SSブログ

責任区分 [修理屋から見た厨房機材]

 私が生業としている食品機械とか厨房機材というのは当然ながら設備機器であり、それらの多くは据え置いた状態で運用されて移動はしない。更に言えばそれら多くは電気や蒸気、ガスや給排水、給湯の接続がなされているので、私の行動の起点はまず障害の連絡があったときには「その設置場所まで出向く」事である。

 あまりにも当然な話だが、機械というのは外部から何らかのエネルギー供給を受けない限りは単なる物体でしかない。

 全く動作しないとか、蒸気や水がバンバン漏れているケースで最初に確認すべき事項は、
(1)運転条件を満たすサプライ、とここでは便宜的に書いておくが、要するに電気やガス、水などの供給が正常であるかと言うことと
(2)障害の発生している箇所がどこであるかの特定
となる。

 責任区分点という言葉は私が日頃勝手に決めている不文律だが、機械の修理屋の守備範囲はどこからどこまでかの線引きである。

 設備系統上、私が決めているのは
(1)電気についてはコンセント、及び最終開閉器以降。
本体内部の制御パーツとしての開閉器は含まず、建築物に取り付けられている開閉器である。
(2)ガス、水、蒸気などのサプライ(供給)配管系統については直近のバルブ以降。
(3)ガスや蒸気のリターンなど、排出されるものについては直近の配管接続箇所まで。

明文化された定義はないが、これらは新築工事における電気設備、機械設備(所謂サブコン)と機材納入業者との施工区分でもある。

 立場の優劣を意味するものではないが、ユーザーは機械を使いたいのであって建築構造体や配管や電線を使いたいわけではない。しかしながら実際の建築工事に於いては

       建築工事>機械設備工事、電気設備工事>機器類 

 という力関係は厳然として存在し、ポジションが入れ替わることは200%ない。
引き渡しが済んだ後の運用開始後の障害は末端機器に現れることが多い。それらの理由の大半は機器類の出来が粗悪なせいだ。

 改めて書いておくが、国内製の業務用厨房機材などというのは日本国の製造業における最も低劣極まりない水準を体現している。それらは既に工業製品とは言い難い代物であって、殆ど鍛冶屋、板金屋の独りよがりな工作物と言って良い。
 系統の末端に位置するせいでもあるが、そういうわけで何か障害が発生すれば多くの場合、修理コールはまず最初、機器類の納入業者のところに来る。

 ごく稀にではあるが、障害の現場を訪問して状況を確認すると、電源電圧が低いとか、排水本管が詰まっていて流れないとかの事象に出くわすときがある。
 不具合は機材の納入業者の責任区分を外れたところで発生しており、問題を解決する責任もその能力も修理業者にはないのだが多くの場合ユーザーは殺気立っており、「おまえが何とかできんのか」のプレッシャーがかかる。
 人情としては何とかしてあげたい気持ちは勿論あるが、出来ないことはやっぱり出来ないし、また、安易に請け負うべきでもないと考えている。

 機械内部の機構や構造と建築物に付帯した周辺環境の知識は全くの別分野であってこれらの両方に精通した修理屋というのはいないと言って良い。そこまでの総合能力があればその人は既に厨房機材の修理などというロクでもない業界には身を置いていない。もっと良い就労条件で別の業種に転職しているのが殆どだ。

 現実問題として悩ましいのは、こうした修理依頼があって現場に到着してから原因が責任区分点を外れた箇所で起こっていることが判明した場合である。人が動けばコストは発生するし、其処には時間も労務も費やされているのでなにがしかの請求をさせて頂きたいところだが、ユーザーの気持ちとしては障害が解決されもいないのに請求書が発行されるのは納得できないのだ。
 結果として修理屋が泣き寝入りのケースがほぼ100%である。ガソリン代さえ請求できない全くの徒労だ。困ったものですな。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。