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知ったか坊主を怒鳴り倒す [困った業者]

 数日前に書いたテキスト「インチキ中古屋にはめられる(だったかな?)』
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2008-10-29  の続きである。

 翌日昼近く、客先に赴くと冷凍庫はめでたく漏電することもなく稼働していた。庫内温度は設定ー17℃に対して表示は-18℃でまずは御の字だ。前日夜のギャンブルはあたりだったことになる。少々残念ながらLEDディスプレイにはE3の表示が出ていてこれは霜取り終了に問題ありを表している。
 V結線された2本の霜取りヒーターのうち絶縁の悪い一本を回路から切り離しての霜取り運転なので残霜が幾らか発生しているのだろうが、冷却器のカバーを取り外して中をのぞいてみると霜の付着は極小で運転上は殆ど無視できるレベルである。動作としては一安心だがご心配をかけたので親方には改めてお詫びを入れた。

 そんなところに今回の中古冷凍庫を引っ張ってきた解体屋の知ったか坊主から連絡が入った。俺は前日夜の修理の際にこの腐れた中古を引っ張ってきたことをなじり倒して代わりを探しておけと言い渡してあったのだった。
 電話によれば早速代品が見つかったという。今度は本当の4年落ちでメーカーもサンヨー製、動力電源のある場所で現在試運転確認中だとのことだった。場面が場面なら有り難うとか何とか頭を下げてもいいところだがこのクソ忙しい月末にこやつのおかげでまるまる一日を番狂わせの漏電探しに費やす羽目に陥ったこの俺だ。こんなに簡単に見つかるのだったら最初っからそのサンヨー製を押さえておけば良かったではないかと理不尽な気分になった。更に鼻につくのは、この知ったか坊主の口ぶりにはおよそ悪びれた気配がなく得意満面なのだ。

 ところで俺がこの男をここで知ったか坊主と呼ぶ由来について少々書き留めておきたい。彼の本業は解体屋である。解体の傍ら俺の元勤務していた会社の釧路営業所の協力会社として搬入や撤去の労務を請け負っている。一言で言えば典型的ないじられキャラなのだが妙な自尊心はあるらしくとにかく知ったかぶりの多い野郎だ。バカだと思われたくないとか、無知だと思われたくないとかいう気持ちがおそらく人一倍強いのだろう。日頃から背伸び混じりの事情通を気取った物言いの多い男で、たまに『あんたは大した奴じゃないんだ、もっと凄い人がいっぱいいるんだ』と言わんばかりの癇に障る振る舞いがある。
 考えてみれば今回の混乱もこいつの知ったかぶりが発端だ。13年も前に生産終了した、しかも故障箇所の補修もしないままお払い箱になったようなガラクタを4年落ちのバリバリなどといい加減なことを抜かしてこの現場にあてがった張本人がこいつなのだ。

 幾ら中古と入っても最初からこんなケチのつき方ではさすがに納得してもらえない。製品の入れ替えは当然だろう。しかし幾ら良品が見つかったからといってあまり威張ってものが言える状況ではない。

 親方と入れ替え作業の日程について打ち合わせを済ませた。本業以外にも調理師学校の講師とか廚師仲間のやり取りとかで多忙な方なので今日の明日というわけにも行かず、因縁付きの冷凍庫もまずは窮地を脱した状態なので11月の10日頃だと都合が良さそうだというあたりが落としどころになった。

 これで目出たし目出たしとなれば良いのだが最後にもう一山あったことは書いておかなければならない。
 その日の夜、元の職場で用足しかたがた一息ついていると解体屋から電話があった。あろう事か代替品の搬入を明日にして欲しいと抜かしやがる。
 問題の中華レストランは当日は定休日で、しかも夜だ。通常、仮に得意先の連絡先がわかっていても余程緊急の用件でなければ定休日に電話などということは俺は控えることにしている。立場を変えれば当然の配慮だろう。増して、応急処置ながら冷凍庫は目下無事に稼働しているのだ。急ぐ理由など特にないはずではないのか。
 それをこの、たこ焼き的風貌の坊主は今から俺に明日、代替品を入れ替える工事の段取りを取ってくれなどと厚かましい戯言を抜かす。一体何故、そんな無茶を言い出すのかと問いただすとこの野郎はなんと、俺の修理が当てにならないからだなどとほざきやがったので俺は一気に放電モードに入った。もう一回言ってみろこの野郎と怒鳴ると電話の向こうで豚野郎はひるんだ様子を見せた。
 狼狽えた様子でその知ったか野郎は冷凍庫のコンプレッサーが壊れるかもしれないなどと分けのわからないことを喚き始めた。それはどういう事だ、その話の根拠はどこにあるんだ、お前の見立てではそういう事なのか、俺の修理が当てにならないというのはそういう事なのか、と畳み掛けると言葉を濁した。
 日頃から人を小馬鹿にしたような物言いの多い奴だが俺だって昨日や今日の修理屋ではないのだ。確かに処置には手こずったがメーカーのサービスマンがお手上げだった症状をレスキューできた程度のレベルではあるのだぞ。それでもそんなに俺の腕が当てにならないのだったら貴様は日頃、何でも知っているような事を吹きまくって自慢しているのだからお前が来て修理すれば良かったではないか。お前が来られないのだったら、日頃、人前でこれ見よがしに嫌味ったらしくどこそこの誰それは凄い人だ、あの人も素晴らしいなどと俺の同業者の名前をあげつらっているのだからそのうちの誰かに来て始末してもらえば良かったではないか。
 そもそも俺はこの腐れ冷凍庫が売買されるにあたって一円の利益もない立場なのだ。件のデブ野郎には俺にキックバックなどは考えなくてもいいからその分安く納めてやってくれと頼んでいたほどなのだ。それが4年落ちだなどとでまかせを抜かし、おまけにブツは稼働初日から漏電する始末で、尻拭いの応急処置までやらせておいて挙げ句の果てにはお前の修理が信用ならないとはどういう事だ!と、俺は一気呵成に豚野郎を怒鳴り上げた。

 貴様この野郎、人を利用するだけしておきながら何てえ言い草だ!昨日丸一日分の作業費は俺が気分で決めてお前に請求するからな!幾らの請求書が届くか楽しみにしてやがれ、わかったか、この野郎!と吠えると電話の向こうの知ったか野郎が情けない声を出した。
 聞けばこの男は一日でも早くクソ冷凍庫を引き上げて札幌の中古屋に返送したい事情があるらしかったのだ。手付金として払った半金を払い戻してもらうためには現物を返送しなければならないらしい。それで結構資金繰りが切羽詰まっているらしいのだから笑わせる。丼勘定がいいとは全く思わないが中古の冷凍庫を買い付けるための半金だからせいぜい十万円かそこらだろう。その程度の金でも響くという事は、一体こいつはどんな運転資金で動いているんだと怒る気が失せて哀れになった。

 非常識であり、自分の都合だけの虫のいい言い草ではあるが、こいつにはこいつなりの切実さがあるのだと思うともうそれ以上はさすがに怒る気にはなれなかった。しかし自分の窮状を誤摩化して俺の技術力に問題をすり替えるやり方にはやはり不愉快さを押さえきれない。それは実のところ、自分が本当に大した腕前ではない修理屋である事を俺自身が直視したくない気持ちの現れなのかもしれない。どんな出来事にも一つくらいは教訓はあるもので、あるいは修理屋が俺でなければもっと早く不具合は見つかっていたのかもしれないのだ。その可能性は否定できない。

 最後の落としどころとして、腐れ中古厨房機器屋には再度の代替品搬入費などの諸経費、及び応急処置に費やした俺の作業費を請求させてもらう事にした。同額で代替品を用意してもらったのは勿論である。
件の腐れ冷凍庫は送料着払いで返送するつもりでいたが、中古屋からいらない旨の返事があり、貰い受ける事になった。どうせ廃却品を拾ってきたのだろうから金などかけたくないという事だ。ブツの電源使用は3φ200Vなのだが中古屋には動力電源などない事もその後わかった。試運転などしていなかったのだ。
 そんなわけで騒動はどうにか終息したわけだが、業務用の厨房機器などという業界には俺を含めていかがわしい奴ばっかりだという事を諸兄、ご理解いただけただろうか?(この項終わり)


 
 


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