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見た事のないミキサー [修理屋から見た厨房機材]

 得意先の病院からミキサーの修理を依頼された。調理師長の私物で、使用中にモーターかなにかが焼損したらしく焦げ臭い匂いがして煙が上がったので今後の使用に耐える者かどうか調べてみて欲しいとの事だった。製造元も何も分からないまんまにひとまず調べてみましょうかと生返事で引き受けて訪問すると取り出されたのは家電製品みたいにスタイリッシュな物体だった。

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 デロンギというメーカーの製品らしい。俺には全く予備知識がなく、見るのも触るのも初めてだ。
ボウルの容量は3,4リットルくらいだろうか,日本製でいうと家電製品にしては大きく,業務用にしては小さい。欧米の家電製品だとありそうなサイズのミキサーなのだが。

 分解には大いに手こずった。特にヨーロッパの製品には家庭用,業務用を問わず言えるがとにかくビスだとかボルトが露出しないように出来ているのでどこから手をかけていいのか考え込む事で最初の数十分が虚しく費やされる。
 このミキサーについても外見上はどこからどう見てもビスやボルトが見当たらず,モーターボックス下にポリキャップがついていてそれを取り除くとケースの凹みにビスがあり,それを緩める事でようやく分解に取りかかれるといった案配だ。
 それから先も悩ましい分解作業は続き,ようやくモーターとギヤボックスが現れたときには実に小一時間を費やしていたのだった。
 予め予想は出来ていて,得意先にも期待は出来ない旨事前に伝えてはいたが,現れたはらわたを見て俺はやる気をなくした。

 やはり家電製品の造りだ。安っぽいとかチンケだとかいう意味ではなく,製造元の講習を受けた修理屋がメーカーの純正パーツの供給を受けないと手も足も出ない造りだということだ。
 DCモーターをモーターケース側面のレバー(根元には可変抵抗がある)による電圧変化で回転数を変えるというシンプルな発想だ。日本の家電メーカーであればきっと誘導モーターを超小型のインバーターで可変速というやり方になるだろう。この辺はお国柄という事か。

 何せ,スチール製のベースプレート上に整流回路の基板とモーターとギヤケースが全てかしめられた状態で組みつけられているので個別に取り外す事は出来ない。不具合があればこれら一式をベースごと交換するという事なんだろうと俺は解釈した。もしかしたら製品をそっくり買い替えた方が早いんじゃなかろうか。
 大体,この製品の補修パーツなるものがどこに言ったら買えるのかが俺にはさっぱり見当がつかない。何とかものにして銭を稼ごうという意欲が急速に萎えた。
 
 そんな事を調理師長殿に伝えるとご納得いただけたようだったので俺は手仕舞いにかかった。期待をばらすときには初めてのせいもあって大いに手間取ったが一度構造が頭に入ってしまえば早いもんだ。とは言え序盤のもたつきが大いに響いて所要時間は約90分,本日は午前3時までプレハブ保冷庫の天井でドタバタやっていた寝不足の俺には大いに堪えた。
 家に戻ってきてこのデロンギなるメーカーの事を調べてみると件のミキサーは何と実売価格三万数千円との事で俺は点検費用を幾らで話したらいいものだか大いに悩んだ。

 その後,調理師長様からご連絡があった。病院のお金でミキサーを購入してもらえそうなので何か提案してくれとの事で,俺の今回の点検費用もそこで上乗せ処理する事でご了解を頂いたのだそうだ。
 儲かっているんだかいないんだか分からないがとにかくタダ働きではなかった事でひとまず安心した。幾らか心得のあるキッチンエイドのミキサーの見積りでもこしらえる事にしようか。

http://www.fmi.co.jp/products/kitchenaid/index.html

 デロンギというのはイタリアの電機メーカーだった事を今日まで俺は知らずにいたが,大してキッチンエイドのミキサーはいかにもアメリカっぽい外見だ。

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 キッチンエイドのミキサーについては今でも引っかかりのある出来事があるがその件はいずれどこかで。

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