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洗米器ミステリー(1) [修理屋から見た厨房機材]

 業務用の厨房機材のうち、一刻も早くこの地球上から滅亡してほしいもののうちの一つに洗米機という物体がある。
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 読んで字の如く、米をとぐ道具である。給水圧によって筐体内部のタンクとドラフトパイプに水と米とを循環させることで米を磨ぐというものだ。管末の給水圧力が不足している場合にはドラフトの循環が起こせないので内部に循環用のポンプを組み込んだ機種を選定する。おそらく考案されてから既に40年くらいは経つのではないだろうか。前世紀の遺物とはこのことであって、もはやこんな機材が市場に生き残っているのは相当に変な話なのだ。理由を以下列記する。

(1)現在の精米技術は40年前に比べれば言うまでもなく進歩している。私事だが自炊の毎日であるこの俺が日々経験していることなのだから間違いない。米のとぎ汁の色は二昔くらい前に比べると全然色が薄い。精米時点でぬか成分がかなりの程度除去されていることになる。うるさいことを言わなければ米などとがなくても問題なく食えるほどなのだ。

(2)そうはいっても磨げば白濁したとぎ汁は出るのだが、排水配管の詰まりの原因が米のとぎ汁に含まれている糠によるケースが多いのは一体どれくらいの人が認識しているだろうか。更に言えばドラフト式の洗米器は洗米中にうっかりバルブを誤操作して米を排水配管に流失させてしまい配管を詰まらせる事故も稀に起きている。復旧作業はとんでもなくお金も時間もかかる。

(3)そもそも、昨今は無洗米が随分普及しているではないか。そうでなくても食品の設備など予算がケチられる格好の対象なのだから洗米器など最初から買わずに無洗米を使えばいいのだ。

(4)ただでさえバカぞろいの日本の厨房機器業界が考案した洗米器で、しかも原型は40年以上も前に発案されたものだ。日常のメンテナンスなどは全く考慮されていない。6,7年も使ってみると循環経路には米ぬかが堆積し、バルブ周辺など掃除できない箇所には糠の黴びた真っ黒いスラリー上の異物がべっとりとついてひどい腐敗臭がするのを見ることが大変多い。ドラフトの水流に混入していつ米に混じってもおかしくない、不衛生なことこの上ないのである。日本国中至る所、こんな状態で使用されているのはザラだ。

 特に(4)については、給水の直圧を利用する形式ならまだ何とか分解清掃が可能だが、ポンプアップによって循環させる形式の洗米器となるとほぼ絶望的だ。ポンプのインペラーやケーシングなど、掃除しきれない箇所が数カ所ある。
 カビの発生は初期のうちならまだ手の打ちようはあるが、客の多くはバカな上にケチなので分解清掃の提案をしても金欲しさの詐欺話だろう、といった受け止め方でおよそ取り合ってくれないことが殆ど全てだ。磨いだ米に黒カビが混じるようになり、喫食者から苦情が出てから初めてなんとかしてくれと慌てて泣きついてくる。バカはどこ迄行ってもバカである。
 泣きつかれてからやおら分解を始めてみると殆どの場合もう手の施しようがないことが多い。『だから言わないこっちゃない』と内心ぶつくさ言いながら異臭に顔をしかめての作業となる。全く日本国中津々浦々、こんなもので磨いだ飯を食いながらグルメ気取りであーでもないとかこうでもないとか色々ほざくバカが多いのには全く笑える。
 それでここしばらく、俺は修理ではまることが多いのだが、今回はこの洗米器、こんな単純明快な構造の機材に一体どうしてこんなに手こずるのかと自己嫌悪に駆られるのだが恥を忍んで、備忘録的に以下続けることにする。(続く)
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