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蒸気三重釜修理の苦しい裏技 [修理屋から見た厨房機材]

 随分長い事更新をさぼり続けたのは俺が元々根気がなくだらしない人物である事を物語っている。

危機意識が乏しい上に怠け者なので、余程金銭的に逼迫してこないと勤労意欲が湧いてこないのは我なら困ったもので,ここしばらくは久しぶりに目の色を変えて働いていたのですよ。他人様にはどうでもいい事だが。

 野良犬稼業なので変な依頼が結構多い。メーカー様が匙を投げたような内容のものもあるし,持ち主のスケベ根性で一円でも安く修理代を済ませたいがために来る依頼もある。色々な意味で,イレギュラーな出来事をこなすのが俺のような立場の役どころなのだろうと思っている。
 備忘録的に最近の作業を一つ書いておきたい。

 長年俺が出入りさせていただいていた某総合病院は昨年,調理業務を外部業者への委託に切り替えた。外部委託業者には北沢産業という由緒正しいお取引先があるので当然,俺のようないかがわしい宿無しはお払い箱となった、とばかり思っていたら思いのほか,この外部委託業者からの依頼が多い。

 先月,この某総合病院で蒸気三重釜のハンドルがぶっ壊れた。病院は築28年にもなる老朽施設で,この三重釜はなんと病院建設時に設置されたものを今に至る迄使い続けていたものだ。この間,俺は随分色々な修理をした。
 蒸気三重釜はこういう格好をしている。学校の給食室などでよく見かけるあれだ。
img24.jpg

 さすがに28年も使うとハンドルに組み込まれているウォームギヤが減ってきてティルト(傾斜)動作の際に空転するようになってきたというわけだ。
 これは数年前からの懸念材料であって,調理業務の外部委託以前から数年にわたって俺は病院に対して,修繕の予算要求を上げ続けてきたが、調理室内の設備機器を委託業者に譲渡する予定であった病院としては近々所有権を失う機材になどなるべくならば修繕費は掛けたくないというケチな目算があったためだろうが俺の進言は撥ね付けられ続けてきたのだった。
 外部委託業者にとってはとんだ付録付きの機器譲渡だったわけだ。

 写真の機種とは違うが,この蒸気三重釜の製造元は服部工業という。
http://www.hattorikogyo.com/

 以前,ハンドル(ウォームギヤ)の交換修理見積を病院宛に作成した時,服部工業からのバーツ単価仕切りはおよそ¥35000くらいで、俺は大体六万円強の積算金額で見積書を作った。
 今回,同じつもりで以前の見積金額と同内容のものを外部委託業者宛に提出すると比較的簡単に決裁がおりたので手配に取りかかったのだが,念のため紹介した金額を聞いて俺はひっくり返りそうになった。ハンドルの価格は俺の仕切りがなんと¥88000にもなるという,これは一体どうしたわけだ,俺は気色ばんで服部工業に問い合わせた。
 メーカーの返答では¥35000というのは現行製品に使用されているハンドルの仕切り価格であって問題の機体は28年前のものなので互換性がなく,当時の仕様のハンドルは¥88000なのだという。
 これは一にも二にも俺が迂闊だった。数年前,最初の見積書を作成する時点で機種や製造年度をきちんと調べておくべきだった。全く俺はいつもどこかが抜けている。

 冷や汗を流しながら俺は考えた。
赤字を覚悟でお仕事をするほど俺は金満体質ではないのだ。
修理見積を上方修正して、事の事情を説明すべきだろうか・・・

俺は更に考えた。
問題の機体は実に28年,継続使用されてきたものだ。
ハンドルはこれ迄,何度もマイナートラブルを起こしてきたが、これ迄交換歴はない。
機体全体がガタガタに老朽化している現状で,28年もの耐久性を持つ正規のハンドルに取り替える事には無駄があるのではなかろうか。何となれば,仮に5年後,蒸気三重釜を新しいものに更新するとすれば現行製品とは互換性のない高耐久のハンドルが無駄になりはしないか・・・など。

幸い、外部委託業者は修理金額の上方修正もやむなし,との結論を出していただいたが、修理屋としての俺の本能みたいなものはなんだか割り切れないものがあったので俺は更に考えた。

で,俺の結論は、機体を一部改造して安価な現行製品用のハンドルを取り付けるというところに落ち着いた。

 旧タイプのハンドルは軸受けにボールベアリングが使われているなどハイスペックであるのに対し,現行品は軸受けが単なるメタルであって,たとえばこういう作りの差が価格差でもあるわけだがその分パーツとしての耐久性がない。
 ないとはいっても病院給食での通常使用でいえば十年かそこらくらいは持ちこたえる,というのが俺の経験則なのであとは蒸気三重釜本体の改造などという事が実際可能なのかどうかが問題となった。
 メーカーである服部工業は当然ながらそんな実例はないと言ったが俺はなんとかしてやりたいのだ。
結局,やってやれない事はないかもしれないがあくまでも自己責任でどうぞ,というのが服部工業の態度で、一度使用したパーツの返品はききませんからと釘を刺された。当然だが。

 かなりギャンブルめいた作業となったが結論を先に書いておく,改造は成功した。
初めてのせいもあって色々手探りが続き,時間を食ったがともあれ改造は成功したのだった。
正規の修理であればおよそ¥110000くらいにはなっただろうが改造費用を含めて¥70000を少し割る程度の補修費で今回の問題は片付いた。
 改造後も使用感は以前と変わらないとのご返事を現場の方からは頂いたので,代金は安く上がったし俺の利益も確保されたしで,俺は結構いい気分になっているのである。

 どうせ誰の役にも立たないだろうが,浮かれついでに改造手順をいずれ画像込みでアップしてみたい気がするが,服部工業にしてみれば愉快な事ではないに違いないので決めかねている。
 ただ,改造でも何でも自己責任でどうぞ,という姿勢自体はバカな福島工業あたりとは違って大人の態度というか、俺のような野良犬稼業にとっては大変有り難い。
 

 
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