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2013年夏の終わりに [修理屋から見た厨房機材]

 本記事は8月の終わり頃に書きかけたのだが,あれこれと忙しく書きかけのまま放置されていたものに加筆したものである。暮れも押し迫った今になって夏の終わりもないもんだがひとまず書き残しておく。

 勿論毎年夏はあり,その始まりも終わりもあるわけだが俺の生息地ではそろそろ半袖では心許ない時期に入りつつあり,特に今年思いあたることがあったので一つ書き留めておくことにした。

 冷蔵機器の修繕を生業とする者にとって夏はかき入れ時である。外気温に伴って室温も上がるので真夏日などは特に凝縮不良による障害が多発する傾向がある。
 凝縮不良が発生する原因は、冷蔵機器の導入直後である場合に於いては周辺環境を無視した無茶なセッティングであり,対処法としては修理以前の問題となる。それは納入業者の無知が招いた問題であって俺のような修理業者の知るところではない。
 一定期間以上の運転歴に於いて発生する凝縮不良の場合,多くは使用者側の杜撰な運用管理に問題があり、特に夏季の真夏日に於いて発生するのは殆どの場合コンデンサーの掃除をろくすっぽしないまま放置していた結果だ。怠慢な使用者の中にはコンデンサーフィルターの掃除さえもせず放ったらかしにし,障害が出てから慌てて修理屋に電話をかけてきて矢の催促をする。それで修理屋は現場に向かうわけだがフィルターの清掃で済む話だから作業などはものの10分程度で済んでしまう。それで出張経費を請求するとただ来ただけで殆ど何もしていないのに金を取る気かとか何とか抜かしていきり立つ大馬鹿者が多い。

 30年近く前に遡ると冷蔵庫の製造元にも問題があった。
使用していればだんだんコンデンサーは汚れてそのうち凝縮不良が起きることくらいわかり切っているにも関わらずコンデンサーフィルターを標準でつけずに別売部品とし続けていたからだ。せいぜい数百円のものなのだからタダでつけてくれても良さそうなものだ。
 得意先も得意先で,僅か数百円のフィルターでさえそれが別売だとなると販売元がまるで強欲な便乗商法であるかのような詰り方をする奴が少なくなかった。冷蔵庫の購入後,2年かそこらでコンデンサーの詰まりによる凝縮不良が起きるたところに呼び出されたサービスマンは全く気の毒というしかなく,一時間以上もかかるコンデンサー清掃の作業が終わってからバイヤーが代金のことでゴネまくり,作業費は請求できずに会社に戻れば無用のサービスということで上役には怒られで踏んだり蹴ったりという一幕はあった。

 製品に標準でコンデンサーフィルターが付属し,その定期的な清掃が使用者の責任として敷衍し、定着したたのはようやく20年くらい前だ。現在では余程横着な使用者でない限りコンデンサーフィルターが詰まって凝縮不良という場面は多くない。
 しかしフィルターは所詮網であり,網の目よりも細かいゴミはフィルターをすり抜けてコンデンサーに堆積し,どこかの時点で凝縮不良を引き起こすので修理屋が登場してコンデンサーの清掃をしなくても良くなったわけではない。この件についてのオンコール件数が減ったというだけであってこれがなくなることはない。

 使用者側の意識の変わり方は以上のようなものだが保全する側はと言うと,長らく頭の切り替えが出来ずにいた。
 諸兄にとっては意外かもしれないが,冷機器メーカー以外,厨房屋は冷機器の修理については貫徹できる会社がない。溶接機を持ち出してガス漏れやコンプレッサー交換の作業が出来るのは個人レベルのごく限られたケースであって、通常一般、厨房屋のサービスマンが出来る冷蔵庫の修理というのはせいぜいファンモーターの交換くらいであって、コンデンサーの清掃作業はようやくここ数年,自分たちで出来るようになり始めたというのが俺からの見え方だ。

 技術職の端くれとして言わせてもらえば,コンデンサーの洗浄や清掃などは修理のうちに入らない。そもそも,コンデンサーの凝縮状態が正常であるか否かは出口配管を触れば判別可能であって格段機材や判断基準を鍛えるためのトレーニングが必要なわけではないし、清掃作業自体もそれは単なる労務であって特段技能が要求されるわけではない。せいぜい脂汚れなどがひどく,薬品洗浄する際に電気部品に水がかかって漏電や短絡が起きないように注意深く養生する程度のことしかない。

 この程度の労務ではあるが、俺の周辺では昨年あたりからやっと,厨房屋であれば誰でも手がける仕事となったように見える。
 厨房屋というのは,俺自身が身を置いていながらこんな言い方で何だが貪婪な人種が多い。会社自体にそういう体質がある。一回手にしたものは何が何でも手放そうとしない傾向はある。
 冷凍機器のコンデンサー清掃という業務は今年,俺は一件も手がける事がなかった。という事はこれらは現在,厨房メーカーのサービスマンなら誰でも違和感なく,外注業者に依頼する事のない,自分たちで解決可能な作業となった事を表している。転じてそれは俺の収入源のうちが失われた事をも表しているわけで,貧乏自営業者である俺はこれを補填する収入源を求めてあちこちをうろつき回る事になる。

 これ以上の事は何か書いても収入源を失ったいかがわしい自営業者の負け惜しみとしか受け止められそうになく,俺としても不本意なのでここで終わり。まあ何かしら飯の種は転がっているだろう。
  


 
フィエスタ

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007

先般、ガス風呂釜を診てもらった時、、、
「見積もりは有料です!」とその業者は自らハッキリと強い口調で言いました・・・「今はそんな時代ではない、、、」そうで、、、

結局製造後18年位で、しかもプロパン仕様を都市ガスに変換後も使い続けていたわけで、新型専用品に更新を依頼しました。

過去のパロマ事故にて、厳しく規制が掛かり、一律に10年経過した品は部品供給も駄目だそうで、、、サーモカップル不良の自宅の風呂釜は新型に成り、使用感も快適です。

部品不良を指摘した小生に対し、業者はモンスターユーザーの話をしだし、大分頭に来てる印象で、、、
例えばホームセンターで安売り品を購入し、取り付けを頼んで来て、結果使用感が不満である理由付けをして、取り付け費の無料を主張するそうです、、、
小生も、温水便座の取り付けを相談されて断った事があります、、、
一見さんでヤバイ感ある仕事は断るようにして、負の連鎖を遮断してます、、、
仰る通り、コンデンサの清掃を軽く診るユーザーは、昔H社サービスマンの時代に経験しましたが、結構しっかり請求した記憶があります。
by 007 (2013-12-15 07:54) 

くるみ

私達人間に例えると…自身の不養生で不調を感じ お医者さんに行ったり人間ドック受けたりして、異常なし♪となっても お金は払いますよね(^^ゞ(笑)。しかも隣接する薬局に処方箋を持って行ったら 薬代だけじゃなく指導料?みたいのも取られるけど黙って払いますよね。定期検診のように 機械のメンテだって有料なんだと 当たり前に思って欲しいですね( ̄▽ ̄)b。
by くるみ (2013-12-15 10:49) 

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