
 失う事と諦める事を積み重ねていく。人生の後半というのはそういう時間なのだな,と,俺はがらんとしたフロアーの片隅でミキサーアンプの配線を調べながら少しばかり感傷的になった。傍らの相棒である同級生は携帯電話を片手に仕事の打ち合わせに余念がない。彼の心中を察する術はないが,失われたものに対する郷愁でさえも取るに足らないとするような逞しさと言うか粗雑さと言うか,今日日のご時世で生き抜いていくためにはそういう属性も必要なのかもしれない。だとすると俺のような者は完全に落第だ。
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飲食店の経営とネットの影響力について愚考する [日記、雑感]

まずは元記事。出典は朝日新聞デジタルで記事名は「悪ふざけ画像投稿で閉店、多摩のそば店が破産手続き」
URL:http://www.asahi.com/national/update/1018/TKY201310180496.html?ref=dwango

以下,記事全文のコピペ
 帝国データバンクは18日、東京都多摩市馬引沢2丁目のそば店「泰尚(たいしょう)」が、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けたと発表した。アルバイトの男子大学生が、店内の大型食器洗浄機の中で横たわった画像を交流サイト・ツイッターに投稿した後、閉店していた。負債総額は約3300万円。 食の現場で「悪ふざけ」  決定は9日付。帝国データバンク東京西支店などによると、8月、男子大学生が画像をツイッターに投稿したところ、インターネット上で批判が殺到。店には衛生面で苦情電話が相次ぎ、閉店に追い込まれた。  同支店は「業績はもともと厳しかったようだが、ツイッター投稿が倒産の引き金になった可能性はある」と分析している。  泰尚は1984年創業。一時は町田市にも2店舗を構え、2011年5月期の売上高は約1億2千万円あったが、創業者が昨年亡くなり、経営が悪化していたという。

 
色々と考えさせられるところの多い記事ではある。
 まず第一に,「何を言っているのか」と同じくらい「誰が言っているのか」を考えたい。飲食店の閉店自体は市場に置いて特段珍しい話ではなく,日常茶飯事と言ってもいいほど年がら年中あちこちで起こっている。絶えず出来ては消え,の業界であることは同業者の諸兄には充分承知と思う。
 こう言っては失礼だが,たかだか蕎麦店一件の閉店に天下の朝日新聞が一記事を起こすほどのことがあるのかという疑問が俺にはある。そして文面からは容易に読み取れるが、大枠の意図とは「ネットというのはいかがわしくてけしからんものだ」だろう。これは決して極論ではなく,この一件にインターネットが無縁で単なる経営不振だけであったなら記事になることもなかったのではないかと俺は考えている。

 新聞業界は色々な意味で低落傾向にあり,既に数年前に金額ベースでは広告の出稿量をインターネットに抜かれて第三位に転落したという話を聞いたことがある(出典は覚えてません)。因に第四位は週刊誌,第一位はテレビとのことだ。
 俺の個人的意見をここで開陳させてもらうと,新聞が『社会の木鐸』であった時代などとうの昔に終わっていて今や典型的な御用メディアであり,殆ど大本営発表みたいなことしか伝えていないと思っている。だから数年前,俺は新聞の購読をやめた。それで特に生活に不便を生じているわけでもない。
 文面を良く読むと,件の蕎麦店は昨年来業績が芳しくなかったようだ。バカ学生のツイッター投稿によってネット上での炎上があったことは事実だがそれが倒産の直接の原因だという確証はなく,「引き金となった可能性がある」に過ぎない。だとすればヘッドラインの文句は何なのか。インターネットなどというメディアは胡散臭い,いかがわしいものなのだとこじつけたい印象操作の意図を感じるのは俺だけではないはずだ。

 考えてみると俺のネット歴ももう10年以上になる。思い返すに,確かにインターネットというのは新聞やテレビが事あるたんびに喧伝するようにいかがわしかったり胡散臭かったりするし、わけの分からんトラップがそこら中にまき散らされている世界ではある。しかしそれらは良くも悪くも自由さの現れとは言えないか。
 俺のこの糞ブログにしても,以前書いたように現在一日当たり1000件を超えるアクセスがあるわけだが現実世界に於いてここにそれだけの数の受け手がいるとは到底考えられない。本にして出版する程の内容でないのは誰よりもこの俺自身が自覚しているしここに書いた事を言葉として話したところで最初の三行分位を聞いたところで聞き手は退屈して話題を変えたがるに決まっておる。

 直接間接に読者からお金を頂けるような内容ではないが,とにかく天に向かって何事かを喚き散らしたい。それに反応する誰かさんが現れて来るかもしれない。但し,誰がどんな反応を示すのかは予想のつかないところがある。俺にとってインターネットでブログ記事を書くというのはそういう事で,今様にいうリテラシー,少々突き詰めた言い回しだとインターネットという世界での行動作法を弁えていれば,そこそこ円満な自我領域は形成でき,地雷を踏んだり炎上したりといった不幸を避けて通れるもんだ。
 
 喩えるまでもない事だが,自由の大きさとはリスクの大きさでもあると俺は思う。テレビや新聞といったメディアとインターネットを市街地に喩えてみると前者は安心して用足しが出来るが立ち入り禁止で封鎖されている小路が幾つもあり,用足しの範囲は制限されているし往来で少しでも変な挙動をしているとすぐにお巡りが飛び出してきて職務質問される。対して後者は思いつく限りの用足しは可能でどこでも好きな所に行けるが往来のあちこちにカツアゲやひったくりを狙うロクデナシがたむろしている,といった感じだろうか。
 どちらを良しとするかはその人の考え方次第だが,俺は後者が好ましいと考えている。確かにいえるのは両者は全く異なる行動様式を求められるのであって,テレビのニュース番組を見ながら一くさり文句を言うのとネット上の掲示板やブログに投稿するのとでは、当然ながら全く異なる反応が現れる。

 この辺りについては俺のしょうもない駄文などよりはしかるべきプロのテキストを読まれた方が有益だろうと思われるのでリンクを貼付けておく。
阿修羅掲示板,「バイト君の愚行とオトナの炎上  小田嶋 隆」
http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/223.html

 そもそもインターネットはコンピューターの世界でいえばUNIXの世界であり,世界のありようはオープンであったもののその住人と言えば殆ど皆コンピューターの研究者をはじめとしたその道の専門家であり,狭い中ではあるもののモラルや調和が保たれていた。
 パソコンが32ビット化を果たした事でそれは拡大し,取っ付きは良くなったが同時に行儀の悪い門外漢や匿名性をいい事に悪さを目論むロクデナシも入り交じって殺到した事で混沌も生み出した。
 そして今また,パソコンとは縁遠かった情報弱者がスマホを足がかりに入り込み,混沌は更にスケールアップしているのが現況なのだろう。何の世界でもそうだが,底辺層とか素人に迎合するようになるとその世界は混沌の度合いを増してくるものだと俺はいつも考えている。(この項続く)
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恐るべき飛行体 2 [含蓄まがいの無用な知識]

 前回記事の中でプロパンガスのボンベに引火して空を飛んだらしいという伝聞(引火による事故があり,警察や消防が出動した事実は確かにあった)について書いたところ,専従の方から貴重なコメントを頂き、改めてガスボンベについてあれこれと考える機会を頂いた。

 無責任に伝聞を書き連ねることで要らぬ誤解を招いているとすれば申し訳ない。

 だからというわけではないがもう一つ,ガスボンベが宙を飛んだ話をもう一つ書いておく。但しこちらは燃料ではなく冷媒,フロンガスのサービス缶だが。
 
 従来からあるような再充填可能なボンベは勿論のこと,ここ10年かそこらで出回り始めた使い切りのボンベにも内圧が上がり過ぎた場合の安全措置は取られており,ハンダのような合金にピンホールが発生して容器内のガスを放出する仕組みがある。

新冷媒 フロンガス R410a NRC容器入り10kg MDF

新冷媒 フロンガス R410a NRC容器入り10kg MDF

  • 出版社/メーカー: 三井・デュポン
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 しかし小容量の、所謂サービス缶には特に圧力上昇の保護機能はない。周囲温度が40℃以上になるようなところには置いておかないように,という約束事を律儀に守るに尽きる。

フロンガス R22 サービス缶500g エアコンガス フレオロンガス

フロンガス R22 サービス缶500g エアコンガス フレオロンガス

  • 出版社/メーカー: 福豊帝酸株式会社
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 ではその約束事を守らすにいると何が起きるか,というのがここでの本題。
数年前,炎天下の真夏のこと,現場仕事で一区切りついて撤収に取りかかり、荷物を抱えて駐車場に引き返してたところ,仕事仲間である冷凍機屋の某氏の1ボックスワゴンのリアウィンドウが無惨に割れていた。某氏はたちの悪いいたずらかと大いにいきり立ったのだがよく見るとリアウィンドウの破片は車外に落ちているだけで車内にはなく,どうも通りすがりの不埒な輩が叩き割ったのではなさそうなので首をひねった。

 ガラスの割れた原因は割合簡単に判明した。
車から数メートル離れたところにフロンガスのサービス缶が落ちているのが見つかった。中身はからで,底部分のかしめた部分がめくれ上がったように裂けている。炎天下の車中で周囲温度が物凄く上がったので車内に放置されて内圧の上がり過ぎたサービス缶はシール部分が裂けてロケット弾と化し、リアウィンドウを突き破って車外に飛び出したわけだ。
 某氏が車両保険に入っていたかどうかは不明だが,自分の不注意を後悔するしかないのは間違いないところだ。しかしその後,雑談の最中に少々恐ろしく思えたのだが,もしも幾つもの偶然が重なってこの物体が荷室から運転席に向かって飛んできて頭部を直撃したらどうなるのか。

 俺自身は大変ずぼらで整理整頓が苦手なたちなのだが,この場面を目の当たりにして以後,夏の間は冷媒のサービス缶はむき出しのまま車内に置かないようになった。別の不注意によって自分の車のリアウィンドウを割ったことがあり,その時の修理代が貧乏自営業の俺にとっては結構こたえたので金の被害が発生しそうな場面では珍しく用心深くなる。
タグ:フロンガス
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恐るべき飛行体 [含蓄まがいの無用な知識]

 人間,いつ災難が襲いかかって来るかわからないのだ。

 10年近くも前の話だが,某地方の商店街にある飲食店から修理依頼があり車を転がしていたところ,その商店街の道路が封鎖されており,パトカーが何台もそこら中に停まっていてお巡りが物々しい雰囲気で何人も右往左往していた。消防車も来ていた。
 依頼元には車で辿り着けそうもなく,俺は電話をかけて事情を説明したところ得意先の店主が「とんでもないことが起きたからうちも商売どころじゃないんですよ」と仰る。(とんでもないこと)が市街地の道路が封鎖されているこの状況を指していることは俺の出来の悪い頭でも容易に察しがついた。
 結局,その店舗は営業を諦めて店じまいし,俺の仕事は翌日に持ち越された。

 それで翌日,出来事の顛末を伺ったところその内容は以下の通りだった。
その町の市街地にある某ラーメン店で事故があった。ラーメン店というのは一部例外を除けばその熱源はガスが中心である。地方となるとそれはLPG(プロパンガス)となる。よくある光景だが店舗の裏やわきの路地にプロパンのボンベが何本も並んでいるところはお約束だろう。
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画像は本文とは関係ありません


 ラーメン店はガスの消費量が大きいのでボンベのサイズとしてはもっとも大きい,俗に言う50キロボンベが使われるのが通例だ。これには当然,配送業務が伴う。それで件のラーメン店でのことだが,配送業務でこの店に来た業者が空になったボンベの交換作業を行っていたところ,ガスの充填されたボンベに火がついたらしいのだ。どんな周辺状況でそんなことが起きたのかは詳しく聞いていないし,それから後,折に触れていろい考えてみたことはあるものの崖局想像がつかないが,とにかく,充填されたボンベに引火したのは間違いない。

 それで,引火されたプロパンガスのボンベがどのような挙動を示したかと言うと,まるでミサイルのような軌跡を描いて宙を飛んだらしい。
 ボンベは数十m位を飛行し,近所の家具店の2階住宅部分に飛び込んだのだそうだ。幸い,居室には誰もいなかったので人身事故には至らなかったが何せ50キロボンベだ。家屋の損傷にはそれなりのものがあったと聞いている。

 仕事柄,燃料の販売店と顔を合わせることは多く,その後折りに触れてこのことを関係者に尋ねたことがあるがあまり詳細な話は聞けていない。
 プロパンという燃料はボンベに詰めて搬送できるので例えば災害時にはあらゆるライフラインが途切れても暖をとり,どこかから水を汲んできて煮炊きを行うことは可能となり、これくらい頼りになる熱源はない。
 しかし一方で,市街地での使用となると配管系統の遮断機能は発達し,ある意味やり過ぎと思えるくらいに高度化しているが一種の盲点として,ボンベの交換作業時にはこのように何かの手違いで事故を引き起こす可能性がある。

 都市ガスのパイプラインが整備されている地区ではLPGのボンベが建物のわきに林立している光景を見かけることはあまりないが,理由としてはそもそも地代が高いので建物にプロパン庫を設けるのが惜しいとか,ボンベの配送,交換作業が困難だったり他に影響を及ぼすような立地だったりとか色々考えられる。そのうちにここで書いたような事故が発生する可能性も織り込まれているのかどうか俺にはわからないが,俺なりに一つ,思いあたることがある。

 プロパンのボンベは飲食店に於いては複数が屋外に林立しており,それらはヘッダーパイプ(集合管)に接続されて複数が開栓されている。ボンベが全て鍵のかかったプロパン庫に納められており,無闇に触ることが出来ないような場所にあるとは限らないのだ。野ざらし,雨ざらしのままで屋外に林立している様子は特段珍しくない。繁華な場所で人通りが多く,中には変な、常軌を逸した悪ふざけをやらかしてやろうなどという不届きな輩がいないとは限らない・・・・
 ここから先は書かない。市街地というのは色々と,物騒なものやことが放置されているものだというに留めておこう。
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欧州製のマグネットスイッチ換装時の注意点 [含蓄まがいの無用な知識]

 計装関係に従事しておられる方にとっては取るに足らない話題で恐縮だが,俺自身の備忘録であることも含めて書いておくことにした。

 某アイスクリーム製造施設ではここ数ヶ月の間に数度,ディスプレイパネルに過電流表示が出て保護停止がかかるという出来事があった。
 再現性に乏しく,不定期発生する現象で修理屋にとっては大変悩ましい。組み込まれたモーター類の負荷電流は何をどう測ってもサーマルリレーの設定値よりも半分程度の指示値しかなく,制御用の基盤の不具合なのかサーマルリレーの不具合なのかという問題点の切り分けが所見を出す際のポイントとなった。
 悪いことに,修理品のパステライザーは組み込まれたマグネットスイッチのサーマルは全て自動復帰としてあるのが工場出荷時の設定だ。
htp4_main_img.jpg

画像は本文とは関係ありません


サーマルリレーの復帰設定が自動と手動のどちらが好ましいかについて今回俺は改めて色々と考えたがこれは記事の本題から少々外れるので別の機会に記事にしてみたい。
 ここで書いておくべきこととして,今回のケースでは自動復帰であるがために誤動作の発生した痕跡が残らないので大いに苦労した。所見としては色々試行錯誤の結果,冷凍経路のコンプレッサー,クーラント循環用のキャンドポンプ,タンクの撹拌モーター三つのうち,撹拌モーター用のサーマルリレーを交換することにした。

 パステライザーはイタリア製で,Frigomatという製造元である。日本では(株)エフ・エム・アイが輸入元である。
URL:http://www.fmi.co.jp/products/hypertron/htp4.html

 サーマルリレー(マグネットスイッチ)は同一品の国内在庫がないという輸入元のアナウンスがあり,俺は毎度ながら自分のツキのなさにがっかり来た。
 そのパーツはフランスのシュナイダーというメーカーのものだ。補修用のパーツが国内にないとなると国内メーカーの製品で代替することになる。俺の住む田舎町で簡単に手に入るマグネットスイッチとなると富士電機の製品だが外寸が少々変わるので物理的に納まりがつくかどうかから考え始めなければならない。

IMGP0061.JPG.jpg  

交換前の電気ボックスの内部。上から三番目の増設補助接点ユニットの取付けられた箇所が問題のマグネットスイッチだ。どうせいかれてくれるのならもっと配線の少ない他の二箇所のうちのどちらかであってほしいものだが人生そういうことは起こらないのだ。

IMGP0063.JPG.jpg

 目星を付けたマグネットスイッチを取り外したところ,日頃扱い馴れていない製品なので外し方がわからず,結局凶暴な気分でマグネットをぶっ壊して取り除いた。 
 内部配線は色分けされておらず,端末に記号が示されているわけでもないので誤配線がないように予め接続端子の記号を記したタグをビニールテープで急ごしらえしてマーキングしておく。
 
IMGP0064.JPG.jpg

 富士電機製のマグネットと換装したところ。取り付けはDINレールだし端子番号はメーカーが違うとは言っても万国共通であるからして格段迷うこともない。規格というのは有り難いものだ。
 画像では見づらいかもしれないが,富士電機製のマグネットに増設補助接点を取付けると元々ついていたシュナイダーの製品に比べると奥行きがかなり増す。電気ボックスには蓋が取付けられるのだがあまり奥行き寸法があり過ぎると蓋が出来ない懸念があったのだがその点についてはぎりぎりセーフで助かった。

 但し,万事問題なしに済むのかと言えばそうでもない。
これまでにもこの作業を行う現場では常について回ったことだが,欧州製のマグネットスイッチと国内製では明らかな相違点があり、換装に伴う付帯作業が発生する。
 相違点とは接続端子の形状で,俺の知る範囲では国内製品は配線の末端が丸,乃至はY端子を前提としているのに対して,シュナイダーやAEGなどの欧州製品は棒端子に似た筒状の小さいスリーブで行われることを前提としている。配線端末の断面形状でいうと板状であるか筒状であるかの違いで,互換性はない。

 余談だが以前,ドイツホバートの食器洗浄機FTXのマグネットスイッチ交換にあたって今回と同じくシュナイダー製のマグネットスイッチを国内製に換装する際,配線の末端処理を行わずに無理矢理元々の棒状に処理された配線を押し込んだ横着な同業者がいた。
 日本製のマグネットは先に書いたような理由で端子のビスが短く,配線一本だけなら何とかなるが二本以上になるとどうしても刺さり込みの浅い配線が出て来る。その状態を放置して運転を続けた結果,接触抵抗が発生して発熱が起こり,数ヶ月後にはマグネットスイッチが焼けた。

 俺はそんな出来事を思い出し,横着は禁物だぞ,と,自分に言い聞かせながらチマチマと配線の末端をY端子に付け替える作業を行い,この仕事を終わらせた。たかだかサーマルが国内にないというだけのことで結構余計な手間を食うものだ。

 そういうことを書きたくてこの記事に手を付けたのだが,あれこれネットで調べているうちに意外なことに気づいた。
 クロスライセンスでも交わしているのだろうか,何と富士電機の製品カタログ中には自社製品に混じってシュナイダーの製品もラインアップされているではないか。
富士電機のURL:http://www.fujielectric.co.jp/products/mc/index.html

 サーマルの誤動作は不定期発生のものであり,修理作業も寸刻を争うものではなかったのでこんな事なら多少納期がかかるにしてもパステライザーの輸入元に頼らなくても俺の普段使っている電材問屋を通してシュナイダーの製品を取り寄せればもっと楽に仕事は片付いたのだと思うと拍子抜けした。つくづく俺は要領が悪い。

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