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大企業が作る食品機械のこと [修理屋から見た厨房機材]

 とある得意先からソフトクリームフリーザーのリプレースについて相談を受けている。
俺がネット上で見つけた三洋電機製の中古機で8年落ちの製品を今は使っており,昨年俺が軽い整備をした機体だ。
 得意先が仰るには購入価格が安かった事もあって,昨年一シーズンでイニシャルコストはすっかり取り返してしまい結構利益が出ているらしい。
 店舗全体の売り上げも右肩上がりでドンドン伸びているので税金対策もあって設備投資を検討しているという。今のご時世,俺のような貧乏人からすれば何とも羨ましい限りの話だ。

 俺個人は昨年、せっかく自分が整備したので今の機体を使い続けてほしいが一つ問題がある。使用している冷媒がTP5R2なので冷媒管系統の故障があった場合補充用の調達に往生してしまう状況があり得る。
 まあ,製造元を問わずソフトクリームフリーザーは冷蔵庫とは違って冷媒管系統の故障発生率は物凄く低いのであまり心配する必要はないのかもしれないし、万が一そのような事態が発生したにせよここでは書けない裏技で切り抜ける事も出来なくはなさそうではある。がしかし,出来るものならやはり修繕は工場出荷の状態になるべく近い形で復旧させたいのが修理屋としての本心だ。

 将来的なサポートの事はさておき,リプレースする場合の候補の事を暇に任せてあれこれ考えた。
俺自身は三菱重工の製品でソフトの修理を覚えた口であって三洋の製品には実は今でも少々違和感が払拭しきれない。輸入機械は優秀だがカルピジャーニのフリーザーは俺が駆け出しのあんちゃんだった頃血も凍るような恐ろしい目に遭った事があるのでこれまた拒否反応が出てしまう。
 日世はコネクションがないし東芝は玩具みたいな小型機しか作っていない(それももう生産終了しているか)となるとやはり選定は三菱重工へと流れていく・・・
 と思ってホームページを見ていたら何と,製品のラインナップは現在壊滅状態ではないか。
http://www.mhiair.co.jp/contents/06-business/06-07_02.html

 HPが更新されていないだけなのか,それともこの事業部門からは手を引く事にしてしまったのか、後の方だとすると少々寂しい話ではある。
 寂しい話と言えばIHIが食器洗浄機の製造から手を引いた。もう20年以上,IHIの食器洗浄機は俺の一押しメーカーだったので昨年終わり頃にそのアナウンスを聞いたときには大変悲しい気分になったものだ。
 石川島播磨重工業が食器洗浄機を製造している,と聞くと意外に受け止める客は意外と多いが同じような意味で三菱重工がソフトクリームフリーザーを製造している事も案外知られていないかもしれない。どちらもその分野では老舗中の老舗、日本での先駆者なのだが。
 まあどちらも,年商何兆円の超大企業なので厨房機器メーカーなんぞとは当然ながらスケールが桁違いだ。食器洗浄機だのソフトクリームフリーザーだのは自社で製造している事さえ知らない社員がワンサカいるのではないか。事実,俺の学校の先輩と数年前,20年ぶりくらいに再会したとき、三菱重工の社員で発電プラントが専門分野であるその先輩は自社でソフトクリームの機械を製造している事を全く知らず、大いに驚いていた。

 石川島にせよ三菱重工にせよ,船舶を造るのをやめるだとか宇宙開発をやめるだとかいうのならいざ知らず、厨房業界みたいにチンケなところから手を引いたところで屁でもないのは間違いない。
 
 大企業が造る業務用食品機械,というとあと三つばかり心当たりがある。
一つ目は横河電機の食器洗浄機,機械の出来としては石川島に比べると数段落ちるがホシザキを含めて厨房メーカーの製品に比べれば格段に上だ。
 http://www.yokogawa.com/jp-ydk/kf/chubo/index.htm

二つ目が東芝製のティーサーバーで、実際には鳳商事ブランドで出回っている事が多い。これは結構ポピュラリティがありそうだが厨房機材の枠内には治まりきらない面があるのでこの話題からは外してもいいかもしれない。

そして三つ目、日立製作所の食肉加工機器だ。これは厨房業界の人間でも知らない人が物凄く多いと思う。
lsm33fh2.jpg

 大企業,重工業の製造する食品機械の,ある種極めつけかもしれない。食肉加工関連というと厨房屋的には南常鉄工,ワタナベフーマック,日本キャリア工業,というところが業界内での通り相場だが食肉加工でも厨房屋には縁がないような大規模施設では日立が厳然たる一角を成しているのだそうだ。
 確かに過去,仕事に行った事のあるハンナン関連の生産工場では日立のミートスライサーが何台も凶暴そうな丸刃をぶん回していたっけな。機械としての評価はナンバーワンだと以前誰かから聞いた。

 こうして並べてみると大会社の造る業務用食品機械の共通項に気づく。
1:品質はナンバーワン
2:値段もナンバーワン
3:担当社員の態度がでかい(特に三菱重工!)
4:会社全体から見ると鼻糞以下の事業規模

 横河の食器洗浄機を扱った事はないがIHI,三菱重工,日立と商売の作法でいずれも共通するのは「売ってください」ではなくて「売らせてやる」風の物腰。
 厨房業界はいいものだから売れるなんていう真っ当な世界ではない。箸にも棒にもかからないようなクソ商品でも,とにかくでかい声を出して大風呂敷を拡げ,安い見積りを書く奴が勝つのだよ。(どことは言わないけどな)
 日本国を代表するような重厚長大の一流企業手仕舞いにかかった本当の理由はこの業界の低劣さに呆れてしまったというのが真相なのじゃなかろうか。どう考えてもカルチャーが違い過ぎる。


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くるみ

ソフトクリームの機械…過去に携わるお仕事した事ありますが耐久年が冷蔵庫より長いとは知りませんでした。手入れはとても大変でしたが(^^; 業務用食品機械の共通項、1、2だけなら納得いきますが、それ以降の事はかなり理不尽ですね!大規模な会社になる程 そうなるのは仕方ないのでしょうか(;o;)
by くるみ (2011-03-13 00:12) 

HarryTuttle

 くるみ様,コメント有り難うございます。
私は色々と憎まれ口を叩きますが反面,ここでは詳述しませんが大企業には大企業なりの良さがあるのも事実です。
 厨房業界は全部の会社を足し算しても年間四千億くらいの市場ですが、三菱重工は年商三兆円,日立製作所に至っては一社で年商十兆円を超えるのですから社員の意識や企業のカルチャーは違おうというものです,繰り返しになりますが優劣とか上下を私は語っていません。何せ,違うのです。

by HarryTuttle (2011-03-16 00:06) 

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