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近況など [日記、雑感]

 随分長いことブログをさぼり続けていたので、記事の更新は何だか家出息子の帰還のようでいささかバツが悪い。

 こうして一旦,キーボードを叩き始めてみると,頭の中には次から次へと更新をさぼり続けていた弁解みたいなものが出てきてまとまりがつきそうにないのだが,身辺事情を書き留めておくと持病の腱鞘炎の状態が良くない。
左手中指のバネ指が一向に緩解せず,恐らく年内に手術を受けることになりそうな雲行きである。
 人間,年齢と共に体質も変わるものらしく,痛む箇所に湿布を貼ったらかぶれてしまい,火傷のような状態になってかえって酷いことになった。主治医からの助言はなるべく手を酷使しないようにとのことで、こうしてキーボードを叩くのも控えるのが好ましい,とのことだ。

 しかしだからといって手を動かさずに食っていけるわけはない。俺はそういう生業の人間ではない。
何かを握っていないと俺の時間はお金を生まないし,お金なしでは勿論生活していけない。

 ここ数ヶ月,俺のお仕事の内容は仕事仲間の手伝いが増えた。それは数日を費やすような現場施工が多く,終日拘束されるような類いの工事だ。よって,直接取引のある従来からの得意先の皆様に対してはその分,対応が遅れており,ご迷惑をかけていることはこの場を借りてお詫びしておきたい。
 
 生活のサイクルも随分変わった。これ迄の俺は夜型の生活で来ており,大体午前中はこのブログを書いたりしてぼーっとしながら過ごし、昼飯を食ってからやおら仕事に取りかかる毎日だったのだが,仕事仲間の手伝いを始めるようになると早寝早起きの生活となるのでそれ迄記事の更新に充てていた時間はとりづらくなってしまった。

 手伝いの最たるものは来年度竣工の学校給食共同調理場の移転新築工事で,これは大阪の中西製作所からの応援依頼があり,しばらく現場に缶詰になっていた。食数は1万6千か8千食くらいだそうで,国内有数の規模であるらしく、この先,俺はこれより大きな厨房を見ることはない。今月半ばにやっと施工から解放されてこれ迄の生活パターンに戻りつつあるというわけ。

 あらためて思うに,俺の行動のモチベーションはおよそほぼ全てと言っていいくらいフラストレーションの発散を目的としている。このブログを始めた動機もそうだった。7年前も今も俺の内部や周辺にはウンザリするくらい沢山の不条理があり,俺は年がら年中苛立ったり憔悴したりし続けていてこれはこの先一生変わることはない。
 だからこうして,手術を控えた腱鞘炎を抱えた身の上ではあってもキーボードを叩かないではいられないことを今,あらためて実感している。

 漠然としてはいるが俺にはかなりの確信があり,この先の人生に於いて悠々自適の年金暮らしは出来ない。死ぬ迄あくせく仕事に追い回されてある日ある時,どこかで野垂れ死にするのが俺の運命なのだといつの頃からか思い込むようになった。
 

 俺には家族もなく,天涯孤独のような身の上だが自分が死んだ後にこのブログが他人に読まれるときのことを考えると何だか妙な気分になる。更新をさぼり続けていた間に頂いたコメントを眺めていてふとそのことを思った。 
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謎の携帯メール [困った客]

 俺の商売は決して順風満帆とは言えない。食うのがやっとというのが実情だ。
だから得意先も決して多くはない。件数を数えたことはないが実数を知ったらきっと余りの貧相さに凹んでしまうだろうからやらない。

 依頼の電話がひっきりなしに鳴ることもない。もともと得意先が少ないからだ。ようするに暇な稼業なのだ。だからこうして平日の真っ昼間からのんべんだらりとブログなんぞにかまけてもいられるわけだ。

 ところで昨日夜,俺の携帯電話にあるメールが届いていた。
俺は自分の名刺にはパソコンと携帯電話のメールアドレスを併記しているが実際に仕事上でのメールは殆ど全てがパソコンに届くのがこれまでの状況で,携帯には結構ジャンクメールが多いので危うく問答無用で削除するところだった。
 送信元のアドレスから察するに,それは携帯電話からであるが俺の携帯電話には登録されていない誰かさんからだ。「冷凍庫がこんなことになっています」という文章のみがあり,添付ファイルとしてこんな画像がついてきた。
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 俺は多くの得意先を抱え込む多忙な業者ではないがしかし,冷凍庫内の写真を見ただけで得意先を判別したり不具合状況の所見を出せる能力はないのです。しかもこの画像はものの見事にデータ化けしており,大変見づらい。正直なところチンプンカンプンなのだ。どなたなのかはわからんが送信元の方,ごめんなさい。
 
 送信元には詳細を知りたい旨の返信を入れておいたが今のところ連絡はなく,何というか強張った気分でゴロゴロし続けているのだがそろそろお仕事なので外出しなければならん。送信元の誰かさん,某総合病院の地下は通話の圏外なので電話が繋がらなかった場合は悪しからずご勘弁の程よろしく。
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腱鞘炎の季節 [お仕事上のぼやき]

 大体例年夏頃だと思うが,俺は持病の腱鞘炎に悩まされる。
今年は左手の中指と薬指が酷いばね指になっており,朝などはなかなか動かない。毎朝(今日はまともに仕事ができるのだろうか)と心配になるのだが今のところまあまあ何とかなっている。

 ところで俺には某県警の警察署長である従兄弟がおり、先日しばらくぶりに彼が帰省して一緒に晩飯を食う機会があった。
 あれこれ雑談しているうちに体調とか健康の話題になり(歳だからな),俺が毎年今時期に訪れる上に書いたような不調のことを話すと彼も現在,腱鞘炎に悩まされているらしかった。

 利き手だから不便なんだよ,と,彼は右手の人差し指を曲げてみせ,目下ばね指が酷い旨をぼやいた。

 しかし何だ,警察官が右手の人差し指が腱鞘炎とは何やら物騒な連想が働くではないか。
冗談混じりに勤務中の発砲について訊ねてみるとあるわけないだろ,と一笑に付された。警察官が発砲するには物凄い制約があるらしく,例えば逃走しようとする容疑者の背後から発砲するとか脚以外の部分を撃つとかいうのは大問題になるのだとか。詳しく聞かなかったが頭部や胸部(心臓)といった即死するような射撃は御法度のようだ。
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画像は本文とは関係ありません。


 まあ,仕事とは直接関係のない話題だ。
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処置室にてバツの悪い思いをする [日記、雑感]

 俺の棲息する田舎町はここ数日,猛暑が続いている。
数日前などは一部地方では何と,日中最高気温が37℃程にもなり全国最高を記録したのだそうだ。
このブログでいうと前回記事の現調に出かけた日に当たり,給食センター屋上で炎天下のもとどたばたやっていると確かにサウナ風呂の中で運動しているような菜っ葉服は上下とも汗でグチョグチョになり大変くたびれた。
記事名:三洋電機製品に於けるある種の傾向
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-06-05

 その翌日である一昨日はぐったりしながら某リゾート施設でこれまた炎天下のもとで冷蔵庫数台の搬出作業の後某総合病院で食器洗浄機の修理だ。
 蒸気熱源の食器洗浄機というのはそれ全体が大きな発熱物であり,タンク周辺にはとぐろを巻いたヘビのように蒸気配管がのたくっている。その隙間に身体を突っ込んでああでもないこうでもないと汗みどろになってドタバタやっているうちに急に身体に力が入らなくなった。頑張ろうにも頑張れないし、そもそも平衡感覚が何だかおかしく,立ち眩みがしてフラフラする。

 俺の様子がおかしいのを調理員が見つけて栄養士に伝え,既に午後だったので外対受付は終了していたので俺はよたよたしながら院内の救急外来に向かった。
 受付を済ませてベンチに腰掛けていると視界が何だか白飛びして見える。露光オーバーの写真を見ているような感覚を俺は奇妙に思った。黙って座っているともしかしてこれは脳血管の障害かなにかではないかと不安にかられた。

 看護士に状態を伝えて採血と採尿を行い,医師と面談すると脱水症状と腎機能障害が現れているので即刻点滴を行うとの所見だった。熱中症とか日射病とかいった診断だったと憶えている。

 処置室のベッドに寝っ転がって点滴を打たれながら俺は過去,この病院の中であったことをあれこれと思い出していた。出入りしてからかれこれもう二十数年にもなる因果な場所だ。このブログの中でも俺が遭遇した災難を記事にしたことがある。

記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/search/?keyword=%E3%81%82%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C

 点滴の時間は一時間程度。生理食塩水というのは不思議なもので脱水症状が起きている中で静脈を通じて水分が行き渡ると身体が軽くなる様子が体感的に実感できる。大袈裟な話でなく、これは一種神秘的な経験であり俺の日常の仕事の中にはないマジカルな変化だ。

 点滴を行っている最中に栄養科長殿が処置室に現れた。俺の状態を案じてのことで大変有り難くはあるが俺がこのザマなので修理の残作業は延期で大いにバツが悪い。食器洗浄機がどうにか使えるところにまでこぎ着ける程度には俺の気力なり体力はあったというところが不幸中の幸いというか,まあ気休めみたいなものだが。
 修理屋が仕事先の病院で故障したので修理してもらう体で、と、冗談のつもりでバツの悪さを誤魔化そうとしたがさっぱりウケなかった。

 医師の説明によると,脱水症状は一日では回復し切れないことがあるので数日間は水分を多めにとりながら生活するようにとのことだ。院内の売店で売っている水分補給の飲料水を奨められたので昨日から今日にかけて俺はせっせと飲んでいる。 

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  • 出版社/メーカー: 大塚製薬
  • メディア: その他



 そういうわけで本日の俺は火曜日三日の修理案件であった某給食センターの仕事をどうにか片付けて、午後からは家で静養を決め込み,ゴロゴロしながらOS1をぐびぐびと飲んでいる。
 俺の残り時間はもう大して残っていないし体中爆弾だらけなので無茶は禁物,と根が怠け者の俺は熱中症を理由に無精な週末を決め込むことにした。
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三洋電機製品に於けるある種の傾向 [含蓄まがいの無用な知識]

 とある学校給食センターでプレハブ冷凍庫修理があって現調に出向いたのは一昨日。
冷えない原因は冷媒のリークで,混合冷媒のR-404Aであるため低圧側からスローリークが発生した場合などは比重の小さな冷媒が先に抜けてしまい,混合比率が変わるため圧力ゲージでそこそこの運転圧力を示してはいても現実には大して冷えないという現象が起きる。

 当然ながら中途半端に冷媒が配管内に残っていても、足し増しを行うと正規の特性が出ない。冷蔵庫のように保管温度が高ければまだ何とか使って使えないこともないが冷凍庫のように蒸発温度が-30℃近辺での運転では無理だ。
 だからといって冷蔵庫としての用途であれば足し増しをしてもいいということでは決してない。残存分は全て回収し,新規にチャージするのが筋だ。

 冷機器の修理を行う以上,ガス漏れの補修と無縁ではいられない。
漏れ方は当然ながら千差万別で,一目瞭然のときも数日かかるときもある。だからこの手の修繕は事前の修繕費の予測が大変立てにくい。
 
 今回の修繕については室外冷凍機の低圧側サービスポートからのスローリークであり,冒頭書いたように一見正常な運転圧力を示しながらも現実には冷えないという事象がここで起こった。
 ここである種,矛盾と言うか不条理と言うか,運転圧力を測るためにゲージホースを接続するその個所からリークが発生していると漏れているその状態が表面化しない。圧力を測るために接続されているゲージホースが漏れ箇所を塞ぐ。皮肉なもんだぜ。

参考画像は全てネット上で拾ったものであり,本文とは直接関係はない。
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室外冷凍機にゲージホースを接続しているところ。

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サービスポート接続口を正面から見る。中心部にバルブコアがねじ込まれている。

 バルブコアというのは要するに虫ゴムで,タイヤチューブに使われていたりするものと同じ理屈である。
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 左側に飛び出しているのはスライドするピンであり,内部のスプリングによって普段は塞がっており,虫押しのついたホースを接続されることで開く。バルブボディには雌ねじが切られており,サービスポートにねじ込まれるのが納まりの状態だ。

 シールするためのゴムやシリコンに傷がついたり,バルブコアの取付け状態が緩むとガス漏れとなるわけだが,俺の経験則として何故かこれが起きるのは決まって三洋の製品なのだ。
 サービスポートというのは冷機器メーカーが内作するパーツではないのに何故か他のメーカー製品では今のところこれに遭遇した経験が俺にはない。
 俺なりの想像としては,製造段階に於いて生産性を上げるために一旦バルブコアを抜き取った上で冷媒を封入しており,その後工程としてバルブコアを取付ける際のトルク管理に問題があるのではないだろうか。日頃,補修パーツとして後付けのサービスポートはよく購入するがこれまで漏れた経験が俺にはまだない。
 また,これは三洋電機の名誉のために補足しておくが三洋の製品でこれ以外の漏れ箇所をこれまで俺はあまり多く見ていない。何だか妙に思う。
タグ:冷媒漏れ
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ヒートトップレンジの修理は見送り [修理屋から見た厨房機材]

 恐らく燃焼器具を手がける機材メーカーであればほぼ共通するのではないかと思うが今から20数年前のバブル崩壊以来販売台数が激減したもののうちの一つにヒートトップレンジがあるのではなかろうか。

 このブログを読まれる方々の多くは既にご存知かとは思うがここであらためてちょっとした能書きをたれる。
ヒートトップレンジとはガスレンジとグリドルの中間的な性格づけの加熱機器であり,そのトップ形状は下の画像のようなものだ。
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画像は本文とは関係ありません

 丸形のごとくのようなものは脱着可能で,取り外すと直下にリング上のバーナーがある。トップ面は全面鋳物で,グリドルは一般に棒バーナーやシュバンクバーナーが組み込まれ、バーナーの直上から左右方向に表面温度が下がる分布を示すのに対してこちらはバーナー直上の円を最高点として放射状に表面温度が下がっていくところが大きな違いで,用途によってごとく(と仮にここで呼称しておく)を取り外せば直火での調理が可能というところがガスレンジの機能と重なる。
 バーナーの組み込まれていないトップ面は熱伝導によって比較的低温で熱平衡しており,そのゾーンに鍋を置いておくと保温用として使用できる。

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画像は本文とは関係ありません

 用途は当然ながら洋食用だが,そこから更に絞り込まれてフランス料理専用と考えるのが一般的だろう。一つのメニューで鍋を三つも四つも使うフランス料理に於いては絶大な効果を発揮するがその他の分野ではほぼ宝の持ち腐れではなかろうか。

 俺の住む田舎町ではここ10年くらいの間に本州資本のビジネスホテルチェーンがそこそこ現れてきており、こういう存在は牛丼やのチェーン店みたいな外食店舗と並んで地方経済の疲弊の象徴みたいなものだと俺は考えている。
 あるとき気付いたが、こういった格安のビジネスホテルが展開し始めるのと同時に起きるのは出先機関を持つ企業の撤退である。社員は出張の用事がある時だけノートパソコンを抱えてこういうビジネスホテルに滞在するわけだ。
 今から20数年前,俺の住む田舎町にもバブル景気の余波みたいな恩恵にあずかることの出来た時期があって市街地の中心近くに8階建てくらいのえらく立派なラブホテルが建設された。最上階にはでっかい硝子張りのベランダから市街地が一望できるペントハウス風の豪勢な一室まであるらしいことは往来から見える外見からも判断できた。
 ラブホテルなどというのは町外れの裏通りでひっそりと営まれているこぢんまりとした建物だというのがそれまでのこの田舎町での常識だったので、何というか,住人どもはそのロケーションやらそこら辺のホテルよりも堂々とした佇まいやらに度肝を抜かれたものだ。
 しかもそのホテルには半地下となっているフロアーに何とレストランがあるという。ホテルの利用者でなくても入っていいらしいというおまけの伝聞まであった。当然こういう感覚は田舎者のセンスではなく、風聞によると経営母体は東京で同名のラブホテルがチェーン展開されているらしく、余程金が余っていたのだろうが北のはずれの田舎町におよそ場違いな感じの,東京の感覚そのまんまの建造物をおっ建てたということらしかった。

 田舎町の景観とはどこかミスマッチな,無意味にゴージャスなそのラブホテルは近年閉館し,大阪資本のビジネスホテルチェーンに買収され、改修工事が行われた後業態を変えてビジネスホテルとして今回リニューアルオープンする運びとなった。

 依頼元はコメットカトウ、帳合はマルゼンというのが今回の構図だ。
使用者からの修理依頼を受けたのはマルゼンだが自社製品ではないので製造元であるコメットカトウに話を振り、それが俺のところに回ってきたという流れだ。

 最初、マルゼンからはガスレンジの修理という話だったが現調に伺ってみると正真正銘のヒートトップレンジで、実は田舎町でしか仕事をしてこなかった俺のような者からすればその重厚長大で堂々たる佇まいに妙に感激した。
 これは、個人で購入するものではない。建物の新築と同時に導入されて途中リプレースされる事もなく建物がある限りそこで稼働し続ける類いのものであって個人が,例えば食品スーパーのバックヤードやチェーン店の居酒屋に納められるものではない。
 その元ラブホ地下のレストランはテナントが運営していたらしく,オープンしてから幾らも経たないうちにオーナーは売り上げが芳しくないのと某シティホテルの総料理長としてオファーがあったのとでさっさと店をたたみ,機材はそのまんまにしてこの田舎町から去ってしまったのが約20年前とのことだ。 
 
 不良状況はオーブンが着火しないというもので、その原因はガスコントローラーの固着による。現物はオープントップレンジと連結されており、オーブンが二つある格好になるが残念ながら両方ともアウトだ。
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 ヘビーデューティレンジという商品名のついたこれら製品群は製造元であるコメットカトウにとっては正真正銘の看板商品であり,大袈裟にいえば威信がかかっている。格式のあるホテルや宴会場などではメインダイニングに納入する厨房屋がどこであれ,ストーブ類はコメットカトウのこのシリーズでなければならないという指定がつくこともザラだ。
 だからその造りはもう30年以上,何の変更もない。余程のことがない限り20年くらいは使われ続ける機材なのでストックパーツがもうありません,などということはない。それにしても個人でこういうストーブを購入するとは,前オーナー殿は余程この製品に思い入れがあったのだろうか。

 バブル景気を懐かしむ気分の抜けないこれはどうにかこの物体を修復したいと思い,見積書を提出したが経営母体は費用が高額なのでという理由で見送り,ボツになってガステーブルとしてトップバーナーだけを活用していくことにしたのだそうだ。代わりに届いたのはおもちゃのようなリンナイのコンベックだ。




 オーブンなしでは業務にならないから何か代替案を考えてほしいという現場からの要望に対する経営母体からの回答がAmazon.comでも売っているようなこれだ。
 新しい料理長殿は溜め息混じりに本当に何もわかっていないとぼやかれた。

 一般住宅にでもありそうなこんな代物がものの役に立つわけなどないと俺は思うが,だからといってヒートトップレンジの修復がそれほど意義のあるものなのかと冷静になって考えてみるとこれにも疑問がある。

 時代は色々と推移しており,現在ヒートトップレンジはどこの燃焼器具メーカーも特注扱いである。理由は燃焼時の炎が直接見えない構造であるため日本ガス機器検査協会の検定を通らないからとのことだ。
 ならば検定に通るように構造を見直して改良すれば良いではないかと思うがそういった開発を行う必然性にも乏しいのが現状だ。
 キッチンの熱源がほぼガス一辺倒だった時代は過ぎており,現在、ヒートトップレンジでの加熱とかなり近似したオペレーションはIH加熱の電磁調理機で可能だからだ。
 俺個人はどちらかというと電磁調理機の多用には少々疑問を持っているせいか、今回の修理の見送りには結構残念な思いがある。お洒落で高級感のあるラブホがあり,その地下には本格的なフレンチレストランがあり,と、俺の住む田舎町にも一瞬,そんな風景があったが時代はどんどん変わっていく。フレンチレストランのシンボルとも言えそうなヒートトップレンジも最早過去の遺物に過ぎず、恐らく我々はこの先その時の華やかな世界を取り戻すことがもうできない。俺はそれを少々淋しく思う。

コメットカトウのHP:http://www.cometkato.co.jp/

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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その4) [含蓄まがいの無用な知識]

 諸兄にとってはクソの役にも立たない記事であるのは承知の上で続ける。こんな独りよがりな記事でもどなたかには読んで頂けるのかと思うとその方の時間を浪費させることになっているのではないかと恐縮している。
 ファンホイールを外した後のモーター交換について,一見するとモーターケース直近では色々と錯綜していたり干渉していたりする箇所は多く見えるが,しかるべき道具立てで臨み,手順を守れば特に手こずる場面はない。
取り外し前の画像を再度示す。
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 当然ではあるがモーター左側のスチームジェネレーターは予め左下に移っているドレンポンプのプラグを抜いて排水を済ませておく。
 邪魔になるのはドレンポンプのアッパーホース(モーターケースの左側面を上下に結んでいるアイボリーのゴムホース)とモーターケースに取付けられた4個のSSR、モーターケース上部を左右に走る制御線である。
 SSRの固定刃SCSタイプからはトルクスビスで行われているのでこれを持参していなければその時点で作業は頓挫することになる。近年EU圏の製品では多用される傾向があるので修理する機会のありそうな方は購入しておいた方が良い。 また、モーターケースはアルミ製なのでSSRを取り付ける際にはオーバートルクに注意する。
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作業途中での撮影でモーターケースにはまだSSRが二個ついている状態だが大体こんな状態が一区切りである。
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モーターのマウントは13mmのナット4個であるkとは前回の記事で書いたが問題の二箇所である。モーターケースの厚みは大体100mmを少し超え,スチームジェネレーターの奥行きも200mmくらいあるのでスパナくらいしかレンチの持ち合わせのないサービスマンはここでタンクを取り外すというとんでもない付録に遭遇することになる。
難儀な場面を回避するためにはエクステンションバーを組み合わせてシャンク長が200mmを超えるくらいのソケットレンチが必要になる。
 
 些末だが,ナットを緩め終わって取り外す時にはかなりの確率でそのナットは脱落し,機体内部のどこか手の入らない場所に転がっていくので予め予備のナットを用意ししておいた方が良い。モーター取り付け後の固定ではワッシャを入れることが出来ないのでフランジナットを用意しておくのがベストだ。
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モーターを取り外した状態である。

 ファンホイールを取り外す記事でもそうだが,組立の手順はわざわざ書くことをしない。外した順番の逆を辿れば良いだけのことであってバカでも出来るから書くまでもない。
取り付け前の段階,破損品と交換品を並べた画像を示す。右側が破損品でSSR冷却用のファンの材質がアルミダイキャストである。交換品は樹脂製だが材質変更の理由は不明だ。
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 内部に三本のリブがあり,SSRとの接合面で生じた熱を冷却するフィンの役割を担っていることが理解できる。

 メッシュ状のカバーを取り外したところ。黒いモーターカバーは取り外せないがステーターの終端には羽根が組み込まれていてモーターコイルとインバーターを同時に冷却する構造で,前回の記事で書いた一石三鳥とはこういう構造のことを指している。
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 前機種のCPCではモーター出力750Wで同期速度は1440rpm(50Hz)だったがSCSでは450Wでハイスピード時の同期速度2000rpmに改められており、これに伴ってファンホイールも小径化されている。

 作業全般について言える事だが、粗悪な国内製品とは違って10年程度の稼働でも錆や歪みは大変少なく、全体の組み立て精度は高いので脱着の際に無用な苦労はない。
 ここ数年特に思うのだが、ヨーロッパ製品の電装系統は明らかに劇的な進化を遂げた。二昔くらい前までは旧態依然とした知恵の組み合わせであり,機体の内部には随所に日本製の制御部品が組み込まれていたものだが現在そういうことは全くない。そもそも殆どがカスタムパーツであり,汎用品はあっても聞いたこともない社名の海外メーカー製であり、当然その生産国は中国や東欧圏である。

 たかだかオーブン一台で何を大袈裟な,と嗤われる方は多くおられると思うが俺には何か,こういう機材の整備を通して少なくとも俺の携わる業界はますます世界標準から置いてけぼりを食らうその下限が歴然としつつあるように思えている。(この項終わり)
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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その3) [含蓄まがいの無用な知識]

 Rationalのコンビオーブンの変遷とは多機能化であると共に制御の系統から電磁接触機を排除していく歴史とも見える。
 庫内ファンモーターの仕様は初期のモデルでは定速回転で一方向だったのではないかと覚えている。ありきたりなインダクションモーターだからコンタクターは一個で良い。次に焼成のばらつきを押さえるためにインターロックで制御し、正逆回転されるようになったのでここで電磁接触機は2個使われる事になる。その次には運転時の風量を可変させるために二重コイルのモーターを採用して、ここで電磁接触機は4個使われる事になる。
 幾ら何でもこれでは場所をとり過ぎるので前モデルのCPCは途中からインバーターを採用してファンコントロールに電磁接触機を使う事はなくなった。

 もう一つの負荷であるヒーターについては初期には二組のヒーターをシリーズ、パラレルに組み替える事で発熱量を二段階に設定していたわけだがこの場合も二組のマグネットを利用する。
 このやり方もCPCからは改められてヒーターは1系統でスイッチングにはSSR(トライアック)を使い高速な断続動作をさせる事で発熱状態を近似させる事にした。

 文字で書いても実感はなかなか伝わらないと思うがある時期の機種などはもう一面マグネットだらけで運転中はひっきりなしにガチャガチャと開閉音がし、いかにも何か制御しているんだぞ風だったが現行機はうんともすんとも言わず、運転音と言えば庫内ファンモーターの回転音だけだ。電装部分のありようも随分すっきりした。
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 旧機種を知る者にとっては驚くばかりのスカスカ具合である。

 CPCからSCCへのモデルチェンジで修理屋を唸らせたのは電力素子の扱いで、厨房屋にとっては馴染みのない部材がどのように実装されるべきかをこういった実機を目の当たりにする事でにわか勉強する事になるわけだ。
 インバーターであれSSRであれ、電力素子の実装に於いてその耐久性を左右する要因の一つに冷却処理をどうするかがあるわけで、以前のモデルは手探り的に自然冷却なり別置きのパプストファンで風を当てて冷やすなりの事をしてはいた。
 しかし稼働にあたってはヒートシンクに埃がたまるしそもそも電装系統が集中する箇所の冷却ファン手前に設けられたフィルターを使用者がろくすっぽ手入れせずでこれら電力素子の熱破壊による障害は結構頻繁に起こったものだ。

 庫内ファンモーターの回転をオーブン庫内の空気の撹拌ばかりではなく電力素子の冷却のためにも使う,この発想は結構画期的なものではないだろうか。SCSからは汎用品と思われるモーターを使うことはやめて中空部分を設けたケースに長いシャフトを持つモーターを取付け,途中に電力素子冷却用にファンを取付けている。そしてSSRはケースに,インバーターはモーターの真後ろに取付けることで一石二鳥どころか三鳥の効果を狙っている。この実装によって個別のヒートシンクや冷却ファンを省略しているので電装室内は本当にスカスカになった。
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 インバーターは個別の実装がされず,黒いメッシュ状の樹脂ケース内に収まっておりモーターと一体である。中空のケースはアルミ製でSSRはここに取付けられているからモーター交換の際にはこの場合,一旦SSRを取り外す必要がある。
 俺はこの記事の最初に、庫内ファンモーターが上下二つ実装されているオーブンの場合,何故か決まって上側のモーターばかりが壊れると書いたがこのケースではややこしいことにSSR四つは全て上側のファンモーターのケースに取付けられているのである。

 他にもスチームジェネレーターのフラッシングを行うためのポンプの吐出ホースや諸々の配線など,ファンモーターと干渉するために一旦取り外さなければならないパーツは多い。
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 最大の難物はファンモーターの左側ぎりぎりについてるスチームタンクで,モーターベースを固定している13mmのナットのうち二つはモーターとタンクの間,物凄く狭く奥まった場所についているのでレンチ類の準備が不十分であった場合には一旦スチームジェネレータのタンクを取り外さないと道具がナットまで届かないので作業は物凄く長時間化する羽目になる。(この項続く)
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プレパーレーション機器の導入は減少傾向 [修理屋から見た厨房機材]

 本日最後のメニューは某国立病院でのフードスライサーの修理である。
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 製品はエムラのECAという機種である。

 このブログの読者の諸兄大半は既にご存知と思うが切載機器の一種である。正面の円形状の部分には回転する薙ぎ刃,または短冊切りやおろしのためのカッティングプレートが収まる。
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 食材を送るためのコンベアーが回転刃と連動して搬送動作を行う。コンベアーは上下二組あり,投入した食材を挟み込むようにして回転刃の収まるケーシングに送る。

 機材の説明はこの辺にして,修繕の内容は上側のコンベアーベルトが動かないというものだ。
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 上側コンベアーベルトの伝達系の画像である。構成は右から左に向かってチェーンのかかった青いスプロケットはナイロン製でこれは何らかの理由でコンベアーがロックした場合など,伝達系を保護するために敢えて柔らかい材質で作っている。それから二組のユニバーサルジョイントを介してコンベアーベルト駆動軸とのカップリングとなる。

 空転の理由は導入後約15年にもなろうかという個体なのでそろそろ青色のナイロンスプロケットに変形が出始めている模様でずれ止めのスペルが脱落し,この箇所で空転が発生している。
 スペルは5mm四方の面積で厚み3ミリ程度の鉄片であり,故障診断や補修作業よりもこの小さなパーツが機体内のどこに落ちているのかを探すことに時間の大半が費やされる。

 作業自体は特段難儀なわけではなく一時間程度で試運転までが終了するが,考えてみると新しい病院給食設備の設計に於いてはこの手のプレパーレーション機器(下処理機器)の比重が段々小さくなりつつある。
 この記事で取り上げたフードスライサーについては20年前くらい前までは300床以上の病院給食設備では導入されることは決して珍しくなかったし悪くても機材の価格が高価で予算的に厳しければ食材の送り動作を手動で行う合成調理機位は入っていたものだがカット野菜が普及するにつれて野菜の切載を院内で行う業務の量は激減した。
 その他にも米については無洗米が定着して洗米機のない施設が珍しくないし,魚については既におろされたものが真空パックされて入荷されたりするし,肉類についても筋や脂などの掃除されたブロックが普通に出回っている。二昔くらい前に比べると現在,病院や老人ホームの給食室から出る生ゴミの量は激減しているのではないか。まあ野菜についていえば,土のついたままの食材を病院という場所に持ち込むのは衛生上いかがなものかという見方は確かにあるのだろうが土とはそんなに不潔なものなのか,病院という場所は建物の全域にわたってそんなに衛生的な場所なのかと俺などは思う。

 ともあれ,結果として病院給食施設のゾーニングとして下処理セクションの占める比率は段々下がりつつある。しかしキッチンの面積自体が従来機比べて縮小傾向なのかというとそうではなくむしろ増える傾向にある。
 理由としては以前は下処理から配膳までが一つながりの空間であったのに対して0-157が騒がれるようになった時期からはキッチンの中を汚染区域と非汚染区域に切り分け,パーティションやパススルー機器で間仕切るレイアウトを保健所が推奨するようになったので新規の設計はどうしても面積を食うようになるし,選択メニューが普及したことによりストックしておく食材の種類が増えてストレージの面積が増えてくる傾向がある。冷凍食品やレトルトの半加工食材が増えてきたせいで150床程度の中規模医療施設でもウォークインタイプの保冷庫が設計に織り込まれるようになってきたといった変化がここ15年くらいの流れと俺は見ている。

 技能職である調理師にとって病院給食という分野で技巧を発揮できる場面として適当なのかという疑問は勿論あるのだが,一般論として刃物を持つことを認められた調理師に最初に与えられるのは野菜の皮をむいて切載することと聞いた。
 ピーラーやスライサー,カッター等々給食設備に於いてはこれらプレパレーション機器類はレストランや宴会場などの商業施設に比べれ多種多様に稼働しており機械頼みの下処理業務はホテルやレストランコックが給食業務の調理員に対する一種優越的な視線の根拠の一つにはなっていたと思う。
 勿論,切載や皮むきの業務が全て機械で行えるわけでもなく,給食業務の現場から包丁やまな板が消えてなくなることもあるわけはないとある時期までの俺は考えていたがここしばらくの推移を振り返ってみると案外それは実現しそうな気もしてきた。

 極論として,例えばファストフードの店舗にはこれらプレパレーションのセクションはない。下処理は全てセントラルキッチンで集約的に行われて配送されるので店舗には包丁もまな板もないわけだが、病院や老健施設の給食業務もそれに近い風景がそのうち現れてきそうな気がする。
 経営なり運営の効率化として下処理業務を切り捨て,複数施設へのサプライヤーである外部のCK(Central Kitchen)に外注委託するのはしかし、下処理から加熱処理という本来ならば一つながりである業務を分断してそれぞれを単なる作業員へと貶める流れでもあるように思えて少々淋しいというのが俺の見え方だ。
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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その2) [含蓄まがいの無用な知識]

 俺には構成能力などないのでこの作業についての記述も内容が飛び飛びになるが,今回は庫内での作業のコツみたいなことを書いておく。 

修理の作業に於いて時間を浪費する番狂わせのトップはビスやボルトがなめるとか折れる出来事だ、というの が俺の経験則だが嵌合(かんごう)した擦り合わせ箇所が固着して外れないというのも結構上位に来るのではないか。一度手こずると後戻りが効かずに場合によっては丸一日潰しても解決できないという点で修理屋にとっては難儀な場面であり、駆動系の修理作業では山場と言って良い。

 オーブンの庫内ファンモーターといえばそれらは殆どシロッコファンであり、ファンホイールの取り付けかたはほぼ必ず円柱状のシャフトに差し込んでボルトで固定する。

 これは俺が勤め人だった頃から一貫して変わっていないが、Rationalのコンビオーブンの庫内ファンを分解するにあたってはファンホイールの脱着についてメーカー推奨のギヤプーラーがある。三本爪の物凄くごついプーラーで扱いづらく、社員のサービスマンは脱着作業に於いてしばしばワークであるファンホイールを壊してひどい目にあった例が少なくない。
 俺自身も勤め人だった頃に経験したがメーカー推奨のギヤプーラーは脱着に失敗する確率が低くない。
コンビオーブンの庫内ファンモーターのステーターはファンホイールとの嵌合面がテーパー加工されており,シャフト中心部には雌ねじを切っており,ここにボルトを締め込むことで嵌合させている。
 だから脱着の際には嵌合面が多少の焼き付きを起こしていても,うまく剥離させさえすれば勝負は一瞬で決まる理屈だ。多くのファンモーターはステーターとファンとの嵌合面は断面が平行になっているので擦り合わせ面の長さ分だけジワジワと引き出していかなければならないから整備性という面に於いては大変親切な造りのはずなのだが少なくとも俺の周辺を見る限り何故か元の職場の同僚達は誰もがこのファンホイールの脱着に酷く苦労し,プーラー爪の引っかけの箇所を変形させて手も足も出なくなり,挙げ句の果てにはサンダーを持ち出してファンホイール自体をズタズタの細切れにして顔面は金属粉まみれの苦闘の果てに数時間かけてやっとこすっとこ取り外しの作業を終える憂き目に遭う。

 結局それはメーカーの推奨が間違っているというのが俺の経験則に根差した持論だ。
ファンホイールは決して安いパーツではない。壊さないとモーターがはずれないなんていう設計は常識的に考えてあるわけないのだ。
 俺は会社で働いていた頃,工場の専従者や同僚に自説の正しさを何度となく説いたが誰もが鼻でせせら笑い,脱着にはメーカー推奨の二万円以上もするギヤプーラーを使うものであり,それでうまくいかなければファンホイールを壊して外すのは決しておかしな話ではないのだという定説を頑として譲らない。

 だからここで,俺は自説の正しさを証明したいがためにわざわざこうして図解入りで記事を一つこしらえることにしたのだ。俺は勤め人だった頃、職場で自説の正しさが受け入れられなかったことを根に持っており、その時の腹立たしさをぶちまける機会を待っていたのだ。俺は執念深い性分なのだよ。
IMGP0128.jpg
 ファンホイールとホットエアーヒーターの組みつけられた状態を示す画像だ。外寸をわかりやすくするために中心のボルトを外すためのソケットレンチを引っ掛けた状態で撮影した。ハンドルの全長は大体220mm位なのでファンホイールの直径は大体400mm弱であることを把握して頂けると思う。

 出来の悪いサービスマンの中にはプーラー爪の引っかけ箇所を破損してファンホイールをぶっ壊すためにサンダーを持ち出しての切断作業モードに入ったのがいる。しかし外見からは想像しずらいかもしれないが直径100mmの切断砥石がすんなり入る場所は大して多くないのできれいに真っ二つみたいな切れ方にはならず、あちこち細切れにして作業を進めていかなければならない。切削分は飛び散るわ切断はなかなか進まないわの上に,これはやった者でないとわかってもらえないと思うがオーブンの庫内は音の反響が物凄いのでサンダーの切断音が喧しく,頭痛がしそうな苦行だ。挙げ句の果てにはサンダーを持つ手が滑ってホイールを取り巻くような形状のホットエアーヒーターにヒットさせてしまい,更なる深みにはまり込んで大赤字修理となった大馬鹿者がいる。何を隠そうこの俺だw(笑い事じゃねえよ)
 俺はそういう,過去の失敗を糧としてここでのやり方を思いついた。大した内容ではなく既に同様の方法で従事しているご同業の諸兄はおられるだろうから何を今さらの感はおありだろうが,こうして文字としてネット上に表しておくことにはささやかながら意味はあると俺は勝手に思い込んでいる。

IMGP0129.jpg

 脱着に使う工具はベアリングプーラーである。ワークの引っかけ箇所は丸みをつけた切削加工がなされているのでギヤプーラーではどうしても爪の掛かりが甘くなり、センターボルトを締め込んでいくと腹立たしい位はずれる。引っかかった状態でプーラーのアームが斜めになるのも良くない。中心から円周の外方向に向かって応力の分散成分が発生するので余計はずれやすい理屈だ。
 ベアリングプーラーを使うことの利点は,キャップスクリューを締め込むことでワークを外側からホールドし,ラジアル方向の応力の分散を押さえ込むことが可能なのですっぽ抜けを防止できることが一つと,ギヤプーラーに比べると爪の角度が鋭いのでワークの引っかかりが確実になることだ。

 スムーズな作業遂行のためのコツとか手順のようなことを以下に列記する。
(1)センターのボルト(13mm)は一旦抜き取る。モーターシャフトとファンホイールの嵌合面が露出するのでここにCRCのような潤滑剤をぶっかけて数分放置し,嵌合面に含浸させる。
(2)ハンディトーチで中心部をてきとうに加熱する。ワークが赤熱化するまでは必要なし。殆ど全ての場合に於いて嵌合面は焼き付いて固着しており,常温ではすんなり外れないので熱膨張させることにより嵌合面の剥離を促進させるのが目的だ。
(3)(1)で一旦抜いたセンターの固定用ボルトを何山か分だけねじ込み、ベアリングプーラーをセットする。ボルトの頭にプーラーのセンターボルトが当たる状態にする。それぞれの中心位置がずれていると締め込んだときの力の伝達が行われないので可能な限り目測できっちり合わせる。ワークの中心はまだ熱いので火傷に注意。
 プーラーのアームの平行とセンターボルトの鉛直を補正しながら交互に締めてワークに対する遊びを詰めていくところがコツで、これが上の画像で示した状態である。
(4)普通にセンターボルトを締めると「がっこん」と結構でかい音がしてファンホイールは一瞬で外れる。嵌合面がテーパー加工されていることの有難味を実感する瞬間でもある。外れたファンホイールが固定用のボルトに引っかかってぶらんぶらんしている様子は作業が一区切りしたことを実感させるなw
IMGP0130.jpg

 取り外し終わりの状態。所要時間は大体20分あれば充分だろう。

ここまでで庫内の作業は終わり。残りは外側のモーター取り外しとなる。(以下続く)

追記:しかし自己満足もここに極まれりと言うか,何の役にも立たない記事だ。
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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その1) [含蓄まがいの無用な知識]

 所謂スチームコンベクションオーブンという機材は色々な意味でキッチンのありようを一変させたと常々俺は考えており,このブログでも度々記事にしてきた。
 スチームコンベクションが注目を浴びたのはバブル景気がピークに達した頃ではなかったかと覚えている。俺のように田舎でしか仕事をしたことがない者にとってはコンベクションオーブンと蒸し器がそれぞれあれば済む物を何でこんなややこしく高価な機材が出てきたのかと首をひねったもんだ。どういう用途で使われる物なのかさっぱり見当がつかなかった。
 俺の認識としては,真空調理の加熱機器として導入されたことで注目されたのが最初だったと覚えている。国内での嚆矢は富士急ハイランドリゾートあたりではなかっただろうか。それまでは単にコンベクションオーブンとスチーマーの合体でしかなかった単なる省スペース機器だった物に30℃位からの温調を利かせたスチーミングの機能が加わることで真空調理に於いてはそれまで温度計とにらめっこをしながら付きっきりで湯煎を行う工程が劇的に簡略化された。
 しかしなにぶん,当時は高額な輸入機械しかなかったので導入できる施設はそう多くなく,バッジ処理である形式のせいもあってもっぱら高い客単価の成立するホテルや宴会場に限定されていたように覚えている。元々ヨーロッパで開発され,普及してきた機材であるせいもあり,温度や時間といったメニューごとのパラメータが西洋料理のものしか公開されておらず,和食についてはどういうセッティングで活用すれば良いのかについては国内の扱い商社がそれぞれ手探りが続いていたことも普及までには少し時間を要した理由の一つではある。

 前置きが長いのは毎度俺の悪い癖だ。
ともあれそういう高尚な機材も時間が経つにつれて安売り競争に勝つためだけに作られたようなてきとうな劣化コピー機を国内メーカーは粗製濫造し,冬期間には水道凍結が起こりそうな場所にまで見境なしに押し込みまくってはしょうもない障害を引き起こすのが現在の実相だ。

関連記事名:理科の時間だぜ
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-01-29

 国内に紹介されて以来二十数年を過ぎて今やスチームコンベクションは街場の安宴会専門で冷凍食品とレトルトと缶詰ばっかりのしょうもない居酒屋にまで普及するに至った。
 だから今回俺が手がけたような公立大学の学食にあったとしてもそれは何ら不思議な話ではない。

 今回,備忘録を兼ねた修理記録として記事を書くにあたり,本来であれば庫内ファンモーターの不良判定から始めるのが筋なのだが修理個体は操作パネルの汚れが酷く,表示が大変読みにくいので鮮明度の高い画像を言質では撮影できなかったので交換にあたっての実作業から書き始めることにする。あくまでRational社のオーブンに限定された内容であって他社製品の修理実務に対しては恐らく何の参考にもならないのでこの業務に携わることのない同業者にとってはクソの役にも立たない俺の自己満足でしかない記事であることは始めにお断りしておく。

 修理個体はSCC201という自動調理のアプリを内蔵した2004年製の機種で,リリースされた当初かなりの注目を浴びた。当初の依頼内容は,電源は入るが調理操作を受け付けないというものだ。
 Rational社のコンビオーブンは歴代モデルの製品仕様を調べていくとそのまま業務用厨房機材の電装について当時の最前線が反映されており,なかなか興味深い。
IMGP0121.jpg

 殆ど全ての水経路と電装系が左側面に集中配置されたレイアウトなので、最低300mm程度のメンテスペースを必要とするわけだが納入業者の日本調理機はチンピラまがいの輩ばっかりの厨房屋業界にあっては珍しく折り目の正しいお仕事をする会社で,通路に面するように設置されているため交換作業で窮屈な思いをし,イライラすることはない。

IMGP0122.jpg
 破損したファンモーターの取り付け面を正面から見る。オーブンはカートインタイプなので必然的に上下二個のモーターがついており,今回の破損箇所は上段側である。

 他の施設でも故障例としてほぼ共通するが,上背のあるカートインタイプのオーブンで庫内ファンモーターを二個持つものの場合,故障するのはほぼ決まって上段側であり下段側が故障する確率は大変低い。まじめに統計を取ったわけではないので俺自身の経験則として,としかここでは言えない。
 その理由について愚考するに,使用後のクーリングが充分にされないうちにドアを閉じてしまうような使い方があったとすればその影響ではないかとあるときから推察するようになった。
 庫内が蓄熱しているうちに運転を止めてドアを閉めてしまうと密閉された庫内は自然対流によって当然ながら上部が熱いままになる。上部に集中した熱はファンホイールからステーターに伝導してモーター自体を加熱する。機体は停止しているので当然モーターは回転しておらず,ということは冷却されることもないのでその後数時間にわたって低温ではあるものの加熱され続けることになる。
 これまでこの手の障害を見てきて思うに,故障する上段側のファンモーターの多くは出力軸側の軸受け(ベアリング)が焼き付いているかコイルの絶縁が低下しているかのいずれかであり、いずれも熱の影響と見ることが出来る。

 今回交換対象である庫内ファンモーターについてはモーターとインバーターが一体化されたカスタムパーツであり,そういう仕様であれば尚更熱劣化に対して注意を要するのではないだろうか。
 使用後のクールダウンは使用されているファンモーターの数に関係なく充分に行われるべきだが,上下二個配置されているような構造の場合は特に使用者への指示は徹底すべきだと今回改めて感じる。(この項続く)
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やさぐれた気分で仕事をしていると痛い目に遭う [日記、雑感]

この記事に書かれた出来事は5月9日の事で,5月10日に書きかけたものに本日加筆した。結果として骨に異常はなく単なる打撲だがいまだに俺の左膝には青タンが残っており,膝を曲げると痛い。 

 タニコーという厨房屋との相性の悪さはこれまでにも度々ここに書いてきた。
これは会社勤めをしていた頃からの色々な経緯があってここでそれを詳述はしないがとにかく俺は嫌われており,資料の開示どころか補修パーツを売ってさえもらえない。現金持参の上ででもダメだ。
 だから修理の依頼もなんだか気乗りがしないのだ。勿論金のためには贅沢を言っていられるご身分ではないから,やる。但し俺からの問い合わせや発注には直接応じてくれないのでどこかの会社を通じてのやり取りになり,補修パーツの値段については割高になるがそれでもいいですか?と、事前に依頼元に対しては断りを入れる事にしている。

 気乗りがしない理由はお金の問題以上に気のせいだけではないと思うのだが何だか酷くいじりにくい機材が多いように思えるからだ。同じ機材であっても他の製造元に比べてタニコーの製品を修理する時には何だか時間を食うように俺は常々感じており,これは決して馴れのせいだけではないと思う。
 ここでこんな事を書けば余計険悪になりそうだがタニコーの製品をいじっていて毎度思うのは一つにはビスの数が無茶苦茶に多い。Lアングルやフラットバーといった骨材を突き合わせて溶接されているべきところを板材を折り曲げてビス止めという構造がタニコーの製品には大変多い。加えてそれら固定箇所の精度は良くなく、ビス穴とバカ穴のずれている事が大変多い。おそらく組み立て工程でだろうがそこを無理矢理立て込んでいるような造作が大変多いので修理時にはいきなりなめかかったビスを扱う事になる上にそれらの多くは錆びていて本当に始末が悪い。時間がかかるというのはこういう事によるのではないかと俺は常々考えている。

 俺の元の勤務先はタニコーの得意先であったらしい駅前の某ビジネスホテルに営業で刺さり込んだらしく、タニコー製品の修理も請け負うようになってきた。それで俺のところにも修理の依頼が回ってきたのが昨日の事だ。

 ブツは内管式のガスレンジで、トップバーナー五口のうち3口分のガスコックの交換とオーブンのサーモカップルの交換だとの事で作業可能な時間帯は午後3時から5時までの2時間。
 それはおそらく完了せずに再訪問となる可能性があるとの予測を俺は立てた。外管式と内管式では同じガスレンジでも配管周りの作業時間は段違いに後者が長い。外管式は全てがむき出しだから本当に楽でガスコックの交換などものの十分もあれば片付くのだが内管式はヘッダーパイプが隠蔽されている上にトップのごとくも取り外さなければならない構造が多く、手間取る。

 訪問先のビジネスホテル一階にあるレストランは加熱セクションがカウンターキッチンとなっている。通路幅は大変狭く、オーブンのドアを開けると通路の半分以上が塞がってしまいコックはガスレンジの正面に立つ事ができない。これでは仕事がしずらかろうに、こんな造作で良く保健所の検査が通ったものだと俺はいい気がしなかった。
 修理品の前にしゃがみ込むとオーブンの輻射熱が物凄い。こんなものを今すぐ修理してくれとは何ともふざけた話で作業中に火傷でもしたらどんな風にして責任を取ってくれるというのか。常識のある使用者はオーブンの修理を行う事が事前にわかっているのであれば火を入れずに待っていてくれるものだがここはそうではない。大体どういう人種なのかが想像できた。
 予想通り、錆びてなめかかったビスに閉口しながら作業に取りかかると料理長と思しき目つきの悪い男が近づいてきた。
 まだ作業に取りかかったばかりだと言うのにどのくらいの時間で作業が終了するのかなどという、無神経な事を尋ねて来る。加えてその男はオーブンの火は30分くらい前に消してあるからと恩着せがましくのたまい、俺はこの男が本当に頭の悪い三流コックである事を確信した。
 消化してから30分で室温にまで低下してしまうようなオーブンだすればそのガスレンジは二流品である。
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画像は本文とは関係ありません

 そのビジネスホテルはオープンしてからそう何年も経っているわけではないはずだが個体は俺以前に修繕された形跡が散見され,至る所でビスの頭がなめかかっていたので作業は予想外に手間取った。
 錆び付いたビスを外すためにドライバーをあてがってハンマーで叩くと調理師やホールスタッフは一様に険悪な目つきで俺のほうに振り向いて睨みつけた。

 ホールのテーブルにはまだ一組,お客さんがいたので迷惑だからという意味なのだろうが,そんなものは俺の知った事か!という荒ぶった気分で俺は作業していたのだ。そもそも,ホールに面したカウンターキッチンにこんなロクでもないガスレンジを置いた奴が悪いんだ,とか、作業時間に注文つけるんだから音の事くらいでガタガタ抜かすなこの野郎共!とかいうのがその中身だ。
 こういう心象風景で仕事をするのは良くない。良くない事は心得ているのだが錆びたビスとかなめたビスというのはそういう理性のたがをどこかに吹っ飛ばす位修理屋を苛立たせるものである事を同業の諸兄にはご理解願えるのではないだろうか?

 良くない気持ちで仕事をしている事の報いはやはりあるのだろうか?
苛立つ俺がバカなのだろうが、平静さを失うとロクな事がない。
 内管式で総ごとくのガスレンジは,トップバーナーのヘッダー管をいじる時には手前側のごとくと汁受け皿を全部外さないとそこにはアクセスできない。これはどのメーカーでも同じで、今回のケースでも例外ではない。
 先に書いたようにこのカウンターキッチンは大変窮屈である。取り外したごとくや外装板の置き場所が近間に見当たらないので俺はガスレンジの上にそれらを山積みにし、しゃがみ込んでなめたビスにイライラしながら作業していた。
 その時,俺の背後を調理師が忍び足で通り抜けた拍子によろけ,山積みされたごとくにぶつかったらしいのだ。滑り落ちたごとくはしゃがみ込んで作業している俺の膝を直撃した。

「!」

 鈍い音とともに俺の目からは火花が飛んだ。二重バーナーの上に被さるでっかい鋳物のごとくが床に転がる。
(何をしやがるか!この野郎!)と怒鳴りつけたい気分で立ち上がろうとしたが膝に激痛が走り,立てない。
こういう場面の心象風景というのは痛さよりも怒りが勝る。それは色々な種類のもので出来上がっていてここで全てを書き尽くす事は出来ないが,ガスレンジの修理などという,厨房屋にとってはイロハのイに過ぎない仕事に手間取る俺自身への怒りがかなりのウェイトであるのは間違いない。
 調理師はおろおろしながら「大丈夫ですか?」と肩に手を伸ばして来たが俺は痛過ぎて声が出ないせいもあってそれを手で制した。時間が惜しい。

 それからの俺はきっと,何かしら不機嫌さのオーラを出しまくって作業しているように他人からは見えたのだと思う。
 全く不本意だが,ガスコックの交換一箇所を残して時間は16時50分を指しており,ここでの撤収と相成った。残りは後日だ。鈍痛でずきずきする足を引きずりながら再訪問の相談をするために料理長と再び面を合わせると最初の偉そうな態度とは打って変わって口調はですます調であり,何だか意外な気がした。

 やりかけたお仕事である以上,当然貫徹はするがなにかしら、メーカーとの相性の悪さというのはこんな風に影響する場合もあるのかと痛む膝を擦りながら俺はますます頭に来ている。
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自宅のガステーブルは目下不調 [日記、雑感]

 オール電化住宅が普及してるとは言ってもまだまだ熱源としての油は根強いのではないか。
 俺の住んでいる築年数40年以上にもなる老朽住宅などはまさにその通りで,冬などは地獄のようにクソ寒い家なので電化など導入する意味は全くなく,この先家を新築するだけの甲斐性など俺にあるわけはないので死ぬまで火をたく生活は続く。
 当然台所にはガステーブルがある。やもめ暮らしの俺のような者でも自宅で飯の用意くらいはしない事もない。せいぜいインスタントラーメンをこしらえるくらいだが。

 何が原因なのかはわからないが,ここ二日ばかりそのガステーブルのうち片方のバーナーは不調である。



それはおよそ上のリンクに示した画像のような姿をしている。
 不調の状態としては,バックファイアーが起きており,燃焼中にゴーゴー音がしている。
 俺は商売人の端くれとして,以前記事で説明したかもしれないがここで再びバックファイアーについての能書きをたれようと思う。

 正常な燃焼というのは混合管を流れる燃料と一次空気の混合気の流速とバーナーの炎孔近辺での二次空気を取り込みながらの燃焼速度がバランスする事で得られる。前者が勝るとリフティングという現象が起き,これは炎がバーナー炎孔から浮き上がったような燃え方をし,混合気の流速が勝ち過ぎると燃焼が追いつかずに消火する。後者が勝るのが今回の状態で,混合管内部の未燃焼気体に炎孔近辺の炎が引火してノズルの出口から火がつき,混合管が振動するのでゴーゴーと音がするのである。家庭用のガステーブルでその状態を見る事は恐らく出来ないが造作の大雑把な業務用燃焼器具だとノズルから火炎放射器のようになって炎が出ている状態を見られる場合がある。

 未燃焼ガスの流速が低下する原因はバーナーや混合管内部の錆や異物の付着により流路の平滑性が失われ,内壁面近辺で多数の乱流が不規則に発生する事による。
 従って,バックファイアーが発生した場合の対処としてはノズル以降の混合管やバーナーを一旦取り外して内壁面の平滑性を復旧させる。異物の混入があれはこれを取り除き,錆が目立っているようであれば磨く。

 想定できる原因を更に広い範囲で考えた場合,燃料の供給圧が極端に低ければノズルから射出されるガスの速度も低下するので同様の現象が起こり得るが,現実問題としてLPGであれ都市ガスであれ発生する確率は殆ど無視して良く、ほぼ全て機材側に問題が起きていると考えて良い。

 ざっとこんなもんだ。剛業者の諸兄ならば既にご存知であって,今更俺のような者がここでわざわざ含蓄めいた一節をぶつまでもない。

 それで現在,このガステーブルの持ち主である俺の事だが,燃焼器具の修繕を生業としているにも拘らず,何の手も打たずに不調のまんまぶっ飛ばしているのである。片側のバーナーが使えればカップラーメンのお湯を沸かす事は出来るのだからそれでいいじゃねえかと適当にやり過ごしており,そのうち何日か経ってからトンカチか何かでバーナーを適当に叩けば直るだろうといういい加減な希望を持っている。

 少なくとも今,車から商売道具を引っ張り出してきてこのガステーブルを分解し,バーナーユニットを取出して中を清掃してやろうなどという気が俺にはハナクソほどもないのだ。何日か経ってバーナーをトンカチで叩いても直らなければこのガステーブルはお払い箱にして新しいガステーブルを問屋から買えばいいのだと俺は考えておる。当然その費用は経費として処理する。

 理由は簡単で,金にならないからだ。
 以前,ご近所さんの住宅で調子の悪いガステーブルを安請け合いして分解図も手に入れる事もせずにいきなり修理した時に俺はその余りにも入り組んだ構造に閉口して以来,こういう物体とは生真面目に関わる気がしなくなった。
 俺が日頃いじくり回している業務用のガス器具というのはこれらに比べると実に大雑把にしてがさつであって,多少適当な作業手順であってもどうにか目的の場所はいじくり回せるようになっているものなのだという事を俺はその時改めて知った。
 自宅のガステーブルも例外ではなく,ごとくを外してバーナー周辺の造作を眺めただけで俺はやる気をなくした。一円にもならん事でこんなややこしいものをいじくり回すのは真っ平御免である。燃焼器具の修繕は俺にとっては仕事であって趣味ではないのでこんな面倒臭い事は絶対しないと俺は断固たる決意でこの事態に臨むのである。

 自宅に戻ってからの職人なんていうのはおおよそどんな分野であってもこんなもんではないのか。
そういえば以前,仕事仲間の冷凍機屋さんに自家用車のエアコンに自分でガスチャージする事はあるのかと訊ねてみたら実に面倒臭そうな顔つきで「何で俺がそんな事しなきゃなんねーの?」と聞き返された事があった。ついでに書くと彼の自宅についているエアコンは家電量販店の下請け業者に施工させたものであり。勿論それが故障した時に自分で修繕するつもりなどさらさらないとの事だ。 
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RONDOのリバースシートに感心する [修理屋から見た厨房機材]

TPPが発効すれば俺の住んでいる田舎などはかなり酷い様相になるのだろうが,今のところ生産農家は補助金を頂いてホクホク状態らしい噂を良く聞く。

 農家の中には補助金付けの農協頼みから脱却すべく,加工品の製造販売などに進出して経営の独立性を模索する動きは以前からあるがここ10年くらいの間に随分活発になってきた。
 一昨年の暮れ頃,そういう生産農家での仕事が棚ぼた風に舞い込み,俺はちょっとした小金を手にした。

記事名:この労務経費は安くないぜ・・・と言いたいが
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19

 リバースシートの試運転調整と取り扱い説明という事で,東京の大久保商会という輸入商社から俺の携帯電話宛に依頼が舞い込んできたのだ。

大久保商会URL:http://ohkubo-shokai.com/

 田舎住まいのしがない修理屋である俺のような者の事を一体どこでどうやって知ったのかは今でも良くわからないままだが,とにかく金になるんだったら何だってやったるぜ!と,目先の金に釣られて俺は見た事も触った事もないリバースシートの仕事に出かけたのが一年半程前の事だ。
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 RONDOのリバースシートと鎌田機械あたりの国内製品との外見上の歴然とした違いはローラーの収まってるボックスあたりにあるグリッド状の物体の有無で,これは巻き込まれ事故防止のリミットスイッチに連動している。手が巻き込まれるとグリッドが跳ね上がり,モーターは停止する。
IMGP0120.jpg

順序が前後するが,画像はコンベアーを組み上げた後の状態で,保護停止用のグリッドが跳ね上がっている。コンベアーの分解は当然だが,かき取り用のスクレーパーの取り外しもこのグリッドは跳ね上げないと行い得ない構造なのでリミットスイッチの破損がない限り電源を切り忘れて誤操作を行なってコンベアーが動き出し,巻き込み事故が起きる事はない。
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 コンベアーを分解してベルトを取り外したところ。作業は最初片側について俺が行い,組み付けが終わった後に使用者の方にもう片側を行ってもらう体裁を取った。
 
 通常,リバースシートのコンベアーを分解してベルトを取り外すのは使用者の行う事ではなく,修理屋が現れてチャージが発生する場面であるがRONDOはそうではない。必要な工具は以下の3点だけだ。
*5mmのヘキサゴンレンチ
*10mmのめがねレンチ(できればこれに加えて同サイズのボックスドライバー)
*マイナスドライバー,ブレードの幅は8mm位だとガタがない。
 たったのこれだけで,しかも緩める箇所は10箇所に満たず、コンベアー2組を分解する工程としては驚異的に少ない。
コンベアーのテンションボルトはナットも含めてステンレス製であり,しかも感覚的には高い精度が出ているのでナットが手でスルスル回り,道具は必要ない。従って,駆動製の整備のためにはこのブログで度々取り上げるこれがあれば全部の作業が出来る。
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 画像には部分的にしか写っていないが,RONDOのリバースシートを使用した事のある方から異口同音に出てくる賞賛の一つにシーティング厚みの精度の高さと調整のしやすさだ。
 厚み調整レバーと同軸に取付けられるギヤの工作精度がこれを決定づけるわけだが,これが驚く程高く,手で触っている限りではバックラッシュが殆ど全くと言っていい程ない。殆ど時計とか工作機械並みの精密さだ。
 他に,国産メーカーとの大きな違いというと駆動系ギヤの材質は全てナイロンであることか。運転時の静音性は勿論あるのだろうが,異物の噛み込みが発生した場合,伝達軸系に歪みが発生する事態の保護として敢えて柔らかい材質を選んでると俺は見た。
 モーターからの伝達はチェーンではなく,一体これで大丈夫なのかと不安になるほど細いタイミングベルトで行われているがメカニカルな保護装置を兼ねていると考えると納得がいく。

 成形パーツや樹脂パーツの多用,ダイカストフレームなどの構成は量産前提の仕様であり,日頃見慣れたいかにも鍛冶屋さんが製造してます風の国内製品とは別次元の印象で全体に何というか,実に洗練されたリバースシートだ。世界最高の称号はやはりダテじゃないな,というのがいじくり回してみての感想である。
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すき家ダークサイドが暴かれる [日記、雑感]

 最初にことわっておくが,この記事は俺の本性を良く反映しており,大変尾籠で,お下劣なものだ。潔癖な方,お食事中の方などはどうかこの記事を読まないで頂きたい。動画のリンクもクリックしないで頂きたい。
 先月,すき家でのバイト経験者の配信に関して記事を一つ書いた。

記事名:すき家のバイト経験者は語る
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-03-31-1

 この人物はニコニコ生放送の配信者で現在無職の,言ってみればニートとかそういう類いの人だ。社会に出てからのきちんとした職歴はなさそうなのだが一時期,すき家で働いていた事があるのだそうだ。
 その人物が自分の動画配信の際に語ったすき家でのバイトの話が保健所の知るところとなり,該当店舗のみか全店舗かは不明だが,査察や指導が入る事になりそうだという伝聞がネット上では現在まことしやかに流れている。

 動画のリンクを再掲する。


 問題の発言は5分40秒程から始まる一節だ。聞き起こしたテキストを以下に書いておく。
しかも一人だからさあ,便所も行けないの。
俺ウンコ漏らしたからね一回,正直。
まあ,ベチャって一杯,何なの,ねえ?(このへんは聞き取り困難)
ウンコももう,少し出たからね、ほんとに。
で,一人じゃん,それで。
で、その時に人が一杯来てさ,もうどうにもならなくなった日とかあるから,ウンコしてて。
いや,もう,気持ち悪いとかいうけど,どういう事だよ。だって,それ。
おかしいでしょう,だって。そんなの一人でやらせる方がおかしいよ。

 こんなしょうもない発言をわざわざ苦労して文字起こしする俺自身のバカさ加減にまず呆れるが,どうも保健所にとっては聞き捨てならない重要性を持つらしい。
 ホールサービスを伴う飲食店の業務に於いてウンkを漏らしながらトイレに行く暇もなく接客をさせる勤務形態を敷くゼンショーという会社はけしからんということらしいが、そりゃそうだ。
 ネット上には通報廚とか特定廚いう人種がおり,何かしらこの手の言質を拾っては雇用主だとか行政機関に電話をかけて粘着し,大袈裟に騒ぐ。何ともはた迷惑な連中だがそれがブラック企業の糾弾に向かう働きを示すのであれば毒も薬といったところだろうか。
 恐らく配信者にとっては放送中についつい口走った一言くらいに意識していたのではなかろうかと思うがまさかここまで話が拡大すると予想できただろうか。
 
 そしてこれを受けて、配信者は更に語る。


 蟻の一穴とは良く言ったもので、昨年クビになったこの1バイトである配信者の言動は或はすき屋の骨組みを痛撃する事になるのかもしれない。今まで散々こき使われて何かしら理不尽な思いをもつすき家のバイト経験者にとっては溜飲の下がる出来事にまでなるかもしれない。
 バイトの時給を上げても働き手は集まらず、従って24時間営業もできずいつも9時には閉店となれば現状の商品価格も維持は無理だろう。
 俺のような生業の者からすればそれは大変歓迎すべき事だ。各コンビニチェーンやマックなどがそうだが年中無休で24時間営業の店舗というのは本当に仕事がしづらいので世の中から消えてしまえばいいといつも考えている。他人が休んでいる間に働いて出し抜いた奴が偉いんだなどというせこい魂胆を賞賛するような風潮は絶対に間違っているとおれはかんがえるし、こういう,デフレスパイラルの中で地方の個人事業主を根絶やしにし、地方のお金を吸い上げて中央にかき集めるシステムは地方経済にとっていい事を一つももたらさないからだ。

 ところで先日,俺は自分の得意先で夕食をとった際にその店舗の奥さんと雑談する機会があり,そのお店の定休日にご家族ですき家に行った時のお話を伺った。
 スタッフの態度が悪いとか店舗内が汚いとか悪臭がするとかまあ色々とご不満がおありのようで,それは全くごもっともなご意見だとは思う。ああいう営業形態で,雇用形態ではそもそも人材の定着率はよくないだろうし、そもそも配信者が語るようにオペレーションの全てがマニュアルで表しきれるものでもないから実際の運営は至る所穴だらけになってしまう。

 まあ,「ワンオペ(one operation,ホールとバックヤードの両方を一人で切り回す事をここでは指している)の時間帯でお客さんが立て込み,ウンkが漏れそうになった時にはどうすれば良いか」までは表しようがないよなw

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お釣りくれよ! [日記、雑感]

 前日の出来事について補足しておく。
記事名:新規開店のツールショップにてガチで凹む
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-05-03

 帰宅してからの俺は腹立ちまぎれに上記のような記事を垂れ流したわけだが、夕食を済ませて家でゴロゴロしていると午後9時近くになって携帯電話が鳴り、見慣れない番号が表示されていた。
 電話をとると日中寄ってみたしょうもない工具専門店からで、声の主は店舗スタッフのお姉ちゃんからだったのだ。

 釣り銭を渡し忘れたのでお届けしたいとの事で、わざわざ来宅して頂くには及ばず、自分は明日、そちら方面に用事があるので受け取りに寄らせてもらうと答えておいた。
 電話を切ってから自分の侘しい財布を覗いてみると、ざっと考えて6千円くらいの金が確かに足りない。4千幾らかの買い物をして百円以下の単位は持ち合わせていた小銭で払ったので渡したお金は1万と幾らかであり、確かに辻褄が合う。

 貧乏人の俺にとって6千円の金は決して無視できるものではない。あるとないでは大違いだ。そんな釣り銭を受け取っていない事を忘れていた俺が筋金入りの大馬鹿者である事は認めよう。
 しかしだ、思い返してみるに俺は会計を済ませてから幾らかの間その店でカタログなんぞを眺めて滞在していたのだからその間に釣り銭を受け取っていてもいいはずではないのか。
 そもそも、俺はレジで会計を済ます時に領収書を切ってもらっているのだ。通常一般、領収書と一緒に釣り銭を渡すものではないのか。

 俺の妄想は悪意を孕んで膨れ上がった。
 あの、顔色の良くないツナギの男の面付きを思い出して段々頭に血が上ってきた。
 ただでさえ、びた一文の値引きもなしに、しかも全額先払いでごくありふれたKokenのソケットを俺は買っているのだ。それでおつりを受け取っていない事を忘れているとは自分の間抜けさ加減がつくづく情けない。
 それはそれとして、あの店のツナギの男はどうして領収書と一緒におつりをくれなかったのかを想像してみると、実のところ、あいつは最初っからああやって釣り銭を誤摩化す気でいたのではないのかという気がし始めてきたのだ。

 こういう成り行きだから余計そう思えるのだろうが、見るからに屁生狡そうな野郎だった。
あいつは俺の釣り銭を誤摩化してから、後日俺が注文したソケットを受け取りに来る時までにその事を思い出して騒ぎ立てる可能性に気付いて慌てて連絡を寄越したのではないのか。
 大体、俺が会計を済ませる時にレジを打っていたのはあの野郎ではないか。それで、過失か故意かはさておくとしても尻拭いを立場の低そうな姉ちゃんに押し付けるとはどういう了見なのかと俺は余計頭に来た。

 ふざけた野郎だ。

 おつりは明日貰えるのだからその事自体はいいにしても、あの顔色の悪いツナギ野郎には何か一言言ってやりたい気分を抱えて俺は寝た。

 それで今日、俺は宅配便の荷物の引き取りがてら不愉快なその工具専門店に立ち寄った。
奥から出てきたのは昨日の顔色の悪い男ではない、無精髭を生やしたやはりツナギの男で外見上はごく実直で朴訥な人物に見えた。
 彼は俺がその本人である事を確かめた上でレジからおつりの入った封筒を取り出し、昨日の手違いを平身低頭して詫びた。
 彼の語るところに寄れば、昨日レジを締めて売り上げを精算してみたところ中のお金が6千円多い事が発覚し、店内の防犯カメラで来客をチェックしたところ社長なる人物が俺の姿を見て自分が6千円のおつりを渡す事を忘れていた事を思い出したのだそうだ。

 ここには二つ、驚くべき事実が含まれている。
一つは、俺が出かけたのは午後3時かそこらであったはずだが、その人物は閉店まで俺に釣り銭を渡していない事に気付かずにいたという事だ。そうだとすれば彼はどうしようもないボンクラだろう。商品を注文した時に俺は連絡先として自分の携帯電話の番号を伝えているのだからもっと早い時点で気付き、すぐさま俺の携帯に連絡を寄越すのが良くある対応だと俺は思うぞ。重箱の隅をつつき回すようなあら探しを俺は好まないが、あの野郎は確信犯であり、時間が経つに連れて良心の呵責が募ってきたから渋々電話をかけさせたのではないかという疑念がどうも払拭できない。
 そして二つ目、あの顔色の良くないツナギの男がこの工具専門店の社長であったという事に俺は驚倒した。だらしない性格について俺は人後に落ちないし年中貧乏でもあるが、仕事の区切りがついてもいないうちから代価の支払を求めたり代金を受け取ってからおつりを渡し忘れたなどという事はまだやらかしていない。そのお店の商売がどれくらい長続きするのかは知らないがとにかく、あんなてきとうな野郎でも社長を名乗って店を構える事ができる程度にはまだこの世間は手ぬるいのだ。

 今日カウンターに現れた人物には結構好感を持ちながらも、俺はこの先この店を利用する事はないだろうと内心醒めた気分でいた。利用する理由がこれほどまでに乏しいお店というのは初めてのように思う。乏しいというよりもないと言った方が正しい。店内を改めて見渡してみると本当に欲しいものがない。ふと考えたのだが、工具というのは俺のような設備機器の修繕業者と自動車整備工では見方や捉え方が違っているのかもしれない。それを酷使し、消耗させる度合いは明らかに後者の方が強いだろうから彼らにとっては結構日常的でお手軽な買い物なのかもしれず、お金のやり取りにしても丼勘定だったりしがちなのかもしれない。

 今回の事は大変申し訳ありませんが以後気をつけますので何かありましたらよろしくお願いいたします、と、社員である彼は丁寧な調子で俺に詫びた。それを聞き流しながら店内の一角にふと目をやるとそこには俺が昨日買ったパーツクリーナーがあった。

【ProTOOLs】ブレーキ& パーツクリーナー 840ml

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  • 出版社/メーカー: ProTOOLs
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 昨日俺は,ドライタイプのパーツクリーナーはブランドにこだわらなければホームセンターでは200円くらいで売っているものだと書いた。上記リンクのAmazon.comでの売価は400円弱だが俺は昨日同じ商品を半額と言う触れ込みで290円で買った。それが今日,値札を見ると190円となっている。俺の指値はしかるべき根拠に基づいている事をここで証明できたかとは思うが,一日で売値がいきなり百円下がるとはどういう事なのか。

 俺がそのうちの一本を手に取って,自分の購入価を告げるとその従業員は口をぱくぱくさせてしどろもどろになった。
 今から値引きして返金しろなどと言うつもりはないと俺は彼に伝えると少し安心した風ではあったので俺は切り上げる事にした。
 顔色の悪いツナギ男の社長はともかく、彼個人に常識は備わっていそうに見えた。もう一人の従業員である姉ちゃんも恐らく同様だろう。しかしその店舗総体の流儀は俺にとって実に違和感の大きいものだった組織だったものというのは,それがたったの三人程度のスケールでもなんというか、狂気性を帯びるもんだなというのは結論としては大袈裟過ぎるのだろうがキチガイ菌は伝染するというかねてからの俺の持論はここでも確認できた気がする。それが今回の出来事の唯一の収穫ではないのか。4千何がしかの金を使ったにしては余りに虚しい収穫だが。
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新規開店のツールショップにてガチで凹む [日記、雑感]

 俺が商売道具を買い込むときのルートは大体決まっていて,整理すると以下のようになる。
*住設,配管資材の問屋
*電設資材の問屋
*機械材料の問屋
 最初から捨て工具として購入する場合にはホームセンターのようなところで思いついた時に現金買いする。他に上記で手に入らないものはネットの通販で購入している。ここ2年ばかり注目しているフランスのFACOMの製品あたりがそうだ。

よく利用する通販サイト:http://jp.rs-online.com/web/

 RSは工具類もそうだが汎用制御機器ではない電子部品の在庫が充実しており,今では俺の住む町ではなくなってしまったオンボードパーツを扱う店舗の代わりとして重要性を増しつつある。

 ところで,連休を前にして昨日,実家でタウン情報誌らしきものを眺めているとなんと,俺の住む田舎町に工具の専門店がオープンするという広告というか,記事を見つけた。
 今日日,これだけネット通販が発達して市中の問屋では調達できないメーカーの製品でも手軽に,しかも10年くらい前から比べると驚く程安価に購入できるようになった中で,わざわざ店舗を構えて開業するという事は余程何か特別な調達ルートでも持っている業者なのかと俺の好奇心が膨らんだ。
 それで,俺は今日,用足しついでに冷やかし半分でその工具専門店を覗いてみようかと思い立った次第だ。

 その結果を先に書くと,俺は痛い目に遭った。目下俺は非常に頭に来たり後悔したりしながらこのテキストを書いておる。
 しかし俺はここで,このロクでもない工具専門店の屋号や所在を明かさない。俺は自分の蒙った不条理を誰か他人になすり付けて八つ当たりしたい気分になっているのでこの工具専門店の餌食となって俺のような憤懣を持つ哀れな子羊がこの先どんどん出てくればいいとまじめに考えているのだ。
 上に書いた事は半ばネタだが,実際の所この工具専門店はネット上では検索できない。実名を挙げれば営業妨害とか何とかいう難癖も出てくる恐れもあるので今回の事は変な冷やかし気分を起こした俺の愚かさの代償として我慢するしかないのだろうな。

 件の店舗は郊外の比較的通行量の多い路面沿いに開店していた。
店舗前の駐車場には黒い軽自動車が二台停まっており,来店客ではなく店舗スタッフ二名の自家用車だった事を後に俺は知る。
 つまり,誰も客のいないその店舗に俺は一人で足を踏み入れた。
店内には愛想の良さそうな若いお姉ちゃんが一人いた。店舗は10坪よりも少し広い程度で大して広くはないので陳列されている商品もさほど多くはなく,全体にスカスカしていて量販志向の印象はない。
 置かれているメーカーはお馴染みのKTCやシグネットが中心で特に新鮮味はない。シグネットの製品で、現物を手に取って検討する事が出来るのは恐らくこの田舎町では初めての店舗なのだろうがこのメーカー自体はCPが売りのブランドであって特段,製品の出来が素晴らしいとかいう印象が俺にはない。良心的なメーカーだとは思うけどな。
 ざっと店内を見渡してみてここが自動車工具の店舗らしいという印象を俺は持った。特に飛びつきたい商品があるわけでなく,しかし冷やかしで帰るのもなんだか悪い気がして俺は店内を改めて見渡し,大特価と書かれているパーツクリーナーのスプレー缶に目が行った。お値段は税別290円のドライタイプだ。
 ドライタイプは使い勝手が悪く,あるときから俺は敬遠するようになったが一本290円くらいならまあいいか,と手を伸ばしかけるとお姉ちゃんは「パーツクリーナーはオープン特価で半額になっています」とのたまう。半額だったらもう一本買っていくかと俺は二本取出した。お一人様三本限定ですからもう一本いかがですかとお姉ちゃんが奨めるのでもう一本買う事にした。

 「他に何かお要り用のものはありませんか?」と姉ちゃんは俺の汚い顔を覗き込むようにして訊ねてきたのでかねがね思案してきた事を問い合わせてみた。
 それはインチサイズで,ロックボールではなくピンとOリングで固定するタイプのインパクトソケットを探しているというものだった。俺の経験則では国内製よりも海外製の方がソケットの耐久性は明らかに高いのだが,上の条件を満たす仕様は国内製のKoken製しか見つからずずっと購入を考えあぐねていた。

 俺のリクエストは姉ちゃんの商品知識を逸脱するものだったらしく,お姉ちゃんは一旦,事務所と思しきドアの奥に引っ込み,少ししてからKokenのカタログを持参して現れた。やはりそういう選択肢に行き着くしかないのだな,と俺は思った。
 しかしKokenの製品ならば別段この店で購入する理由はない。俺が普段ツケで買っている機械材料の問屋で取り寄せてもらえるからだ。一旦断ろうかと考えたが成り行き任せな気分でカタログを開き,その後顎が外れそうになる場面が来るとも知らずに3サイズ位を注文した。

 少しして事務所からは店主と思しき兄ちゃんが現れた。黒いツナギを着てリーゼントヘアーのなんだか少々軟弱そうな男だ。
 取り寄せの場合は前金で会計させてもらいたいと彼は冷たい目つきで俺に言った。顔は笑顔だが目は笑っていない。俺はイヤな予感がしたが大して高価なものでもないのでそれには応じた。
 それで主と思しき兄ちゃんはたどたどしい手つきでレジを打ち始めたのだが、その様子を眺めている俺は思わず口をあんぐりと開けたくなった。
 彼はインパクトソケットの値段をカタログに表記されている定価で弾いているではないか。

冗談ではないぞ。

 掛け率を正確には覚えていないが,ソケットのようなものはどこで買おうが定価販売なんていう事は絶対にないのだ。しかも前金だ。この店は一体どんな仕入れをしているのか。
 続いて彼は俺の購入したパーツクリーナーの金額を打ち始めた。290円という金額で彼は三回レジのキーを叩いた。明らかにレジの扱いに馴れていないがそれはまあいい。パーツクリーナーは半額ではなかったのかと俺は姉ちゃんに水を向けた。姉ちゃんはビー玉みたいな目玉をきらきら光らせながらこう答えた。
「半額で290円なんですよ」

 それでは正価では580円という事なのか!


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 上のリンク,Amazon.comでは同一商品が398円で販売されているがそれにしたって高い。ドライタイプのパーツクリーナーなんていうものはブランドさえ選ばなければホームセンターのようなところでは一本200円くらいの売価でで山積みされている。

 ソケット3個の全額前金とパーツクリーナー3本でお買上額は大体4千円強で既にこの時点で俺は不快感を募らせていた。通常取引している問屋ならその半額程度で済む買い物だ。
 しかしこの店の阿漕さはこれで終わらない。会計を済ませて店内をうろついているとカタログの並んでいる一角が目についた。メーカーを見るとKTCだったりTONEだったり、あるいはエスコのような商事会社だったりで特段目新しいものはない。全部俺が日常取引のある問屋のフロントに常備されているもので,問屋が無償でくれたカタログもあらかたそこにはあった。RSなどは最初のオーダーで届いた商品にまるで辞書みたいにクソ分厚い総合カタログが無償で同梱されておりその時は結構驚いたものだ。

 何の気なしにカタログのページをめくる俺にお姉ちゃんが話しかけてくる。
「カタログを持っていると注文がしやすくて便利ですからいかがですか?」俺はそこに罠の気配を感じ取った。俺の脳味噌は大して上等ではないがそこまでお人好しのバカでもないのだぞ。もしやと思いタダでくれるのかと訊ねると案の定,顔つきを曇らせてカタログは有償ですとお姉ちゃんは返してきた。
 工具のカタログはなかなか金のかかった印刷物であり,有償である事は決して理不尽だと俺は思わない。事実,KTC やTONEの総合カタログは裏表紙に金額の記載があるし、通販サイトでは海外メーカーのカタログを有償販売してもいる。
 しかし俺は自分の習慣として,問屋で工具類のカタログを買った事はこれまでただの一度もないのだ。(駄洒落ではないぞ)工具メーカーのカタログなどというのは大体フロントのカウンターに平積みされていて取引先が勝手に持っていっていいものだとばかり思っていたのだ。さすがに一人で同じカタログを何冊も持っていくようなけしからん輩は問屋には現れないので問屋も無頓着で、いちいち客がフロントにへばりついてああでもないこうでもないと口頭でやり取りをするよりもカタログを持ち帰って自分の事務所で好き勝手に検索してから問い合わせしてくれた方が手間が省けるからだろう。

 上に書いたような事を手短にお姉ちゃんに伝えると彼女は苦笑いしながら言い出した事を引っ込め、俺は苦々しい気分で店を出た。
 帰宅する道すがら,不条理を噛み締めながら俺はその正体について色々と思い返していた。題材を変えてこういうシチュエーションが俺には何度もあったはずの経験はすぐに記憶に蘇ってきた。

 それは悪徳スナックだとかキャッチバーだ。若い頃に何度か,俺はそういう場所で痛い目に遭った。擦れっ枯らし女を相手にビールを一本飲んで店を出ようとしたら一万円くらいの会計が来て腰を抜かしたあの感覚に近い。酷い店だぜ全く。
 更にここから俺の妄想が膨らんでいく。
もしかしたらその店は新手の取り込み詐欺みたいな稼業なんじゃないのか?
Kokenのソケットみたいなものに定価で全額前金などという決裁方法はどうも胡散臭く思えるのだ。
店長だか店主だかわからないが,先に書いた兄ちゃんが手にしていた注文書には俺以前に数名分の記述があった。彼らも俺と同じように何かを発注するにあたって全額定価の現金先払いで決裁を済ませているという事な訳だが、ほんとに商品は届くのだろうか?ある程度の金をかき集めたらいきなり閉店してどっかへトンズラを決め込むような真似はしはしまいか。店舗内のスカスカした商品の陳列状態を思い出すにつけ俺はそういう疑念を払拭し切れないでいる。 

 世の中が荒んでくると人心も同じく荒んでくる。俺も間違いなくそのうちの一人なわけだ。一回きりのお買い物で、まあ頭に来るが授業料だな。やはり長年取引のある問屋は大事にしてあげなければ,というのが今回の教訓である。
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ハイエナ行為がメーカーにばれた [日記、雑感]

 数日前に書いた記事で某コンビニでのエアコン修理に触れた。
記事名:ハイエナ
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-04-26
その後の進展について書き残しておく。

 冷媒漏れの予測の元に件のコンビニに再訪問となり、試験的に冷媒をチャージしてみると室外機の内部で露骨にリークの反応が出た。
 検知器の感知部分を機械室内部に突っ込んでみたが既に漏れた冷媒が充満しているらしく、内部の冷媒管が入り組んでいる事もあって漏れ箇所の特定が難しい。
 漏れかたが激しい事は察しがついたので、俺はあえて冷媒をどんどん入れて強制的にコンプレッサーを起動させた。
 その状態で機械室内部をあれこれ見ているとある箇所から冷媒が液体に近い霧状になって音を立てて噴き出し始めた。目視で簡単に確認できるくらいの勢いだ。
  その漏れ箇所は、暖房運転を行う際に働くであろうキャピラリーチューブが内部のどこかと接触し、長期間の運転で与えられた振動によって擦れ,表面が削れてピンホールが出来たことによる。
 ピンホール,とは書いたが実際には線上に形成された漏れ個所であり,漏れ方は目視可能な位歴然としている。
IMGP0118.1.jpg

画像の中央よりやや左寄りの個所は内部の冷媒管が白く霜がついてるのが確認できる。高圧配管から大量のリークが起きると大気圧下での蒸発温度(R-22の場合は約-40℃)が発生する事になるので液冷媒のかかった周辺箇所は画像のように氷結する。

 特に縦置きのスクロールやロータリーのコンプレッサーが幅を利かせ始め,アウトドアユニットの機械室部分で冷媒管が入り組むようになってからはこの手の障害が本当に増えた。
 通常の冷媒管で生じた亀裂であればろう材によって塞ぐ処置が可能だが何せ直径1ミリ強のキャピラリーチューブからの漏れで,しかも画像に示した通りの激しさなのでヘタにろう材を盛って溶接などしようものなら溶けた溶棒が内部に流れ込んで閉塞が起き,取り返しのつかない事態になる公算が高い。よって処置としてはキャピラリーチューブ自体の交換となる。

 ここで俺は前回訪問時にFCオーナー殿から伺った話を思い出した。
現調に訪れたこのコンビニチェーンの指定業者は何かがないので修理ができないという所見を残して撤収して行ったというあれだ。
 更にもう一つ、丈夫のバーナーユニットのフレームロッドのリード線が取り外されていた理由だ。
画像を再掲する。
IMGP0116.JPG
 R-22という冷媒は寒冷地で暖房用に使うには吐出温度が高くないため、バーナーによって加温する必要があったと以前の記事で俺は書いた。
 画像に示されているのはバーナーの組み込まれた熱交換器で、銅管部分は内部に冷媒が入っている。俺は普段エアコンの修理をしていないので予備知識がなく、ここは想像だがこの熱交換器は冷媒が入っていない状態でバーナーを燃焼させると冷媒への熱移動が行われないので熱交換器が過熱して変形する恐れがあり、これを案じた指定業者がバーナーへの点火が行われないようにと意図的にリード線を外していったのではないかというのが俺の憶測だ。

 という事は、指定業者はこの歴然たる冷媒漏れをも既に確認しているはずなのだ。
この機種自体がおよそ20年近くも前のロートルである事を考えると、ピンホールの発生したキャピラリーチューブは東芝では既に補修パーツが払底しているのではないか。最低保有年数はとうの昔に過ぎているだろうから製造元としては修理不可能の所見を出す事には確たる根拠があるという事になる。

 それでもなおかつ、何とかならんかというのがFC オーナーの言い分というか、都合なのだ。
消費税の増税後は明らかに売り上げが落ち、そこに加えて業務用のエアコン一台をリプレースするのは経営的に何とも厳しい、本部に対しては独自に修理業者を捜すと既に連絡していて今更引っ込みもつかないので何とか修繕して欲しい。改造だろうが何だろうがどんな手を使っても構わないからとにかくこのエアコンが機能するようにして欲しい、そういう趣旨の事を彼は俺に訴えた。

 困った話だぜ、ほんとに。

 それで本日、5月2日に俺は東芝テクノネットワークの営業所を訪ね、破損箇所であるキャピラリーチューブのパーツストックがまだ残っているかを問い合わせようとしたのだった。

 暦の上では明日からが連休な訳だがさすがに超大企業の東芝は今日から既にお休み体制で、当直の社員と思しき人が二人くらいしかいなかった。
 それで私服姿の兄ちゃんに声をかけ、経緯やら状況を説明すると何とも奇遇な事に彼がその現調にあたった人物だった事が判明した。そのコンビニチェーンの指定業者とは東芝テクノネットワークの事だったのだ。こういうところはいかにも田舎町の出来事で、世間の狭さを実感するのだが何せ、そうとなれば話は早いのだ。
 松下のような偏屈な会社とは大違いでさすがに御三家の一角である東芝ともなると対応は紳士的であって俺のような野良犬稼業であっても邪険にされる事はないので議論は見通しが良い。
 問題のキャピラリーチューブがまだ手配可能か否かについては業務が再開される連休明けに判明する。あれば話は簡単だがない場合は設計仕様書からその断面積と全長を教えてもらい、俺が手持ちのキャピラリーから近似した圧力損失が生じるだけの長さを切り出して代用品とする、というところまでの話がついた。勿論これは改造にあたる行為であって東芝には一切の結果責任がない。

 何か先の展望が開けたような気分で俺は帰り道の最中、皮算用を弾いてみていい気になっていた。
しかし少し時間を置いてみるとこの修繕には先々必ず一山あるだろうという予感が働いた。東芝テクノネットワークにしてみれば俺のような者の印象が良いはずなどない。メーカーの所見を覆して改造を試みるハイエナ野郎がのこのこと出向いてきたというのが本日の構図ではないのか。
 これから先に起こる事の予測が結構簡単に成り立つ。

 まず、ストックパーツであるキャピラリーチューブは既にない。あってもない。何しろ製造元なのだからないと言い張ればそれはないのだ。あるとなったら最初に現調に訪れた彼の所見は何だったのか、リプレースを進めるために方便を使ったのかという問題が起きるではないか。単なる個人店舗ならともかく全国チェーンのコンビニでそれが露見するのは大きな問題となるのは明白だ。
 よって現場では、俺は代用品としてのキャピラリーチューブを制作する事になり、帳尻合わせに四苦八苦する。とことんはまる。こういうロクでもない予感ほど的中するのだ、俺の人生は。 
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改めて責任区分について考えたい(2) [修理屋から見た厨房機材]

前回記事名:改めて責任区分について考えたい(1) 
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-04-29

某総合病院で運用中の蒸気熱源の食器消毒保管庫は昇温特性が悪化し、なかなか問題が解決せずに調子の悪い状態が長期化していた。長期化の原因は問題の根本的な所在が上流側にあり、ボイラーからのサプライ配管途中にある減圧弁の不調によって送汽圧力が低下していたことによるのだがこれが判明するまでの時間が長期化したのがその核心である。
 
 前回記事で掲載した画像を再度示す。
120616_2118~01.JPG

 画像の左上には圧力ゲージが映っているがこれは俺が責任区分を明確化させるためにこの問題が持ち上がってからあるとき取り付けたものだ。

 先に書いたように、機器類の不具合というのはほぼ機材自体の故障と半ば決めつけられるようにして解決の方向性が定められ、上流側の問題についてはある種、無謬である事が現場の慣例というか不文律のようになっている現状がある。これは俺一人だけの事ではないと思う。
 電源電圧とかガスの供給圧とか給水圧力が疑われる事は殆ど全くない。蒸気の圧力もまた同様である。このケースでも同様であり、取りかかった当初はスチームトラップを分解してみたり交換してみたり、温調機や電磁弁を分解してみたり交換してみたりそれはそれは色々な事を試みてみたが問題は一向に改善されず、パーツや材料などで俺の持ち出しはどんどん増えて行くばかりで頭が痛かった。

 (もしかしたらこれは蒸気の圧力が低いせいではないのか?)という疑問は機材である保管庫の内部についてほぼ手を打ち尽くしたあたりで芽生えた疑問だが、この事を病院の施設管理に相談し、事実の解明に協力してもらえるようになるためには物凄く長い時間と膨大な言葉を要する。
 ボイラー技士は勿論、れっきとした保全技師でありしかるべき矜持の持ち主であるが、ボイラーによらず設備の選任技師から見れば出入り業者、ましてや俺のような厨房屋などはいかがわしいチンピラみたいな人種に見えるようなのだ。例外は高圧受電設備の保安業務に携わる電気保安協会や電気主任技術者の有資格者であり、ボイラー技士の業務範囲外の分野なことと資格の取得自体がかなりの難関である事から一定のリスペクトを受けるが俺のような者はそうではない。

 このケースでは,蒸気の供給圧が低いから昇温が遅いのではないかなどという俺の台詞は選任技師にとってはなんとも挑戦的なものに受け止められたようで、長年出入りさせて頂いているこの病院だが俺とボイラー技士長との間にはいささか険悪な雰囲気が生まれた。

 この病院の調理室内で蒸気を熱源とする機材には食器消毒保管庫以外には食器洗浄機(ブースターを含む)とライスボイラーやスープケトルといった加熱調理機器がある。厨房への送汽はボイラー室の低圧ヘッダー出口で一律に終端が0,2MPaとなるように減圧弁の調整がされている。
 送汽圧力に問題があるのであれば他の機材にも影響が出ていていいはずなのにそういう修繕の依頼は現場からは来ていないのだからやはり食器消毒保管庫自体に問題があるのだというのが病院側の見解である。事実,ライスボイラーの配管途中に取付けられている圧力ゲージは0.2MPaを指示しており,全く問題ないではないかと仰る。

 何といっても相手は蒸気のプロな訳で俺にとっては苦しい展開だ。
更に追撃が来る。
カタログスペックを調べ直してみると,問題の食器消毒保管庫は常用圧力の下限が0,15MPaとなっている。
既に送汽の圧力は下限値よりも高いではないか,というものだ。
 俺は更に苦しくなる。
色々思案して思いあたったのはサプライの配管方法にまずい部分があるのではないかという点だった。
画像には現れているが,この病院の蒸気配管はサプライ,リターンいずれもオーバーヘッドで行われており,ボイラー室の環水槽直近でリフトフィッティングを一括して行う事でドレーンを回収している。
 三台並んだ食器消毒保管庫への蒸気配管は柱型の直近から降りてきた32Aのサプライ配管を途中分岐させ,それぞれに保管庫への接続箇所で配管呼び径をサイズダウンさせている。

 俺の側からの主張は殆ど屁理屈というか、暴論に近いものに受け止められていたのではないか。
(テキストをまとめる能力が俺にはない。以下続く)
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改めて責任区分について考えたい(1) [修理屋から見た厨房機材]

 下の画像は某総合病院の食器洗浄セクションで、食器消毒保管庫が3台並んでいるところだ。

120616_2118~01.JPG

 上部を写しているのはこの食器消毒保管庫の熱源が蒸気である事を示したいからだ。
 この保管庫は約20年前に俺がまだ勤め人だった頃納入させて頂いたものだ。驚くべき事に当時,その病院では食器の消毒を煮沸消毒槽で行っていた。既に取り壊されたその建家は昭和30年代に建てられたもので,当時は給食の食器類は煮沸消毒が標準だったわけだが何せ煮沸消毒槽で熱源が蒸気という事は単に一槽シンクに吹き込み用の蒸気配管とサプライのバルブがついてるだけの単純極まりない構造なのでどこもぶっ壊れるところなどなく,修繕と言えば摩耗したバルブとか水漏れのする排水共栓を交換する事の二つしかないのだから誰でも出来るし幾らでも修繕ができる。

 今日日の感覚でいえば火傷の恐れがあるので煮沸消毒槽など選定される事は殆ど全くと言って良い程ない。件の病院では運用後20数年してさすがに世の中色々便利なものが出てきたのでもっと安全な熱風消毒に切り替えようという判断がなされたのが20数年前だった。
 食器消毒保管庫の熱源はガス,電気,蒸気とあるが現在,販売されているものの半分以上は電気を熱源としている。ガスだと燃焼排気の処理のための付帯設備が必要なため導入コストの総額が高くつくし,蒸気だとそもそも蒸気ボイラーが備わっていないと使えないからだ。
 その病院は当時,350床くらいの大きな病院で,築年数が古い上に竣工以来色々な機器類を追加導入したせいでそもそも受電室のトランス自体が容量的に苦しく,1バンク増やすのも現実味がないので蒸気加熱式の食器消毒保管庫という選定に落ち着いた。

 それで今から15年くらい前にその病院は移転新築したのだが,旧病院で使っていた蒸気熱源の食器消毒保管庫はまだ減価償却が済んでいなかったのと移転先の新病院でも蒸気熱源が用意されているため移設して継続運用する事になった。冒頭の画像はその後,現状を表している。

 移設後しばらくは特に何の問題もなく運用されていたのだが、この保管庫はあるときから庫内温度の立ち上がりが良くないという不具合が出始めた。
 ガスや電気と違い,蒸気熱源は病院施設に於いて必ずしも24時間安定供給されるものではない。オペの際の手術器具の殺菌には現在,単独でオートクレーブを持つのが常態化しているし,エアコンや温水暖房の高性能化や低価格化で蒸気暖房も減少する一方だから蒸気ボイラーなどというややこしくて物騒なものは段々日陰に追いやられているのがここ30年くらいの空調機械設備事情ではないだろうか。
 対して,食器洗浄の業務が終了するのは一般に,遅くて午後8時である。昇温の立ち上がりが悪化すると消毒が完了しないで翌朝まで庫内のブロワーが回りっ放しでいる不具合を生む。

 少し脱線するがここで食器消毒保管庫の動作を追ってみる。
一般に保健所が指導する食器消毒保管庫の運転条件は温度は80℃以上,時間は30分以上がその目安である。ここで注意すべきは時間であり,30分というのは運転時間全体ではなく,80℃以上の状態を最低限30分以上維持せよという意味である事に注意されたい。室温の状態から起動させて庫内温度が80℃に達するまでの運転時間は含まれていないと補足しておく。
 これを受けて製造元の仕様としては起動させてから設定温度に達し,温調機が動作したその時からタイマーのカウントを開始するという制御を行うようにしてある。

 という事は,この病院の場合,起動させてから一時間以内に庫内温度に達しない場合は午後9時になるとボイラーからの送汽が止まるのでタイマーによるカウントが始まらないまま翌朝まで庫内温度が生温いままでブロワーが一晩中回り続ける運転状態となる。

 蒸気式の食器消毒保管庫に限らず、機器の不具合は全てと言っていい程、その機器自体の障害として修繕の依頼がくる。
 ややこしい書き方とは思うがこういう事だ。
機器類というのは全て,給水の圧力とか温度とか,給電の電圧とか,要するに上流の条件を全部満たしていなければ所定の機能や性能はギャランティされない。
 だから機器の不具合が起きている時,まず最初に行われるべきは不良発生箇所の特定であり,それは責任分解店のどちら側にあるのかを特定する事だ。稼働のための周辺条件が満たされていないのか,それとも機器自体に故障が起きているのか,と言い換える事は出来る。
 経験則から言えば,発生する不具合の殆どは機器(負荷)自体の故障によるが周辺環境が原因である場合も皆無ではない。(長くなりそうなのでこの項続く)
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ハイエナ [日記、雑感]

 俺はパチンコやパチスロをやらないので詳しい事はわからないが,なんでも聞く所によれば大当たりの出そうな台を付けねらって店内を徘徊する行為を指してハイエナと呼ぶのだとか。
 なかなか大当たりが出ずに飲まれ続けるうちにその台を打っていた客が諦めて席を立つ。しかし実際にはもう少し粘ればいい目を見られそうな気配である。そういう場面を狙って陣取る行為であるらしい。やったもん勝ちではあるがいささか浅ましい行為でもある。ホールの従業員からすると好ましからざる振る舞いなのだそうだが金のために必死になるハイエナからすればきれい事は言ってられないわけだ。

 とあるコンビニのオーナーから修理の依頼が来た。エアコンの修理をしてもらえないかとの事だ。
一面識もない方なので,どうして俺の事を知っているかと訊ねてみると地元の商工会の職員から聞いたという。しかしその商工会職員もまた俺は一面識もない方で,一体話の出所がどこなんだか皆目見当がつかないのだが,とにかくあてになりそうな業者という評価ではあるらしい。
 そうは言っても俺は魔法使いではないので出来ないものは出来ないし,エアコンの修理などやった事もないしで丁重にお断りしたのだがオーナー様の食い下がり方も尋常でなく,ひとまず現調してみましょうかという事で出向いてみた。

 FCオーナーによると,この某コンビニチェーンの指定業者が現調に現れたのだが,何かがもう手に入らないので修理は出来ないという所見を残して退いたとの事だった。「何か」がどういうものであるかはオーナー殿にはわからず、指定業者の名前もわからないとの事なのでいつものごとく出たとこ勝負での現調だが他人の弄った後というのは結構わけのわからん落とし穴があるものだ。
 製品は東芝製で,使用冷媒はR-22だから製造年度は結構古いものだと思う。
ケーシングはあちこちビスがなくなっていたり代わりのビスで止まっていたりして、この個体がこれまで何度か修繕された形跡を示している。
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 上部の外装板を外したところだ。

 設備機器関係のサービスマンの諸兄は既にご存知と思うが,R-22が使用冷媒であった頃は現行のR-410A程には高圧の吐出温度が高くなかったので暖房運転を行う際にはバーナーで冷媒を加温する事で室内機の吹き出し口温度を補い、どうにか寒冷地で使えるだけの能力を持てた。画像の上部で露出しているのはそのためのバーナーユニットで燃料は灯油である。
 厨房屋の扱う燃料と言えばもっぱらガスであり,灯油の燃焼器具とは縁がないので正直なところ怯んだが,今回の問題点は燃焼系ではなさそうだったのでこれは商売ネタになるか,と少し嬉しい気分になる。
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 手動で冷房運転を行ってみたところ,画像のようにゲージの低圧側が負圧を指示しているのでこれは冷媒漏れと俺は判断した。
 さしあたって次回訪問の処置としては冷媒を補充してリーク箇所を調べてみる事になる。さて,これを商売ネタに一稼ぎするか!と意気込み,FCオーナー様と話を付けて意気揚々と本日の手仕舞いにかかり始めたところ,気になる点が一つ発見された。
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 正しい名称はわからないが,加熱用のバーナーユニットの恐らくフレームロッドのリード線が取り外されている。「まあ、できるところまではやってみましょう」などとでかい口を叩いたまでは良かったが暖房運転がうまく行くかどうか、心配の種を残しつつひとまず本日はここまでだ。

 いつものように成り行きの見えない手探り作業で、儲かるのだか脚が出てしまうのかもわからないのだが貧乏自営業としては仕事をえり好みするわけにもいかない。冒頭書いたパチスロ屋に徘徊するハイエナの如く、同業者の敬遠した仕事を漁る。
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消費税値上げ後の印象 [日記、雑感]

 結論から言えばロクな事がない。
何もかもが値上がりで,しかも誰も儲かっていないのだ。
儲かっているのは税金にたかる連中だけというわけ。

 理不尽に思える事の一つに,自動車の燃料がある。
俺は税金の知識がないが,確かあれには揮発油税という税金がかかっているのではなかったか。
そして何か,国の決まり事からいうと二重課税は禁止されていたのではなかったか。
しかし実際にはスタンドでガソリンを入れると消費税が加算されている。れっきとした二重課税だがこれがまかり通っている。
 俺がこの商売をはじめたのは10年前で,その頃ガソリンは大体リッターあたり120から130円の間くらいだったように覚えている。
 この四月からレギュラーガソリンはリッターあたり160円くらいが当たり前になった。月をまたいだらいきなり10円以上の値上がりだ。税率は5%から8%で3%の値上げ幅でしかないのにガソリンの値上がりは明らかにそれ以上であり,便乗値上げとはまさにこういうことを言うのだ。

 開業以来,俺は経費請求の中で出張費とか作業費単価はずっと据え置きのままでやってきたがそろそろ見直すべきではないのかと結構まじめに考え始めている。

 消費税率の引き上げがどれくらいの関連性があるのかはわからないがイヤな事は増えた。
以前はパーツの発注にしても物は先に送付して決裁は月末締めの翌月末払いだった取引先が厳禁先払いで入金確認後に発送に切り替わるところも出てき始めている。最初俺は自分がそんなに不義理を働いているのかと息巻いたが、先方は全社的な方針で俺に限らず全ての取引先にそうお願いするようになったのだとしどろもどろになって答えた。
 
 取引先の中には従来からの価格据え置きで材料を出してくれるところもある。元々大きな利ざやがあっての事ではなく、自分の利益をそれだけ削っての企業努力であり,何だか申し訳ない気分ではあるが有り難い事だ。

 俺の知る中には日頃仕事が暇で,営業時間中にテレビばっかり見ている飲食店のオヤジが何人かいる。こういう奴は例えばテレビタックルみたいな番組を見ているうちにまるで自分が為政者の仲間入りをしたかのようなバカな錯覚に陥る輩が少なくない。
 二年くらい前には店に来る客を相手に「日本の社会保障制度を守るためには消費税を上げないとダメなんだー!!」などとまるで財務省かどっかの高級官僚みたいな目線で偉そうな事を抜かしていた飲食店のオヤジ共だが、消費税率引き上げに伴う便乗値上げでメニューの価格を変える時には「食材や光熱費の高騰に伴い,誠に申し訳ありませんが価格を改定させて頂きます』などとしおらしい事を書いていたりして笑わせる。
 日頃店に来る多くもない客に偉そうな説教をたれる時みたいに「日本の社会保障制度を維持するためには消費税の引き上げが必要であり,当店はより多くの消費税を国庫に納付するために今回,全メニューを値上げします』と書かれている店を俺はまだ一軒も見ていない。

 それで,身の程を知らないテレビタックル中毒の飲食店のバカオヤジ共だが,貴様等毎年消費税は納付しろよ!こういう,役人目線で偉そうな事を客に説教するくせに自分は消費税を滞納して自宅を国税に差し押さえられたバカを俺は一人知っている。
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 税金も年金もろくすっぽ払わないくせにまるで自分が日本国の何かを代表しているかのように「国家がー!」
とか「国益が—!」とか偉そうなたわ言を抜かす大馬鹿者の代表選手として俺にはすぐにこのロクデナシの事が意識に浮かんだ。守内巧の腐った人生模様についてはそのうち気が向いたらここで垂れ流すが、全くもってこういう閑古鳥が鳴いて暇な飲食店のオヤジ共などというのは暇に任せて変なテレビ番組にうつつを抜かしているうちに簡単に洗脳されて自分の身の程を忘れるようだ。日本の国益どうのなんていう事以前にテメエの暇な店の将来でも心配しやがれ!

 そうそう,それから閑古鳥の鳴く暇な店舗の国士様気取りのテレビ中毒馬鹿オーナーども,NHKの受信料はきちんと払え。暇つぶしのために店でテレビを眺めているおまえ,おまえの事だぞ!
 こういう国士気取りのアホが何故か受信料の支払のことになるとNHKの集金人をどやしつけて追い返してやったなどとまるで武勇談のごとく自慢するのを聞くと本当にむかっ腹が立つ。放送法によれば受信設備を持つ者には受信料の支払義務が生じるのだぞ。テレビのおかげで暇つぶしに加えて洗脳までしてもらって偉そうな国士様気取りの受け売りをして溜飲を下げる手助けをしてもらってるんだから受信料払えよ!

 本当は消費税の事を書こうと思いながら見事に脱線したが許してくれ,諸兄よ。
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FACOMのバックパックの使い道 [便利そうな商売道具]

 保冷庫やエアコンなど,スプリットタイプの冷凍機をメンテナンスする際に都合の良さそうなツーバッグについて物色した記事を以前書いた。

記事名:FACOMのバックパックが届く
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-01-15

 俺の周辺を見る限りではあまりこの手のツールバッグを使っている人はいないので,そのうち一つ記事でも書いてみようかとここしばらく考えていた。
 これで二つ目だがとにかくFACOMのツールバッグは色使いが派手で目立つが、バックパックだと尚更仕事仲間の目を引くようだ。総じての印象は,一見すると商売道具に見えないのだそうだ。
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 商品はこちら。
http://jp.rs-online.com/web/p/tool-bags/7877504/
円安のせいで俺が買ったときよりも千円くらい値上がりした。

 2ルーム構成だが背中に当たらない方にはオーガナイザーがついており,始めの頃,俺にはそれが無駄なおまけに見えたのだが実際に使い始めてみるとこれのおかげで結構助かっている。
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 最近の作業例から。
某病院に於ける保冷庫の修理で用いたケースで、ウォールブラケットに取付けられた屋外冷凍機の修理風景だ。
取付け箇所は地面から大体3メートルくらいが下場で梯子をかけての修繕作業だ。
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 ブラケットの左側に引っかかっているのは冷媒の圧力ゲージで右側の四角いものがバックパックについているオーガナイザーだ。ブラケットに引っ掛けておき,作業時にはここから道具を出し入れする。安全帯についているホルダーではどうしても数が足りないし、無理にあれこれ押し込むと腰回りが重く作業がしづらい上に出し入れの際にうっかり手を滑らせて道具が落下する恐れもあるのでいっその事道具入れは別の方が作業性はいい。

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ブラケットにひっかけてある状態をややアップで撮ってみた。

 高所の作業以外でもオーガナイザーには使用頻度の高い道具を入れておくと修理の現調を行う時にはいっぺんに取り出せるので便利だ。
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 オーガナイザーに普段詰め込んである道具類の様子。ここでは個別の講釈はしないが精度とか剛性よりも小型軽量であることが優先事項になる傾向がある。

 はしごやタラップを上がって作業する機会の多い諸兄には一考に値するツールバッグではないかとこのごろ考えている。
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Full Metal Jacket(3) [日記、雑感]

 俺の仕事に就いてあれこれ書かれるはずのこのブログで長々と一本の映画について書き連ねるのは適当でないのだろうが,俺のまとめ方のヘタさ加減のせいでどうしてもこうなる。

フルメタル・ジャケット [DVD]

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 訓練期間を終えた主人公が配属されたのは後方任務であり,Stars and Stripesという軍隊内の出版物の取材や編集を行う部隊である。
 生きた兵器になり切れない主人公は未消化な部分を残したまま不条理な命の奪い合いに関わる事なく業務を続けるが,テット(旧正月)の攻勢に遭遇し,兵舎を襲撃される事で自分の今いる場所が非日常であり,志願前の日常的感覚ではいられない事を余儀なくされる事実を突きつけられる。

 取材の中の1エピソード。ヘリに搭乗した主人公が非戦闘員まで機銃掃射で撃ちまくる兵隊に問いかける場面

よく女子供まで殺せるな,という主人公からの投げかけに対する答えは「簡単さ。動きがのろいからな」であり「ここは地獄だぜ!」とその人物は高笑いを決める。プロになりきる、というのは例えばこういう事なのだろう。

 映画の後半半ばでで主人公は前線の小隊に合流し、市街戦の前線に放り込まれるのだがこの小隊はベトコンの狙撃兵に翻弄されて次々と戦死者を生み出していき、訓練期間中の同期だったカウボーイも巧妙な狙撃に遭って命を落とす。
 残った兵士たちは狙撃兵が立てこもっていると思しき建物に突撃し、どうにか敵を仕留める。敵はたった一人で、しかも年端もいかない女だ。


 致命傷を負って虫の息の狙撃兵は自分を殺してくれと現地語で訴える。
小隊で生き残った兵士達からは、仲間を殺されたのだから仇を取れという意見とどうせ死ぬのだから放っておけという二つの意見が主人公に向けられ、結果として彼は拳銃で狙撃兵の少女を射殺する。主人公の戦場に於ける初めての殺害戦果確認だ。

 映画の中盤あたりでヘリに同乗して非戦闘員の女子供に向けて無差別に機銃掃射する隊員に向けられる主人公の「よく女子供を殺せるな」という醒めたセリフがあった事を思い出して頂きたい。ゲリラとは言え少女だし、放っておけばどうせ死ぬ者に主人公はわざわざとどめを刺す。彼にはスイッチが入って兵器に化けた瞬間だ。

 主人公の過剰な残忍さを喚起させた原因に戦友を殺された事に対する憤激が働いていたのか、そうではなく殺害戦果を上げるために単に仕事としてそれを行ったのかについてこの映画では特に説明的なセリフやカットがない。おそらく後の方だろう、という暗示がミッキーマウスマーチを合唱しながら行軍するエンディングで示される。人が銃弾で撃たれて死ぬ事が日常的な出来事になりつつある事をここでは示している。傍観者である事は許されず、場合によってはそれは自分が死ぬ事を意味するその場所で、当事者として生き延びたければ自分の中の何かを切り替えて平時の精神生活上で働いている何かを抑圧したり狂わせたりしなくてはならない。最後の行軍中の主人公のモノローグは何とも不気味だ。

 ここでもう一つ、同じような状況下を扱った映画の事を取り上げたい。 
プラトーン [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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 こちらはもっとわかりやすい映画で、善の心を持った人間は良い事をし、悪い心を持った人間はひどい事をするという構図で登場人物が描き分けられている。
 
 ここで取り上げた映画は人はしばしば善の心を持ちながら悪い事をするもんだという冷徹な視線で貫かれている。ある種の組織は特に軍隊に限らず、例えば会社だったり宗教団体だったりであっても大なり小なりそういう性格を帯びる。ある目的意識の集合体はかならず組織に属する人間に狂気めいたものを要求するのだと俺は以前から考えている。

 人の生死とは無縁のチンケな私事ではあるが、今から20年以上前のある時、俺はある資格試験を受けるために色々準備をしており、既に受験料も送金済みだったのだが受験日の(それも日曜日だ)二日前になって当時の俺の上司は自分が担当する施行中の現場で追加工事が出たので工期を間に合わせるためにおまえはその資格試験を受験しないで日曜出勤しろという指示が出た。そのクソ会社が既に払い込んだ受験料を負担してくれるわけでもない。
 その時の俺は大いに胸くその悪い思いをした。厨房屋というのは本当にどうしようもなく業界だと頭に来た。些末な事かもしれないが立派にキチガイじみていると思う。(この項続く)
タグ:プラトーン
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Full Metal Jacket(2) [日記、雑感]

 軍隊を描いた映画の話題は決して場違いではない。会社員だった頃の俺自身の経験を含めてコメントを頂いた厨房二年目様の心象風景と重なるところが結構ありそうに思える。
 付け加えるとこれは軍隊とか戦争とかいった題材を足がかりに,組織と個人という古くて新しいモチーフについての問いかけであるように俺は受け止めている。
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 何も俺ごときがここで講釈をたれなくてもこれまで色々なところで議論され,解説されている映画だがまあ我慢してください。

 兵隊になる,ということは合法的だとは言え殺人者になる事だ。勿論例外はあるが。
それで罰せられる事はないにせよ,日常の感覚として人を殺したい欲求をいつも内在させている人物がいるとすれば疑問の余地なく犯罪者の資質を持っており、そういう人は社会の中では極めて特殊な,ごく少数の存在だ。
 ましてや殺す対象が何の怨恨もない,話をした事も名前も知らない人だとなればこれは普通の感覚で出来るものではない。兵隊になったその人は、素の自分ではない何か別のものに化けることを求められるのだろう。

 常日頃思う事だが,同じ悪い事をするにしても罪悪感を抱きながらやむなく行うのとゲーム感覚の確信犯ではその悪質さに於いて当然大きな違いがある。本当に悪い奴というのは悪事に罪悪感を持たない。良い事,真っ当な事をしていると確信しながら酷い事をする。
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 画像の人物は生まれつきのクズであり,先天的に他人に迷惑をかけるために生まれてきた男であるが,こういう輩とは別種の,一般的な道徳心の持ち主であっても訓練される事によって同じような生き物に変身する事が可能である。

動画のクリップ

 映画の冒頭,海兵隊に入隊した新兵達がみんな頭を丸刈りにされる。個性を否定される,画一化を迫られる。組織に合わせた人格の矯正とはこういうところから始まるのだぞ,という出だしである。
 新兵を整列させて訓練教官のぶつ一節。
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貴様ら雌豚どもが俺の訓練に生き残れたら―――
各人が兵器となる。戦争に祈りを捧げる死の司祭だ 。

その日まではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ。
貴様らは人間ではない。
両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!

貴様らは厳しい俺を嫌う。だが憎めば、それだけ学ぶ。

俺は厳しいが公平だ、人種差別は許さん。
黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん。
すべて―――平等に価値が“ない”!

俺の使命は役立たずを刈り取ることだ。
愛する海兵隊の害虫を!分かったか、ウジ虫!」

 教官である軍曹の大袈裟な激越ぶりを主人公が茶化し,ヤキを入れられる。
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スキン小僧が!じっくりかわいがってやる!泣いたり笑ったり出来なくしてやる!さっさと立て!隠れてマスかいてみろ クビ切り落としてクソ流し込むぞ

 教官の訓練は肉体的にも精神的にも過酷を極める。ついこの間までは女の尻を追いかけ回してはしゃぎ回っていた普通のあんちゃん達を物の数ヶ月でお仕事として赤の他人を殺す殺人マシーンへと変身させていく。この教官の私的な姿は映画では描かれないが、仕事以外では普通の父さんである,ということはよくある話で、彼は極めて職務に忠実で,かつ有能な「調教のプロ」なのだ。

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 調教の効果が出過ぎた男の表情。魯鈍で能天気な男は完膚なきまでに本来的な人格を破壊された後,最優秀クラスの狙撃兵候補として変身するが発狂し,教官を射殺した直後にその銃で自殺する。

動画クリップ

主人公が恐らく生まれて初めて目にする殺人の場面だ。まだ彼は素の自分を残している、言い換えるとまだ未熟であり,なりきれていない。(この項続く)
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英語は勉強しとけ [日記、雑感]

4月6日の夜から翌7日早朝にかけて某総合病院にて配膳車の修理に入っていた。
現在このテキストは8日に書いているものだが,寄る年波というかさすがに人生の折り返しを過ぎての徹夜は堪える。

 作業現場の画像を掲載しておく。
厚生病院 配膳車-0.jpg


 販売元はエレクターで,納入したのは北沢産業である。
型式はESLといい、現行品の一つ前のモデルで納入後7年目であり,この病院では現在,配食用に自走式(モーターで走る)が約30台が稼働している。北沢産業はさぞかし儲かった事だろう。

 画像は作業途中の様子であり,モータードライバーという制御部品の内部をパソコンを用いて調べている最中の場面である。
 厨房屋が修理の現場にパソコンを持ち込んで解析するようになるのだろうな,とは以前から薄々予感してはいたが,そうなる頃には自分は現場から離れて何か別の業務をするようになっているだろうし俺には関係ねえ,とタカをくくっていたのが10数年前だ。
 まさか自分が修理屋として独立開業し,それをするようになろうとは思わなかった。

 北沢が納入した機材の修繕を何故俺が行っているかというその経緯はさておき、上に示した画像でパソコンの左隣に置かれている焦げ茶色い表紙の本は俺が学生の頃使っていた英和辞典である。
  
新英和中辞典

新英和中辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 1994/11
  • メディア: ペーパーバック


 エレクターは日本の会社であり、当然製品は日本製だが、そこに組み込まれているモータードライバーはアメリカのCurtis Instrumentsという会社の製品でその生産国は中国である。
 今回修理にあたって俺はこのモータードライバーの仕様書やらマニュアルやらを原文(ここでは英文)で読む事を余儀なくされた。モータードライバーのパラメーターの読み書きや障害発生の履歴、現状のモニタリングを行うのはハードウェアとして専用のコントローラーを用いるやり方とパソコン上から専用のアプリを用いて行うやり方とがあるが今回俺は後者の方を選んでいる。
 当然ながらというべきか、そのアプリは英語版であり画面上には日本語表記は一切ない。

 一般的な文章であれば英和辞典一冊で済むのかも知れないが電子機器のインストラクションとなると専門用語や略語が頻発するので他にもう一冊、専門用語の辞書が必要になる。俺の持ち物は30年以上前に学生だった頃のもので当然ながら今様のパワーエレクトロニクス関係についての記述がないので今回大変理解するために難儀した。慣れない事はやるもんじゃないが否応無しにやらなければならないことはあるのだ。

 現地法人のCurtis Instruments Pasific によると、厨房屋の業界ではこれまで専用のコントローラーやアプリが売れた事はなく、俺が初めてらしい。これを言い換えると、こうして配膳車のモータードライバーを故障診断をするにあたって俺は身近に誰も質問できる人がいない事を表している。
 それで俺はこうして頭をひねり、四苦八苦しながら慣れない英文と格闘して仕事をしなければならん。

 作業の内容や成り行きについては色々と思うところがあるのでいずれ記事を書き続けていこうと思うが、未だに事情を知らない素人どもがはしゃぎ回る「技術立国日本」の看板は実際には既にぼろぼろで、工業分野での日本は既に極東地域のうちの一つというところにまで埋没し、転落しかかっている。たかだか配膳車の修理一つではあるが、今回そんな事を感じた。
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Full Metal Jacket [日記、雑感]

 数日前にあげた記事名,ワタミの裁判で思う事(伝搬するキチガイ菌)記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-03-28
で大変印象深いコメントを頂いた。ある意味,俺はこのブログを始めて以来こういうコメントをこそ待ち望んでいたのではないだろうか。

 返事をコメント欄に書き込むには長くなり過ぎるのと、その内容はコメント欄ではなく一つの記事として扱わせて頂きたいと俺は考えた。その方が多くの方に見て頂けそうに思えたからだ。コメントを頂いたどなたかに対して記事を書くのはこのブログの開設以来初めてだと思う。

 ご本人の承諾は頂いたつもりに俺はなっているので,以下,全文を掲載する。
初めまして。今厨房機器業界で新卒から働いてちょうど1年が立ちました。 今の仕事に嫌気がさしてぽちぽちと検索したらこのようなブログが。ブロガーの方はいわゆる「外注さん」(個人で機器の修理をする方?)という認識でよろしいでしょうか?

 うちでは外食チェーン、病院、老健、ホテル等様々な取引先ありますが、中でも外食チェーンは結構柱だったりします。会社の売上の核となるだけに、チェーン店の新規一式や改装でも荒利15%なんてとれていれば全然いい方です。
機器の運搬・搬入も本来深夜やるならば割増をしなければならないですが、仮に見積もりでそう謳っても、かなりの出精値引きをかけてあげたり。
 とにかく我々厨房屋が低姿勢でいかないことには受注が取れないのが現状です。 余談ですが、私自身この業界の裏側をよく知らずに入ってしまいました。ホテルや病院の「食」に携われる、食を通じて人々の役に立てる。そんなイメージしか抱いていませんでした。しかしながらいざ厨房に入れば鼻にまとわりつく酸化した油の匂い、汚い、熱い  なのに厨房に入る際はこちらが帽子を被って髪が落ちないように気を遣わないといけない。
 私は営業ですが、ただ製品を売ればいいかというと違う。ガスの接続1つとってもお客さんにお願いするのか、こちらが手配するのか 排水はどうするのか? 汚い床を這いつくばって配管が邪魔してないか見ないといけない。 いざスパゲティ釜を入れたら元の排水経が小さくてジャバラホースが入らないなどなど多々ありました。
 もっと苦痛なのが建築関係の方々と仕事しなければいけないこと。病院の厨房1つやるにしても設計事務所、ゼネコン、内装屋、設備屋等々色々なところと打ち合わせ(定例会議)しなければならない。鳴り響くドリルや工事現場で墨出しや打ち合わせをしなければならない。個人的に煙草吸わないしそういう方々は基本的にたばこやギャンブル好きで話も全く合いませんでした
 そして何より労働時間と給料が全く釣り合わない。4月にもらった労働表?(給料体系とか書かれている紙)見てその段階で唖然としました。基本給がまずとんでもなく低く、残業手当は営業手当の中に含まれているということ。また土日は会社のカレンダーで基本的に休みですが、土日出ようが個人の勝手ともとれる内容が書いてありました。土日出たら代休が申請できますが、無茶な予算があるため実質使えません。有給も然り。もちろん夜現(深夜現場)出ても、朝普通に出社しなければなりません。営業だけど普通に重さ150キロを超える4ドア冷凍冷蔵庫のカウンター越えとかしなければならないときもあります。私自身体重も60キロなく、握力も極端にないため、運搬の兄ちゃんから怒号を浴びせらることもしばしばあり苦痛です。

 この業界のスタイルは昔からこのスタイルでしょうし、今後もこのように細々と続いていくでしょう。私はこのままいけば体と精神病むこと間違いないと自分でわかっていますのでもう辞めるつもりです。
 「とにかく報われない」 これが私が1年間ですが厨房業界で働いてみてのだらだらとした感想です。いきなり長文失礼しました。

 入社一年目にして新築現場の打ち合わせに出されるとはその会社はまあ何とも人使いが荒いのかそれともよっぽど人材が枯渇しているのかわからんが酷い話だ。
 俺はこのコメントをくださった方の来歴や出自は勿論わからないが、恐らく工業系の学部なり学科の履修者ではなさそうに思っている。そうだとするとほんとにこれは会社の定見を疑われるような人材配置で,無茶苦茶としか言いようがない。

 しかしだ。この業界は頭のてっぺんから尻尾まで全てが無茶苦茶なのだ。そういう世界なのだ。

 グリーンボーイの頃に職場では虫けらのように扱われて惨めな思いの日々を過ごすのは誰しも経験する時間であり,俺も例外ではない。職何も業界にもうんざり来る事はあったし,いまだに馴染めない。
 だから俺はここでこの方を取り上げて(今日日の若いもんは・・・)などという紋切り型の上から目線でものを言いたくはない。

 ここで俺は若い頃見たある映画の事を思い出した。
最初の職場を辞めてから2年間くらいの間,俺はフリーターのような時期を過ごしていた。有り合わせの商売道具を安物の工具箱に詰め込んで市内の厨房屋からスポットで修理業務や搬入現場施工を請け負うその日暮らしのてきとうな日々を過ごしていた時期に見たある映画の事に触れておきたい。

お題はこれだ。
フルメタル・ジャケット [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

 会社勤め,特にブラック企業だったり色々な不条理がまかり通る職場て働いている事にストレスを感じている方には是非一度見て頂きたい。
 長くなりそうなので俺の所感を次の記事で述べておきたい。個人が組織に組み入れられるという事は多かれ少なかれここで描かれるような世界に同化する事を迫られる。それがモチーフであるように俺は捉えている。
続きは次回記事で。

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何のための自動化か [修理屋から見た厨房機材]

 今から20数年程前,日経レストランという雑誌に当時の北沢産業の山田社長のインタビュー記事が掲載され,
そのタイトルは「日本の厨房機器は世界では通用しない」という中々ショッキングなものだった。当時はまだまだバブル景気の恩恵があり,技術立国日本が世界中を席巻していた(かに見える)時期で,俺のような業界の末端で菜っ葉服を着て労務に従事している者にとっては何の事なんだか見当がつかなかった。

 自動車も,電気製品も、日本製は世界中を制覇した優れものであり,業務用の厨房機材だって同じではないのかと確たる根拠もなく漠然と思い込んでいたわけだ。
 しかし仕事の上で徐々に輸入機械と接するようになってから俺の認識は変わり始めた。山田社長の人物評はさておき,その見識は正しかったと今は思う。

 ある時期からの厨房というのは既に専門知識を要する独立した機械設備であって,一般的な工事区分でいうところの衛生設備という捉え方からは既に収まりきらないと俺は考えている。
 設備の進化,という風にここ30年くらいの変わりようを振り返ってみた場合,大きく言えばそれは自動化の歴史と見える。食器洗浄機は既に特別な機材ではないし,ボイラータンクを内蔵したややこしいコーヒーマシンもあちこちで目にする。手作業や職人の勘と経験を数値化する,自動化する,そういう流れがまだ続いている。

 俺自身は調理師ではないが,その現場に関わる者としてこの30年くらいを思い返してみると確実に労務は簡素化され,短時間化されている。従事者の専門性は否定され続ける歴史と言えるかもしれない。
 機材が自動化される事で業務が省力化され,専門性は要求されなくなる。その革新は常に海外からもたらされてきた。輸入機械がまず紹介され,一部の金満ユーザーが人柱となってその使用感を伝え,国内の厨房機材メーカーは輸入機械を一台買い込んで分解し,コピーモデルを作り,自社開発とか何とかてきとうな事を謳い文句に売り捌く。
 炊飯器のような機材を除けば日本製の厨房機材は常に海外製の後塵を拝し続けており,この先追いつく見込みは全くない。以前からそうだったしこれからはますますそうなる。それが顕著になったのは俺の場合,スチームコンベクションオーブンを通して実感した。
 ラショナル現行品の一つ前のモデル,SCCで導入された自動調理機能(Self Cooking Center)は当時,業界を驚倒させた。タッチスクリーンのグラフィカルな操作パネルは長い経歴を持つ調理師をして「まるでマンガみたいだ」としらけさせた。調理師学校の講師を務める某シェフは雑談の最中にジョグダイヤルを回してタッチスクリーンに触れる仕草をしながら「Cooking(調理) じゃなくてOperation(操作)だよね」と苦笑いしていたのを良く覚えている。

 インターフェイスパネルのマンガ化は更に進み,今ではスケール除去のための洗浄作業さえセミオート化している。自動化はまだまだ進むのだ。
関連記事:スチームコンベクションの講習を終えて
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-11-25



 前回記事で書きそびれた事をここで補足しておきたい。
講習初日の夜,各地から集まってきたサービスマンの懇親会というか,まあ宴会があった。そこには講師を務めたドイツ本国からのテクニカルアドバイザー(日本人だが)も参加しており,俺は彼としばらく話し込む機会を得たのでかねがね考えていた疑問を投げかけてみた。それは大意として以下のようなものだ。

 欧州製の食品機材はコンピューター化の進み方が著しく,自分のような古い修理屋をしばしば当惑させる。 その方向性とは自動化と多機能化,加えて文字表示を排してアイコンによる記号化を進めるものであるように見える。
 この傾向は1990年以降特に著しいように思えるのだがそこにはやはり冷戦の終結という時代背景があるように思う。
 思うに,調理という業務は今も昔も,どこの国や地域にあっても職種としては底辺層の労働であり,例えば移民の就労場所の典型である。冷戦終結後はそれまでの中東やアフリカ以外から東欧からの移民も流入してきたせいで言語による情報伝達に齟齬を来す場面がますます増えた。それで言葉の通じない調理師がより直感的に業務をこなす事を企図して機材のインターフェイスはよりグラフィカルなものに変わってきているのではなかろうか。

 彼は全くその通りだと答えた。
 ヨーロッパという土地は元々言語によって国境が区切られてきた歴史があるので地続きで他の国に移動する場合,言葉による不便が起こらないよう調理に限らず色々な表示が文字ではなく絵で、という進み方をしている。ラショナルのオーブンはある時期までは表示パネルの多言語化に随分力を入れて来たがそれにも限度はあり,ハードウェアの低価格化が進んできたのであるときからアイコンによる表示に踏み切った。との説明だった。
 言語による障壁を解消するために進められる自動化や多機能化は同時に未熟な低賃金労働者にある一定以下にはならない調理の結果をもたらすためにも活用されるわけで,結果として我々の身近では所謂ブラック企業と呼ばれる外食産業に於いては調理イコールダイヤルを回してタッチキーに触る事のようになりつつある,というか一部では既にそうなっている。
 全くの素人が働き始めて一週間かそこらで一端のメニューをこなせるようになる外食店舗は物凄く増えた。そういう就労場所での調理師は既にCraftman(職人)ではなくWorker(労務者)と見るべきだろう。知識も経験も要らず,ただ単にマニュアルに書かれた操作方法を丸暗記して繰り返すだけの仕事であり、付加価値も何もあったものではない。

 料理が『作品』であるような調理師は元々そう多いわけではない。それは本当にごく限られた一握り以下の人達の世界である。商業店舗に於いてはそれは『商品』となるわけだが、こうした機器類の自動化によって調理業務従事者の低賃金化が押し進められてくると最早『製品』と呼ぶのが似つかわしいように思う。誰がやろうがおんなじ結果が出るのだから。

 勿論そんな職場が人間的でなどあるわけはなく,時給幾らでこき使われるWorker(労務者)達がどこかの段階で怒りを爆発させるのも人間性の発露としてわからなくはない。
 すき家のバイト達が示し合わせて集団で退社して一時閉店の店舗が続出したり,ワタミが60店舗位を閉店させたりという流れは同じ底辺層で棲息する俺のような者にとっては一種,溜飲の下がる出来事だが経営者というのは大概したたかな生き物だ。いずれは海を越えて大量の移民を日本国政府は受け入れ,飲食業のバックヤードは外国人だらけ,ホールサービスも音声認識可能なオーダーエントリーシステムの端末を外国人スタッフが差し出して「コレニ,チュウモン,オネガイシマス」と丸暗記した片言の日本語で客に話しかける状況がそのうち常態化していきそうに思っている。それとも券売機によるオーダーとセルフサービスのほうが手っ取り早いかw
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得意先から新メニュー宣伝の依頼とこれにまつわる雑感 [グルメ気取りのバカを晒す]

 月初のデスクワークはかったるい。俺はデスクワークが嫌いだ。月明けの報告やら請求書書きやらでイライラしながら自宅にいるうちに昼になったので、昼飯を外で摂ることにした。

 暖簾をくぐった某飲食店は俺の得意先で,オーナーは調理歴が20年を超えるベテランだ。最初は市内の某和食店で10年近く,それから収容数500名くらいの大きな旅館で次席の調理師として、つまり調理師数10名くらいのうちの二番目として10数年の勤務歴を持ち,3年前に自営開業された方だ。
 その旅館は俺の得意先であり,かれこれ20年以上出入りさせて頂いているわけだが通っているうちに顔見知りになり,件のオーナーがある焼き鳥屋の居抜き店舗を借りて開業するにあたって俺にはお仕事をくださった、というのがこれまでの大まかな関係である。

 約一ヶ月ぶりに顔を合わせるオーナー殿は,実はこのブログの読者ではない。ネットには殆ど無縁の職人さんである。ただ,俺がこうしてブログを開設している事は知っていて,新しいメニューが最近,取材があったりして目玉になりそうなので俺のブログに掲載して宣伝に一役買ってくれと仰る。 
 宣伝に協力する事自体はやぶさかでないが,俺のこんなブログに店舗の売り上げに貢献できるだけの影響力なんかあるわけがないのだ。そもそも諸兄はご存知の通りここは所謂グルメ記事を書き連ねるところではなく,むしろB級メニューを喰いあさってグルメ気取りのたわ言を抜かすバカ共を嘲笑するところなので、ここでやおら俺が画像を掲載して宣伝したところで何の効果もないと思うが、オーナー殿の強いご意向を受け,ブログ開設以来初めて飲食店の宣伝記事とする。

IMGP0099.1.jpg

撮影及び画像の掲載にあたっては店主殿の許可を得ております。というか,店主殿のご要望により画像の撮影を行い,このブログに掲載するものです


このメニューの名前は
メガザンギ丼
という。お値段は¥950でみそ汁付き。

 お店はこちら。
http://tabelog.com/hokkaido/A0111/A011102/1031690/

 宣伝は以上で終わり。いつも言うように,幾ら美辞麗句を並べてきれいな画像を眺めていてもそれらは結局文字であり,画像であって味ではないし、味覚は主観によって評価が決定づけられるので定理も法則もない。よって俺はここでうまいだのまずいだのといったゴタクを並べるような無粋な真似はしない。
 一つ言っておくと,これは俺の経験則として,きちんとした来歴を持ち,しかるべき親方について筋目の通った職務経歴を積んだ調理師さんは和洋中を問わず,何を作らせてもある一定以上の水準は必ずキープするのであって件の新メニューも例外ではない。
 画像には灰皿とか吸いかけのタバコが写っているが,これは店舗内が日中でも禁煙ではない事を表しており,俺のような者にとっては有り難い。

 しかしまあ,こんな田舎町の片隅で細々と個人が営む焼き鳥屋についてさえ,ネット上には盗撮画像が氾濫していることには驚くと同時に呆れる。この、屯(たむろ)という飲食店に関する画像のうち,オーナーの承認なり要望によって撮影され,掲載されたものはここで示した俺のデジカメで撮ったものだけであって、それ以外のもの全ては,つまり食べログやなんかに掲載されているものは全て店舗内を無許可で撮影した不埒千万な盗撮画像だ。
 オーナー殿は店内で写真の撮影をされる事に対して無頓着であり,格別抵抗感はなさそうに見受けられるが,ここは俺個人の倫理観として改めてここで言っておきたい。

 食べログのバカ投稿者どもはたかだか千円かそこらの出費で無節操にアホな写真を撮りまくり、まるでコンテストの審査員よろしく星などつけて偉そうな御託を並べているが実のところ幼稚な印象作文を垂れ流しているだけのノータリンに過ぎない。何もわかっていない。
 屯のオーナー殿は元々,れっきとした日本料理の板前であり,その調理歴は二十数年に及び、開業するまでは数百人単位の宴会料理を切り回していた方であって独立開業するにあたってこの居抜き店舗が元々焼き鳥屋であり,それまでの営業経験から一定数の固定客がいたのでその業態を引き継いだに過ぎない。今から丁度三年前の事だ。

 と,ここまでかいて俺はある人物の事を思い出した。他でもないこのクズ野郎の事だ。
IMGP1228.jpg

 このブログを長く読まれている方にとっては今更その名を示すまでもないだろう。

 さっさとくたばる事が彼に出来る唯一の社会貢献ではないかと俺が真剣に思うこの男,守内巧はここで取り上げた屯という飲食店と田舎町特有の奇妙な因縁で関わっているのである。その経緯についてはいずれ記事にしてみたいと思う。
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酸素ボンベは売る程ある [日記、雑感]

 小さい冷凍機器の冷媒管修理のとき、毎度携行する溶接機は酸素ボンベの容積が大変小さいので作業途中にしばしばガス欠となり俺を焦らせる。
8_01a.jpg


 山間部のベーカリーショップで冷蔵庫の作業途中に酸素が空になって焦った事例を記事にした事がある。
記事名:同類の匂いを嗅ぎ取る
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-09-07

酸素の安定器にはボンベの元圧を表示するゲージがついているが、指示値は急激に低下するものなので毎度慌てる。液体充填されているのであれば事前にボンベを揺すってみたりして残量を確認できるが酸素はそうではない。

 毎度このブログに登場する某総合病院にて,今回は外来食堂にある業務用冷蔵庫のコンプレッサー交換である。俺が勤め人だった頃の今から15年前に納めたものだ。
 既に同形のコンプレッサーは製造元にパーツストックがなく,代替コンプレッサーを提供されて配管接続は現場合わせの出たとこ勝負となる。俺の修理はいつもこんなのばっかりで、一本道の作業が中々ない。
 とは言え,以前,某産婦人科病院で行ったようなまるっきり別のコンプレッサーを探してきて自己責任で換装し,回路変更まで伴う作業と異なり,今回は製造元のお墨付きセットなので楽なもんだ。
 緩んだ気分で作業しているうちに溶接のトーチが急に赤火になり,にわかに俺は焦った。酸素切れだ。

 俺は一息つくために一旦作業を中断し,院外に出て煙草に火をつける。何といってもここは二十数年殆ど毎日のように入り浸っている730床の総合病院なのだ。以前記事にした山間部のベーカーショップとは状況が違い,言ってみればここは俺のホームグラウンドだからしてこういう場面での回避措置はちゃんとある。
 タバコを灰にした俺は院内の売店に向かい、缶コーヒーを数本買い込む。次に俺は地下のボイラー室に降り,
 しおらしい顔をしながら技師長殿に溶接作業の最中に困ったことが起きた旨を伝える。
「酸素か?」パソコンの画面をにらみながら技師長殿は野太い声で訊ねてきた。「安くねえぞ』ニヤニヤしながら技師長殿はデスクから顔を上げた。俺が袋に入った缶コーヒーを差し出すと抽き出しから鍵を出して立ち上がり,ボイラー室を出て地下のとある部屋へと向かう。
「早く持ってけ。バレるなよ!使ったらちゃんと封をして戻しとけよ」
ここは総合病院で,しかもかなりでかい施設なので充填の済んだ医療用の酸素ボンベを置いておく専用の部屋があり,7.8坪はありそうな部屋に文字通り酸素ボンベやらボンベカートが売る程沢山溢れ返っている。一度一緒に工事に入ったことのある鍛冶屋の親方は山ほどあるボンベカートをしげしげと眺めていいなあ,と呟き,一台くらい失敬してもわかんねえだろうな,と物騒な事を言った。言っただけで終わったが。 

 それはさておき,このようにして俺はまずい場面を回避して二日分相当くらいの利益を稼ぎ出し,頭の中のそろばん勘定の結果も上々で悪くない気分である。ここしばらくはややこしい修繕で未解決のものが続いているので今日は一発,これからサウナにでも行ってくるかあ。


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