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しばらくぶりにFTXをいじり始める [修理屋から見た厨房機材]

 2年ほどの間,某病院の栄養科の修繕の依頼が途絶えていた。患者給食の調理業務を外部委託に切り替え,委託業者のお抱え厨房屋が随分色々と機材をリプレースしたので俺の出番はなくなってしまったというわけだ。

 しかし二年の間には色々あるようで,どういう風の吹き回しかその某病院に限り,委託業者持ち込みの機材を含めて修繕には再び俺が当たる事になった。労務だけを見る限り以前の様相に戻りつつあるわけで請求先が病院から某委託業者に変わった事になる。

 委託業者のお抱え厨房屋について現場としては結構不満があるようだがそれはさておくとして,以前俺が会社員だった頃納入した食器洗浄機はホバートFTXに更新されていた。稼働歴は10年ほどで搬送系の軽整備を一度行えばまだまだいけると俺は思っていたが委託業者様は余程リッチなのかはたまたお抱え厨房業者様の営業手腕が余程のものだったのか,何せ俺の住む田舎町ではなかなかお目にかかれない機体が収まっている。
FTX.jpg

 場所は病院で,ベッド数がかなり多く,建物の築年数もそれなりに古い。となると容易に察しがつくように熱源は蒸気だ。
 ドイツホバートで蒸気加熱というのは過去に於いて心当たりがある。
以前俺が出入りさせて頂いた事のある某製菓メーカーの工場にはコンテナーの洗浄用としてUWXというコンベアータープの容器洗浄機が収まっており,俺は数年間,その機体の修繕をしていた事があるからだ。確か当時は日本では唯一の機体だった。
 機体内部に直圧式の熱交換器を内蔵し,温調は電磁弁で行っていた。本体タンクの加熱はスチームコイルで行っていた。
 UWXはFTXの拡大版であり,タンク一個に上下独立でFTXと同等のポンプが二発,スチームコイルも二組という構成だった。俺がサポートしていた機体は2タンクだったので本体タンク用のスチームコイルが合計4組となり蒸気配管は恐ろしく入り組んでおり、更におっかない事に,というか内部配管だから仕方がないが配管はむき出しで保温されていない。だから俺の腕のなさもあって修理のときには必ず二の腕のどこかが火傷を負った。

 そしてこの,蒸気配管からはひっきりなしに機体内の至る所で蒸気漏れが起きた。正直なところ,ドイツ製の食器洗浄機という奴はホバートに限らず構造に首を傾げたくなるものが多い。UWX(FTXも含めて)の内部蒸気配管は袋ナットで接続されており,当時はゴムパッキンを介していた、蒸気配管の接続がだ。
 これはもう,教科書的な意味合いからすればかなり危なっかしい設計で,稼働後幾らも経たないうちに蒸気漏れが起きるのは火を見るより明らかだ。

 今般俺が担当するようになったマイナーチェンジ後のFTXでも同じようなことは稼働後2年弱で起き始めたらしい。
 機体内のあちこちから蒸気が漏れる。御用達厨房屋さんが都度修繕にくるが幾らも経たないうちに同じところからまた漏れ始める。その度に修理代金の請求が上がってきてこれがまたなかなかバカにならない金額らしく,委託業者の現場サイドでもいい加減業を煮やして修理業者の切り替えに踏み切る事となり,俺にお呼びがかかった次第だ。

 おっかないような懐かしいような気分で外装板を取り外してみると見覚えのある内部配管にご対面と相成った。マイナーチェンジ後の変更点として配管種別としてはロックナットも含めてステンレス配管となり,パッキンはゴムからテフロンに変わった。
 テフロンパッキンとはまた剛毅な事で,という事にはならない。確かに以前のゴムパッキンは送汽を行うと幾らも経たないうちによれてしまい,一度接続か所を分解すると使い物にならないような事が多かった。だから耐熱性だけに限定すればテフロンは確かに大変優れてはいる。
 しかし反面それは可塑性に乏しいので、ただ締め付けただけではなかなか馴染んでくれない。給湯管には最適だが蒸気用となると俺には疑問だ。ましてや合わせ面にはシール剤が塗られていない。
 おまけにサプライ側の管種がステンレスと来た。蒸気配管でステンレス管を用いるのは耐食性を求められるリターン側であって線膨張率の大きいステンレス管は熱膨張によるゆるみが懸念されるので俺の知る限りではサプライ側に用いられる事がない。

 実際,蒸気漏れの起きている接続箇所は袋ナットが手で回るくらいのユルユル状態となっており、配管構成を見れば起こるべくして起こっている事なのだが,得意先に言わせればこれまで何度も御用達厨房屋さんが増締めを行っているという。(しつこいようだが,都度請求書が上がってくるらしい)
 
 本筋からいけば,根本的な解決策としては送汽時の配管膨張を緩衝するためのセクションを設けたいところだが何せ狭い機体内なのでそのような造作が出来るスペースはない。サプライ側は低圧蒸気なのでステンレス配管をやめていっそのこと一部スチームホースでの接続ではどうかとも思案したが元々用いられているのが急角度でベンドさせた内製の継ぎ手なのでこれも物理的に収まらない。
 結局,お為ごかしみたいな処置で心もとない気もしたが接続用のテフロンパッキン両面に耐熱性のシリコンを塗り,袋ナットのねじ込み部分のネジ山にもシール剤を塗る事で様子を見る事にした。
 目下のところ俺の処置は某お抱え厨房屋さんよりは長期的な効果があるようで今のところ同一箇所からの漏れはないらしいので、一匹狼気取りの俺としてはちょっと溜飲が下がって悪い気はしない。

 しかしお客さんとしてはこれまでに要した修理費用について癪に障るところがあるらしい。何度も脚を運んで同じ事を繰り返すばかりで打開策を講じられずにいた事の代償を求める,と息巻いている。
 それで俺は,この件に関して修理作業の詳述と蒸気配管接続に関するあれやこれやの約束事をドキュメントとして作成し、提出する事を依頼されてしまった。それを根拠にお抱え厨房屋さんに対しては修理代金の払い戻しを求めるというのだ。
 今後のお仕事の事を勘案すると,俺はここでこの委託業者様に対してポイントを稼いでおきたいのはやまやまなのだが反面,某お抱え厨房屋様からは逆恨みを買いそうで大変複雑な心境にある。







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コメント 3

NO NAME

FTXの予備すすぎ(プレリンス)のポンプは直ぐにごみやスケールが詰りませんか?(得意先にあるのは前期モデルなので最新型はどうか知りませんが・・・。)

蒸気はバルブ・電磁弁・減圧弁等あちこちからすぐに漏れるので苦手です。
交換後、最低3年位は持ちこたえて欲しいものです。
by NO NAME (2010-01-12 19:54) 

HarryTuttle

NO NAME様 コメント有り難うございます。
仰る通りで困り者ですね。固形物が混入してインペラーがロックし,コイルが焼けた場面を目にした事もあります。
 そしてその他,ウィンターハルターやマイコなどのメーカーも同様ですが私がこれまで見た事のあるドイツ製はどれも循環すすぎでこの形式を採用しています。私は全然いいと思えませんが,何が何でも消費水量は押さえ込まなければならない事情があるのだそうですね。

 蒸気熱源の機器は手もかかりますが,そもそも設計,製造する側が蒸気配管の何たるかを分かっていないのが原因である事が結構あるように思うのです。まあ,私のようなものにとってはそこが飯のタネでもあるわけですがw
by HarryTuttle (2010-01-13 10:30) 

NO NAME

外国製は初めて見たときに使い方が判らない場合があるから困ります
マイコのアンダーカウンター、ウィンターハルタの容器洗浄機なんてユーザー様に聞かなければ判りませんでしたよ
by NO NAME (2010-01-13 19:40) 

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