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恐るべき飛行体 [含蓄まがいの無用な知識]

 人間,いつ災難が襲いかかって来るかわからないのだ。

 10年近くも前の話だが,某地方の商店街にある飲食店から修理依頼があり車を転がしていたところ,その商店街の道路が封鎖されており,パトカーが何台もそこら中に停まっていてお巡りが物々しい雰囲気で何人も右往左往していた。消防車も来ていた。
 依頼元には車で辿り着けそうもなく,俺は電話をかけて事情を説明したところ得意先の店主が「とんでもないことが起きたからうちも商売どころじゃないんですよ」と仰る。(とんでもないこと)が市街地の道路が封鎖されているこの状況を指していることは俺の出来の悪い頭でも容易に察しがついた。
 結局,その店舗は営業を諦めて店じまいし,俺の仕事は翌日に持ち越された。

 それで翌日,出来事の顛末を伺ったところその内容は以下の通りだった。
その町の市街地にある某ラーメン店で事故があった。ラーメン店というのは一部例外を除けばその熱源はガスが中心である。地方となるとそれはLPG(プロパンガス)となる。よくある光景だが店舗の裏やわきの路地にプロパンのボンベが何本も並んでいるところはお約束だろう。
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画像は本文とは関係ありません


 ラーメン店はガスの消費量が大きいのでボンベのサイズとしてはもっとも大きい,俗に言う50キロボンベが使われるのが通例だ。これには当然,配送業務が伴う。それで件のラーメン店でのことだが,配送業務でこの店に来た業者が空になったボンベの交換作業を行っていたところ,ガスの充填されたボンベに火がついたらしいのだ。どんな周辺状況でそんなことが起きたのかは詳しく聞いていないし,それから後,折に触れていろい考えてみたことはあるものの崖局想像がつかないが,とにかく,充填されたボンベに引火したのは間違いない。

 それで,引火されたプロパンガスのボンベがどのような挙動を示したかと言うと,まるでミサイルのような軌跡を描いて宙を飛んだらしい。
 ボンベは数十m位を飛行し,近所の家具店の2階住宅部分に飛び込んだのだそうだ。幸い,居室には誰もいなかったので人身事故には至らなかったが何せ50キロボンベだ。家屋の損傷にはそれなりのものがあったと聞いている。

 仕事柄,燃料の販売店と顔を合わせることは多く,その後折りに触れてこのことを関係者に尋ねたことがあるがあまり詳細な話は聞けていない。
 プロパンという燃料はボンベに詰めて搬送できるので例えば災害時にはあらゆるライフラインが途切れても暖をとり,どこかから水を汲んできて煮炊きを行うことは可能となり、これくらい頼りになる熱源はない。
 しかし一方で,市街地での使用となると配管系統の遮断機能は発達し,ある意味やり過ぎと思えるくらいに高度化しているが一種の盲点として,ボンベの交換作業時にはこのように何かの手違いで事故を引き起こす可能性がある。

 都市ガスのパイプラインが整備されている地区ではLPGのボンベが建物のわきに林立している光景を見かけることはあまりないが,理由としてはそもそも地代が高いので建物にプロパン庫を設けるのが惜しいとか,ボンベの配送,交換作業が困難だったり他に影響を及ぼすような立地だったりとか色々考えられる。そのうちにここで書いたような事故が発生する可能性も織り込まれているのかどうか俺にはわからないが,俺なりに一つ,思いあたることがある。

 プロパンのボンベは飲食店に於いては複数が屋外に林立しており,それらはヘッダーパイプ(集合管)に接続されて複数が開栓されている。ボンベが全て鍵のかかったプロパン庫に納められており,無闇に触ることが出来ないような場所にあるとは限らないのだ。野ざらし,雨ざらしのままで屋外に林立している様子は特段珍しくない。繁華な場所で人通りが多く,中には変な、常軌を逸した悪ふざけをやらかしてやろうなどという不届きな輩がいないとは限らない・・・・
 ここから先は書かない。市街地というのは色々と,物騒なものやことが放置されているものだというに留めておこう。
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くるみ

思いもしない物が飛んできたら脅威ですね!? 大雨時のマンホールの蓋なんかもその類いですね(>_<)。 火災に関する物は基本怖いです。ガスバーナーや卓上コンロに使うガスボンベも 飲食店(ラーメン屋さんだったような)爆発する事件もありましたね。 思いもしない事…JRの度重なる事故も然りですm(__)m。 現場に行く前に封鎖になったのは、ある意味 強運の持ち主ですね(^-^)b。もしも早く着いてたらと思うと(;o;)!?。
by くるみ (2013-10-12 10:18) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
実際のところ,50キロボンベが居室に飛び込んでくるところを想像するとぞっとします。死人が出てもおかしくない物体ですから。
by HarryTuttle (2013-10-15 11:54) 

ガス屋兼水道屋

初めまして
プロパンガス屋です

正直申し上げて状況が想像つきません
配送時のボンベに引火とのことですが、バルブのがゆるんでいたところに漏洩したガスが引火したと言うことでしょうか?

勢いよく吹き出した生ガスに引火すればそれこそ火炎放射器のようになりますが、それだけです
その状態でボンベが爆発し、飛んでいくことはあり得ません

火災時などでその状態のボンベが別のボンベをあぶり続け、内圧が上がったとしても安全弁から生ガスが吹き出します
そこに引火してもやはり火炎放射器になるだけです

かなり以前に中華料理店の大火災でその状態になったボンベが互いをあぶり続け、安全弁の減圧が間に合わず大爆発しボンベ(の破片)が数十~数百メートル飛んだという事故はありましたが、その事故の話が変化して伝わったのでは内でしょうか?

LPボンベをちゃんと爆発させるというのは、条件を整えないとかなり難しいものだ、と言うのがLPガス業者の認識だと思っています

余談ですが、先日の花火大会の事故ですが、第一報を聞いたときガスボンベの爆発と報じられましたが、同業者の中では「ありえない、どうやって爆発させたんだ?」が一番目の感想でした
結局はガソリン携行缶が原因でしたが

長文失礼しました
by ガス屋兼水道屋 (2013-10-18 21:48) 

ガス屋兼水道屋

すみません
ご自分で経験なされたことなんでしたね
前半を良く読んでませんでした(汗)

う~ん、どういう状況だったんだろう
凄く興味があります・・・

by ガス屋兼水道屋 (2013-10-18 21:55) 

HarryTuttle

ガス屋兼水道屋様 はじめまして。貴重なコメント有り難うございます。

 私もその場面をリアルタイムで目撃したわけではなく,後日談としての伝聞ですから正直なところ想像がつかないのですが,複数人が同じ内容を話していることと、パトカーが道路を封鎖していて騒然としていた場面には遭遇していますから,事故があったこと自体は事実だったのだろうと考えています。

 まあ,『事実は小説より奇なり』と言いますが、ボンベがその形状を保ったまま放物線を描いて飛んでいったというよりは仰る通り破裂して飛散したのが実相であって私の聞いた伝聞には尾ひれがついていたというのが本当のところかもしれませんが、そうだとすれば全周囲的に被害があるはずなのですがそのような伝聞がないところが不思議なところです。
by HarryTuttle (2013-10-20 17:42) 

元ビール屋

可燃性ガスに"引火"してロケットの様に飛んでいった、のではなくて、減圧弁の破損か何かで、圧縮ガスの噴出で吹っ飛んだ、という状況だったのではないでしょうか。ビール用の炭酸ガスボンベを倒してしまい、バルブ部分が破損して、炭酸ガスの噴出でボンベが飛んで店の壁をぶち破った、という事故の事例を耳にします。LPガスボンベについては知識がありませんが(温度によるでしょうが)10気圧とかにはなるようですし...プロの方の取扱い上はあり得ないでしょうが、配送トラックの荷台などの段差のある場所から頭を下にして地面に落とした、とかすると、バルブ破損→圧縮ガスの一気噴出→ボンベが上方に放物線を描いて飛んでいく、というのも想像が可能かと思いますが如何でしょうか???
by 元ビール屋 (2013-10-21 12:01) 

HarryTuttle

元ビール屋様,はじめまして。貴重なコメント有り難うございます。
 若い頃にビールサーバーをいじくり回した記憶をたどると,炭酸ガスボンベの内圧は5MPa位はあったと覚えていますから,仰る状況はごもっともですね。元ビール屋様の想定に大きな説得力を感じます。

 以前の記事に書きましたが,私も若い頃、炭酸ガスのボンベを倒して不始末をしでかした事があります。バルブの破損による事故はありませんでしたが893の経営するナイトクラブで高価なベーゼンドルファーのピアノにボンベをぶつけて損傷し、何日か眠れない夜を過ごしました。
 
by HarryTuttle (2013-10-21 19:08) 

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