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業務用厨房機材の購入者と納入業者の関係の見え方 [お仕事上のぼやき]

 しばらくぶりの更新。

 風邪で体調の良くない状態が長引くと,自分に残っている時間はもうあまりないのだろうとあらためて思う。

 ある動画で聞いた政治家と有権者の関係のありようが大変秀逸でと思ったので,ここでうろ覚えながら文字にしておこうと思う。

 有権者は「俺達の投票行動のおかげで代議しにしてやったんだ」と思っている。
政治家は「毎度くだらない陳情ばっかり持ってきやがって」と思っている。

 色々な関係に置き換えて比喩が可能なお互いの心情だろうな、と俺は思う。勿論俺の携わっているこの業界にも同じような関係はあるのではないか。お互いが腹の中で相手を軽蔑している関係が。

 購入者,使用者は「買ってやったんだ」とか「使ってやってるんだ」と思い,
 納入業者は「さんざっぱら買い叩いた上にわがままばっかり抜かしやがって」と思い,
 こういう構図は沢山ありそうに思う。俺にも勿論心当たりがある。

 物品の販売行為を俺はあまり積極的に行っていない。やらないこともないが俺の生息地は大して大きな街でもないのに業務用厨房メーカーの出先機関だけはよくこれで共倒れしないものだと感心したくなるくらい沢山あり,それぞれが直販の営業活動に精を出しているので俺のような者の割り込む余地などどうせないだろうと考えているからだ。
 だから業務は修繕が中心になるのだが,機材が故障して修理屋を呼ぶという行為にもこの「使ってやってるんだぞ」的な意識が透けて見える場面はよくある。そんな場面を俺自身が積み重ね,同業者とぼやき合ったりしていると,若いサービスマンがこの業界に定着しづらい状況の原因の一つはこういう関係性にあるのではないかと思うようになってきている。
 お金を支払う,という関係性の全てについて近年鼻につく傾向のように思うが,別に古事記が物乞いをしているわけではないのだ。代価を支払うという行為には本来以上に尊大な振る舞いが許容されているのではないか。もう一方の側が得意先に対して必要以上に迎合する姿勢がこういう関係や傾向を助長している面は確かにあるだろう。
 そして俺には勿論,こういう困った関係を改善できるだけの力はない。
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金のない時程モノは壊れるように思える件 [お仕事上のぼやき]

 タイトル自体が結論なので本文は全て蛇足であり,俺の個人的事情の垂れ流しに過ぎない。
夏以降,俺の商売道具は次から次と壊れ続けている。そしてこれは別の記事をこしらえようと思っているのだが,そういう物入りのある時程修理代の請求書を塩漬けにするけしからん輩が次々に現れてきて俺の暴力的な気分を煽る。要するに,金はないわ商売道具はいかれるわでここしばらく俺の心象風景はすこぶる荒んでいる。

 先週,某焼き鳥点で冷凍冷蔵庫の修理中に冷媒のチャージングスケールが昇天したことを書いた。

関連記事:至る所に落とし穴はある
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2015-10-09

 そのチャージングスケールは俺が商売を始めた11年前に仕事仲間の冷凍機屋が購入した激安スケールのことを教えてもらい,同じものを取り寄せてもらって買ったなので購入元がわからない。ということは修理の依頼先がわからないということでもある。
 今回,その仕事仲間に修理先を聞いてみたが彼はかなり以前にそのチャージングスケールがいかれてしまい,買い替えたので、依頼先のことはさっぱりわからないと言う。
「どうせ一万そこそこの安物だったんだからそろそろちゃんとしたチャージングスケール買いなよ。もう10年以上も使ったんだから元は取ったでしょう」とのことだ。

 お説ごもっとも。俺は最近,得意先に対して減価償却の済んだ厨房機材などはいつまでもネチネチ使わずにとっととリプレースすべきだと言うようになり始めているのだが,こういう言い草をブーメランというのだろう。
 しかしこういうことにはその人個人の懐事情が大いに関わっているのであって,その冷凍機屋は実入りがよく,いかれた機材は次から次と買い替えていけるだけの財力があるので殊更修繕に拘泥する必要がないのだろうが俺には大有りだ。大有りだがどこに修理に出していいかわからないから結局カタログを読み漁ってなるべく安いものを必死で探す。本業の仕事もせずに朝から晩までカタログばっかり呼んでいる。

 チャージングスケールを購入する費用をどうやって捻出しようかと思案しているうちに今日,修理の現場でいきなりデジタル温度計が逝った。これまたチャージングスケールとほぼ同時期,俺が商売を始めた頃に買い込んだもので使用歴は10年を越えている。
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 この温度計は購入した頃その値段は2万円強したと思う。今となってはお笑いぐさの仕様で、こんな温度計が2万もするものかと諸兄は思われるかもしれない。
 この温度計は4年くらい前に一度いかれて修理に出し,購入価格の半分以上の修理代の請求書が来た。既にその時この温度計はカタログ落ち寸前のような有様で,修理代に少し追い金をすれば同じスペックの温度計は楽に買えるくらいだった。

 今となってはこういう温度計を単体で使い続けることに俺は大いに疑問があるのでそれは別の記事で少し持論みたいなことを書き留めておきたい。
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ガス切り替え工事後の落とし穴 [お仕事上のぼやき]

 俺の住む土地では7年くらい前に都市ガスの切り替えがあり,それまでは4Cという屁にも等しいくらいの発熱量しかない貧相な燃料だったものがやっと天然ガス13Aに変更された。
 東京や横浜などの大都市圏で仕事を教わって地元に帰ってきた調理師の方々が自営開業されるなりどこかの職場に就労するなりの時に例外なく抱く違和感はこれで都市ガスの供給される地域内では解消されたことになる。LPGでの使用環境下については相変わらず問題を抱え続けるわけだが本題からそれるのでここでは割愛。

 俺の得意先である某総合病院にあるガスレンジは俺が勤め人だった頃に納入した個体で稼働歴は実に25年になる。
 納入の際,その病院はタニコーからも見積書を徴収し,価格は俺の提示額よりもかなり安価なものだったので俺が不審がられたのだった。
 値段は高いかもしれないが俺が最後までサポートする,それが商品価値なのだと俺はそのとき強弁した。当時の俺はまだ30そこそこで今の俺からすればどこの馬の骨とも知れない若造でしかないわけで,そんな野郎が拡げる大風呂敷というか空手形みたいな話を良くまあこの総合病院は呑んでくれたものだと感謝に堪えないわけだが,そのガスレンジは躯体の老朽化したその病院で10年近く稼働し,その後移転新築に伴って移設され、その後は俺が手を入れながら約15年が経過して今でも現役であるから,俺は若造の頃に自分が切った空手形のおとしまえはつけたと少しくらい威張ってもいいのではないか。

 数日前に俺はそのガスレンジの修繕でその総合病院を訪問した。
ガスコックを分解してグリスアップする,厨房屋としては基本中の基本で作業としての難易度は無いに等しいが、四半世紀も面倒見続けてきたのだと最後のガス漏れ点検を終えてから少しばかり感慨に耽った。
 某総合病院は約400床くらいの規模なので当然色々な機材があり,それらは全て老朽化が進んでいるので飛び込みで色々な修繕の依頼が来るのは当然なのだがこの日も病院の移転時に新設されたガステーブルで着火の良くないバーナーがあると言われた。
 新設といったって15年落ちだ。いい加減リプレースを考えてくれないものかとも思うが,25年も使用し続けているガスレンジが一方にあるとなると他の燃焼器具も同じくらい長持ちするもんだと病院では信じ込んでいるらしいフシがあり,物販の希望は敢えなく頓挫する。

 ガステーブルは俺が職場が変わってから納入したもので,総ごとく,圧電着火のごくありふれた仕様のものだ。
 時代の流れというか,ある時からはこういう仕様の燃焼器具の方が安くなったのでそういうものを納めたに過ぎないわけだが,正直なところ俺は業務用の燃焼器具はあまりややこしい着火方式は好ましくないように考えている。どうせ一日中使いっ放しなのだったら昔ながらのマッチ点火でパイロットバーナーがつきっ放しの方がアクシデントに対しては疑問の余地なく強いからだ。点火保持機能を持つ燃焼器具に対しても同じように俺は考える。

 それはさておき,本題であるガステーブルの不具合とは5個あるトップバーナーのうち一つがうまく圧電着火しないとのことだった。点火用のライターでメインバーナーは普通に着火、燃焼はする。
 着火動作の不具合は簡単に所見が定まった。パイロットバーナーからのガスの射出量が多すぎるので点火火花の引火性が良くない。流速が高過ぎて引火する前に前方にすっ飛んでいってしまう,そんなイメージだ。実際,点火操作を何度か繰り返すととてもパイロットバーナーからとは思えないくらい周辺がガス臭くなるし,ガスコックを捻るとシューシューと音をたててガスが出てくる。

 それで俺の推論は冒頭書いたような都市ガスの切り替えに及んでいった。
もしかしたら,これは本当に推論の域を出ない話だが,都市ガスの切り替え工事に伴う燃焼器具の熱変作業に於いて一箇所,ノズルの交換を忘れて4Cのままになっているのが問題の箇所ではないのか。
 単純に,長期使用によってノズルが流動摩擦で広がってしまったので射出量が増え,流速が上がり過ぎたに過ぎないという可能性は勿論あるが,状態があからさま過ぎて不自然な気がするのだ。
 
 ともあれ,この状態はパイロットバーナーのノズルを交換することで収束する。大した修理代にはならないだろう。ガス会社が行う熱変作業に手落ちがありはしなかったかとか,仮にそれがあったとして使用者がどうして7年もそれに気づかずにいたのかとかいった疑問はあるが,何事によらず人のやることに絶対はないし,どんな手違いも起こり得ると俺は考えているので今更7年前の工事を蒸し返して詮索するような真似は不毛なのでしない。
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テスター貧乏 [お仕事上のぼやき]

 これまでたびたび書いて来たように俺は実によく物を紛失させる。物心ついた頃から一向に直らない悪癖だ。きっとこれは一生直らない。時たま、商売を初めて以来紛失したり盗難に遭ったりしたモノの総額がどれくらいあるのだろうかと思い出すと大いに気が滅入る。冗談抜きに、きっと中古の軽トラックが一台買えているかもしれない。

 無くすモノに比べると壊すモノはそう多くないと思う。俺は物持ちが悪くない、なくさなければ、だが。
 但しここ一年の間にしょっちゅう壊すモノが俺には一つあり、それはテスターとかマルチメーターとか呼ばれるあれだ。
 壊しては買いを繰り返し、破損品を処分しないで作業場に適当に放り投げておいたものを拾い集めてみると手元に残っているだけで4個くらいあった。ぶん投げたものも含めると6個くらいにはなっているのではないか。
 うんざり来るのはこれだけの数をわずか一年かそこらで俺は使い潰しているのだ。アナログテスターを使っていた頃は俺はもっともの持ちが良かったはずで、安物ばかりを使い続けて来たが一台買えば5年かそこらくらいは使っていたように覚えている。

 自営を始めた頃に使っていたのは共立のクランプとテスターが一緒になったやつで、俺が勤め人だった頃に買い込んだものをしばらく使い続けていた。
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 DC電流のレンジが使い物にならないくらい出来が悪かった以外は特に不便でもなく重宝していたがあるときリード線がショートして壊して以来、俺のテスターはめまぐるしく入れ替わる事になる。

関連記事名:爆発するテスター
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04

 およそ一年前のある日電材問屋に行くと,フロントには見るからに安物然としたテスターが置いてあった。値段を聞くと5千円もしないという,テスターは2年くらいで潰れて買い替えることが習慣化していたので俺は飛びついた。カスタムというそれまで俺が知らなかった製造元だ。

製造元のURLは以下の通り,大変安く気の利いた機能を持つものが多い。
http://www.kk-custom.co.jp/industrial/index.html

 しかしまあ,安かろう悪かろうとはまさにこのことであると俺はその後思い知らされる。
何しろ良く壊れるのだ。5千円かそこらで買えるので潰れるたびに気安くバンバン買っているうちに、電材屋からの請求書がある時期から値がかさむことに気づいた。
 
 問屋のフロントにあったのはM-08という型式で,NCV(検電器)の機能を持つところが売りだ。抵抗レンジと電圧レンジが一緒で,AC,DCが自動判別なので横着者には使い勝手が良さそうに思えたのだがサンプルレートが低く,テストリードをあてがってから指示値が出るまで二呼吸くらいのタイムラグがあり,馴れないうちは壊れたのではないかと焦る。

M-08 http://www.kk-custom.co.jp/industrial/M-08L.html

昨年10月の終わり頃,間違ってダイオードチェックのレンジで電圧を測ってしまい,ケースの中でパチッと小さいアークが飛んで即死した。購入してから一ヶ月かそこらでの出来事だ。
 以来買っては壊れが相次ぎ,修理に出すのも阿呆らしく(修繕費よりも製品の方が安いからな)現在に至っている。今使っているのが4個目か5個目だと思う。
 今年に入ってから夏の初め頃に買ったのが同じくカスタムのCDM-16Dというモデルだ。燃焼器具の動作確認のために購入した。身近にμAレンジのあるテスターを探してみたうち,一番安いのがこのメーカーの製品だったからまた買った。

CDM-16Dhttp://www.kk-custom.co.jp/industrial/CDM-16D.html

これは夏の真っ盛りに壊れて現在二個目を使用中だ。

 これまで一年間にお陀仏になったテスターのうち三つくらいはまだ廃棄せずに手元にあったので並べてみた。
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 右から一個目のCDM-16Dは夏の最中に車のダッシュボードに数日置いていてLCDが直射日光にやられて表示できなくなった。購入してから一ヶ月目くらいだったと思う。
 真ん中のM-08は腰道具のポケットに他の道具と一緒に放り込んでおり,使おうと思って取出してみるとLCDがぶっ壊れて無惨なことになっていた。買ってから半年経っていないと思う。
 左川のM-08は先週,現場で取出してみると表示がされず,電池を入れ替えてみたがウンともスンとも言わない。購入してから2ヶ月経っていなかったのではなかろうか。

 これほどさようによくテスターは壊れ,俺はひっきりなしに買い直す羽目に陥っているわけだが幾らなんでも一年間に6個は酷すぎる。
 俺の扱いも良くないのだろうが今一個手元に残っている協立のテスターはもうちょっと丈夫だったはずなのだ。俺はここに来てこの,カスタムという製造元の品質に対して大いに疑問を持っている。一体どうなっとるのか。
 
 ほんとに,一体どうなっとるのかと思うくらいテスターがバンバン壊れまくるので俺はいい加減頭に来ているのだ。幾ら安からといったって一個4,5千円はするのだし、壊れたからといって修繕費に転嫁するわけにもいかない。こんな持ち出しをいつまでも続けていたのではただでさえ日頃金のないこの俺がますます貧乏になっていく。
 例年10月という月は万年貧乏な俺が最も金欠状態になる月で,今年もそのジンクスは生きているのだがここは一つ,長く付き合えるテスターを物色しながら月末の銀行残高次第では奮発してみたいと画策中である。
 
 カスタムの製品というのは間に合わせのために予備機として持つ程度以上のことを期待すべきではない。この一年,俺はそういう教訓を得た次第。
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厨房はクリーンルームではない [お仕事上のぼやき]

 俺はこれ迄このブログで何度か,過度な衛生管理の厳格化など大して意味がないと述べてきた。以前の記事でも書いたが機械の修理なんていうのは大なり小なり汚れるものであって半導体製造やバイオ関係の施設ならまだしもなんでたかだか厨房くらいでこんなに服装のことでガタガタとこうるさいことを抜かすのかといい加減頭に来る。 確かに俺の日頃の服装は大して清潔感のあるものではないが,それにしてもオイルのシミだのズボンの折り目だのと行ったこと迄グダグダ抜かすようなバカのところに呼ばれたら問答無用でクリーニング代の請求をさせてもらおうかと真剣に考えている。

 大体,人の服装のことにはいちいちイチャモンをつけるくせに自分らはどんなご立派な衛生管理をしているというのか。

 以下の画像はある病院の食器消毒保管庫の修理の際に撮影したものだ。
作業内容は庫内循環用のブロワーモーターの軸受け交換である。軸受けのベアリングのグリスが切れて回転時に摩擦音が発生し、相当うるさい。
 一般に,どの製造元もブロワーモーターのベアリングという補修パーツは持たない。こういう場面でのメーカーの所見と対応はモーター不良により交換であり,補修パーツとしてもブロワーモーターは大体5万から7万円くらいの値段がつく。ということは食器消毒保管庫の運転時にブロワーモーターからの異常音が発生して厨房屋を修理に呼べば大体6万5千円から9万弱くらいの請求が来ることになる。

 しかしだ,食器消毒保管庫を製造している厨房機材メーカーのうち,自前でモーターの製作迄している会社など一つもない。一つの例外もなくどこかの電機メーカーの出来合いのファンモーターを買って来て内製した箱に組み込んでいるだけであって、そのモーターに組み込まれているベアリングというのはこれ迄俺が見てきた限り一つの例外もなくJIS規格のごく標準的なものであり、その値段は高くて千円程度,モーター一台分で二個なのでモーターコイルやステーターに損傷がなければパーツ代など高くて三千円程度に過ぎない。
 モーターベアリングの交換など専門業者でなくとも例えば自動車の整備工などはごく当たり前に行う作業だが何故か厨房屋は会社ぐるみでこれをしない。もしかしたら出来ないと言う方が正しいのかもしれない。

 話の流れは冒頭書いていたことから少し逸れて枝道に入る。というか本当に見て頂きたいのはここからだ。
修理個体は北沢産業製の食器消毒保管庫で,損傷したブロワーモーターは昭和電機というメーカーのものだ。
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 モーターケースのケツ(下品で恐縮だが日頃俺は何となくそう呼んでいる)をはずしたところだ。少し距離を置いても埃だらけであることが明らかだ。
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 軸受け部分のアップ。そもそも軸受損傷の直接的な原因はグリス切れによる回転時の潤滑性の低下なわけだが更にその原因を掘り下げていくとベアリング内に埃が混入するためだ。何故なら給食設備がウェットフロアーであるのが一般的だった頃にはこの手の障害の発生は今よりもずっと少なかったからだ。
 どうもドライキッチンというのは誤解されているのではないだろうか。ドライだから床を水まき清掃しなくて良いなどということはないのであって,調理業務を行っている間はドライであるというに過ぎないものを拡大解釈しているバカな栄養士は大変多い。
 何も今更、ウェットフロアーが良いなどと時代遅れな主張をするつもりは全くないが,ドライであるということは室内の埃の浮遊が活発になりがちだという程度のことくらいは頭に入れておいてもらいたいもんだ。厨房はクリーンルームではない。
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 ステーターを抜き出したところ。モーターの状況を追記すると,固定ヨークやコイルに迄綿埃がびっしりと絡み付いており、ステーターを抜き出してベアリングを交換すると同時に内部は清掃しておかなければならない状態にあるのはドライキッチンである設備の全てについて言えることで,俺の経験としてはこれ迄一つの例外もない。
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 ステーター先端に取付けられているファンホイールのアップだ。清掃前であり,綿埃がびっしりとまとわりついている。衛生上問題なのは勿論であり,この状態もドライキッチンである施設ではこれ迄例外なく経時的に起こっている。
 勿論、モーターがこうして埃だらけになるということは、保管庫内で熱風消毒されている食器にも埃は付着しているのは当然で、その食器は次の配食事には保管庫から取り出されて食品が盛りつけられ、喫食者はそれを直接手に取って飯を食うのだが、いいのかよ、それで。
 ファンホイールへの埃の付着量が更に増えていくと風量が低下し,発熱体の周辺空気との熱交換が進まないので庫内温度のばらつきが大きくなる。副次的な障害である。

 繰り返し書いておきたいが,これは食器消毒保管庫の修理である。集団給食の現場であればどこにでもある機材だ。
 そして栄養士連中は喫食者には埃まみれの食器で飯を食わせて平気でいるくせに俺のような修理屋の服装については白衣を着ないのがけしからんだとか作業着に油のシミが付いてるのが不潔だなどと好き勝手なことを抜かすのである。ブーメランとはまさにこのことであって,今回はたまたま食器消毒保管庫のことを書いたがこの手の事例などバーゲンセールをやってもいいくらい沢山ある。
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ある喪失感と危惧のこと [お仕事上のぼやき]

 今日は既に月末近くであり,年頭所感と言うには遅すぎるがこれは俺の怠慢な性分を良く表している。

 某輸入商社のサービスマンが今月一杯で退社するそうで,先日俺の携帯宛にお別れの挨拶があった。
再就職先は特に決めておらず,退社後は当面,どっか海外でブラブラする予定なのだそうだ。俺が10年前に開業して以来修繕のお仕事を回して頂いて随分ご厄介になっており,彼は優れた技術の持ち主であるし年齢的にはまだまだ第一線でバリバリやれるので俺はこのことを大変残念に思っている。

 これ迄何度か書いたように,厨房屋のサービスマンが中堅クラスに迄スキルアップした状態で退社する場合は業界に残らず異業種に転出するケースは大変多い。
 かく言うこの俺も30代の半ば頃,得意先の某製菓メーカーの工務課から声がかかり,正直なところ気持ちの上ではかなり傾いた。結果として俺はその選択肢をとらず現在に至っているわけだが、周囲の人達には『あの時転職していたら今頃おまえは・・・・』的な意見の持ち主はいまだに結構多い。

 昨今特にブラック企業という呼称があちこちで飛び交うが,業務用の厨房機材なんていうのはもう、業界全体がブラックなのであって企業単位どころの話ではないのだ。
 ブラック企業のレッテルが貼られたのは悪名高きワタミやゼンショーをはじめとして外食産業が槍玉に挙がることが多い。厨房屋の業界が全般的な体質としてブラックなのはそれと大いに関係があると俺は常々考えているのだが、その傾向は改善されるどころかこの先も悪化していく一方だろうという悲観論は変わらない。

 具体的な社名をあげるならば,この業界では日本調理機と中西製作所の2社以外は全て,大なり小なりブラックな泥沼に脚を突っ込むことを覚悟しておかなければならない。厨房屋の得意先である業種は多々あるが,学校給食は穏やかな仕事に従事できる最後の聖域と言っていい。

 厨房屋の業界内の不条理についてはあれこれ書き出すときりがないので,それは後々折りを見て取り上げていくとして,30代40代で他業界に転出する典型的なケースは家族の反対が原因であることが多い。
 そりゃそうだろう、会社が社員のプライバシーを得意先にベラベラと垂れ流し,携帯電話だの自宅の固定電話だのばらしまくっていたのではたまったものではない。日曜日だの帰宅後の深夜だのに遠慮も何もなく社員個人に修理の催促が来る生活など家族にしてみれば不条理としか言いようがない。
 しかもだ、この業界の殆ど全ての企業は社員のこうした私生活上の迷惑に対して何の救済措置も講じていないところが殆ど全てと言っていい。代休を与えるとか,翌日の出勤時間を遅らせるとか,これは違法だがそうした業務時間外の労務に対して時間外手当として金銭的な報酬を与えるとかいった措置にはいつまで経っても頬かむりをしたままだ。

 今でもそうなのかは不明だが,ホシザキという会社は毎日午後5時半になると修理の受付は留守番電話に切り替わり,翌日回しである。使用者の方々にはこの運営形態に不満を訴えるケースはあるが、修理屋の労務環境としてはそうでもしないと24時間臨戦態勢でいなければならなくなってこれは精神的肉体的に大きな負担であり,雇用している企業としては深夜の作業で事故でも起きれば労務管理上,問題でもあるからこういう制限を設けざるを得ないのであって,24時間365日,いつでも障害があった時に即刻対応してもらいたいのであればとどのつまり使用者はメーカーのサービス講習にでも参加して自ら修理を憶えるのが最良だろうと,これは決して暴論でも極論でもないと現在の俺は考えるようになった。

 俺の懸念する将来像を断片的に書き留めておきたい。
*中古機材が出回り続けることで得意先の設備は不安定さを増す。
*厨房設備の内容は複雑さ,高機能さを増す方向にのみ進み,後退しない。
*携帯電話の普及により,サービスマンの基礎的な思考力は鍛えられず,スキルレベルは低下する一方である。
*経験を積んだサービスマンは上に書いた事情により,ある時点で業界から抜けていく。

 起こりうるであろう典型的な状況は一例を挙げるとこんな感じだ。
使用歴10年程度の食器洗浄機が運転途中に停止する不具合が不定期的に発生し,そこに現れた厨房屋のサービスマンは作業着を着て軍手をはいており,一見,その筋の人らしくは見えるが実は偏差値40くらいの無名大学文系出身の男である。
 5分程度あちこち眺めての所見は・・・・・
(1)不具合箇所はコンピューター仕掛けの制御基盤であり,その価格は10万程度、修理費用は約12万くらいになる。
(2)不具合箇所はコンピューター仕掛けの制御基盤であり,現在補修パーツはないので修理不可。リプレースしてください,
 
 修理屋は技術者どころか職人でさえなく,使用者の前で臆面もなく携帯電話でSOSを求め,虎の巻を開き,エラーコードの説明文に従って関係ありそうなパーツを総取っ替えするだけの作業員(workman,worker)でしかなく、しかも,定着率が悪く毎度違った人物が現れてそのいずれもが30代前半以下のあんちゃんである。
 当然ながら彼はその修理個体の過去履歴など頭に入っているわけはなく,大体その機材は中古機をリサイクル屋から購入してきたものなので持ち主にも過去事情はさっぱりわからない。
 
 起死回生の秘密の抽き出し発動によって故障期待が仮処置を施されて急場をしのぐといったドラマチックな場面はこの先極端に減っていくだろうし,それ以前に満足に回路図も読めない、単なるネジ回し屋しか残らずにそれさえも次から次と入ってくる修理依頼にてんてこ舞いで即応性は低下する一方の状況は既にもう始まりつつあるように俺は見ている。
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メールソフトの不調 [お仕事上のぼやき]

 歳末で色々立て込んでいる時に限って色々とロクでもない出来事が起こるような気がする。

 俺の得意先でこのブログを読まれている方は大して多くはないとは思うのだが告知の意味もあってこの記事を書くことにした。
 3,4日前から俺のメール環境は大変不自由な事態に陥っている。受信は出来るが送信は出来ないというのがその困った状況で,俺にはメールソフトの環境設定をする能力はからっきしないので目下お手上げだ。

 俺は私用と仕事用とで二つの電話番号があり,ネットのアカウントもそれぞれ回線ごとに取得している。そして常用しているメールソフトはバージョンは異なるがいずれもThunderbirdだ。
 そのThunderbirdがどちらも同じ不調が,それも同日に起こるとはどういう事なのか?

 しばらくぶりにISPのサポートセンターに問い合わせてみるとメールソフトの設定など諸々の問い合わせはOSがMacの場合、現在はMail以外は受け付けておらず,Thunderbirdはサポートの対象外だとか。
 俺は16年前にパソコンを買い込んでネットに繋いで以来ずっとNetcapeとその派生であるMozilla系のブラウザを使い続けてきたので何となくメールソフトはThunderbirdを使い続けてきており、ISPもサポートはし続けてきてくれていたように憶えているので、少々当惑している。

 メールが使えない状況は業務上致命的なので、差し当たり暫定的に,というか恒久的になってしまうのかもしれないがアプリをMailに替えてみるか。
 俺に限らず世間では良くある話だが,慌ただしいとき程ややこしい問題が持ち上がるのはどういうわけか?

(追記)今迄書き忘れていたことだが,このブログは投稿前の表示確認はFirefoxでだけ行っており,他のブラウザでは行っていないので他のブラウザで見ておられる方は表示の不具合があるかもしれないがご勘弁を。
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日曜日午前4時30分に終了 [お仕事上のぼやき]

 前回記事の続きであり,この記事は本日月曜日の午後6時頃に書き始めている。今迄何度か取り上げたことをここでもまた問題提起したい気持ちがあるが,特定の企業に対する非難と受け止められるのは心外なので,固有名詞や現場の画像を挙げることはしない。よってわかりにくいところはあると思うが御勘弁願いたい。

 土曜日午後10時からの作業現場は某うどんのチェーン店である。途中休憩を挿んで深夜,6時間半にわたる労務でさすがに翌日,日曜日の俺はグダグダな状態で終日を過ごした。さすがにもう若くはない。

 修理したのはこのチェーン店向けに特注仕様で製作されたうどんのゆで釜だ。熱源はガスで燃料はLPG,燃焼方式は自然燃焼で,点火方式はイグニッションによるパイロットバーナー着火,点火保持はフレームセンサーによって行われる。燃焼器具ではあるが上記の仕様により100V電源を必要とする。
 点火系統に障害が出た場合の回避措置としてこのゆで釜にはガス管のバイパスが設けられており,圧電着火とサーモカップルによる立ち消え防止機能を持つ別のパイロットバーナーに至る。メインバーナに至るガス管が2系統あって、通常使用時と電気系に異常があった場合の仮運転とを3ポートバルブによって切り替える構成になっている。
 湯槽の形状は平底であるが、熱効率を上げるために底面の裏側には銅製のフィンが一面にスポット溶接されている。吸熱面積を上げることで熱効率は上がる反面,形状が複雑化することで流体抵抗は上がって燃焼排気の流速が落ちるので煤の堆積による不完全燃焼は発生しやすい。あるメリットが別のリスクを生む例は枚挙に暇がないがこういう設計思想もその一つだ。
 従来,平底の吸熱面を持つ燃焼器具は熱効率が低く、裸火に等しい。その数値は約35%だが,上に書いたような加工を施すことでこれを約20〜25%程度向上できるとされている。吸熱フィンを銅製とすることで点火後の立ち上がり特性は更に改善されるのだが、ステンレスと銅との溶接は厨房機材のメーカーにとっては長く難題である加工法だった。
 試作段階をクリアして製品化されるようになったのは3,4年前ではなかったかと思う。涼廚(すずちゅう)という何とも脱力しそうなネーミングで大阪ガスの提唱する厨房機材の認証制度を取得するために燃焼器具メーカーは各社色々、開発を進めたわけで,件のゆで釜もそのうちの一つであり,製造元は俺の元の勤務先だ。
 涼厨(すずちゅう)http://ene.osakagas.co.jp/product/kitchen/cool_kitchen/

 土曜日閉店後の整備作業に先行してこのゆで麺器の修理には俺の元の勤務先の後輩が入っている。五日金曜日,何と彼は8時間にもわたってこのゆで釜の修理で格闘し続け,疲労困憊の体で翌日の応援を俺に依頼してきたのだった。

 不具合の状態はパイロットバーナーの失火警報によるガスの遮断で,ゆで釜に火がつかないのであれば店舗としては商売あがったりだろう。緊急回避用として先に書いたバイパス配管に切り替えての運転を試みたところ、パイロットバーナーの銅管にクラックが出ており,彼はこの補修に手を取られて何とか回避措置に迄はこぎ着けた。
 しかし回避措置後の試運転を行ったところ不完全燃焼が起きており,お湯の昇温が遅くうどんを茹でる工程がオーダーに追いつかない。店舗はやむなく機器の不具合によりオーダーに対して遅れが発生する旨の告知を入り口に貼り出す事態にまで至った。何といってもゆで釜の排気筒から煤が飛散するのでオープンキッチンの店舗としてはパニックみたいな状態を露呈しており,俺などからすればそら見たことか言いたくなる。

 パイロットバーナーの失火警報の原因は煤の発生によるものであり,フレームロッドと本体シャーシの間に落下した煤がブリッジ状となることで疑似火炎判断されて遮断弁(電磁弁)が閉じたことになる。
 要するに大元の原因は不完全燃焼であり,既にバーナーの収まった燃焼ボックスや煙道(排気筒)は煤だらけなので一度筐体を分解して湯槽を取り外し,堆積した煤を清掃しなければならない。しかし分解するためには接続された配管を切り離して茹で釜自体を手前に引きずり出さなければならず,その重量は有に200kgを超えるので人手が欲しい。加えて製造元の工場ではこれ迄の納入例で見る限り筐体を分解して湯槽を取り外す修理の事例がまだないとのことで,色々な意味で一人でけりをつけるには少々心許ない。俺に声がかかったのはそういう経緯でのことだった。

 重量物である湯で釜を移動させるために,後輩はハンドリフトを借り出してきたが,茹で釜の底面は強度がなく,使用できないことがとっかかりの段階で判明し、ごり押し気味に人力で引きずり出すことになった。作業開始は閉店後の清掃業務が終わってからで午後11時近く。前例がないので先の見えない手探り作業であり,
ああでもないこうでもないと二人であちこちいじくり回しながらようやく湯槽を取り外せたのが既に日付が変わってからのこと。

 湯槽の底面に溶接された銅製のフィンはびっしりと煤で埋まっており,これではお湯の沸くのが遅いのは歴然だ。それどころかこんな状態で無理矢理稼働し続けていれば高性能な一酸化炭素発生装置であり,ホールと一繋がりのオープンキッチンとは言え直近で働く従業員が中毒になる可能性だってなくはないのだ。
 堆積した煤は洗い流すしかないのだが,時期が夏場ならいざ知らず今は12月で,おまけに俺の生息地は深夜ともなると氷点下10℃以下となるので煤を洗い流すための水が氷結してしまい,屋外には持ち出すわけに行かない。
 店舗内で煤を荒い落とすための洗浄作業を余儀なくされるわけだが,そうなると飛散が問題になるので店舗内はかなりの広範囲にわたって養生する必要に迫られた。
 他にも色々,作業上の問題は多く,作業は難航してようやく撤収できたのがタイトルに記した時刻だったわけだ。

 不完全燃焼が発生した原因については比較的容易に見当がついた。
これ迄何度過去のブログで例を挙げたようにここでもまた空調の問題だ。天井から伸びている何本かのスポットエアコンのノズルのうち一本が問題のゆで釜の方を向いている。
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画像は本文とは関係ありません

 釜の前に立つ従業員の作業環境を配慮してそういう設計としたのだろうが,冒頭書いたように茹で釜のバーナーは自然給気だ。バーナーのノズルから出る燃料(LPG)が生み出す負圧とは比較にならない程の気流が発生しているのは明白で,一次空気の取り込み量が不足しているのは歴然だ。
 後輩はそこ迄の洞察が働いてはいないようで,この周辺環境が変わらない限りゆで釜の不完全燃焼は何度でも再発する可能性があることを指摘すると後輩は露骨に凹んだ。

 そんなこんなで撤収が終わり,煤まみれのオヤジ二名は腹が減ったので帰り際に吉野家で夜食とも朝食とも言えそうな飯を食った。後輩はおろしてまだ二日目の作業着が煤まみれになってしまったことにまた凹む。煤けた顔がなお一層暗くなった。きっと俺も同じだろう。

 どうも燃焼器具は全般に,時代の趨勢とそぐわないものになって今っているのではないかと今回俺はあらためて思う。近いうちに俺は所見をまとめて一つ記事を書こうと思う。
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土曜日午後10時より [お仕事上のぼやき]

 タイトルにあるのは某うどんのチェーン店での修理開始時間である。
この記事は12月5日金曜日の深夜に書いているものだが、夕方頃に俺の元の勤務先の後輩から携帯あてに連絡があり、タイトルにある日時で応援の依頼があった。

 当然ながら彼の声は沈み気味で、何と言うか気の毒なもんだ。そりゃそうだろう、土曜の深夜に菜っ葉服を来ての労務だ。
 俺は先月、あるでかい施工現場にしばらく缶詰になっていたせいで積み残しのお仕事が随分あり、目下あちこちに頭を下げながら片付けている毎日であってとてもじゃないが他人の応援どころではないのだが、何と言っても元の職場だから日常的に色々補完関係はあるので無下に断るわけにもいかない。

 作業内容はうどんを茹でる釜の点火系で数点のパーツを交換する事らしい。燃焼器具のバーナー周りの修理程度で何故二名作業なのかというと、その釜はかなり重量があり、配管を一旦切り離した上で本体の位置ををずらさないと手が入らないからだという説明だ。

 俺はその釜を見た事がないので内部の構造やら何やらには全く予備知識がなく、いつもながらの出たとこ勝負だが、常々思うところとして電気や配管の接続を切り離して本体の位置をずらさないと修理できないような構造や施工は最低のセンスであってプロのものではない。理由の一つとしては、修理の際にサービスマンが二名いないとならないとすればその分修繕費が割高になるからだ。他にも色々あるが面倒なのでこれ一つに留めておく。

 俺は業界の隅っこでチマチマやっているだけの野良犬に過ぎないのであって,業界全体を鳥瞰するような大仰な物言いが出来たガラでもないのだが,この仕事も俺が駆け出しだった30年くらい前とはだいぶ変わってしまったな,と思う。色々なことが変わった。大体はロクでもない方向に変わってきた。ややこしい方向に変わってきたとも言える。
 
 業界の隅っこ,と俺は書いたがそれも社会の一部ではある。仕事の内容が変わってきたということは社会のありようが変わってきたことの反映でもある。
 深夜や早朝の仕事が当たり前のようになってきたのはここ10数年のことではないかと思う。コンビニのCK(Central Kitchen)が出来たあたりからこういう傾向が顕在化してきたのではないだろうか。

尻切れとんぼでなんだが,結構難航しそうな修理で、この件についての雑感はあとでまた記事にするかもしれない。 
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腱鞘炎の季節 [お仕事上のぼやき]

 大体例年夏頃だと思うが,俺は持病の腱鞘炎に悩まされる。
今年は左手の中指と薬指が酷いばね指になっており,朝などはなかなか動かない。毎朝(今日はまともに仕事ができるのだろうか)と心配になるのだが今のところまあまあ何とかなっている。

 ところで俺には某県警の警察署長である従兄弟がおり、先日しばらくぶりに彼が帰省して一緒に晩飯を食う機会があった。
 あれこれ雑談しているうちに体調とか健康の話題になり(歳だからな),俺が毎年今時期に訪れる上に書いたような不調のことを話すと彼も現在,腱鞘炎に悩まされているらしかった。

 利き手だから不便なんだよ,と,彼は右手の人差し指を曲げてみせ,目下ばね指が酷い旨をぼやいた。

 しかし何だ,警察官が右手の人差し指が腱鞘炎とは何やら物騒な連想が働くではないか。
冗談混じりに勤務中の発砲について訊ねてみるとあるわけないだろ,と一笑に付された。警察官が発砲するには物凄い制約があるらしく,例えば逃走しようとする容疑者の背後から発砲するとか脚以外の部分を撃つとかいうのは大問題になるのだとか。詳しく聞かなかったが頭部や胸部(心臓)といった即死するような射撃は御法度のようだ。
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画像は本文とは関係ありません。


 まあ,仕事とは直接関係のない話題だ。
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困ったときのサーモアイ,だが・・・ [お仕事上のぼやき]

 本日は祝日であり,俺のような性分の者としては誰にも顔を合わせずに一日ゴロゴロしながら怠慢に過ごしたいところだがクソ忌々しい消費税率アップを控えた年度末だけあって駆け込みの依頼が押し気味であり,金もないので気乗りしないが無理矢理スイッチを入れてとにかく働くことにした。

 場所も場所で,これまで何度か取り上げたことのある某総合病院の手術室だ。
厨房屋の俺が一体全体何の因果で某総合病院の手術室をうろつき回るようになったかについてはいずれ機会を見てぼやくことにして,元来筋金入りの怠け者であるこの俺がどうして土日や祝祭日に手術室での仕事のために重い腰を上げるかと言えばやはり金の力の偉大さによる。とは言え,病院の事務屋によれば俺の修繕費など医療商事会社から回ってくる請求書に比べると感涙ものの安さであるらしい。こんな事なら最初に手がけた時にもう少し高い単価設定にしておくべきだったと後悔するがもう手遅れだ。
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毎度の使い回し画像である。本文とは関係ありません。


 某総合病院には手術室が2ブロックあり一つは救命救急用のセクションが救急車の乗入れ箇所近くに3室とその二つ上のフロアーにICUと隣り合った手術科というセクションがある。こちらは全12室で各室に冷凍庫,冷蔵庫,保温庫が壁面埋め込みで取付けられており,その他血液保存や解凍,薬品類の保管などなど結構な数の冷蔵庫や温蔵庫があり,俺にとっては意外と稼ぎどころなのですよ。

 手術室の造作はセントラル・ユニという会社が手がけている。
URL:http://www.central-uni.co.jp/

手術室関連の施工や機材については
http://www.central-uni.co.jp/products/operation/modular-system/

 施工は13年前で,保温庫や保冷庫のスペアパーツについては数年前に供給が止まった。何でもそうだが俺のような野良犬業者に持ちかけられる相談にはこういう類いが多い。製造元はリプレースが進んで管理台数が減少してくると最低保有期間を盾に使用者をバンバン切り捨てていく一方,使用者は設備投資を惜しんで俺のようなもののところに無理難題を持ち込んでくる。俺は板挟みやら目先の金欲しさやらでもがきながらない知恵を絞る。

 保冷庫が冷えないという依頼があり,現調してみるとサーモスタットがいかれていた。ならばそのサーモを取り替えれば良い,簡単な話だがそれは製造元が普通に補修パーツを供給する体勢を整えていてくれれば、という前提があってのことだ。
 使用されていたサーモは既に補修用の在庫がないと製造元からはアナウンスがあった。組み込み用のカスタムパーツと思われ,汎用パーツメーカーのカタログにはまず出ていなさそうなものだ。
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画像は本文とは関係ありません。


 困ったことにこのカスタムパーツであるサーモは庫内の温度調整だけでなく,複数の開閉接点を持ち,庫内温度の異常を感知して警報を働かせる役割を兼ねている。一つのサーモが三つの機能に関わることになる。
 しかしこの、警報機能は結構てきとうであり,低温警報,高温警報共に感知温度に達したら間髪入れずにブザーが鳴るだけの代物だ。凍結を防ぐためにコンプレッサーを停止させる制御回路にはなっているわけではないし,設定温度10℃の高温警報にしてもドアを開いて物の出し入れをしていればそのくらいの庫内温度には簡単になってしまうだろうが、製品のパネルに印刷された能書きを眺めてみるとその時には警報を手動解除して放置しておくか、電源を一旦切って再投入すれば良いとあり、少々拍子抜けした。

 少なくとも,これら壁面埋め込みの一見立派な保温庫や保冷庫は,現在温度がナースセンターでモニタリングされており,以上温度となった場合には移報機能が働いて修繕の対応を促すといった機能はない。
 俺の考えは,この病院はあと数年後には移転してしまうのでその間冷える機能だけ働かせておけばいいではないかというものだった。大体,試しに警報を出してみて,それもブザーの音量を最大にしてみても手術室の自動ドアは物凄く頑丈な鉄扉であるためにドアが閉まっていると廊下にいてもさっぱりブザーの音が聞こえないのだ。本当に何のための警報機能なんだかわからん。
 俺は手術科長殿と事務屋を相手に滔々と自説を述べ,ややこしい機能の同等品を探すのは手間取るし修繕費が高くつきそうなので今回は調達しやすい汎用品のサーモをを代替使用し,しょうもない警報機能は潔く諦めるべし,と押し切った。
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 それで修理は一月度に片付き,俺の口座には今月目出度くその金が振り込まれてくるわけだ,がしかし。
先月の中頃に手術科調には何か思うところがあったらしく警報機能を復旧するための追加作業を施してもらいたいとのリクエストが来た。追加の請求をあげさせてもらえるのかと事務方に尋ねてみると現場の要求だからいいようにしてあげてくださいとの気前のいい返事で、毎度ながら、日頃従事している給食分野での扱いとの落差に拍子抜けする。手術部門となるとやはり病院の中では稼ぎ頭だろうから言い分も通りやすいのだろう。
 金のためとは言っても手術室などあまり足を踏み入れたくないのは関わり始めた当初から変わることのない気分だ。

 庫内温度の低下、上昇の二温で警報を出すとなると更にサーモを二個追加となりそうだがここで俺はスケベ根性を出してもう少し気の効いた事をしてやろうとあれこれ思案した。
 回路は単純を良しとするのが俺のモットーだから、比較的簡単に構想はまとまった。
いかれたサーモ二つは潔く取り払い、こういう場面では毎度俺を救ってくれる鷺宮のサーモアイを使う。
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 温調機能と警報機能を併せ持つ。他社にも同等品はあるが俺の場合はサーモアイが使い慣れているのでこうした出番に投入される機会が多い。

 既に冷凍機の発停についてはサーモが一つついており,ここでサーモアイは内蔵する温調機能が重複することになる。1月につけたサーモを撤去しようかとも考えたがサーモアイの制御出力の接点容量は5Aで冷凍機の始動電流を考えると心許ない。
 一旦,材料を調達して介する形でのコンタクターを買ってこようかとも思ったが,追加コストが発生して話がややこしくなるのでやめた。

 サーモアイの実売価格は大体2万円くらいでインターフェイスはわかりやすく,ヤマ勘でいじくり回しても結構設定が容易であるがそれにしても、警報機能のためだけにこういう追加修理に決裁を頂けるとは,病院という組織の中で手術の現場スタッフの発言力は凄いものだと改めて妙に感心する次第。給食関連だったら絶対に撥ね付けられるに違いない。
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理科の時間だぜ 2 [お仕事上のぼやき]

この記事は1月31日に書きかけたものに加筆したもので、冬の真っ最中だった事を事前にお断りしておく。尤も3月中旬の現在に於いても俺の生息地はそこら中アイスバーンだらけでまだ春は遠い

 前回の記事で水の氷結のことをすっ飛ばして目先の金や横着のために無茶な機材の導入を図る連中のことを書いたわけだが、もう一つ冬期間に起こりがちな不条理のことを思い出したので書いておこうと思う。

 俺の生息地では目下のところ、あまり冷え込まない冬が今のところ続いている。これは良い事だ。
ある種、心得のない使用者の現場では、意外だろうが冬期間に於いて燃焼器具のトラブルが出がちな傾向があり、それは例えば木造建築で空調設備があまり整っていない商業店舗で多い。
 
 不完全燃焼を起こして煤だらけになった燃焼器具を修理する場面で、上に書いたような環境下である場合、ある時期から俺は修理に取りかかる前に使用者に空調機器は正しく働いているのかと尋ねるようになった。
 すると結構な確率で、使用者からは何ら悪びれるふうもなく、寒いので換気扇などの吸排気は止めているという返事が返ってきて俺を絶句させるのである。

 こういうことを言う使用者の厨房にはある共通点がある。
そこは開業以来結構な時間が経過している店舗で、売り上げが上がって多忙な時期があった。そのため調理に必要な燃焼器具をどんどん増設している事が大変多い。更に付け加えると、空調設備は手つかずで開店当初のものが流用されており、ひどい時には排気フードも設けられないまま設置されている燃焼器具も珍しくない。
 要するにちょっと儲かったからというだけの事で出入りのある厨房屋の口車に乗せられてむやみと燃焼器具を増やした結果、換気量が追いつかずに酸欠の状態がそこでは発生しているのである。
 おまけに冬期間になると換気によって厨房内の室温が下がるのを嫌って空調を止めて煮炊きをする大馬鹿者さえ珍しくない。
 燃焼には酸素が必要である。酸素が不足すると一酸化炭素が発生する。

 小学校の理科の時間に教わる事だ。調理場が寒くなるからという理由で空調を止めてバンバン煮炊きをし、酸素が不足して不完全燃焼を起こした器具が煤だらけになると修理屋を呼びつけてあれこれ文句を抜かして不便を訴える我が何の事はない、自分たちがその不具合を引き起こしているという自覚が全くない、小学生並みの知識さえない大バカ者だ。
 酸素の不測が燃焼器具の不具合程度で納まるのならまだいい、それが人の生死に関わる状況という認識はこういう連中にはなさそうだ。
「そういえば変な匂いがしてたなあ」などと臆面もなく口にするのを目の当たりにするとこういう輩に義務教育を施すのは本当に税金の無駄遣いだったのだな、と複雑な思いに駆られる。

 笑い事ではなく、過去においてはある飲食店で一酸化炭素中毒による調理師の死亡事故が起きた。季節は確か春先で燃焼器具のメーカーは確かマルゼンだったと記憶しているが、実地検証によると従業員が外調機を働かせずに調理を行った結果だと判明した。おそらく調理場の温度が低いのを嫌って横着したのだろうという推測だ。
 疑いをかけられたマルゼンにしてみればたまったものではないだろう。PL法などという厄介な法律のおかげであちこちの納入先で同一機種のCoの発生状況を調査する事に随分手を取られたという噂を聞いた事がある。

 今日の厨房というのはれっきとした機械設備であり、就労する人間には機械と接するための最低限の知識くらい雇用なり教育する側からレクチャーされているべきだと俺は真剣に思う一方、機材を納入する側は周辺環境も考えずに何でもかんでもむやみやたらと押し込む不見識な商売は止めてもらいたい。
 水や電気、空気などなどその機材を取り付ける周辺環境が妥当であるか否かなど小学生程度の知識でもかなりの部分、判断がつくはずなのだが。
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理科の時間だぜ [お仕事上のぼやき]

 某リサイクルショップからの依頼で,とあるペンションにスチームコンベクションオーブンの凍結防止の作業に出かけた。

 ブツはコメットカトウのCSS-2という製品で,2002年製。比較的初期の製品で随所に手探り風の設計仕様が感じられる。
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 インターフェイスには未消化な部分が散見されるが,お金のかかった手堅い造りのオーブンで素性はいい。

 実はこのオーブンはここに運び込まれる前,件のリサイクルショップで俺が一部補修と操作確認を行った物体だ。
 販売元はホシザキで,どこで稼働していたものなのかその来歴は不明であるが,リサイクルショップが買い取って動作確認を行ったところインバーター故障のエラーが出て運転できなかったのだ。
 コメットカトウの製品は伝統的に制御系統のパーツ類は富士電機製でほぼ統一されており、ここでは庫内ファンモーターの可変速用として汎用品が使われているのだが,何分インバーターというのはモデルチェンジのサイクルが早く,12年も前となると同一品は既にカタログ落ちしており,オーブンの製造元のコメットカトウにしても既に生産終了後10年程度を経過しているため同一品のストックパーツは既に在庫払底で、現行品のインバーターを送付するとのアナウンスがあった。

 汎用インバーターを単体使用ではなく,組み込み用として各種の付加機能を働かせるとなるとあれこれとややこしい内部設定を要するのは諸兄ご存知のことと思う。
 現場で手間取るのは避けたいので設定はコメットの側で済ませておいてほしい旨を伝えたがそれは叶わず,俺の手元には数十項目にも及ぶ内部設定の一覧表で、付属のマニュアルを見ながら現地で書き込みを行ってほしいとのことだった。
 俺が本職の計装屋で,年がら年中インバーターをいじくり回しているのならともかく,いきなりマニュアルと首っ引きで書き込みをしなくてはならないのだから大儀な話だ。
 大儀な話はそれとして,どうにかこうにか全部の動作確認にまではこぎ着けた,日頃触れることのない初見の機材というのはやけに手間取り,能率が上がらないものだ。
 それで、ようやく手を離れてやれやれと一安心していたところ約にヶ月経って再び俺のところには冒頭書いた依頼が来たというわけだ。

 リサイクルショップあてがいぶちの凍結防止ヒーターだけでは心許ない気がしたので俺も設備資材の問屋で同じものを一つ買い込み,多少の配管資材を携えて現場に乗り込んだのだが,入り組んだ内部配管を分解して凍結防止の処理をしているうちに何だかムカムカして来た。
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古い設計のため実装は筐体に収まりきらず,蒸気発生のためのスチームジェネレーターは架台の一部を利用して取付けられている。書き忘れたが,熱源はガス式であるため尚更大づくりになっている。

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 クエンチングの配管にテープヒーターを巻き付けて凍結防止処理をした図である。1/4インチの銅管がむき出しのまま機体内を走り回っているのだから水道の不凍栓を落とさなければならないような周辺環境下では凍結して配管がパンクするのは火を見るよりも明らか。

 厳冬期の寒冷地で,火の気のない設置場所で冷えきった床に寝っ転がり、手探り風に配管だのヒーター巻だのをしているうちに俺は何やら不条理を噛み締め始め,段々それは腹立たしいものに変わりつつあった。
 そんなところにこのペンションの従業員が現れ,今日は何時頃になったら取り扱い説明をしてくれるのかと訊ねて来たので俺はスイッチが入った。

 そんな依頼は受けていない,と俺は切り返した。
俺の受けた依頼内容は配管の凍結防止処理をしてくれというものであって,試運転だの取り扱い説明までの依頼は受けていないと言うと従業員はムキになってそのリサイクルショップが今日中に使える状態にすると約束したのだから時刻を明確にしろなどと抜かして詰め寄って来た。全くもってバカな奴らだ。

 いつの頃からか知らんがこういうバカが増えた。
ものを言いやすそうな奴を取っ捕まえて問いつめればそれで自分が何か大した仕事をしていて,自分の言い分が必ず実現するものだとでも思い込んでいるらしい大馬鹿者が本当に増えた。機会だの設備だのは理屈で動くものであって気合いだの願望だの感情論で何とかなるのなら誰も苦労なんかしないわい!
 床に這いつくばって配管作業をしていた俺がモンキーレンチを握って立ち上がると従業員どもの顔つきがこわばった。
 これが自分の得意先立ったら啖呵の一つも切ってやりたいところだが依頼元が介在しているのだからここは我慢、と自分に言い聞かせて俺は平常心を取り戻し、そのお話は納入元であるリサイクルショップとして頂きたいと伝えた。

 この剣呑さがどういう構図の元に成り立っているかというと、とどのつまりリサイクルショプのてきとうさ加減に尽きる。
 件の中古厨房機材屋は11月の末に動作確認が済んだこのスチコンを持ち込んだはいいが、冬期間には水道の不凍栓を落とさないとならないような周辺環境である事が考えに入っていなかった。それを従業員に指摘されて対策を講じると生返事をしてその場は切り抜けたものの他の事にかまけて放置しているうちに催促が入り、ペンションに対しては今日中に凍結防止の処置を終わらせて実用できるようにすると安請け合いをする一方で俺に対しては請け負った通りの依頼内容だと難色を示される懸念があるからさも簡単な仕事である風に頼み込んできた。それでこうして現場で従業員と依頼内容の齟齬についてもめる場面では頬被りを決め込んでいるという事らしいのだ。

 従業員との間の刺々しい場面はそのようにしてひとまず解消したわけだが、何度も来たくなる場所でもないので、理不尽な話だができるところまではやっていきましょうと俺はガスの開栓だの何だのと周辺の段取りをして試運転を始めた。
 10年以上も前に生産終了した旧型機であるせいもあって、試運転の際には幾つかの不具合が発生し、次に誰が来るのかは知らんがとにかく問題点の告知はし、時刻は既に夕方になっていたのでこの日はひとまず散開となった。

 帰り道で車を転がしながら俺は内心でモヤモヤしているものが何なのかと考え続けていた。
思い出してみるとそのオーブンは11月に俺がコメットカトウの依頼を受けて現調に行った時にも給水の銅管が変形して水漏れしていたのだった。
 最初に販売したのはホシザキで、最初の使用者の設置環境も冬期間には水道が凍結するような場所だった事をそれは示している。
 どんな因果か知らないが、廃却処分になるはずだっただろうそのオーブンを手に入れたリサイクルショップはこれまた寒村の山間にある掘建て小屋に毛の生えたような建物にこれを売り込む。

 世の中、電気製品だの住設機器だの、およそ給水配管接続が必要な機材全てについていえる事だが、氷点下の周辺環境でバンバン使ってくださいなどという謳い文句の商品などないと言っていいだろう。そして、
(1)大気圧のもとで水は0℃で凍る。
(2)氷結した水はある温度帯に於いて体積が膨張する
こんな事は小学校中学年くらいの理科の時間に教わる話だ。

 とどのつまり、給水配管のある機器類は氷点下となる環境に設置されるべきではない。水道の不凍栓を落とさなければならないような場所に置かれるべきではない。それは全くもって当たり前の大原則ではないのか。
 今回のオーブンに限らず、例えば食器洗浄機のポンプのケーシングに残ったお湯が凍結して翌朝運転したらサーマルトリップしただとか、製氷機の配水管が凍結してストッカーから排水が溢れて床が水浸しになっただとかいった間抜けな障害が俺の住む土地では後を絶たない。
 目先の金のためにとか、お手軽に横着をしたいとか言った低劣な願望は、高校や大学を出た立派な大人が小学校の理科程度の知識さえどっかに吹っ飛ばすくらい当事者を低能にさせるということだ。全くもって売る方も売る方だが買う方も買う方であって、こういう連中には『学校での勉強は社会での役に立たない事ばっかりだ』などと偉そうな口を叩く資格はない。
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プログラムリレーの活用は普及するのか [お仕事上のぼやき]

 このブログではこれまでに幾つか,オムロンのプログラムリレーZENシリーズのことを記事としてきた。

過去記事名とURLを下に列記しておく。

「また来た変な客」とは俺のことだ:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-02-21
プログラムリレーのスターターキットが届く:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-03-01
プログラムリレーにはまり続ける日々:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-03-10

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 購入後、仕事の合間を見てちまちまと独学でラダーを組むトレーニングにいそしみ、現在は電気熱源の食器消毒保管庫と小型の食器洗浄機の回路図が俺のパソコンの中にある。そういうものが書ける程度には俺のこのボンクラ頭も習熟はしたという事だ。
 当然だが、PLCは決してそれ一個で全てをコントロールできる魔法の箱ではない。各種のリレーとタイマー、カウンターとコンパレーターが主な機能であり、センシング機器などの外部入力や出力リレーや保護パーツなどは外付けとなる。

 ここで、例えばボックスタイプの食器洗浄機について、PLCで制御回路のラダーを組む以外にどういった制御パーツが必要になるかを列記してみる。(注)すすぎ湯のブースターは別置きで熱源はガスであり、点火動作やその温調機能や保持動作は別制御でありここには含めない。洗剤やリンスの供給動作についても同様。

*入力系
1:ドアスイッチ
2:電源スイッチ、運転スイッチ
3:レベルセンサー(フロートスイッチなど)
4:温調器とその感温部分、またはベローズ式のサーモスタット

*出力系
1:リレー(電磁弁などのための接点容量の小さいもの)
2:電磁接触器(ヒーター負荷用)
3:マグネットスイッチ (洗浄、すすぎ各1個)

 各メーカーや機種によって必要なものも不要なものもある。量的な過不足も当然ある。ここで列記したもののうちにはその機体に既に取り付けられている制御パーツを流用可能な場合もあるし新たに取り付ける必要が生じる場合もある。

 明らかなのは制御の系統をまるっきり新調するにせよ、機体に既についているパーツを流用するにせよ、ワイヤリングはかなり錯綜したものになる事で、補修パーツとして供給の見通しが立たなくなったコントロール基盤を放棄し、PLCを用いる事によって制御系統を構成し直す改造は純正パーツとしての基盤交換よりも高額な費用となる事は間違いない。

 そうなると、この手の改造を実行するかどうかは費用の出所である使用者の胸先三寸となる。金額によっては食器洗浄機のリプレースを勘案する方が現実味がある、という場面はあり得る。

 ここで視点を少し変えてみる。
PLCを用いた制御回路の構成による修繕は、対象とする機材の筐体の大きさによって、有効性を持ったり持たなかったりもする。
 俺なりの見え方をここで示しておくと、でかい箱を持つ機材ほど有効性はある。具体的な例としては搬入据え付け後に間仕切り壁を造作してしまったせいで搬出できなくなった冷蔵庫や食器消毒保管庫などだ。箱さえ生きていれば何とかなる性格があるし、配線や取り付けのスペースにも余裕があるので改造は楽だ。
 逆に、内部の実装密度が高い卓上式のオーブンやレンジ類などは制御ボックスを外付けする事になるだろうから機能面以外にもスペースファクターの問題が出てくる。

 雑駁な結論としては、制御基盤が損傷して補修パーツの供給が見込めない場合に於いて、PLCを用いた代替回路を構成するという改造には普及の見通しがない。

 最低でも15年以上の長期運用を念頭に置いた機材であるとか、購入した中古機材で制御基盤が損傷したとかいった例外的なケースを別にすればこういう改造は言ってみれば密教的な、カルトチックな、マニアックな、といった際物的な位置づけから脱する事はない。

 販売する側からすると、制御基盤の損傷でその供給が絶たれているという状況はリプレースの口実として格好のものであり、ここでわざわざ多額の費用をかけてこのような改造を行う事は、特に製造と直販を兼ねる機材メーカーにとってはあり得ない選択である。
 使用者側からすれば、厨房機材などというものは実売価格が崩れてすっかり砂漠化した分野なのだから、減価償却が済んで大崩れすればリプレースを考えることには大いに現実味がある。
 何よりもこういった改造の施された機体は当然ながらメーカーのサポート対象外となるわけだが、厨房機材の分野というのは未だに大変未熟で、使用者の自己責任に則って改造するというカルチャーは今のところ全くない。業務用厨房機材は自動車や家電製品と同等の品質を有しているものであってメーカーの設計なり所見は絶対的なものだという誤った思い込みは未だに根強く、これが変化する兆しは今のところ全くない。

 そういう事情で、今年の春以来俺が取り組んでいる諸々の制御回路が実務の現場で活用される見通しは今のところ全くなく、これは田舎の修理屋が半ばホビーとして取り組んでいる試みに終わるだろう。 
 カスタムパーツとしての制御基盤をやめてPLCに置き換える事には技術的には大いに意味がある。その最たるものは制御の系統がブラックボックスではなく、ラダープログラムという可視化されたものとして示される事で内部の解析が可能とされるところにあると俺は考えている。
 PLCの機種によっては脱着可能なメモリーカートリッジを持ち、本体と双方向で書き込まれたデータであるラダープログラムのローディングが可能である。そうすると、
(1)PLC本体のプログラムをコピーして持ち帰り、データを吸い出して改良を加える。
(2)PLC内部のラダープログラムが壊れた場合にカートリッジ内のデータをロードして復旧させる。
といった措置が可能になるので、レスキューの確率は高まる。 

一般に、業務用の厨房機材に使われる制御基盤のうち、ROMソケットを持ちプログラムの差し替えが効く仕様のものは皆無と言って良い。基盤の損傷は機材の使用停止と同義と言って良いのであり、ここを回避できる可能性は出てくるのである。

 俺は折に触れて同業者にPLCのお勉強を呼びかけてみた事があったが反応は全くない。修理屋の仕事はパーツの交換であって設計サイドの仕様を改変するなどもってのほかという思い込みはここでも強固であり、俺はここまであれこれ書いたが最大のネックはここにありそうな気がしている。
 しかしだ、ごまめの歯ぎしりみたいな話で少々みっともないが、業務用の厨房機材というのはどんな拡大解釈も許さないほど考え抜かれたものなのか?修理屋の仕事というのはただおんなじパーツを取り替えるだけの作業員でいいのか?それは向上心を放棄したある種の奴隷根性とは言えないか?それでいいのか?
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空調業者の範疇かも [お仕事上のぼやき]

 大雑把に考えて,冷蔵機器は周辺温度が30℃を超えると所定の性能は低下する。
何故そうなのか,という説明は俺のようなチンピラ修理稼業の者があれこれ能書きをたれるまでもないことであり,長くなるのでここでは省略するがとにかくまあ,そういうものだ。
 30℃とはまた何とも低い。それではちょっと暑くなればすぐに盛大に電気代を食うようになったり冷えなくなったりするではないかと思われる方はおられるだろうが,そうなのだ。
 冷凍サイクルを用いた冷却方式というのはそういうものであって,液冷媒温度が40℃という基準で機器の設計がなされている以上これは何をどうやっても曲がるものではない。だからちょっと暑い日が続いたり室温が上がるようなことがあれば冷蔵庫は簡単に冷えなくなったりするがこれは決して機材の不具合ではなく、製造元の製作した製品カタログにちゃんと謳っている。末尾の仕様一覧のあたりにルーペがないと読めないような大きさの字でこっそりとだが。

 困るのは購買者や使用者のみならず,冷蔵機器を販売する側のうちにさえこの大原則がわかっていない大馬鹿者が少なからずいることで,例年夏の厨房屋は凝縮不良で冷えない冷蔵機器の対応に追われるのだが、この不具合を俺の経験則に照らし合わせると大体以下のように分類される。

1:コンデンサーファンモーターの不具合,焼損などによる。これは純然たる故障。
2:使用者の横着によってコンデンサーフィルターが清掃されていない。これについては感情論のような揉め事が以前良くあり閉口したものだ。
3:室内換気が不十分な設置スペースに無理矢理設置された場合,及びレイアウト上の欠陥により放熱スペースが取れていないため発生する凝縮不良。販売した側で深刻な社内の問題を引き起こすが割を食うのはいつも末端営業所の社員であり,設計や施工には何の関係もないサービスマンである。

 ここ数日は暑い日が続き,冷蔵機器の修理依頼が多い。いつの間にか身に付いた職業上の性で,厨房屋はここで夏の到来を実感するのである。
 昨日の訪問先は某レストランで,依頼内容は事務所兼バックヤードである一室に設置された冷凍庫が冷えないというものだった。その個体は一昨年コンデンサーの洗浄を済ませているものであり,フィルターの清掃は習慣として根付いている得意先でもあった。約20年落ちの老兵であり,昨年は霜取りヒーターが断線して修繕した。その際気づいたのは冷却器を交換した形跡があり,とどのつまり何があってもおかしくないような機体ではある。
 
 訪問時,ランチタイムを過ぎた午後二時頃にあって庫内温度は-13℃を示していた。直前のドア開閉がどうであったかはさておき物足りない温度であることは間違いない。
 脚立をかけて機械部分を眺めてみる。低圧配管の保温材の裂け目から覗くとコンプレッサーの直前まできれいに霜がついているので冷媒漏れとかいった障害でないことは判明した。圧力ゲージの指示値は低圧側がやや高く,オーバーチャージの可能性を疑ったが外気温の上昇に伴っての不具合なのでここはやはり凝縮不良かと判断した。
 その判断の根拠は,体感的に室温が30℃以上あるのではないかと思えたからだ。
全てを主観に頼るのは良くない。俺は近くで事務仕事をしていたお兄ちゃんにここは暑く感じないかと訊ねるとやはり同じように感じるらしい。

 ここで一つ思案。室温は30℃以上ありそうで,現在冷凍庫は凝縮不良を起こしている。そしていうまでもないことだが冷凍機のコンデンサーというのはそれ自体が発熱物である。そしてコンデンサーの状態は洗浄を必要津するほどではないにせよ汚れている。グレーゾーンな訳だ。
 問題なのはこういう状況で,室温上昇の原因が冷凍庫それ自体にあるのか,それとも他の要因によるものなのかを切り分ける修理屋の判断能力ということになる。

 俺は自分がこの個体に関わった修理履歴を反芻してみて機体以外のところに問題があると判断した。
室内の何だか淀んだ空気が俺にそういう判断をさせた。天井を見ていると冷凍庫の直上には吸気用の換気口があり、空調工事業者の配慮が行き届いた施設であることをそれは表している。では給気はどうか?
 天井を眺めていると別のギャラリが目についた。既に冷蔵庫屋の守備範囲からは逸脱しているな,とは思ったが、だからといって俺はもう関係ありませんと切り捨てるわけにも行かない。ギャラリの開け方は見てすぐに見当がついたので開いてみた。
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 専門外なので名称はわからないがフィルターがついており,それは砂埃で詰まっているのが目視で明らかだ。
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 給気用のフィルターが詰まったせいで室内の換気量が低下し,冷凍庫のコンデンサーからの発熱で室温が上昇する。あとは悪循環が続いてやがて冷凍庫それ自体の室温が上昇するという連鎖で今回の不具合は生まれた。それが証拠に,ギャラリからフィルターの収まった枠を外すと冷凍庫のディジタル温度計は徐々に低い温度を示し始める。あんちゃんに言わせると室温も心持ち涼しくなってきたようだとのことだった。

 洗浄可能なフィルターだったので,洗い終えて設置場所に戻ってくると温度計表示は-18℃を示していた。設定温度までは後一息で俺の初見は間違っていなかったことになる。
 冷凍庫それ自体の不具合という予断に拘泥していたら泥沼にはまり込むはずのところだが今回そうはならずに済んだ。俺もその程度には年季が入ってきたのだよ諸兄。しかし,守備範囲以外のところに原因を求めた場合、他業者との間で色々と摩擦が生まれる危険はあるわけで,余程確信が持てるような状況でない限りあまりいい加減な憶測を述べるべきではない。

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奥の奥のそのまた奥 [お仕事上のぼやき]

 故障の所見は一度で確定すべきであって追加や修正が何度も出てくるのは修理屋の眼力が足りないからだ。
勿論俺も大した腕があるわけではなく,得意先に対してはやっぱりこうだっただとかこういう作業も追加で必要だとかいったエクスキューズは年がら年中出しまくりで恥の上塗りを重ねている。
 しかしここは苦しい弁解だが,嘘をついたり糊塗したりというよりも、自分の見落としを白状する方が職業人の姿勢としてはまだマシなのではないか。

 その電気フライヤーの修理以来が来たのは今月の初め頃だった。
とあるステーキレストランで、経営は農協のひもがついている。実はこのレストランは大体25年くらい前、あんちゃんだった俺が初めて新築施工の仕事を経験した現場でもあり、なかなか思いで深い。
 そのフライヤーは、オープン以来25年目にして初めて故障した。ヒーターが働かないというのがその状況だ。

 製造元がニチワ電機である事は機体のディティールを見ていて判別できたが何せ25年落ちだ。製造銘板はとうの昔に剥がれ落ちていているし何よりも既にニチワの製品ラインナップからはカタログ落ちしているらしく手がかりがないし同等仕様の後継機というのもカタログには見当たらない。3φ200V,6kwの卓上フライヤーというのはそんなに売れそうにない製品だろうか。

 故障した実機でまず目についたのは、過昇防止のハイリミットサーモが焼損しており、ヒーターのリード線が焼けて断線している事だった。
 ニチワ電機に問い合わせても古い製品なのでどうも回答が要領を得ない。俺の以前の勤務先も電気フライヤーは製造していたのでその補修パーツの転用を思いついた。ヒーター加熱の電気フライヤーは回路の構成も単純でどこのメーカーも全く同じと言っていいほど似通っている。問題の過昇防止サーモはパーツメーカー、型式、ともに全く同じものを使っており、その交換はいとも簡単に済んだ。

 それで試運転を行うと、分電盤の開閉器を投入したと同時にヒーターの通電が始まるので俺は慌てた。件の電気フライヤーには電源スイッチというものがない。油温のサーモには強制offのノッチがあり、使用後はサーモダイアルを0にする事のが使い方なのだが、開閉器の投入と同時に無条件で加熱が始まる。サーモを操作すると電磁接触器の動作音はするので接点が溶着しているという判断がここで成り立つ。
 しかしそのとき俺は過昇温防止サーモしか補修パーツを用意しておらず,既に油温もそこそこ上がっている。排油のためのバルブはついておらずヒーターを跳ね上げて油槽ごと取出す形式 なので本体内部を分解することはその時点で危険であり,店舗は既にディナータイムの準備にかかり始めたので事情を説明して翌日出直すことにした。 

 翌日,電材屋で見てもいない材料をヤマ勘で揃え再訪問となった。
さすがに電磁接触器は25年の間にモデルチェンジされており,外形寸法が変わっていたが物理的には何とか収まりがついたのでそれはいいとして,電源ケーブルの端子台が焼けて台の部分がバラバラになっていたのには焦った。電源ケーブルも被覆は焼けただれておよそ10cmくらいは芯線がむき出しになっており,これが空中でぶらぶらしているのだから短絡が起きなかったことはラッキーと言えるだろう。
 前日の作業に比べると,多少時間を食った理由は端子台や接触器といった計装パーツよりも焼損した電源ケーブルの始末に手を取られた。
 それで一通りの補修作業を終えたつもりになって試運転を行い,サーモの動作を確認しているうちに俺はあることに気づいた。
 油槽を眺めていると三本あるヒーターのうち一本からは加熱によって起こる油の対流が目視できないのだった。
 これは負荷であるヒーターはY結線されており,そのうち一本が断線していることを表している。(まだやることがあるのか)と俺は落胆した。サーモや電磁接触器のような類いならともかく,ヒーターとなるとカスタムパーツである可能性は高い。同一品をどうやって調達するかについて俺は悩んだ。

 そもそも,この状態を頭の中でざっと計算するに発熱量は定格の1/3以程度に落ちているので(Δ結線ならば大体67%くらいで済む)フライヤーは普通に使えない。再修理の上にこんな状況を使用者に告知しなければならないので気分が沈んだし,何よりもこれまでの経験則に頼るだけでヒーターの断線にまで症状が進行していることを疑わなかった自分のアホさ加減が頭に来た。
 一瞬,頭に浮かんだのはヒーターの結線を組み替えて単相運転を,ということだったがそれでは電磁接触器の接点容量が心配だ。俺は混乱しかかったが大変ばつの悪い思いでとにかく現状は告知し、先方はひとまず今日はその状態で使うとの回答だった。

 事態は翌日,意外な結論に落ち着いた。
断線したヒーター交換の作業は見送り,フライヤーは現状で使用を継続すると得意先は判断したのだった。ヒーターの調達をどうするかで一晩悩んでいた俺はびっくりして、改めて発熱量が低下していることを伝えると故障前と仕様感は変わらないと言う。
 そこで俺はまた混乱したのだが,話を聞き進めていくとどうも断線は今回の焼損の大分以前から発生していて単相運転の状態がノーマルなものとして刷り込まれてしまっているらしい。揚げ物の調理量は大変少なく,日に1,2度程度なので能力不足を感じないまま現在に至っているらしい。現に,昨日から今日の業務については何ら支障を来していないと言う。だから将来,揚げ物の調理量が増えたときに断線したヒーターの交換を行うことにして今回の修繕はここまでで一区切りとするというのが先方の結論だ、俺は拍子抜けした。

 所有者がここまででいいと言うのだからそれ以上とやかく意見する必要もないと言えばないのだが,ここで終わらせていいものかと気が咎めるのも事実である。商売として悪くはない金額で収まりはついたものの初見の段階で不良状態の全てを見通しことをしていなかったことはこれから先も職業人としてのしこりとなって残り続けるだろう。何というか,複雑な気分で俺は請求書を書いているのである。
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逸脱と困惑と [お仕事上のぼやき]

 俺のお仕事には常道というものが殆どないことはこれまでにも度々書いてきた。
まるでステージに上がるたんびに新たに台本を書かなければならない漫才師みたいなもので,おまけにそうして新たにこしらえた芸の抽き出しが次に活用できる機会はまず一生ないので最近大変やる気をなくしている。
 毎日毎日おんなじことの繰り返しで金を稼ぎ続けていられれば楽なのになあ,とぼやく昨今だ。このブログは今月に入ってから更新をさぼり気味な訳だが、手慣れないお仕事の依頼が連続していて俺は狼狽えまくっており,なかなかブログの更新に手が付けられないのがその実情だ。
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 上の画像に示された物体が何であるか,すぐに察しのつく方はそう多くないのではないか。
実は俺も,この物体の正式な名称がわからない。何というのかわからないしどういう理屈で動くものなのかもきちんと把握できていないにも拘らず俺はある事情からこの機械の修繕をしなければならなくなった。

 この物体ははんこ屋さんにある。
何をする物なのかというと,ゴム印のプレス成形を行う機械なのだそうだ。
どういう仕掛けかというと,まず,ヒーターが埋め込まれた鉄板(鋳鉄製)が上下にあり,この間にゴムシートと版型を重ねた物をセットする。
 下側の鉄板はでっかい油圧のパワーシリンダーによって下方から上に向かって押し付けられる。
鉄板に埋め込まれたヒーターはゴムシートが焦げないようにサーモで温調されており、プレスの時間はタイマーによって設定されている。
 諸兄がお仕事やら何やらで使うゴム印の,あのオレンジ色をしたシート部分はこれによってこしらえているのだ。

 この機体はその風貌が示すように,大変古風な物だ。
どれくらいの期間,稼働している物なのかはわからないが使用している計装パーツから察するに,まず間違いなく20年は働き続けているに違いない。
 故障の状況というのはパワーシリンダーからオイルが漏れるということで、勿論俺には油圧動作の知識などまるっきりないし、幾ら金のためなら出来ることは何でもやると日頃吹聴していたにしても業種が余りにも普段のフィールドとかけ離れているので最初は丁重にお断りしていたのだ。
 
 何故手を付けてみる気になったかというと,相手方の懇願に根負けしたのは当然として,何でも聞くところによれば製造元にその修理を依頼すると大阪からの出張修理となり,総経費は大体50万円くらいになりそうなのでもっと安価な解決法はないかと模索した結果,何の因果か俺の存在が浮上してきたということらしい。こういうところが田舎町なのだな。

 度々書くように金の力は偉大なのだ。
製造元に修理依頼すると経費請求は50万円くらいという話を聞いて俺の目玉は30年くらい前のギャグマンガのようにきっと¥マークになっていたことだろう。
仮に「合点承知,拙者はその半額にてケリをつけてご覧に入れましょう」と大見得を切っても25万だ。貧乏自営業としてはこりゃあ美味しいぜ。
 とは言え,油圧の知識はまるっきりないこの俺だから出来もしないことを請け負っても状況を混乱させるばかりで良いことを一つも生み出さない。

 結局,製造元からはパーツとともに詳細な作業手順の書かれた資料を送って頂き,俺は埃をかぶった実務書から油圧どうのこうのが書かれたところを拾い読みしてにわか勉強する絵に描いたような付け焼き刃モードでやったこともない仕事に臨んだのだった。
 
 結論から言うと,幸い俺程度の腕でも何とかなった。
本業だったら得意先の見ている前で虎の巻を開くなどというのは俺の挟持に反する番外編だが金のためだ,なりふり構ってはいられない。とにかく動くようにはした。
 一つ,作業上のことを書き残しておくと,この機械はいかにも鍛冶屋然とした造りで鉄の塊である。それで,固定にはビスやボルトではなくキャップスクリューが多用されているわけだが固定された上から塗装されている箇所が多く,塗料がキャップスクリューの凹みに流れ込んでヘキサゴンビットが入らない箇所が多く,難儀した。組み付け構造以前に塗料の掻き落としで苦労した。少なくとも外装部分はステンレスで出来上がっている厨房機材ではあまり経験しないことだ。

 備忘録風に断片的な印象を書くと,印章を製作するにはパソコンはMacで行うのが一般的なのだそうだ。この会社には6台中4台がMacだった。Windowsは事務とか経理の関係で使うのだとか。印刷や出版などでもオフィスでMacを見かけることが多い。デザイン関係では根強い支持があるらしい。

 最初に依頼を受けてから修理を終えるまでに迷ったり悩んだりして随分時間を食った。本業から逸脱した仕事をするのは何だか無用に疲れる。そしてまだ仕事は終わっていない。金の話をまとめておらず、修理作業もさることながらこれが俺を困惑させる最大の要因だ。幾らで請求すればいいものか。2万や3万では済まないが20万というわけにも当然いかない。何せ,今月中に話はまとめなければならない。はっきりしているのは厨房機材の修理よりは実入りのいいお仕事だということだ。
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修理屋と視力のこと [お仕事上のぼやき]

 先週,俺が会社員だった頃に設計施工したラーメン店から餃子焼き機の修理依頼が来た。
オープン以来13年が経ち,色々老朽化した機材はあるものの今のところリプレースは一件も発生していないし年がら年中何かが故障しているというわけでもない。手前味噌だが最初の機器選定なり貼付いている修理屋というのは結構運用コストに影響を与えるものだということをここで改めて強調しておきたい。

 餃子焼き機はマルゼンの製品で,俺からの見え方としてはこれが業界標準だろう。
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画像は本文とは関係ありません

 自動注水機能やタイマーの機能はないが,正直なところそんなものはあってもなくてもいい。

 修理の依頼内容はパイロットバーナーからメインバーナーへの火移りが良くなく,ガスだまりが起きるとのことだった。
 原因自体は単純で,パイロットバーナーのノズルが詰まっており,炎が小さいのでメインへの引火性が落ちている。書いてしまえばただそれだけのことだが、では実際に修繕に取りかかるとなると担当する修理屋によっては自分がもう曲がり角にさしかかっていることを自覚しなければならないこともある。

 当然だがパイロットバーナーのノズル径というのは大変小さい。俺のその数字をきちんと頭の中に入れていないが,ガス種がLPG(プロパン)の場合は0.1mm以下かもしれない。
 ラーメン店などで発生する燃焼器具のノズル詰まりについては、具体的にはその閉塞物は脂分であることが殆どである。
 多くの場合に於いてこの業種は厨房内の換気がいい加減なので稼働中はオイルミストが絶えない。加えて言うとコストの点から燃料は都市ガスよりもLPGが好まれる傾向が俺の住む土地で言うと圧倒的に多い。LPGの燃焼器具は一般に,一次空気を取り込むためのダンパーは全開であるからその状況下で燃焼器具を使用すれば必然的に混合管は一次空気とともに厨房内に浮遊している油脂分を引き込むのでこれがボトルネックであるノズルに堆積することで燃焼器具はどこかの時点でノズルを詰まらせる。

 先に書いたようにガス種がLPGの場合,ノズル径は大変小さいので閉塞物というか堆積物であるこの油脂分がメインバーナーの輻射熱で炭化してしまった場合、俺はノズルの交換と判断することしているが、幾らか粘性をもってグリース状の感触があればノズルの清掃を試みることにしている。
 ノズルの清掃には専用の掃除針が販売されているが,小さいものなのですぐに紛失するので都度都度買うのが面倒臭く,俺の場合はより線のきれっぱしから芯線を一本引っこ抜いて使うことが多い。
 
 今回の修理はノズル掃除で解決できそうな目があったのでトライしてみた。
店舗は定休日だったので厨房内は照明を落としており薄暗かったのだがさすがにその状況では直径0.1mm以下の穴に掃除針を通せなくなってきた。視力が足りず,ノズルの穴がぼやけて見えるのでNGで蛍光灯をつけると何とか判読できたので作業としては無事終了となった。
 様子を間近で見ていたオーナー殿は何か感心したように俺の作業を眺めていた。
裸眼でパイロットノズルの掃除をしていることで俺は視力を褒められたのだった。俺は近年,視力の低下が進んできており昨年などは自動車の運転免許更新の際の視力検査に弾かれるほどになりつつあるのだがそれでも実務面ではまだ何とかなってはいる。

 若い頃,例えば20年くらい前だったら照明が消えていて薄暗い中でもこの作業は出来たように覚えている。今の俺は照明なしではパイロットノズルの掃除は出来ない、その程度に俺の視力は低下しているとも言える。この先ルーペを必要とするようになれば,そこでまた一段,身体能力はダウンしたことになるのだろう。
 LPGのパイロットノズルを裸眼で掃除できるかどうか,というのは厨房機材の修理屋にとって一つ,現役度合いの指標たり得るのではないかと結構以前から俺は漠然と考えていた。

 視力の低下は仕事に与える影響が甚大だ。
燃焼器具の修理のことだけを俺は言っているわけではない。ゲージの指示値を読み取る,機材の電気ボックスに貼付けられた配線図を読む,などなど視力の低下が修理屋の業務に影響を与える範囲は多岐にわたる。
 同年代の同業者は老眼の始まった人が多く,会社勤めをしていると営業職に軸足を移すケースが多かった。早い時期から視力の低下した同僚なり先輩は技術系で言えば修繕よりも現場施工に移っていった人も多い。修理屋で現役を続ける人は胸ポケットに老眼鏡を入れている様子を何度か見かけた。
 大体共通して言えることだが,配線図を読むのに難儀するようになると修理屋はモチベーションを保つのが大変困難になる。腰が痛いとか肘が痛いとかいうのとは異なり,精神的に凹むもののようだ。健常な視力というのは修理屋の生命線だとこのごろ強く思う。

 最近の機材は家電製品のように,殊更配線図を読めなくてもパネルに表示されるエラーコードに従って不具合の特定を行うものが増えてきた。加えてサービスマンという業務はなかなか若い人材が育ってこない分野でもある。しかしエラーコード頼みの故障診断が蔓延するのは決して視力の衰えて来たベテランのサービスマンに対する配慮ではないのは間違いないところだ。
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困った制約のもとで解決策を思案する [お仕事上のぼやき]

 このブログでしばしば登場する某総合病院に出入りさせて頂くようになってから,考えてみるともう20数年が経つ。間を置きながらの散発的なものではない。年がら年中,ひっきりなしに,もう自分の家にいるよりも院内にいる時間の方が長いんじゃないかと思えるくらいの20数年である。
 20年以上も出入りしているのだからどんな修繕の依頼だろうが目をつぶってでもスイスイこなせるようになるのかと言えば全くそんなことはなく,良くもまあこれだけいろんな不具合が出るもんだと年がら年中頭の中をショートさせて脳天から煙を上げ続けているのがここ20数年の俺の姿なのだ。

 毎度憂鬱なオペ室での修繕である。
一体全体何の因果で厨房屋の俺が医療機器の修繕までしなくちゃならんのかと頭が痛いのだが,先方にすれば修繕費を安く収めたい事情があるし,俺には何といっても金が必要だから背に腹は変えられない。人の生死に関わるようなブツの修繕などスルーしたいのが本心だが事故の際の保険はかかっているから,という先方の説得がかろうじてこの場所でのお仕事に俺を踏みとどまらせている。金の力はかくも偉大だ。

 オペ室の風景とは下の画像のようなものだ。本文とは関係ない画像だが。
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 個別に置かれている機材はさておき,困るのは壁面に埋め込まれた機材だ。どう困るのかについてはこれからグチグチ書く。

 本日の依頼内容は,保冷庫(冷蔵庫)から排水が漏れるというものだ。
訪問時,既に電源を止めてから一昼夜以上が経過しているため依頼内容の確認は出来なかったが,他の手術室での前歴から察するにキャピラリーチューブあたりに閉塞が起きて冷却器の着霜が入り口側近辺に偏る結果,氷塊ができて成長し,排水配管を塞ぐためドレンパンから溶けた霜の排水が溢れるという経過が想定される。

 この状況で大変困るのは,手術室内では火器使用が出来ない点にある。
 某総合病院に限らず,オペ室という場所には一般にスプリンクラーなどの消火設備がない場合が多いのだそうだ。何故ならそれが作動した場合,被水した医療機器は使い物にならずその被害は数億円に上るからなのだそうだ。厨房機材の修理屋の金銭感覚からは圧倒的にかけ離れた数字であり,火器使用は御法度という事情にも何となく腑に落ちるものはある。
 冷媒管系統での補修には,特に今回のような200W程度の小型冷凍機の場合は溶接作業がついて回る。個別に据え置かれている機材はオペ室から搬出して作業すれば済む話だが建築造作の壁面に埋め込まれている場合はこれが出来ない。

 以前別室で同様の障害があったときは冷媒のオーバーチャージで誤魔化して無理矢理低圧の蒸発圧力を合わせて切り抜けた。いまだにいつかコンプレッサーが焼けはしないかと不安を燻らせながら俺は過ごしているが、8年前に別の業者が提出した修繕の見積りが7桁だったことを思えばこれでもまだ良心的な措置なのだと自分を無理矢理納得させている。

 運が良ければ,冷媒管の真空引きによって閉塞が取り除ける時がある。
「時がある」という言い回しから諸兄には察して頂きたいのだが大抵の場合NGだ。ドライヤーやキャピラリーの閉塞はポンプアウトだけでは救えない場合の方が多い。
 とは言え,何といっても火器使用は御法度の場所だし,食品関連の冷蔵機器よりはギャラがいいので俺はいそいそとサービスバルブを取付けて問題の保冷庫を運転してみた。
 圧力ゲージの挙動は閉塞の発生を示している。ギャンブラーの気分で冷媒を回収して真空ポンプを繋ぎ,ポンプアウトを始めてから待つ事しばし。通常の修繕なら屋外に出て煙草を吸って時間を潰すところだが何せ術衣に着替えての場所なのでそういうことは出来ず,退屈な時間が過ぎる。

 再運転にあたって懸念したのは,処置前に真空運転していたことによってコンプレッサーが過熱していかれてはいないかという点だったのだが俺の不安は的中し,始動電流11Aが流れ続けてOCR(Over Current Relay;過電流継電器)が働き,俺は大いに凹んだ。
 コンプレッサーの交換となれば溶接は必至だ。フレアーユニオンを用いての代替措置についてあれこれイメージしつつ,沈黙を続けるコンプレッサーを睨みつけながら頭を悩ます。



 思案しているうちにコンプレッサーは何故か始動し,低圧側のゲージ指示値はじわじわ下がり始めた。
ここで0Mpaあたりを指示するようであればポンプアウトの効果はなく,冷媒のオーバーチャージで誤魔化す局面だが幸い,ゲージ指示値は0,1Mpaあたりでサチったのでひとまず俺は安堵した。
 とは言えコンプレッサーの挙動は心許なく,定格電流値1.8Aに対して実測値は2.5Aと完全にオーバーしている。一旦浮き上がった気分が再び沈む。上がったり下がったりで落ち着かない。

 俺の所見はこういうものだ。
 冷媒管の閉塞によって流量の低下と蒸発圧力の低下が起き,冷却器入り口近辺に氷塊が形成されることによる排水管路詰まりであり,冷媒管のポンプアウトにより閉塞の状況は解消されたがコンプレッサーは定格に対して過電流の状態での運転が持続しており,将来的には焼損の発生が予想される。

 正常な蒸発圧力が得られたことで修理終了とするか,将来的に予想されるコンプレッサーの焼損を想定してこれを交換するところまで作業範囲を広げるかは使用者の判断であり,俺の立場としては将来的な懸念事項を伝えるところまでとしておくが、前者であれば不安を燻らせる要因がまた一つ増え,後者であればし慣れない修繕作業に取り組むことになるわけで,俺には本当にいつまで経っても円熟とか熟練とかいう言葉が似つかわしくないのだ。きっと一生こうしてオタオタしながら手探りでやっていくのだろう,そして俺の精神は更に更に擦れっ枯らしの度合いを強めていくのである。
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自衛隊の電話に関する奇妙な出来事 [お仕事上のぼやき]

 午前中に駆け込みの修理依頼があり,陸上自衛隊の某分屯地糧食班がその現場とのことだった。本日中に修理訪問してもらいたいと依頼主は希望する。

 予定は押し気味なので訪問時間を確約できない,と俺は予防線を張った。当然のことだが。
いつもおんなじことを,これは何万回でも書くが修理屋は宅配ピザ屋じゃねえんだ。取りかかる前から所要時間の読めている修理など幾らもない。そんな用事が一日複数件あれば終盤の訪問予定時刻など読めたものではない。
 これについては書いているうちにだんだん頭に来てとりとめがなくなるのでここではこれ以上書かないが,恐らく夕方,午後5時過ぎのどこか、と答えておいた。

 分屯地は山奥にあり,俺はこれまで一度も訪問したことがない。道を間違ったりして時間を食うと困るので以来元には訪問先の電話番号を聞き出しておいた。
 それで夕方、案の定土地勘のない俺は道順を教えてもらおうと午前中に教えてもらった番号宛に電話をかけた。

 呼び出し音の後、電話に出たのは中年の女性とおぼしき声の持ち主だった。
何故かその女性は「はい」としか言わない。公僕の分際で随分態度のでかいババアだと俺はかちんと来ながらも自分の身分と用件を伝えた。
 「はあ?」と中年女は不審そうな声を出した。陸上自衛隊の分屯地ではありませんかと俺が問いかけると言下に否定されたので俺は間違いである事を詫びて電話を切った。かけ間違いかと依頼元に聞いた電話番号をメモ帳で確かめ,携帯の発信履歴と照合したが相違はない。 

 ばつの悪い気分で依頼元に電話をかけ直し,改めて分屯地の電話番号を教えてもらったが伝わっている電話番号に違いはないので俺はだんだん訳が分からなくなってきた。
 教えてもらった電話番号にかけると全然関係なさそうな誰かさんのところに繋がってしまう旨を伝えると、やっぱりそうなんですかと依頼元が応えた。
 彼の言うところによれば、分屯地からは毎度その番号で着信があり、男性の声で連絡が来るのだがこちらからかけると何故か決まって件の中年女が電話に出てうちは違いますよと無愛想な受け答えをするという。

 たまたまこの時は依頼元の所長殿が俺の居場所の近くにいたので落ち合い,問題の分屯地まで先導してもらうことでことは済んだ。
 しかし電話の件は何だか釈然としないままだ。

 この分屯地は弾薬庫であり,当然ながら外部に対しては警戒を要する物騒な場所な訳だが電話の回線も繋がりにくくなるようなわけのわからん細工がされているということなのだろうか。
 間違って電話が繋がる先のおばさんは一体どのような人物かについて妙な関心が湧く。もしかしたらこういう間違い電話をさばくことをお仕事とする防衛省職員なのではないのかなどと俺の妄想はダラダラと展開される。

 自衛隊の電話といえばもう一つ思い出したことがある。
考えてみると,キャンプの中で仕事をしている最中は携帯電話が鳴らない。衛門を出てから携帯の着信画面を見ると表示が出ていることがあった。
 嘘だかほんとだかわからないが,キャンプの敷地内は圏外となるような,ジャミングというか何と言うかそういう仕掛けがあるとかないとかいう伝聞を耳にしたことがある。いずれ機会があれば待ち受け画面を見て確かめてみたい。

 付録でもう一つ。
施設の性格上これは当然だが,自衛隊施設内で写真撮影をするにあたっては当然ながら事前許可を要する。俺が勤め人だった頃に隊員食堂のカフェテリアを施工し,カメラマンを雇って竣工状態を撮影するときには結構ややこしい手続があったように覚えている。
 しかし,今日日,携帯電話にはお約束のようにカメラ機能がついているわけだが入門時にこれをチェックされたことはない。職員に見つからなければ携帯電話で部隊内は幾らでもこそこそと撮影できる。自衛隊もお役所の一つであり,時代の流れの遥か後ろの方で動いている業務形態なのだな。
タグ:自衛隊 電話
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