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出来がいいから売れるとは限らない話(1) [修理屋から見た厨房機材]

 不幸な製品のことを書く。幸福が決して一面的なものではないように不幸もまた多面性を持っている。誰かさんにとっての幸福が別の誰かにとっては不幸であるという局面もいっぱいあります。
 
 「食器洗浄機」という厨房機器があります。責務は呼んで字の如し。大から小まで色々ありますが、このエントリーで私が書きたいのはこんな格好をしています。
 製造元は石川島播磨重工業、 略してIHIとも呼ばれます。ちょっと意外に思える方も多いでしょうがこういう製品を造ってもいるのです。

 食器洗浄機が本格的に普及したのはバブル景気の時期だったと憶えています。3Kなどという言葉が生まれたのもこの時期だったかな?皿洗いなどという仕事は手は荒れるわ腰は痛くなるわ時給は安いわでまさに典型的3K。他にもっといいギャラのお仕事なんて沢山あったのでなり手もなかなか見つからないし、外食産業のオーナーさんたちは金回りも良かった時期なので(融資なんてどこでも朝飯前だったっすよね)
 「えーい、そんなら手洗いなんてやめて食器洗浄機を導入しちゃおう!人手不足もこれで解消できるしなあ!人件費は浮くわ文句も言わずに皿は洗うわで一石二鳥だわい」と、あちらもこちらもでっかいシンク(流し台のことです)を放り出して導入したのでした。
 ところで件のIHI 、型式はJWD-6という機種ですがそんな時期にあって、どこのメーカーにとっても食器洗浄機は当時ドル箱商材であったにも拘わらず、私の記憶ではあんまり好調な売れ方ではありませんでした。バブルがはじけてからの不況においては尚更です。
 その原因を端的に言えば、市場での競争力に欠けました。この業界における競争力とは、殆どの場合値段が安いことと営業の声がでかくて面の皮が厚いことでしかないのですが、残念ながらどちらもイマイチだったのです。
 私なりに、当時から現在にかけて、競争力に欠けた要因を掘り下げてみると
(1)値段が高い:こういう形の食器洗浄機は本体、ラインポンプ(すすぎ用のポンプ)、ブースター(すすぎ湯用の湯沸かしのこと)がワンパッケージになっていたものが一般化しつつあったのに対し、JWD-6はそれぞれバラバラに購入しなければならず、機材の代金が高上がりにつくばかりでなく、配管接続工事の代金が跳ね上がる。
本体はと言えばもう30年以上前の設計機体なのでとにかく重厚長大主義で頑丈一点張りのオーバースペック。
(2)スペースファクターが良くない:ワンパッケージでないだけに配管スペースを取る。従って一体型に比べると下洗い用のシンクボウルの容積が稼げない。
(3)営業の押しが弱い:製造元が製造元だけに仕方がないです。食器洗浄機が売れないからと言って会社の屋台骨が傾くわけはありませんし、どっかの会社と違ってしらみつぶしに飛び込み営業して頭を下げまくるわけもありません。「まーウチも汎用機はやってますよ。欲しかったらどうぞよろしく」という感じもチラチラしますです。
(4)機能が貧弱:洗浄時間の切り替え機能がない、本体タンクの初回給湯は手動、
洗浄終了のアラーム機能がない、ボックスの中が見える窓がない、等。なにぶん、食器洗浄機が本格普及する遙か以前の設計であり、電装系などはその辺の電材屋で手に入る汎用パーツばっかりで出来上がっているので大して多機能でもないのに大作りになってしまったりする。 

 さはさりながら、世間には酔狂、おっと失礼、機械を見る目のある人はやっぱり幾らかはいるもので、この製品は「値段が高かろうが場所を取ろうがウチはこれ以外の洗浄機は絶対ダメ!」という方々が確実にいるのです。
 まー、値段が高ければいいとは言いませんが、高価な製品にはやはり、高価なだけの裏付けがあると思いたいものです。そして高価を承知で導入されたユーザーのうち、私のお世話になったあるユーザー様の事例を次回はちょっと書かせてもらっちゃいます。(この項続く)


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