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ダラダラと無煙ロースターの修理 [修理屋から見た厨房機材]

 ご近所さんの焼肉店は開業以来18年が経過した。
このとき俺はまだ勤め人で,色々ご縁があってホールの無煙ロースターを納めさせて頂いた。
同じ町内のよしみで言うわけではないがこの店の焼き肉はうまい。俺が客として利用させて頂く焼肉店2軒のうちの一件がこの店だ。

 開業以来18年というのは出入り業者としては嬉しいもので,ご商売が長続きするという事は俺にとっても長い期間の商売があるからして双方共に持ちつ持たれつ。
 このお店の無煙ロースターは建廚の製品である。

建廚のHP
http://www.kenchu.co.jp/

メーカーの選定はオープン前にオーナーさんが自ら行った。
それまで俺は無煙ロースターと言えばシンポ位しか知らなかったが,実機を見比べてみると価格といい手入れのし易さといい全てに於いて建廚が上だ。
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写真は本文とは関係ありません(これは山岡金属製)

 故障の履歴は特にない。強いて言うと導入後12年,6年前の秋にバーナーを交換した。ステンレス製のバーナーで耐久性はあるがさすがに12年も使うと腐食の為に穴があいてひどいリフティングを起こすようになったので交換した次第。

 使用期間は18年目に突入したがここへ来て今度はガスコックのシャフトの摩耗が目立つようになってきた。ガタつきが多く,タッチが重くなってきたとの事で、いずれガス漏れを起こすのは時間の問題なので交換に踏み切る事にした。
 スモールパーツであっても俺のような業者に頒布してくれるところは建廚の有り難いところだ。シンポあたりになると実に意地が悪く,パーツの販売どころか同業他社の修理そのものを認めない。高い出張費の支払いを余儀なくされる使用者はいい面の皮だ。

 シンポの事はさておき,無煙ロースターの修理は通常一般の厨房機材とはやや勝手が違うので勘を掴むまでに少々手間取る。
 第一にホールに置く機材なのでこぎれいな場所なりの仕度をしておかなければならない。特に小上がりに設置されている座卓タイプの場合は油だの手垢のついた工具をその辺に置くわけにはいかないので作業用の敷物を予め用意しておいてそこ以外には道具やパーツは置かないようにしておくように俺は心がけている。
 第二に外形がスクエアではなく、必ず天板のオーバーハングが生じた中での作業になるので作業灯やポケットライトで常に中を照らしながらの作業を強いられる。内部は当然暗いのであちこち陰になって見えにくく,光を当てる角度をちょくちょく変えながらの作業になるので一般の燃焼機器よりも多少時間を喰う。
 第三に燃焼系統自体が全体に小作りで内部も狭いので手が窮屈なのと、業務用のガステーブルみたいにねじ込み部分は何でもモンキーレンチ一本槍で乗り切るというわけにはいかない。建廚の製品の場合は7mmから12mmくらいの小さいスパナを4,5種類取っ替え引っ替えしながらでないと作業が進まない場面が結構ある。俺は普段殆ど触る機会がないが家庭用の燃焼器具に近い感覚ではないだろうか。

 手先の不器用さを弁解するつもりはないが小さい割にと言うか小さいが故にと言うか,以外と手間取る燃焼器具ではある。どこのメーカーも恐らく同じだろうがノズルの詰まりに対しても結構シビアな反応を示すあたりは業務用の燃焼機器っぽくはない。

 オーナー様は大変寛大な方なので,少なくとも表面上は俺のダラダラした仕事っぷりを今のところは容認してくださっているようだ。お仕事が一段落するとお茶と灰皿を出してくれるのが何事も世知辛い昨今,大変有り難い。どこへ行っても万事こんな調子でお仕事をさせて頂ければ楽なのだがこんなぬるいお仕事をさせて頂けるのもご近所さんのよしみという事で。

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大企業が作る食品機械のこと [修理屋から見た厨房機材]

 とある得意先からソフトクリームフリーザーのリプレースについて相談を受けている。
俺がネット上で見つけた三洋電機製の中古機で8年落ちの製品を今は使っており,昨年俺が軽い整備をした機体だ。
 得意先が仰るには購入価格が安かった事もあって,昨年一シーズンでイニシャルコストはすっかり取り返してしまい結構利益が出ているらしい。
 店舗全体の売り上げも右肩上がりでドンドン伸びているので税金対策もあって設備投資を検討しているという。今のご時世,俺のような貧乏人からすれば何とも羨ましい限りの話だ。

 俺個人は昨年、せっかく自分が整備したので今の機体を使い続けてほしいが一つ問題がある。使用している冷媒がTP5R2なので冷媒管系統の故障があった場合補充用の調達に往生してしまう状況があり得る。
 まあ,製造元を問わずソフトクリームフリーザーは冷蔵庫とは違って冷媒管系統の故障発生率は物凄く低いのであまり心配する必要はないのかもしれないし、万が一そのような事態が発生したにせよここでは書けない裏技で切り抜ける事も出来なくはなさそうではある。がしかし,出来るものならやはり修繕は工場出荷の状態になるべく近い形で復旧させたいのが修理屋としての本心だ。

 将来的なサポートの事はさておき,リプレースする場合の候補の事を暇に任せてあれこれ考えた。
俺自身は三菱重工の製品でソフトの修理を覚えた口であって三洋の製品には実は今でも少々違和感が払拭しきれない。輸入機械は優秀だがカルピジャーニのフリーザーは俺が駆け出しのあんちゃんだった頃血も凍るような恐ろしい目に遭った事があるのでこれまた拒否反応が出てしまう。
 日世はコネクションがないし東芝は玩具みたいな小型機しか作っていない(それももう生産終了しているか)となるとやはり選定は三菱重工へと流れていく・・・
 と思ってホームページを見ていたら何と,製品のラインナップは現在壊滅状態ではないか。
http://www.mhiair.co.jp/contents/06-business/06-07_02.html

 HPが更新されていないだけなのか,それともこの事業部門からは手を引く事にしてしまったのか、後の方だとすると少々寂しい話ではある。
 寂しい話と言えばIHIが食器洗浄機の製造から手を引いた。もう20年以上,IHIの食器洗浄機は俺の一押しメーカーだったので昨年終わり頃にそのアナウンスを聞いたときには大変悲しい気分になったものだ。
 石川島播磨重工業が食器洗浄機を製造している,と聞くと意外に受け止める客は意外と多いが同じような意味で三菱重工がソフトクリームフリーザーを製造している事も案外知られていないかもしれない。どちらもその分野では老舗中の老舗、日本での先駆者なのだが。
 まあどちらも,年商何兆円の超大企業なので厨房機器メーカーなんぞとは当然ながらスケールが桁違いだ。食器洗浄機だのソフトクリームフリーザーだのは自社で製造している事さえ知らない社員がワンサカいるのではないか。事実,俺の学校の先輩と数年前,20年ぶりくらいに再会したとき、三菱重工の社員で発電プラントが専門分野であるその先輩は自社でソフトクリームの機械を製造している事を全く知らず、大いに驚いていた。

 石川島にせよ三菱重工にせよ,船舶を造るのをやめるだとか宇宙開発をやめるだとかいうのならいざ知らず、厨房業界みたいにチンケなところから手を引いたところで屁でもないのは間違いない。
 
 大企業が造る業務用食品機械,というとあと三つばかり心当たりがある。
一つ目は横河電機の食器洗浄機,機械の出来としては石川島に比べると数段落ちるがホシザキを含めて厨房メーカーの製品に比べれば格段に上だ。
 http://www.yokogawa.com/jp-ydk/kf/chubo/index.htm

二つ目が東芝製のティーサーバーで、実際には鳳商事ブランドで出回っている事が多い。これは結構ポピュラリティがありそうだが厨房機材の枠内には治まりきらない面があるのでこの話題からは外してもいいかもしれない。

そして三つ目、日立製作所の食肉加工機器だ。これは厨房業界の人間でも知らない人が物凄く多いと思う。
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 大企業,重工業の製造する食品機械の,ある種極めつけかもしれない。食肉加工関連というと厨房屋的には南常鉄工,ワタナベフーマック,日本キャリア工業,というところが業界内での通り相場だが食肉加工でも厨房屋には縁がないような大規模施設では日立が厳然たる一角を成しているのだそうだ。
 確かに過去,仕事に行った事のあるハンナン関連の生産工場では日立のミートスライサーが何台も凶暴そうな丸刃をぶん回していたっけな。機械としての評価はナンバーワンだと以前誰かから聞いた。

 こうして並べてみると大会社の造る業務用食品機械の共通項に気づく。
1:品質はナンバーワン
2:値段もナンバーワン
3:担当社員の態度がでかい(特に三菱重工!)
4:会社全体から見ると鼻糞以下の事業規模

 横河の食器洗浄機を扱った事はないがIHI,三菱重工,日立と商売の作法でいずれも共通するのは「売ってください」ではなくて「売らせてやる」風の物腰。
 厨房業界はいいものだから売れるなんていう真っ当な世界ではない。箸にも棒にもかからないようなクソ商品でも,とにかくでかい声を出して大風呂敷を拡げ,安い見積りを書く奴が勝つのだよ。(どことは言わないけどな)
 日本国を代表するような重厚長大の一流企業手仕舞いにかかった本当の理由はこの業界の低劣さに呆れてしまったというのが真相なのじゃなかろうか。どう考えてもカルチャーが違い過ぎる。


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三洋電機のネットショップから見えてくる業界動向 [修理屋から見た厨房機材]

 長年取引させて頂いてる某産婦人科病院で,20数年来使っていた家庭用の冷蔵庫が昇天した。コンプレッサーの焼損,使用冷媒はフロン12とくればこれはもうあがくだけ無駄というもので、家電量販店で都合の良さそうなものを購入されてはいかがかと提案したが先方の調理師長はどうも納得がいかなさそうなのだ。

 俺は家電製品には全く無知なのだが、冷蔵庫に関して工業製品としての完成度という点については家電製品の方が格段に上だともう長い事考えていてこれについては今でも変わりない。
 http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2008-09-26

 調理師長様によれば大型の家庭用冷蔵庫というのは細々した用途のポケットだとか内蔵式の製氷機にスペースを取られていて実質の収納量は見かけほどにはないのだそうだ。
 それで業務用冷凍冷蔵庫を選定したいとのご意向で,三洋電機のネットショップで買えば相当安いらしいとの事で大いにご関心がある模様。

http://www.sanyoreizouko-daiki.jp/product-list/5?gclid=CIabuMWet6YCFUxtpAodDV9oFw

 6年前の開業以来,物販には全く熱心ではなかったが,いやしかしまあ物凄い下げ方だ。既存品の撤去費やら据え付け費などの付帯事項は入っていないにしてもここまで安くなるとは。
 もとい,この言い方は正しくない。
 定価に対する掛け率という点では業者向けの卸価格としてこれくらいのパーセンテージは確かにあった。しかし末端ユーザーに向けてこのような掛け率がオープンな形で提示されるというのはインターネットが普及しなければなし得なかった事ではなかろうか。

 購入者に取って買い易いという意味で,それはひとまず喜ばしい動きではあるが状況を仔細に見てみるとそうとも言い切れない気はする。
 まず第一に,こういう価格提示は今日日,三洋電機以外のメーカーでもなされているので他メーカーに比べて格別安いわけではない。複数メーカーから見積りを徴収した後の膝詰め談判みたいな場面ではあり得る金額ではある。
 画期的というには大げさだがインターネットというオープンな場所で実勢価格が表されている点に提示されている価格以上の意味がある。更に言えば三洋電機がこのネットショップを開設しているのはある種意地の悪い戦略性を感じる。
ここから先は俺の妄想だ。
 恐らく,三洋電機はこのホームページ上で業務用冷蔵庫がバカ売れするとはハナから考えていないのではないかと俺は見ている。もっとあからさまに言えば売れようが売れまいが大して関係ないとさえ考えているのかもしれない。
 大局的に見てみると,業務用冷凍冷蔵庫の販売は殆ど最終局面,消耗戦に入ったのではなかろうか。
三洋電機総体は電機メーカーであって業務用厨房機器の枠からは十分にはみ出す企業規模で、失礼ながら電機業界では勝ち組とは言えないがそれでも厨房屋に比べればスケールは大違いだ。

 薄利多売を決め込んでも他の事業部門でカバーできるだけの体力はある,という目算が恐らく三洋電機にはある。そしてこの実売価格をネット上に晒したその先にあるものは恐らく,打倒ホシザキではなかろうかと俺は見ている。

 業務用の冷機器や食器洗浄機などについて,最大のシェアを獲得しているのは疑問の余地なくホシザキだが最も営業経費がかかっているのもこれまたホシザキに違いない。全国中を網羅する事業所やそこで従事している社員数にかかっている経費は決して小さいものでない事は簡単に想像できるはずだ。
 そして企業として比較した場合,三洋電機はサービス体制については豊富な協力業者を抱えているのでこれはホシザキに格別引けを取るものではない。相対的に最も見劣りがし,これまで出来るだけ軽量に済ませようとしてきたのがこの直販部門だ。ここに金をかけず,かつ,競合メーカーにダメージを与える戦術に俺には見える。卸売り先の中間業者達の不甲斐なさにしびれを切らしたという事かもしれないなw

 ここ数年でぼつぼつ現れ始めているが,ネットショップでの表示価格を根拠に納入業者との価格交渉に臨むバイヤーは営業に携わる者にとって手強い相手だ。ここで提示されているのはあくまで実体のみの軒先渡しの価格である事を閲覧者はご存知だろうか?そこには既存品があった場合の撤去処分費用も設置場所への運搬作業費も含まれていない事を果たしてどれくらいの人が認識しているのか。
 ホシザキ直販部隊にとっては困った茶茶入れだろうと想像する。
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見た事のないミキサー [修理屋から見た厨房機材]

 得意先の病院からミキサーの修理を依頼された。調理師長の私物で、使用中にモーターかなにかが焼損したらしく焦げ臭い匂いがして煙が上がったので今後の使用に耐える者かどうか調べてみて欲しいとの事だった。製造元も何も分からないまんまにひとまず調べてみましょうかと生返事で引き受けて訪問すると取り出されたのは家電製品みたいにスタイリッシュな物体だった。

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 デロンギというメーカーの製品らしい。俺には全く予備知識がなく、見るのも触るのも初めてだ。
ボウルの容量は3,4リットルくらいだろうか,日本製でいうと家電製品にしては大きく,業務用にしては小さい。欧米の家電製品だとありそうなサイズのミキサーなのだが。

 分解には大いに手こずった。特にヨーロッパの製品には家庭用,業務用を問わず言えるがとにかくビスだとかボルトが露出しないように出来ているのでどこから手をかけていいのか考え込む事で最初の数十分が虚しく費やされる。
 このミキサーについても外見上はどこからどう見てもビスやボルトが見当たらず,モーターボックス下にポリキャップがついていてそれを取り除くとケースの凹みにビスがあり,それを緩める事でようやく分解に取りかかれるといった案配だ。
 それから先も悩ましい分解作業は続き,ようやくモーターとギヤボックスが現れたときには実に小一時間を費やしていたのだった。
 予め予想は出来ていて,得意先にも期待は出来ない旨事前に伝えてはいたが,現れたはらわたを見て俺はやる気をなくした。

 やはり家電製品の造りだ。安っぽいとかチンケだとかいう意味ではなく,製造元の講習を受けた修理屋がメーカーの純正パーツの供給を受けないと手も足も出ない造りだということだ。
 DCモーターをモーターケース側面のレバー(根元には可変抵抗がある)による電圧変化で回転数を変えるというシンプルな発想だ。日本の家電メーカーであればきっと誘導モーターを超小型のインバーターで可変速というやり方になるだろう。この辺はお国柄という事か。

 何せ,スチール製のベースプレート上に整流回路の基板とモーターとギヤケースが全てかしめられた状態で組みつけられているので個別に取り外す事は出来ない。不具合があればこれら一式をベースごと交換するという事なんだろうと俺は解釈した。もしかしたら製品をそっくり買い替えた方が早いんじゃなかろうか。
 大体,この製品の補修パーツなるものがどこに言ったら買えるのかが俺にはさっぱり見当がつかない。何とかものにして銭を稼ごうという意欲が急速に萎えた。
 
 そんな事を調理師長殿に伝えるとご納得いただけたようだったので俺は手仕舞いにかかった。期待をばらすときには初めてのせいもあって大いに手間取ったが一度構造が頭に入ってしまえば早いもんだ。とは言え序盤のもたつきが大いに響いて所要時間は約90分,本日は午前3時までプレハブ保冷庫の天井でドタバタやっていた寝不足の俺には大いに堪えた。
 家に戻ってきてこのデロンギなるメーカーの事を調べてみると件のミキサーは何と実売価格三万数千円との事で俺は点検費用を幾らで話したらいいものだか大いに悩んだ。

 その後,調理師長様からご連絡があった。病院のお金でミキサーを購入してもらえそうなので何か提案してくれとの事で,俺の今回の点検費用もそこで上乗せ処理する事でご了解を頂いたのだそうだ。
 儲かっているんだかいないんだか分からないがとにかくタダ働きではなかった事でひとまず安心した。幾らか心得のあるキッチンエイドのミキサーの見積りでもこしらえる事にしようか。

http://www.fmi.co.jp/products/kitchenaid/index.html

 デロンギというのはイタリアの電機メーカーだった事を今日まで俺は知らずにいたが,大してキッチンエイドのミキサーはいかにもアメリカっぽい外見だ。

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 キッチンエイドのミキサーについては今でも引っかかりのある出来事があるがその件はいずれどこかで。

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某回転寿しにてネタケース修理後 [修理屋から見た厨房機材]

 罵倒系のテキストばっかり続いていたがたまに真面目にお仕事の記録をしておこうかと思ったのだ。
 
 昨日は午後10時から某回転寿し店のネタケースの修理に入り終了が午前二時だったので本日は朝寝坊を決め込んだところ。
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 膨張弁のベローズがいかれて冷えなくなったための交換作業だったが他にも冷媒の漏れている冷凍機が新たに出てきたりして有難くない付録付きだ。まあ,その分金にはなるのだからいいと言えばいいのかもしれないがガス漏れ修理は何せ真冬の深夜屋外作業だったので事前にしっかり厚着していかないと風邪をひいて開店休業状態にもなりかねない。

 某回転寿しのネタケースは二台の屋外冷凍機で合計5本のケースを冷やしている。
冷媒管の系統は昔ながらと言うか変えようもないのだが作業後の試運転でひとつ気がついた。
俺があんちゃんの頃からすっと見続けてきたものだが,屋外設置冷凍機の場合は高圧液管の施工法として膨張弁の手前にパックレスバルブを取り付けておくのが一種慣例みたいなやり方になっている。
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 営業終了後はパックレスバルブを閉める事で屋外冷凍機は低圧カットして運転停止となる。

 某回転寿しに限らずこの施工法は多い。
しかしそもそも冷媒管でのパックレスバルブというのは水でいえばゲートバルブみたいな位置づけで,点検補修時に操作するのが前提であって日常操作頻度が高い場所に使う事に適性はあまりない。毎日何度も操作し続けているとハウジングやスピンドルが削れて数年で漏れたり閉じきらなかったりといった不具合が起きる事が多い。
 某回転寿しでは昨年夏,コンベアーレーン中のネタケース3台についてバルブのハウジングとスピンドルが摩耗してガス漏れが起きて交換作業があった。
 昨日の修理では試運転時に残り一系統二本分の高圧液管に取り付けられたパックレスバルブから同様のガス漏れが起きている事が分かった。
 全閉時と全開時では漏れはなく開度が中間時に漏れるので一日のうち漏れる時間もそう多くはないだろうが漏れる事自体は事実なので繰り返し操作し続けるうちにこの先どこかの時点で冷媒が不足してパックレスバルブの交換と冷媒の充填作業が発生するのは間違いのないところだ。

 いつか試したいと思いながら出来ずにいた事の一つとして,高圧液管の操作用としてパックレスバルブを使うのはやめていっそのこと電磁弁を取り付けてスイッチ操作するのが良いと俺は常々考えている。高い開閉頻度に対する適性についてはどんな形式であれ手動バルブには限度がある。ボールバルブはパックレスよりも耐久性はあるがさほど歴然たるアドバンテージがあるわけでもないので間違いない選択肢としてはやはり電磁弁だ。

 問題なのは費用がかさむので事前見積もりを提出した時点でどの得意先も毎度難色を示して却下されてしまうところだ。なんせ水をジャンジャン使う場所なので,防沫用のカバーを製作して取り付けるという付帯費用がついて回る。
 某回転寿しに関してはおよそ4年から5年がパックレスバルブの摩耗周期となるが、4,5年周期での定期交換作業として今後の刷り込み事項としていくか,より恒久性のある処置として次回修繕を電磁弁による開閉に切り替えるかはなかなかに悩ましい選択肢ではなかろうか。これでパックレスバルブが一年くらいしか持たないのであればもっと決断し易いのだろうが。

 まあダメ元で再度提案してみる事にする。
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スチームコンベクションオーブンの講習 [修理屋から見た厨房機材]

しばらく前にスチームコンベクションオーブンの技術講習について某社よりご案内があり,一泊二日の旅に出た。

 スチコンのモデルチェンジが激しい。今回の対象はラショナルのこれ
http://www.rational-online.com/JP_jp/products/selfcooking-center/

 セルフクッキングモードを搭載したのが確か4,5年前で,その機能を理解するには俺の頭は出来が悪すぎて大いに困惑した。
 ここまで付録が満載されていたらもういい加減モデルチェンジのネタもないだろうと思っていたらまたまた新機能が追加されて今度はケアコントロールなるおかずが追加された。
 スチームジェネレーターに堆積したスケールは,これまでは厨房屋のサービスマンを呼んで薬品洗浄によって除去していた作業をこれからは内蔵機能によって半自動的に行うようになるとの事だ。ユーザーのやる事はスケール除去用の薬剤(タブレット)をホッパーに放り込んでパネル操作を行うだけで済む。修理屋の商売ネタはこれで一つ消滅した事になる。
SCC101.jpg

 コンビデュオという呼称で売り込みにかかっている使用形態はスチコンをスタックさせて2台と言う使い方で,これを意識してかSCCタイプの筐体は以前のCCPモデルに比べて一回り小さくなった。修理のときにはそれだけ手の入りづらい構造になったわけでもあってこれまでの修理でも作業工程が増えて結構悩ましい思いをしてはきた。
 そこへ持ってきて今回のマイナーチェンジだ。内部はますます窮屈になり作業工程は殆どパズルに近い。ガス式だと尚更大変な目に遭う事は分かった。

 点検要領や故障診断はインターフェイスであるタッチパネルによって行う。入り組んだ階層構造のメニューを辿りながら調べていくわけだが,もはや配線図さえあれば何とか見当がつくといった程度のものでは全くない。メニューの辿り方,タッチパネルの操作要領を丸暗記していないと手も脚も出ない。いよいよとなればメンテマニュアルを持参して客先で恥も外聞もなく広げる場面が予想できるがここまで多機能になってしまうとそれも仕方がないかなという気がする。

 ドイツ本国のメーカーサービスはスチコンの事さえ分かっていればいいのだから幾らでも機能を複雑にしていっても支障はないだろうが,日本で俺のように厨房にあるものは何でもかんでもいじくり回し,おまけに元々出来が悪い上にすっかり歳をとって物覚えも悪くなったこの脳味噌ではとてもじゃないが覚えきれない。こんな風にして俺はオールドタイマーとなり,時代に取り残されていくのだろうなあ。
 こうして丸暗記によって修理対応する事が前提な今日のラショナル製品だが,何年もかかって一通りの修理を経験し、さあこれでどんな故障も対処はバッチリだぜ!という段階で次の新型にモデルチェンジしてしまい,賽の河原状態でまた丸暗記のやり直し,それを何度も繰り返しているうちに歳をとって記憶力が低下して現役引退となっていくわけだ。段々職人的な見せ場などという自己満足の場面が起こり得ないようなスペックに変化(進化とはいわないぞ)していくのはちょっと寂しい気がする。

 日頃お世話になっている某ホテルの料理長はしばしばスチコンは調理師を堕落させたと嘆く。あれはもう,CookではなくてOperateじゃないか,とぼやく。
 しんどい徒弟制度の下で勘と経験によって培われてきた職能が片っ端から数字に置き換えられて時給800円くらいのバイトでも支障なく代替されるようになってしまった現況が苦々しいのだろうな,と,俺は忖度するのだが,別の側面としてこういう製品作りを押し進めていけば修理の作業が丸暗記と経験則だけで片付いてしまう傾向をも助長するから修理屋は教科書的な基礎知識の組み合わせで機械の動作を読み解いて所見を確定させていくという事をしなくなり,段々堕落していく事だろう。

 いろんな機材についていえる事だが,メーカーの講習を受けて多くの暗記事項を身につけておかないと修理のときにはチンプンカンプンという場面はこれからどんどん増えてくると俺は予想しており、それは障害の発生時に於いて修繕の依頼先に大きな制限がかかる事を意味している。使用者にとってそれは果たして良い事なのか。所詮,野良犬業者である俺のごまめの歯ぎしりに過ぎないのだがこの問題意識はずっと頭にこびりついていて払拭できずにいる。
 
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しばらくぶりにオザキのガステーブル修理 [修理屋から見た厨房機材]

 燃焼器具の修理が俺は好きだが手がける機会が暫時減りつつあるのは大変寂しい。
どういうところが好きかと言うと,結果が即時,はっきり出るところがまず一つだ。冷蔵機器の冷媒漏れ修理のように何日も経過を見て修繕の首尾,不首尾を確かめるような事はまずなく,作業終了後の試運転で善し悪しは即時はっきり出るので割り切りが良くて分かり易い。
 もう一つ言えば電気系の絶縁不良箇所探しや断線探しと違って見た目的にはいかにも何か労務作業を行っているように見えるところが得意先にはアピールし易そうに思う。

 俺は持っていないので必要のある時にお仕事仲間から拝借して使う事しかないが、作業終了後の気密試験に自記圧計なんかを持ち出すといかにもしっかり保安点検をしていますよ風に見えて金の話も多少は強気に出られるのではないかなどと妄想するのだが,現実問題としてはそれでお客さんが余計に作業費をくれるとも思えないし、そもそも俺自身がそんなに律儀で潔癖なお仕事をする修理屋ではないので妄想はあくまで妄想だ。(だからといって幾ら何でもガス漏れを放ったらかしてその場から去るような真似はしないけど)

 俺に燃焼器具の修理の機械があまりないのはこれが比較的誰でもいじり易く、いい商売になるのでいろんな業者が(特にメーカー)がきっちり得意先を押さえているからではないかと考えている。
 とどのつまり,業務用厨房機器の燃焼器具修繕というフィールドでは俺のような村八分の野良犬業者の出る幕は殆どなさそうだというのが現状なんだろう。

 そういう日々の中で久しぶりにこの手の修繕が発生した。オザキのガステーブル,ガスコックの交換というのがその内容だ。
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 下部分を3方枠に加工しており,ガス炊飯器を納めているからなのだろうがガスコックの固着が結構頻繁に起きる。炊飯器稼働時の燃焼排気で下から熱せられるのでガステーブルの上面全体が殆ど一日中チンチンに熱いことが影響しているのだろう。
 燃焼器具メーカーとしてオザキは未だに国内トップクラスの品質だと思うが幾らトップクラスとは云ったってこの環境下では厳しい。自分でガスコックを分解してグリスアップするような得意先はまずなく,グリス切れでタッチが多少重くなってもお構いなしでガリゴリガリガリとガスコックを捻るのでそのうち内部が削れてしまってガス漏れを起こしてどうにもこうにもならなくなる。おかげで俺のような奴にもお仕事の機会が生まれてくるわけなのだが。

 いざいじってみると,オザキのガステーブルやガスレンジは以外と作業に難航する事が多い。配管接続口の袋ナットやノズルなどでほんの数ミリ,スパナが入らないとか回すスペースがないとかいう場面が結構あるからだ。
 だからたかだかガスコック一個交換のためにあっちを外しこっちをはずしで一見物々しく見える仕事っぷりになる。外管式のガステーブルに比べると手間は喰うので作業費も杓子定規に考えれば高上がりにつく。
 だが、修理が終わって燃焼試験をしてみるとやはりオザキの燃焼器具はいいなあ,といつも思う。俺の元の勤務先の工場の開発スタッフは化粧鋼板を外装に使っているようじゃあね、と,重箱の隅をほじくるような事を言っていたが全体的にがっちりした造作はいかにもプロユースっぽい感じがして、全体から見れば少数派になりつつあるが燃焼器具ではコメットと並んで指名買いのお客さんが一定数いるのには納得がいく。

 熱源はこれから電気に移行していくのは時代の流れで加熱イコール燃焼器具の時代にも翳りが出てきてはいるが、ガステーブルやガスレンジのない厨房などというのはまずあり得ないので,燃焼器具の専門メーカーとしては今や国内で殆ど唯一となってしまったオザキには頑張っていただきたい。パーツ代の高いのは困ったものなんだが。

オザキのホームページ
http://www.ozaki-gasrange.co.jp/
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中古厨房機器のバイヤーとなる [修理屋から見た厨房機材]

 これまで,折に触れて中古の厨房機器売買に携わる人たちを罵倒してきており,その考えは今も変わらない。

 ならば今,某得意先の依頼に応じて中古機器のバイヤーとなっているお前はどうなんだよ!というご指摘は当然あるだろう。
 大げさに言えば,依頼主の最大利益を実現するところに俺の責務はある。それが新品だろうが中古だろうがこれは変わらない。同時に俺も生活者であり,収益源を選んでいられる状況にない。要は金のためだ。(追記:但し,この稼業を25年やってきた者としての筋は通す。適正に買い取り,適正にマージンを頂いて適正に販売する。中古品を適正な価格で販売しているリサイクル屋など実はほんの一握りでしかない事をこの際暴いてやろうと俺は考えているのだ)

 今回のお仕事は発生利益応分スタイルというか,依頼元に生じた見かけ上の利益に応じて俺の報酬も増えていく事になる。早い話,俺の調達金額が安ければ安いほど取り分も増える。だから一丁張り切ってやろうかというわけだ。
 そして,俺には勝算がある。
 俺は地元のリサイクル屋にとってはそもそも全然眼中にないか,あるいは蛇蝎の如く嫌われているかのいずれかなのだろうが、あんな連中に頭を下げて協力してもらうような考えは全然ない。むしろああいう連中を排除する事が本当に安価な調達の秘訣なんだって事を証明してやろうではないの,というのが本心だ。まあなんせ、言うより実行ってことで。
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Made in ○○は国内メーカーの脅威となるか [修理屋から見た厨房機材]

またも手短に。

過日,某所にて極東地域某国製の食器洗浄機を結構仔細に見る機会を得た。
現時点ではお笑いぐさの出来だが遠からずこの製品は国内市場を席巻してもおかしくはないと俺は見た。
但しこれには一つ条件があって,輸入元や販売元で国内製品並みのサポート体制がとれればの話だ。

 これまで何度も書いたように,日本製の業務用厨房機材などというものには国際競争力は全くない。これらは国内にしか販路のない諸々だ。この点,自動車や電気製品とは全く事情が異なる。
 例えていえば,日本国の業務用厨房機材の市場というのはガラパゴス島の生態系みたいなものであって、グローバルスタンダードとは隔絶したところで独自の発展を遂げた(発展という言葉の妥当性には大いに疑問があるが)。

 こうも未熟で未完成な製品群が大手を振ってまかり通っている背景に関しては長くなり過ぎるのでここでは詳述しないが、とにかく輸入機械の品質からすれば未だにお笑いぐさの出来である。
 この落差はそのまま,現在極東地域某国で製造されている機材類との落差にも通じる。しかしこれから先が少々事情の異なるところだが,日本製品が欧米製に追いつく可能性は殆ど全くゼロだがアジア地域で製造されている激安機器は数年中に容易く日本製に追いついてくる。そしてディストリビューターにまともな戦略性があれば国内製品の市場を食い荒らしていくだろう。

 それはこれまで,輸入機械の物まね以上の事をせずに来たことと、声のでかさと安売り以外には何の努力もしてこなかった怠慢さと無知さ加減のツケともいうべきだろう。

 日本の家電製品が世界に冠たる品質だった20年ほど前,電気店に並ぶ韓国製品になど誰も鼻も引っかけなかったはずなのだが現在,我々は韓国製家電製品を何の心理的抵抗もなく購入しているではないか。家電製品でさえそうなのだ。業務用厨房機材がそうならないわけはないと俺は思っているのですよ。いい悪いは別問題としても,だ。
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しばらくぶりにFTXをいじり始める [修理屋から見た厨房機材]

 2年ほどの間,某病院の栄養科の修繕の依頼が途絶えていた。患者給食の調理業務を外部委託に切り替え,委託業者のお抱え厨房屋が随分色々と機材をリプレースしたので俺の出番はなくなってしまったというわけだ。

 しかし二年の間には色々あるようで,どういう風の吹き回しかその某病院に限り,委託業者持ち込みの機材を含めて修繕には再び俺が当たる事になった。労務だけを見る限り以前の様相に戻りつつあるわけで請求先が病院から某委託業者に変わった事になる。

 委託業者のお抱え厨房屋について現場としては結構不満があるようだがそれはさておくとして,以前俺が会社員だった頃納入した食器洗浄機はホバートFTXに更新されていた。稼働歴は10年ほどで搬送系の軽整備を一度行えばまだまだいけると俺は思っていたが委託業者様は余程リッチなのかはたまたお抱え厨房業者様の営業手腕が余程のものだったのか,何せ俺の住む田舎町ではなかなかお目にかかれない機体が収まっている。
FTX.jpg

 場所は病院で,ベッド数がかなり多く,建物の築年数もそれなりに古い。となると容易に察しがつくように熱源は蒸気だ。
 ドイツホバートで蒸気加熱というのは過去に於いて心当たりがある。
以前俺が出入りさせて頂いた事のある某製菓メーカーの工場にはコンテナーの洗浄用としてUWXというコンベアータープの容器洗浄機が収まっており,俺は数年間,その機体の修繕をしていた事があるからだ。確か当時は日本では唯一の機体だった。
 機体内部に直圧式の熱交換器を内蔵し,温調は電磁弁で行っていた。本体タンクの加熱はスチームコイルで行っていた。
 UWXはFTXの拡大版であり,タンク一個に上下独立でFTXと同等のポンプが二発,スチームコイルも二組という構成だった。俺がサポートしていた機体は2タンクだったので本体タンク用のスチームコイルが合計4組となり蒸気配管は恐ろしく入り組んでおり、更におっかない事に,というか内部配管だから仕方がないが配管はむき出しで保温されていない。だから俺の腕のなさもあって修理のときには必ず二の腕のどこかが火傷を負った。

 そしてこの,蒸気配管からはひっきりなしに機体内の至る所で蒸気漏れが起きた。正直なところ,ドイツ製の食器洗浄機という奴はホバートに限らず構造に首を傾げたくなるものが多い。UWX(FTXも含めて)の内部蒸気配管は袋ナットで接続されており,当時はゴムパッキンを介していた、蒸気配管の接続がだ。
 これはもう,教科書的な意味合いからすればかなり危なっかしい設計で,稼働後幾らも経たないうちに蒸気漏れが起きるのは火を見るより明らかだ。

 今般俺が担当するようになったマイナーチェンジ後のFTXでも同じようなことは稼働後2年弱で起き始めたらしい。
 機体内のあちこちから蒸気が漏れる。御用達厨房屋さんが都度修繕にくるが幾らも経たないうちに同じところからまた漏れ始める。その度に修理代金の請求が上がってきてこれがまたなかなかバカにならない金額らしく,委託業者の現場サイドでもいい加減業を煮やして修理業者の切り替えに踏み切る事となり,俺にお呼びがかかった次第だ。

 おっかないような懐かしいような気分で外装板を取り外してみると見覚えのある内部配管にご対面と相成った。マイナーチェンジ後の変更点として配管種別としてはロックナットも含めてステンレス配管となり,パッキンはゴムからテフロンに変わった。
 テフロンパッキンとはまた剛毅な事で,という事にはならない。確かに以前のゴムパッキンは送汽を行うと幾らも経たないうちによれてしまい,一度接続か所を分解すると使い物にならないような事が多かった。だから耐熱性だけに限定すればテフロンは確かに大変優れてはいる。
 しかし反面それは可塑性に乏しいので、ただ締め付けただけではなかなか馴染んでくれない。給湯管には最適だが蒸気用となると俺には疑問だ。ましてや合わせ面にはシール剤が塗られていない。
 おまけにサプライ側の管種がステンレスと来た。蒸気配管でステンレス管を用いるのは耐食性を求められるリターン側であって線膨張率の大きいステンレス管は熱膨張によるゆるみが懸念されるので俺の知る限りではサプライ側に用いられる事がない。

 実際,蒸気漏れの起きている接続箇所は袋ナットが手で回るくらいのユルユル状態となっており、配管構成を見れば起こるべくして起こっている事なのだが,得意先に言わせればこれまで何度も御用達厨房屋さんが増締めを行っているという。(しつこいようだが,都度請求書が上がってくるらしい)
 
 本筋からいけば,根本的な解決策としては送汽時の配管膨張を緩衝するためのセクションを設けたいところだが何せ狭い機体内なのでそのような造作が出来るスペースはない。サプライ側は低圧蒸気なのでステンレス配管をやめていっそのこと一部スチームホースでの接続ではどうかとも思案したが元々用いられているのが急角度でベンドさせた内製の継ぎ手なのでこれも物理的に収まらない。
 結局,お為ごかしみたいな処置で心もとない気もしたが接続用のテフロンパッキン両面に耐熱性のシリコンを塗り,袋ナットのねじ込み部分のネジ山にもシール剤を塗る事で様子を見る事にした。
 目下のところ俺の処置は某お抱え厨房屋さんよりは長期的な効果があるようで今のところ同一箇所からの漏れはないらしいので、一匹狼気取りの俺としてはちょっと溜飲が下がって悪い気はしない。

 しかしお客さんとしてはこれまでに要した修理費用について癪に障るところがあるらしい。何度も脚を運んで同じ事を繰り返すばかりで打開策を講じられずにいた事の代償を求める,と息巻いている。
 それで俺は,この件に関して修理作業の詳述と蒸気配管接続に関するあれやこれやの約束事をドキュメントとして作成し、提出する事を依頼されてしまった。それを根拠にお抱え厨房屋さんに対しては修理代金の払い戻しを求めるというのだ。
 今後のお仕事の事を勘案すると,俺はここでこの委託業者様に対してポイントを稼いでおきたいのはやまやまなのだが反面,某お抱え厨房屋様からは逆恨みを買いそうで大変複雑な心境にある。







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ガス回転釜の内釜材質で一考 [修理屋から見た厨房機材]

 回転釜の需要は根強い。
もはや時代遅れな調理機器なのは疑問の余地がないにしても,これほど安価な導入コストで大量調理が可能な機器は他にないのもまた事実ではなかろうか。

item04_revolvepot.jpg

 俺の得意先である某病院に於いて,内釜の交換が発生した。稼働15年目で今回が2度目である。
前回の交換は確か8年くらい以前,稼働7年目だったと覚えている。
 導入時は煮物,炒め物の両方をガス回転釜で行っていたが5年ほど前に増床と改修工事があり,これはかなり珍しいケースだと思うが一般食の加熱調理用にライスボイラーが復活導入されたので、以来煮物と汁物はライスボイラー,炒め物がガス回転釜という使い分けが行われるようになった。
 
 ガス回転釜の内釜材質はアルミであって,俺個人は結構悩ましい選択肢だと考えている。
何故ならそれは耐熱性に乏しく,歪みやクラックが生じやすいからだ。まかり間違って空炊きなどしようものなら一巻の終わりで釜の底が溶けてでっかい穴があく。
 他の材質はどうかというとステンレスは脂の乗りが悪く焦げ付きやすいので使用感の評判が良くない。鉄は安価だし炒め物に都合が良いが錆の心配をしなければならないので今日的な選択肢ではない。
フライパンと一緒で表面に油のしみた薄膜層を常時保持しておかないと次回仕様時には使い物にならない。
 何より初期導入時の慣らしの面倒臭いのには閉口した。以前,会社員だった頃に予算の都合上鉄釜を選定する事になって納品したときには半日以上も回転釜にへばりついていなければならなかったのはよく覚えている。
 内釜になみなみと水をはり,2袋くらい用意した米ぬかを順次放り込んでぐらぐら沸騰させ続ける。米の油を煮出しては頃合いを見て排水して内釜を磨き,また米ぬかを放り込んで水をはって火を焚いてを数度繰り返す。鉄の粉が浮き出してこなくなるまでに丸二日以上かかった事もある。この初期作業が面倒臭くなって、以来,アルミ製の内釜ばかりになった。俺以外の同業者が施工した調理室を見る機会はあるが、必ずと言っていいくらいガス回転釜の内釜材質はアルミなので大体誰もが同じような事を考えているのだろう。

 アルミ内釜は幾ら大切に使っていても炒め物が中心だと大体どこかの時点でクラックが生じて交換時期となる。底面が歪んで凸凹し始めてくるとそろそろ次を考えた方が良い。
 俺の得意先である某病院では2年前にひび割れが生じ始めて水漏れが起こり,交換するにも当該年度の修繕費予算が厳しいので何か延命措置を考えてくれと無茶苦茶なリクエストが来た。
 ない知恵を絞ってあれこれ考えた結果,ざらざらに荒れた内釜の裏面,亀裂発生箇所一帯を一度ペーパーで磨き,耐火用のパテ(この場面以外では殆ど全く使う事のないマテリアルだ)で埋めてみるとおよそ一年強の間は持ちこたえるらしい事が分かった。
 通常,水漏れの補修は内面から行うのが通り相場と心得ているがこのケースでは内釜の取り外しは大儀ではあるが裏面から行う方が効果的で,俺も一つ利巧になったのだった。

 かくして今般,めでたく予算はついて結構高額な修繕となるので年末で懐の寂しい俺としては有り難い話な訳だが,再発防止を考えると先に書いたように取り回しの不便さはあるものの鉄釜が見直されても良いのではとも思う。反面それは高額修理がもう起こらない事をも意味しているわけで俺としては痛し痒しの状況である。
 さて,修理についてどのような提案を行うべきか。
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食器洗浄機 JMD-3Aが生産終了 [修理屋から見た厨房機材]

 今月の初め,IHIの系列会社であるところのIHI回転機械(株)の事業部長様ご一行と昼飯を食べる機会があった。予想通りというか,食器洗浄機の販売台数はここ数年今ひとつらしい。

 まあ,会社そのものは食器洗浄機どころか業務用厨房など全体割合から言えば微々たるものだからしていたって淡々とした話しっぷりではあったが,アンダーカウンタータイプのJMD-3Aがとうとう生産終了してしまったとの事で,俺は大変寂しい気分になった。会社員だった頃,俺が納めさせて頂いたアンダーカウンタータイプの食器洗浄機のうちでは一番力を入れていたのがこの機種だったからだ。
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 JMD-3Aはいかにも元は軍需産業であったIHIだけあって頑固一徹な洗浄機だった。デビューはおよそ20年前だが当時納めた機体のうちの殆どが現在でも大崩れの故障もなくバリバリ稼働している。このサイズの食器洗浄機としてはかなり凄い事のはずだ。
 ラインナップの全てについて言えるが,IHIの食器洗浄機は価格面での競争力は恐ろしく低い,同一処理量の食器洗浄機について複数メーカーの見積を徴収してみれば歴然だがIHIは必ずダントツで高価だ。高価な事には根拠があるが殆ど全てのバイヤーは理解しようともしないし高価である理由を問おうともしない。JMD-3Aについては以下の通りだ。

1:ボックスタイプ(ドアタイプ)並みのポンプ能力,3φ200V,400W,吐出量は300ℓ/minに迫る。
当時,他社製の同一寸法の洗浄機は大体どれも1φ100V、250W程度のポンプで吐出量は200ℓ/min以下ばっかりだったので破格のスペックである。100V仕様の機体を作ればもっと売れるはずなのにと俺は進言した事があるがIHIは頑として首を縦に振らなかった。400Wのポンプで100V仕様では信頼度が心許ないというのがその言い分だ。

2:ブースターは別置きである。従って配管工事が余分に発生するし置き場所にも制約が多い。別置きの理由は二つあり,JMD-3Aはアンダーカウンタータイプでありながら消費水量が多かったのだ。(4ℓ/cycle)大きなポンプをマウントしたせいで機械室の空きスペースがない上に他社製品よりも大きなタンクが必要になるので何をどうやっても実装できないという。他社製品がその後のモデルチェンジでJMD-3Aと同一出力のポンプを搭載し,なおかつブースター(電気加熱)を内蔵するようになってからも頑として別置き仕様は変えなかった。この辺の言い分は多少入り組む。

2−1:熱交換器などにより80℃近辺での給湯が可能な施設の場合,内蔵されたブースター分は無駄な機能という事になる。この辺はボイラーメーカーとしての視点と俺は見た。

2−2:ブースターを無理矢理内蔵すればタンクの輻射熱によって電気系の劣化が早いうえに機械室内部は窮屈になるので修理時には手が入りづらく,整備性が損なわれる。

いずれも一面は正論だが能力や信頼度を幾ら訴えても多くのバイヤーには響かない,彼らはそこ迄物事を突き詰めて考える人種ではないのだという俺の意見は全く顧みられる事はなかった。最初の4、5年はハイスペックを売りに幾らかの実績は出来たが,他社が400Wのポンプを詰め込むようになってからはブランドに何か思い入れのある方か,例外的に信頼度を重視する一種の物好き以外には注目される事のない,機体の価格といい周辺工事費用といいむやみと高くつくカルトマシンの座に追いやられてしまった。その後の成り行きは冒頭記した通りである。

 世の中なんでもそうだが,いいから売れるとは限らないという話の典型がIHIの食器洗浄機だと俺はつくづく思う。格別大きな故障もなく,リプレースすることもなく一台の機体を20年にわたって稼働させられるのは間違いなく高い経済性であるはずだが世の中殆どの客というのはイニシャルコストが安く済む事だけに血道を上げ,律儀に保守契約に加入して減価償却期間の間に結構な金額のお布施を納めた上に7年目を過ぎると更新をせがむ営業の兄ちゃんの口車に乗せられて同じ初期投資をまた始める。こんなのは全然安い運用とは言えない。トータルコストという考えはいつまでたっても根付かない。

 悔し紛れの負け惜しみみたいな話はしたくないがどうしても書いておきたい事がある。
ある旅館では200食ほどにもなる朝食の食器をJMD-3A一台で片付けていた。機体はさすがにすすぎ系統のポリ管が参って一度取り替えたがその費用は3万円強である。他にかかった修繕費といえばノズルシートのような摩滅性のある消耗パーツだけだ。そんな風にして20年回り続けている。他のどのメーカーの製品もそこ迄のタフネスは断じてない。修理屋を25年以上やって来た俺が知る限り他社製品のどこもそこ迄の品質には至っていない。

 製造元の話では,在庫機がまだ幾らか残っているとの事だが通常仕切り価格での完売はなかなか難しいだろう。既にご使用されている方は安心して良い。何しろIHIは40年前の製品のパーツストックを頑固に継続しているほどの会社なのだ。他社製よりも高価である事をご承知の上で購入されたユーザーさんは十分に報われているはずだと思うぞ,俺は。 

フードプロセッサー(カッターミキサー)の選定 [修理屋から見た厨房機材]

 偉そうにバイヤーズガイドめいた事を書けるほどの知識も経験もないのだがグダグダな日常のぼやきばっかりが続いているので気分転換も兼ねて半ば知ったかぶりのテキストである。

 業務用のフードプロセッサーといえばロボ・クープとクイジナートが言ってみれば2大勢力である事は諸兄も重々ご承知と思う。前者はフランス製,後者はアメリカ製(設計はアメリカで日本ではライセンス生産だったかもしれない)で,これ以外のメーカーも幾つかあるが無視して良い。一部例外として米国ホバートが一機種だけ製造しているがミキシングボウルの容積が30ℓ近くもある大型機でこれはかなりの特殊用途でしかニーズはないのでここでは語らない。まるっきりの国内製は備品の分厚いカタログなどに掲載されているが品質は最低でおよそロクなものではない。買った人は御愁傷様と言ったところだ。

 国内製のフードプロセッサーについては家電メーカーが家庭用として製造しているものについては悪くないが何せ処理量が少ないし業務用として使用する場合には保証の適用は失効するのでこの事はあらかじめ覚えておいて良い。繰り返すが国内製で業務用と銘打たれているフードプロセッサーは全く使い物にならないゴミばっかりだ。

 クイジナートサンエイのHP
http://www.cuisinart.co.jp/
 
 ロボクープのHP
フランス本国では家庭用として販売されているmagimixシリーズ。ヨーロッパでは嫁入り道具の一つと言われているほどの定着ぶりなのだと誰かから聞いた事がある。日本では業務用として販売されている。勿論保証制度はありだ。
http://www.fmi.co.jp/products/magimix/index.html

 ロボクープRシリーズ
本当の業務用はこのシリーズで,ボウルが同一容積ではあってもモーターがごつい。稼働率の高さを想定するとこのようにスペックは差別化されてくる事になる。
http://www.fmi.co.jp/products/rseries/index.html

 兄弟シリーズのBlixer
粘度の高い(流動性の低い)食材をミキシングする場合には遠心力が働き食材がボウル外周部に盛り上がりカッターは空転に近い状態で運転されるため、蓋にスクレーパーを組み込んで運転中外周部に寄った食材を中央に押し戻せる造作になっている。但しこの動作は手動で行う。
http://www.fmi.co.jp/products/blixer/index.html

 総体に家庭用チックな,稼働率の低い現場や1バッジの量が少ない場合はクイジナート VS ロボクープmagimixという構図となる。
 商売人としての俺はこれ迄ロボクープ一辺倒でクイジナートを売った事はない。使い勝手でいうとクイジナートはピアノキー形状のためユーザーには好評のようだし小型機種ではバリエーションも多い。
但し故障時には(業務用というのは必ずここを想定しておかなければならない)代替機の供給とかサービス体制から言ってロボクープの圧勝。

 ロボクープは機種の大から小迄含めて技術資料の開示やスペアパーツの供給がオープンに行われているのでユーザーは代金が安くて腕の良い修理屋を抱えていればランニングコストの節減になるがクイジナートは代理店経由で機体を丸ごとメーカーに送り返す以外の方法はない。当然往復送料はユーザー負担となる上に修理取り次ぎ代理店のマージンが加算される。

 俺個人の都合でいえばロボクープの方が商売上は有り難いが,これまでそちらばかりを売ってきたのは修理の件ばかりでもない。
 フードプロセッサーはかこ20数年前にさかのぼればロボクープの独壇場だったのであって俺はその頃にこの機材のいじりかたを覚えたせいだ。クイジナートは日本では参入が遅れた上に先に書いたようなサービス体制なのでどうにもなじみが薄いままだ。
 更に言えば,繰り返しになるが業務用の特に5ℓを超える機種になるとロボクープのバリエーションの方が圧倒的に充実している。俺のこれ迄の納入実績は相手が商売用ばっかりで容積は3ℓから10ℓくらいが中心だったのでロボクープ以外の選択肢がない状況が多かったのも要因だろう。

 古い思い出話もなんなのだが,長い経歴の調理師さんたちはフードプロセッサーとかカッターミキサーを「ロボ」と呼ぶ事が多い。ロボクープを縮めてそう呼ぶのだがメーカーに関係なく彼らはそう呼ぶ。携帯型のテープ再生機をメーカーに関係なくウォークマンと呼んでいたようなもので,商品名がそのまんま機器名を指すくらい一人勝ちのシェアを取っていたわけだ。
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 全体の図式として小容量とかライトユーザーであればクイジナート、大容量とかヘビーユーザーであればロボクープという色分けが出来そうに俺は見ている。

 注意しなければならないのはどちらも元来西洋の機器なので和食系のメニューをこなすときには不向きな場合がある点で,以前の失敗例では懐石料理の下ごしらえに使ってみたがカッティングの際に発生する摩擦熱で食材に火が入ったような状態になり食感が全然なっていないというNGが出た事がある。
 俺に活用技術の知識がないせいで打開策が見出せなかったが,さほどかさばらない機体でもあるので出来れば購入前にはデモ機の借り出しをして一度テストしてみた上で購入の勘案をする事をお薦めする。
 
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蒸気三重釜修理の苦しい裏技 [修理屋から見た厨房機材]

 随分長い事更新をさぼり続けたのは俺が元々根気がなくだらしない人物である事を物語っている。

危機意識が乏しい上に怠け者なので、余程金銭的に逼迫してこないと勤労意欲が湧いてこないのは我なら困ったもので,ここしばらくは久しぶりに目の色を変えて働いていたのですよ。他人様にはどうでもいい事だが。

 野良犬稼業なので変な依頼が結構多い。メーカー様が匙を投げたような内容のものもあるし,持ち主のスケベ根性で一円でも安く修理代を済ませたいがために来る依頼もある。色々な意味で,イレギュラーな出来事をこなすのが俺のような立場の役どころなのだろうと思っている。
 備忘録的に最近の作業を一つ書いておきたい。

 長年俺が出入りさせていただいていた某総合病院は昨年,調理業務を外部業者への委託に切り替えた。外部委託業者には北沢産業という由緒正しいお取引先があるので当然,俺のようないかがわしい宿無しはお払い箱となった、とばかり思っていたら思いのほか,この外部委託業者からの依頼が多い。

 先月,この某総合病院で蒸気三重釜のハンドルがぶっ壊れた。病院は築28年にもなる老朽施設で,この三重釜はなんと病院建設時に設置されたものを今に至る迄使い続けていたものだ。この間,俺は随分色々な修理をした。
 蒸気三重釜はこういう格好をしている。学校の給食室などでよく見かけるあれだ。
img24.jpg

 さすがに28年も使うとハンドルに組み込まれているウォームギヤが減ってきてティルト(傾斜)動作の際に空転するようになってきたというわけだ。
 これは数年前からの懸念材料であって,調理業務の外部委託以前から数年にわたって俺は病院に対して,修繕の予算要求を上げ続けてきたが、調理室内の設備機器を委託業者に譲渡する予定であった病院としては近々所有権を失う機材になどなるべくならば修繕費は掛けたくないというケチな目算があったためだろうが俺の進言は撥ね付けられ続けてきたのだった。
 外部委託業者にとってはとんだ付録付きの機器譲渡だったわけだ。

 写真の機種とは違うが,この蒸気三重釜の製造元は服部工業という。
http://www.hattorikogyo.com/

 以前,ハンドル(ウォームギヤ)の交換修理見積を病院宛に作成した時,服部工業からのバーツ単価仕切りはおよそ¥35000くらいで、俺は大体六万円強の積算金額で見積書を作った。
 今回,同じつもりで以前の見積金額と同内容のものを外部委託業者宛に提出すると比較的簡単に決裁がおりたので手配に取りかかったのだが,念のため紹介した金額を聞いて俺はひっくり返りそうになった。ハンドルの価格は俺の仕切りがなんと¥88000にもなるという,これは一体どうしたわけだ,俺は気色ばんで服部工業に問い合わせた。
 メーカーの返答では¥35000というのは現行製品に使用されているハンドルの仕切り価格であって問題の機体は28年前のものなので互換性がなく,当時の仕様のハンドルは¥88000なのだという。
 これは一にも二にも俺が迂闊だった。数年前,最初の見積書を作成する時点で機種や製造年度をきちんと調べておくべきだった。全く俺はいつもどこかが抜けている。

 冷や汗を流しながら俺は考えた。
赤字を覚悟でお仕事をするほど俺は金満体質ではないのだ。
修理見積を上方修正して、事の事情を説明すべきだろうか・・・

俺は更に考えた。
問題の機体は実に28年,継続使用されてきたものだ。
ハンドルはこれ迄,何度もマイナートラブルを起こしてきたが、これ迄交換歴はない。
機体全体がガタガタに老朽化している現状で,28年もの耐久性を持つ正規のハンドルに取り替える事には無駄があるのではなかろうか。何となれば,仮に5年後,蒸気三重釜を新しいものに更新するとすれば現行製品とは互換性のない高耐久のハンドルが無駄になりはしないか・・・など。

幸い、外部委託業者は修理金額の上方修正もやむなし,との結論を出していただいたが、修理屋としての俺の本能みたいなものはなんだか割り切れないものがあったので俺は更に考えた。

で,俺の結論は、機体を一部改造して安価な現行製品用のハンドルを取り付けるというところに落ち着いた。

 旧タイプのハンドルは軸受けにボールベアリングが使われているなどハイスペックであるのに対し,現行品は軸受けが単なるメタルであって,たとえばこういう作りの差が価格差でもあるわけだがその分パーツとしての耐久性がない。
 ないとはいっても病院給食での通常使用でいえば十年かそこらくらいは持ちこたえる,というのが俺の経験則なのであとは蒸気三重釜本体の改造などという事が実際可能なのかどうかが問題となった。
 メーカーである服部工業は当然ながらそんな実例はないと言ったが俺はなんとかしてやりたいのだ。
結局,やってやれない事はないかもしれないがあくまでも自己責任でどうぞ,というのが服部工業の態度で、一度使用したパーツの返品はききませんからと釘を刺された。当然だが。

 かなりギャンブルめいた作業となったが結論を先に書いておく,改造は成功した。
初めてのせいもあって色々手探りが続き,時間を食ったがともあれ改造は成功したのだった。
正規の修理であればおよそ¥110000くらいにはなっただろうが改造費用を含めて¥70000を少し割る程度の補修費で今回の問題は片付いた。
 改造後も使用感は以前と変わらないとのご返事を現場の方からは頂いたので,代金は安く上がったし俺の利益も確保されたしで,俺は結構いい気分になっているのである。

 どうせ誰の役にも立たないだろうが,浮かれついでに改造手順をいずれ画像込みでアップしてみたい気がするが,服部工業にしてみれば愉快な事ではないに違いないので決めかねている。
 ただ,改造でも何でも自己責任でどうぞ,という姿勢自体はバカな福島工業あたりとは違って大人の態度というか、俺のような野良犬稼業にとっては大変有り難い。
 

 
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大和冷機工業の冷蔵庫はもっと売れて良い [修理屋から見た厨房機材]

 コールドテーブルの修理を控えており,現在パーツ待ちの状態だ。
昨年やっと買い込んだ溶接機の使い勝手にもだんだん馴染んできたので、これから先は投下資本を回収すべくこれ努める。
8_01a.jpg

 焼損したコンプレッサーの交換は厨房屋が行う修理のうちでは結構大掛かりな部類に入る。サービスマンの中には出来ない人も結構多い。概して冷媒配管の修理は線引きして考えられる事が多いのではないか。通常修理では使わない諸々の専用の修理機材を装備しなければならないし、多少の専門知識も要するので販売はするが修理は外注という業者は珍しくない。

 別に厨房屋に限った話ではないが,業者が語る「修理が出来る,メンテナンスは万全」という言い回しには幾つかの段階がある事をユーザーは知っておいた方が良い。
1:自分(その営業マン)に修繕の能力はないが,障害が発生したときに話を振る心当たりがある。
2:過去に何らかの対症療法を施した事はある。
3:どんな風に故障しても復旧させる事が出来る。

 普段背広を着ている奴はほぼ全てが1,作業服を着て走り回っている連中が2,3は大変少ない。(俺がそうだとは言わない)言ってみればマスタークラスであって,こういうサービスマンばかりだと老朽機器の更新に滞りが出る恐れでもあるのだろうか,会社にとっても最早大して有難味のない存在で,厨房メーカーによくある事例として資質に富んだサービスマンや経験を積んだマスタークラスは業界に見切りをつけて他業種へと転出する。

 話を元に戻す。
業務用冷蔵庫の冷媒配管周りの障害についてはユーザーにとってあまり有り難くない出来事だと思う。
先に書いたような理由で外注修理となるケースが起こりがちなので作業単価は割高になる傾向があるし,真空引きや冷媒充填の作業迄も含めると作業時間は2時間を超える事はザラなのでそもそも作業費がかさむ。

 設備運用に当たって冷機器関係の修繕費というのは結構バカにならないはずなのだが,バイヤーの大半は文字通りのバカが多いので機器の購入費用のことしか頭の中にない事が大変多い。
 転ばぬ先の杖ということで保守契約を・・・と色めき立つ業者もいるが,故障の事前予測が出来るというのはそれこそ同一個体を10年くらい見続けているマスタークラスでも出来るかどうかという世界であって,メーカーの看板を下げて走り回っているあんちゃんたちにそんな能力などあるわけがない。保証が切れてから6年も7年も保守契約を継続するくらいならスポット修理の方がトータルでの修繕費は安上がりである事が殆どだ。

 事前の策として有効なのは,やはりちゃんとしたメーカーの製品を選定しておく事ではなかろうかと思う。経験上で言えば冷媒配管関係で信頼度が高いのは三洋電機と大和冷機の2社。別にリベートを頂いて提灯持ちをやっているわけではない。残りのメーカーは明らかに一段落ちる。そういう意味では上記2社は高信頼度という事でもっと高く売れて良いはずなのだが,ユーザーには目先の事しか見えていない馬鹿者が多いので正当に評価されていない。

 20数年,殆ど毎日冷蔵庫はいじっているが,大和冷機の業務用冷蔵庫でガス漏れ修理というのはこれ迄2度しか経験がない。一度はいまから15年くらい前,某仕出し屋さんの冷蔵庫で17年くらいの運転歴だったと思う。17年も使えば,そりゃガス漏れの一回くらいは起きたっておかしくはない。その時驚いたのは大和冷機が20年近くも前の製品のカスタムパーツ(冷却器)を律儀に在庫保有していた事だった。もう一度は20数年前,換気の悪いレストランでドライヤーの溶接部分にピンホールが発生してのガス漏れだったが,塩分を多量に含んだオイルミストが一日中キッチンに充満しているようなひどい現場でこれは周辺環境のせいと見るべきかもしれない。同一現場にあった他社製の冷機機は更に故障の頻度が高かった。

 冷媒関係等の信頼度の高さという意味では,大和冷機はもっと評価されて良い。こんなに重大故障の発生頻度が低くてはなかなか次が売れなくて大変なのではないかといらぬお節介をしたくなるほど大和の製品は故障が少ない。但し箱の作りは雑で安っぽく、見るからに高級感がないので製品作りはあまり上手とはいえない。特段この会社に肩入れするつもりはないが,大和冷機が業務用冷蔵庫のトップシェアが取れずにいる事実はちょっと理不尽に思う。
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せいろ型蒸し器でちょっとした疑問 [修理屋から見た厨房機材]

 某団子屋さんからの依頼でせいろ型蒸し器の整備中である。
以前は別の業者に依頼していたのだそうだがご利益が認められないとの事で俺にお鉢がまわってきたのだ。営業力も知名度も毛ほどもないこの俺をどこでどうして知ったのかはともかく,以前の修理業者は結構な金額でこの作業を行っていたらしく俺が同一金額で一台オーバーホールして納めたところ好評で,バックアップ用の機体がもう一台あるのでそちらも頼む,という追加依頼が生まれた。二台合計すると結構な金額になってしまい,本当にいいのだろうかとも思うが支払いは整備完了後に即金との事でこのご時世に何ともまあ太っ腹なお客様だ。こういうお方は大事にしなければ。

今回整備を請け負ったせいろ型蒸し器は荒畑製作所というメーカーのものだ。http://www.arahata.co.jp/

お恥ずかしい話だが,俺はこれ迄このメーカーの存在を知らずにいた。
これ迄の経験上でいえば一番修理を手がける事が多かったのは品川工業所の製品で,商品名はサンキュウボイラーと言う。
http://www.qqqshinagawa.co.jp/

事実上,せいろ型蒸し器の業界標準と位置づけて良さそうに思うサンキュウボイラーはこんな格好をしている。
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何とも原始的な機材だが,幾らスチームコンベクションオーブンが世間に普及したとしても,きっとこの単純明快な構造を持つ機材の需要がなくなる事はない。根拠は特にないが職人さんの感覚というのは良くも悪くも経験則に根ざした積み上げの結果であって保守的な事が多い。

 団子屋さんの社長さんが仰るところによれば,荒畑製作所の蒸し器は他社製よりも高価で出回り量は少ないが団子の出来上がりはサンキュウボイラーに比べて歴然たる良さがあるのだそうだ。
 残念ながら俺には食材の知識が全くないので製品の出来上がりを判断する能力がない。一見どちらも同じように蒸気を噴き上げているようにしか見えないのだが製品作りの上では大違いなのだそうだ。きわめて感覚的な世界のようだ。

 試運転の最中団子を御馳走になりながらそんな話を伺っているうちに似たようなケースを思い出した。
 3年ほど前だったと思うが某斎場での修理だ。料理長が言うにはタニコー製のせいろ型蒸し器が何とも不調だとの事だった。それ迄別の職場で使っていたのは品川工業所のサンキュウボイラーだったが比較すると蒸し時間がひどくかかるらしかった。
 タニコー製のせいろ型蒸し器は初めて触る機体だったので正常時の運転状態がどうであったかの予備知識が俺にはなかったが、給水の状態や燃焼状態などあれこれ調べてみても特におかしな状態には見えなかった。付属のバーナーがサンキュウボイラーと比べて非力であるようにも見えない。俺は思案に詰まったのだった。

 『元々そういう性能なり仕様の蒸し器なのではありませんか?』と結論しようと思ったが野良犬修理業者の言い草としてはあまりにもおこがましい越権行為なので,私には判断能力がないので一度製造元であるタニコーさんに見てもらってはいかがですか,と言い残して失礼した。無駄足を踏んだな,と,少々残念な気分でもあったのだが。
 それから数日して件の料理長から連絡があった。サンキュウボイラーを一台購入したいので大至急手配してくれと言う。まださほど使い込んでもいない機体なのに随分見切りを付けるのが早いな,と,不思議に思いながら某厨房屋にこの商談をつなぎ,タニコー製と入れ替え工事を行った。試運転としておこわを蒸してみると料理長は「やっぱり品川でなくっちゃあね」と大満足なのだったが俺には蒸し器の運転状態として何がそんなに違うのかがさっぱりわからなかったのだった。
 数日間の間に何があったのかは未だに不明だが、製造元との感情的な問題ではなさそうだ。

 なぜかというと、件の料理長には好きなように始末してくれと言われて撤去したタニコー製の蒸し器をとある旅館にタダでくれてやった後の事,某斎場ではいい評価ではなかったので,という断りを入れておいたのだが設置を済ませて使ってみた旅館の料理長曰く,加熱調理には使えないが保湿保温用としてなら何とか使えるからよしとするという評価が出てきたからだ。複数人が同じような判定を下す以上,そこには何かの客観性があると見るのがやはり自然だろう。
 俺にはどう見ても違いが判別できないのだがやはり何か結果には差異が生じるようだ。俺が未だ,不勉強な職業人であるという事でもある。

念のため一言申し添えておきたい。
俺はここで何もタニコーの製品をこき下ろしたいわけではない。その製品を運用しながら格別不満もなく納得しておられるユーザーは多数おられる事と思うしその事に異論があるわけでもない。一見,同じように動作している機材でありながら調理に携わる本人にしかわからない差が確かにありそうだというのが趣旨なのでございますよ。

スチームコンベクションオーブンの動向 [修理屋から見た厨房機材]

 スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)が世に出てからそろそろ20年と少々くらいにはなるだろうか。

 当初は使い道の不明な便利グッズ程度の見方で大して売れなかったが真空調理とかなんとかに使えるという事で普及し始めたのが18,9年くらい前だったように覚えている。
 今では真空調理を実務で導入しているという話もあまり聞かなくなったが色々と活用範囲の広い便利グッズである事は知れ渡ったので随分普及した。

 普及の原動力になったのはマルゼンが莫大な予算をかけて全国津々浦々行った調理講習会で,そのかいあって現在のマルゼンは国内のトップシェアである。

 発祥の地であるEU圏では元々ドイツ製が優勢で,おおかたコンボテルムとラショナルの2社がシェアの大半を分け合っていたと聞いている。これら2社のいいとこ取りで自社製を開発したのだと以前マルゼンの所長さんから聞いた事がある。
 但し最近は売れ行きに変化があったようで,目下EU圏で販売台数のトップはイタリア製(だったと思う)のUNOX(ウノックス)が取って代わったのだそうだ。国内ではエフ・エム・アイ(株)が輸入元である。

 機能や構造上最も大きな違いは蒸気発生の仕組みにあって,原初的な考えではボイラータンクにためた水を投げ込みヒーターで加熱する方式だったのが最近売り上げを伸ばしているインジェクション方式(と便宜的に呼んでみる)は庫内のホットエアー用ヒーターに水を吹き付ける事で蒸気を発生させる。

 加熱用のヒーターが一組で済むので製造コストが下がり、実売価格にも転嫁できる。投げ込みヒーターは常時水に浸っているので長期間使用での絶縁低下等の懸念があるがインジェクション方式ではこの点は回避できる。
 デメリットとしてはヒーター表面温度は水をかけられる事で不断に変動しているので秒単位での蒸気発生状況を考えると安定性に欠ける。結果としてはスチームジェネレーターを持つものに対してスチーミングの時間は少々かかる傾向があるらしい。
 もう一つのデメリットはヒーターにカルキ等の不純物が付着する事で,手入れの悪い状態で使い続けると効率が落ちてしまうことで、大変時間のかかるカルキの清掃よりもヒーター交換が実際の処置になる事が想像できる。このときの修理代は恐らく結構安くないものだ。
 最も水質に注意しなければならないのはジェネレーターを内蔵した形式であれインジェクション方式であれ一緒なのだからどこかの時点で高額修理が発生するのは不可避であって購入する人は事前にこの時の補修費が大体どれくらいなのかを押さえておくべきだ。

 俺はスチコンの構造なり動作はラショナルの製品で覚えた口で,会社員だった頃にはそれを販売してもいた。インジェクション方式はウノックスが始めてというわけではなく,それ以前から他社でも採用されていたがおしなべて安価であり,商売上競合の場面ではかなり苦戦した。
 それで当時はこの、目の上のたんこぶみたいな形式の一生懸命あら探しをしたのだが、修理の自営業として何でもいじるようになって接してみると案外,こちらの方が理にかなっているのではないだろうかと考えが変わり始めている。

 根拠については頭の中でうまく整理できていないが,機械屋の直感みたいなものでスチコンの加熱系統をホットエアーとスチームで独立させておく必然性は非常に乏しいのだ。大体,コンビスチーミングの運転モードであってもホットエアーとスチームは切り替え運転されているだけであって同時稼働しているわけではない。

 国内製ではまだ大半がジェネレーターを内蔵させた形式の製品を製造し続けていて,営業の場面ではインジェクション方式には否定的なコメントが多く聞かれると思う。しかし現場を見続けてきたものとしては,例えば朝から深夜迄稼働し続けるような生産工場でもない限り,恐らく過半数のユーザーにとっては安価なインジェクション方式で用は足りそうに思う。
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洗米器ミステリー(1) [修理屋から見た厨房機材]

 業務用の厨房機材のうち、一刻も早くこの地球上から滅亡してほしいもののうちの一つに洗米機という物体がある。
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 読んで字の如く、米をとぐ道具である。給水圧によって筐体内部のタンクとドラフトパイプに水と米とを循環させることで米を磨ぐというものだ。管末の給水圧力が不足している場合にはドラフトの循環が起こせないので内部に循環用のポンプを組み込んだ機種を選定する。おそらく考案されてから既に40年くらいは経つのではないだろうか。前世紀の遺物とはこのことであって、もはやこんな機材が市場に生き残っているのは相当に変な話なのだ。理由を以下列記する。

(1)現在の精米技術は40年前に比べれば言うまでもなく進歩している。私事だが自炊の毎日であるこの俺が日々経験していることなのだから間違いない。米のとぎ汁の色は二昔くらい前に比べると全然色が薄い。精米時点でぬか成分がかなりの程度除去されていることになる。うるさいことを言わなければ米などとがなくても問題なく食えるほどなのだ。

(2)そうはいっても磨げば白濁したとぎ汁は出るのだが、排水配管の詰まりの原因が米のとぎ汁に含まれている糠によるケースが多いのは一体どれくらいの人が認識しているだろうか。更に言えばドラフト式の洗米器は洗米中にうっかりバルブを誤操作して米を排水配管に流失させてしまい配管を詰まらせる事故も稀に起きている。復旧作業はとんでもなくお金も時間もかかる。

(3)そもそも、昨今は無洗米が随分普及しているではないか。そうでなくても食品の設備など予算がケチられる格好の対象なのだから洗米器など最初から買わずに無洗米を使えばいいのだ。

(4)ただでさえバカぞろいの日本の厨房機器業界が考案した洗米器で、しかも原型は40年以上も前に発案されたものだ。日常のメンテナンスなどは全く考慮されていない。6,7年も使ってみると循環経路には米ぬかが堆積し、バルブ周辺など掃除できない箇所には糠の黴びた真っ黒いスラリー上の異物がべっとりとついてひどい腐敗臭がするのを見ることが大変多い。ドラフトの水流に混入していつ米に混じってもおかしくない、不衛生なことこの上ないのである。日本国中至る所、こんな状態で使用されているのはザラだ。

 特に(4)については、給水の直圧を利用する形式ならまだ何とか分解清掃が可能だが、ポンプアップによって循環させる形式の洗米器となるとほぼ絶望的だ。ポンプのインペラーやケーシングなど、掃除しきれない箇所が数カ所ある。
 カビの発生は初期のうちならまだ手の打ちようはあるが、客の多くはバカな上にケチなので分解清掃の提案をしても金欲しさの詐欺話だろう、といった受け止め方でおよそ取り合ってくれないことが殆ど全てだ。磨いだ米に黒カビが混じるようになり、喫食者から苦情が出てから初めてなんとかしてくれと慌てて泣きついてくる。バカはどこ迄行ってもバカである。
 泣きつかれてからやおら分解を始めてみると殆どの場合もう手の施しようがないことが多い。『だから言わないこっちゃない』と内心ぶつくさ言いながら異臭に顔をしかめての作業となる。全く日本国中津々浦々、こんなもので磨いだ飯を食いながらグルメ気取りであーでもないとかこうでもないとか色々ほざくバカが多いのには全く笑える。
 それでここしばらく、俺は修理ではまることが多いのだが、今回はこの洗米器、こんな単純明快な構造の機材に一体どうしてこんなに手こずるのかと自己嫌悪に駆られるのだが恥を忍んで、備忘録的に以下続けることにする。(続く)
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スチームコンベクションオーブンのことなど [修理屋から見た厨房機材]

 スチームコンベクションオーブンはたいした普及ぶりだ。15年と少々前にこの機器が新製品として扱われ始めた頃は一体どんなことに活用して良いのか見当もつかなかったが、今ではちょっとまとまった調理量が予測される施設では当たり前のように原設計に組み入れられるし単品購入の問い合わせも増えた。
 これでホシザキあたりが自社製品を開発して販促に乗り出せば文字通り一件一台現象でも起きるんだろう。(使うんだか使わないんだかわからないような人たちまでもが押しまくりの営業に音を上げてリースの契約書にはんこをつく出来事を俺は勝手にこう名付けた)

 ところで昨日、プリンターのインクが切れたので近所のヤマダ電機にふらりと入ってみたのだが、なんとなく電子レンジのあるあたりを横切ったときに家電製品のスチームコンベクションがどえらい普及ぶりであることを知った。

 機能として業務用と全く変わらないのかどうかは勉強不足のため不明だが、驚くべきはその実売価格だ。これだけのものが実売価格5万円強というところが何と言っても凄いではないか。厨房屋の口車に乗せられてリースの契約書にはんこをつき、5年か6年支払いに拘束されている人たちのうち少なくとも3割くらいはこういう家電製品で事足りる人たちだろうと俺は見ている。しかし現実問題として、外食産業の現場で一万円くらいの電子レンジを見かけることはあっても家電メーカー製のスチームコンベクションを見ることはない。

 常々、外食産業のバイヤー達は本当に勉強不足のバカが多いと俺は思っているのだがきっと彼らの頭の中はオーブンレンジくらいで時計が止まっているのだろう。とにかく外へ出て何かを調べるということを面倒くさがる奴が多い。
 とにかく自分の仕事場でふんぞり返って、訪れる厨房屋の営業マンに揉み手と甘言令色で丸め込まれて契約書にはんこをつき、ろくすっぽ活用もしないでやれ経営が厳しいだの売り上げが上がらないだのとぼやく姿は正真正銘のバカだ。
 言い換えればこういう怠慢なバカ達のおかげで厨房屋の売り上げの結構な割合が形成されているということにもなる。

 翻って製造側だが、製造業の空洞化だとか何とか言われているがやはり日本の家電製造業界は凄い。家電製品を業務用として使用した場合、製品保証は無効となるがそれでも製品の品質は業務用機器など足元にも及ばないくらい高い。
 どこか一社でも良いが、家電メーカーが本腰を入れて業務用食品機械を製造するようになったら既存の厨房機器メーカーなどひとたまりもないはずなのだが現実にそういうことは起こっておらず、またその兆しもない。

 仮に家電メーカーの業務用への参入が本格化しても、おそらくそれは成功しない。したとしても現在の電子レンジやオーブントースターのように、施設がオープンしてから追加購入される単品アイテムの域を出ないだろうと俺は見ている。
 本来であれば優秀な製品を製造し、市場参入を果たすであろう家電メーカーの出鼻をくじいているのは皮肉なことに、粗悪品を乱造して裏道商売を続ける業務用メーカーに目隠しされ続けることを疑問にも不思議にも思わないバカなバイヤー達だとここでは断言しておく。


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責任区分 [修理屋から見た厨房機材]

 私が生業としている食品機械とか厨房機材というのは当然ながら設備機器であり、それらの多くは据え置いた状態で運用されて移動はしない。更に言えばそれら多くは電気や蒸気、ガスや給排水、給湯の接続がなされているので、私の行動の起点はまず障害の連絡があったときには「その設置場所まで出向く」事である。

 あまりにも当然な話だが、機械というのは外部から何らかのエネルギー供給を受けない限りは単なる物体でしかない。

 全く動作しないとか、蒸気や水がバンバン漏れているケースで最初に確認すべき事項は、
(1)運転条件を満たすサプライ、とここでは便宜的に書いておくが、要するに電気やガス、水などの供給が正常であるかと言うことと
(2)障害の発生している箇所がどこであるかの特定
となる。

 責任区分点という言葉は私が日頃勝手に決めている不文律だが、機械の修理屋の守備範囲はどこからどこまでかの線引きである。

 設備系統上、私が決めているのは
(1)電気についてはコンセント、及び最終開閉器以降。
本体内部の制御パーツとしての開閉器は含まず、建築物に取り付けられている開閉器である。
(2)ガス、水、蒸気などのサプライ(供給)配管系統については直近のバルブ以降。
(3)ガスや蒸気のリターンなど、排出されるものについては直近の配管接続箇所まで。

明文化された定義はないが、これらは新築工事における電気設備、機械設備(所謂サブコン)と機材納入業者との施工区分でもある。

 立場の優劣を意味するものではないが、ユーザーは機械を使いたいのであって建築構造体や配管や電線を使いたいわけではない。しかしながら実際の建築工事に於いては

       建築工事>機械設備工事、電気設備工事>機器類 

 という力関係は厳然として存在し、ポジションが入れ替わることは200%ない。
引き渡しが済んだ後の運用開始後の障害は末端機器に現れることが多い。それらの理由の大半は機器類の出来が粗悪なせいだ。

 改めて書いておくが、国内製の業務用厨房機材などというのは日本国の製造業における最も低劣極まりない水準を体現している。それらは既に工業製品とは言い難い代物であって、殆ど鍛冶屋、板金屋の独りよがりな工作物と言って良い。
 系統の末端に位置するせいでもあるが、そういうわけで何か障害が発生すれば多くの場合、修理コールはまず最初、機器類の納入業者のところに来る。

 ごく稀にではあるが、障害の現場を訪問して状況を確認すると、電源電圧が低いとか、排水本管が詰まっていて流れないとかの事象に出くわすときがある。
 不具合は機材の納入業者の責任区分を外れたところで発生しており、問題を解決する責任もその能力も修理業者にはないのだが多くの場合ユーザーは殺気立っており、「おまえが何とかできんのか」のプレッシャーがかかる。
 人情としては何とかしてあげたい気持ちは勿論あるが、出来ないことはやっぱり出来ないし、また、安易に請け負うべきでもないと考えている。

 機械内部の機構や構造と建築物に付帯した周辺環境の知識は全くの別分野であってこれらの両方に精通した修理屋というのはいないと言って良い。そこまでの総合能力があればその人は既に厨房機材の修理などというロクでもない業界には身を置いていない。もっと良い就労条件で別の業種に転職しているのが殆どだ。

 現実問題として悩ましいのは、こうした修理依頼があって現場に到着してから原因が責任区分点を外れた箇所で起こっていることが判明した場合である。人が動けばコストは発生するし、其処には時間も労務も費やされているのでなにがしかの請求をさせて頂きたいところだが、ユーザーの気持ちとしては障害が解決されもいないのに請求書が発行されるのは納得できないのだ。
 結果として修理屋が泣き寝入りのケースがほぼ100%である。ガソリン代さえ請求できない全くの徒労だ。困ったものですな。


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