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在庫の現金化に励む 2 [日記、雑感]

 これまで何度か取り上げた事のある某国立病院で稼働中の温冷配膳車は松下電工製のもので,修繕の際に融通が利かないとか何とかいう理由である時期から俺が修理を受け持つようになった。
2.gif
画像は本文とは関係ありません

 不運なことに,その病院に収まったロットの個体は膨張弁が詰まって冷えない不具合が納入後二年くらいから多発した。

 膨張弁は配管溶接で取り付けられているため、修繕の道具立ては厨房屋にしては結構大掛かりなものになる。
 俺は商売だから金のために修繕を行うのだが、こういった比較的費用のかかる修繕を要する障害が保証期間が切れて幾らも経たないうちに多発するようでは使用者の立場としてはたまったものではないだろう。
 この配膳車は冷蔵室が3室独立しており、冷却器と膨張弁もそれぞれ3個ずつの構成である。納入されたのは3台で合計9カ所の膨張弁がついている事になる。
 正確な数は思い出せないが膨張弁の詰まる障害が起き始めたのは3年目位からで、その後3年くらいの間に5カ所かそこらは交換したと思う。

 製造元の松下電工は販売店でもない俺のような野良犬業者に対しては対応が大変冷たい。
まあ、松下という企業の技術的な問い合わせに対する対応の陰険さは昨日や今日の話ではないのであって今更ここでグダグダ言っても始まらないのだが、俺の知る限り国内電器メーカー中最低だと考えている。
 純正パーツである膨張弁を取り寄せるにしてもああでもないこうでもないと御託を並べ、散々待たせるだけ待たせておいて補修パーツは定価販売ときた。これが日立や東芝なら俺に対する仕切価格と末端宛の販売価格が明示されてくるのだが松下はそうではない。

 おまけに純正パーツであるのをいい事にその価格は安くない。純正とは言ったって勿論松下が社内で膨張弁を制作しているわけなどなく、冷媒管工事関係者にとってはお馴染みの富二工機製で、R-22,0.3t,内部均圧式で何の変哲もないカタログスペックである。
 汎用品として販売されている膨張弁との違いとはその外見で、本体と感温筒を結ぶキャピラリーが短い事と接続用の配管が短い事くらいしかない。要するに外寸を切り詰められるだけ切り詰めた、ただそれだけだ。
 しかしその実装は特段窮屈な場所でもなく、一度などは導入後4年ほどで故障した機体の膨張弁つまりで納期があんまりかかるので仕方なしに在庫していた手持ちのフレアー接続の膨張弁で代用した事があったがその後6年経っても何のトラブルも起きていない。パーツの価格は4割くらい純正品が高価なのだから笑わせる。

 実際のところ、今日日は配管のシール剤に優れた素材が沢山出回るようになってきたので接続箇所からのガス漏れの可能性を低減するために溶接タイプの膨張弁という仕様には大して説得力がないと俺は考えている。
 溶接だろうがフレアーだろうが取り付けスペースには差がないのだし、不具合があって交換する時には溶接機を持ち出さなくてもモンキー2丁で事が済むのだからかえってフレアー接続の方が有り難いくらいだ。

 そんなわけで俺は以後、その病院での配膳車修理の際には胸くその悪い松下電工から純正品の膨張弁を仕入れる事をやめて日頃取引のある問屋から汎用品を仕入れて済ませるようになった。
 修理屋の良心として、当然ながら仕入原価の低減は修繕費に反映させて頂く。配膳車に限った話ではないがどんな修理であれ同一スペックであれば代替品の方が安く済むと修理屋に言われて高価でも良いから安心のために純正品を使ってくれというリクエストは今のところまだない。
 
 但し、この修理が多発するせいで一個は持っておこうと数年前に取り寄せた純正品の膨張弁が一個、俺の作業場の肥やしのようになって眠り続けていた。俺はそれを大変忌々しく思い、なるべく思い出さないようにしていたのだった。何しろ奇矯な形状なので配膳車の補修用意外には殆ど使い道がなく、肝心の某国立病院でもここ3年くらいは同種の障害が起こっていない。

 そんな中で最近、数年ぶりに配膳車の膨張弁が詰まって冷えない故障が起きた。
当然俺は作業場の肥やしに成り果てた件の膨張弁の事を思い出して出庫する事にした。
IMG_3919.1.jpg

 画像は交換直後の様子である。左上に見える金色の物体が俺の長期在庫品で下方に見える同一形状のものが故障品だ。さすがに10年使っただけあって真っ黒に変色している。

 前段で書いたように純正品の膨張弁は外寸を無理矢理切り詰めているために接続用の配管が短く、溶接が大変やりにくい。同業の諸兄は既にご存知と思うが冷媒管のヤクモノを配管溶接する際にはトーチの熱で破損する事を防護するためにパーツに濡れた雑巾などを巻き付けておくが、接続配管があまり短いと接続箇所の温度がなかなか上がらず、溶接に手こずる。
 画像を見て頂ければ容易に判断できると思うが、膨張弁の周辺はスカスカに空いていて何もこんな、無理矢理小型化した特注品でなければならない必然性は全然ない。値段は高いし取り付けはやりにくいしていい事など一つもないのだ。

 ともあれ俺はこうして一点、作業場の肥やしをマネタイズできてちょっと嬉しい気分な訳だが、あらためてこういった有象無象を眺めていると俺の決して多くはない稼ぎがこういったわけのわからんパーツ類に化けて眠り続けている事にがっくり来る。商売を始めた頃からこういう状況を薄々覚悟はしていたがこんなやり方では俺は金持ちになれない事は間違いない。
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コメント 6

49C

はじめまして。
このblog初めから読ませていただきました。色々と苦労されているようですね。
その松下製の配膳車に搭載されているコンプレッサーは横型のロータリーですか?
by 49C (2014-03-13 02:33) 

HarryTuttle

49C様、はじめまして。
読んで頂いて有り難うございます。
仰る通り苦労は絶えず、しかもその殆どは報われる事がありません。
コンプレッサー形式についてはご指摘の通りです。
それでは。
by HarryTuttle (2014-03-13 07:37) 

くるみ

温冷配膳車って とても大切です!故障したら大変なので 治してくれるHarry Tuttleさんの存在は神様ですね(^^)d。それにしても松下さんは そんなに高飛車なのですね…。そんな裏事情も大変面白いです( ̄▽ ̄)b。
by くるみ (2014-03-13 08:48) 

007

以前松下のサービスセンターに電話で問い合わせしたところ、回答出来ないので諦めて、、、

直接製造工場の品質管理部に電話して、そこの技術者と話しました、、、
大変に分かりやすく、それ以上の収穫があり感激でした!!!
一部小生には理解できない文言も出て(恥)、流石に”品管”の方だと思いました、、、最後に「ここまで追求して、電話をかけて来る人は珍しい!」と言われましが、、、おかげで疑問が解け、その晩は熟睡出来ました、もちろん今ではその分野の一部に限れば、現場で胸張って理屈をこねることができます(他事はちと怪しいけど)、、、。。。
by 007 (2014-03-14 05:28) 

007

PS,

小生も肥やしを所有です(汗)、、、
やや高価な部品と、かなり高価な道具を!、、、
未だに出番がありません!!

在庫管理と道具の見極めは難しいですね、。
by 007 (2014-03-14 05:32) 

007

PS2

ある種の照明器具の場合、大手パナ電工は中小企業からのOEM部品を仕入れてモノ造りをしています、、、

修理の時は純正が入手困難の場合があり、、、
1.製造中止後のため、代替品のお勧めになる。
2.部品が存在してもパナ電工は在庫せず、OEM元に存在したとしても電材卸や個人とは取引しない。

で、他のメーカー部品に合う(電気的特性)ものを改造して取り付ける場合があります、、、製品が高価なものは修理の方がやはり安いし、商業施設の場合はずらり並んだ器具の美観的統制を維持するためですが、。
by 007 (2014-03-14 05:47) 

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