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シェルパという食器洗浄機メーカー [修理屋から見た厨房機材]

 長らく行き来のあるケミカル関係の商事会社から食器洗浄機の修理依頼が来た。

 製造元を問うとシェルパという答えが返ってきて俺は少し驚いたのだった。『まだ生き残りの個体があるのだな』というのが正直な感想だ。
 随分以前,二昔近くも前にその会社はなくなってしまっているはずなのだ。製品を引き継ぐ会社は現れず,その後のサポートも捨て子状態で今後の運用が期待できないからという理由でリプレースしてしまった使用者の方も幾らかはおられるのではないかと思う。

 俺が長らく出入りさせて頂いている某焼き肉チェーン店にシェルパの洗浄機は2台くらい納入されていて,倒産後の修理は俺が請け負っていた時期がある。純正のパーツがいかれたときには代用品を自分で探し歩いて帳尻を合わせなければならないわけで普通に修理をやるよりも苦労は多かったように覚えている。

 通常,厨房機材メーカーが倒産したり解散したりした場合はどこかの会社がその製品を引き継ぐことが多い。近年のわかり易い例で言えば三洋電機の製品はラインナップを縮小した形で松下が引き継いでいたり,IHIの食器洗浄機も大方の機種は北沢産業が引き継いでいる。業務用機器は運用期間が長いのでユーザーサポートをバッサリ切り捨てるのは色々と社会的に問題があるという,これは企業なり業界としての一種モラルだと見ておきたい。
 シェルパが倒産したのは20年近く以前だったと思うが,製品の継続はおろか補修パーツの販売も名乗りを上げる会社は現れなかったように俺は覚えていて、それは業界内外問わず,数の上でも強さの上でもコネクションに乏しい存在だったことを表している。

 俺自身がシェルパの食器洗浄機をリプレースする場面は先に書いた焼き肉チェーン店での2軒だけだったが,他にも一定数,市場で稼働していた個体はあっただろう。それらが今でも運用されているとは考えにくい。
 何故なら,シェルパの食器洗浄はそれほど耐久性に富んだマシンスペックであるようには俺には見えなかったし、俺の住む田舎町にそれほど融通の効く修理屋がいるとも思えないからだ。冒頭書いた驚きというのはそういう背景に根差している。
 しかし,依頼元である某商事会社の担当営業曰く,シェルパという会社は現存しており,補修のサポートも行っているのだそうで、俺は本当にそうなのかと3回くらいは訊ねた。
 
 帰宅してからググってみると確かにその会社は存在している。

会社URL:http://www.sherpa-sv.co.jp/

 倒産したとばかり思っていたのは俺の勘違いで実は存続していたということなのか,それとも近年,どこかの会社がシェルパというブランド名を譲り受ける形で起業したということなのか,いずれにせよその製品は現在進行形で製造なり販売なりされている,そういうことらしい。
 
 俺は既にかなり擦れっ枯らしの野良犬修理屋なので,メーカーが消滅していようが存続していようが関係ない。とにかく動くようにすりゃあいいんだろ,という腹づもりでありがたく引き受けた。
 好き嫌いで仕事を選べるほど俺は仕事に恵まれていないし幼稚でもないが、正直なところシェルパというブランドに対する印象は大していいものではない。その製品がさほど優れたものだとは思えないし、更に言えば現行の製品仕様は外見を見る限り,20年前とさして代り映えしないもののように見える。まるで止まっていた時計が出し抜けに動き始めたかのような印象だ。
 俺には良く理解できないのだが,会社の創業が昭和50年で設立が2008年とはどういう事なのだろうか。この33年という隔たりはどういう意味を持つのか。
 
 あらためてこの会社のホームページを仔細に見てみたが,特段既存の厨房屋と強い関わりがあるわけではなく,(今やそれぞれ自前の製品があるから),旧態依然としたこれら製品群がどのようにして販売されているのかは大変興味深い。
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高速オーブンについて [修理屋から見た厨房機材]

 俺の地元にある某製菓メーカーは俺の来歴に大変深い関わりがあるがここでは触れない。
俺の元の勤務先では,この,某製菓メーカーに対して高速オーブン12台の受注実績が最近できた。
直営の店舗内に併設された喫茶室バックヤードで稼働する事になる。
一昨日の夜,俺は元の勤務先である依頼元と一緒に一台目の搬入据え付け工事を終えたところだ。

 納めた機材はスーパージェットという商品名で、以前一度記事にした事がある。
元記事名:スーパージェットのメンテ講習のため遠征二日間
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-06-15

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製品紹介はこちら:http://www.fujimak.co.jp/contents/hp0088/list.php?CNo=88&ProCon=5

 現在、この手の機器は日本語での統一された呼称がない。多くの厨房機材がそうであるように原型は海外製品であり国内の厨房屋が独力で発想できるようなものではない。
 オリジネーターはTurbochef(ターボシェフ)という米国のメーカーである。

元祖のURLhttp://www.turbochef.com/
製品名はTornade、竜巻という勇ましいネーミングだ。2006年以来、スターバックスコーヒー各店で導入されていると聞く。


輸入元の製品紹介:http://www.dcservice.co.jp/machine_turbochef_c3.html

二通りの加熱源を持ち、
(1)高周波加熱
(2)抵抗加熱 + 強制対流
の重畳によって短時間での加熱調理を実現するものだ。1991年創業となっているからもう20年くらい前に商品化されたものという事になる。当然ながら加熱方法は特許によって保護されており、後発の日本製品は全て巧妙にライセンスの規制をすり抜けた猿真似製品という事になる。
ターボシェフ テクノロジーズ インコーポレイテッドにより出願された特許
http://www.ekouhou.net/disp-applicant-507182542.html

 国内で類似品を最初に開発したのは実は厨房機材メーカーではなくブラザー工業で、確か1992年か翌年あたりだったと記憶している。
 「確か」という接頭語をわざわざつけなければならない理由はブラザー工業はこれを商品化して幾らも経たないうちに売れ行きの悪さに嫌気がさしてさっさと手を引いてしまったからだ。製品化にあたってTurbochefの製品がどれくらい意識されていたのかが定かでなく性格付けの曖昧な製品で,俺の印象は大変薄い。
 製品のスペックもたいしたものではなく,対流方式が通常コンベクションオーブンに良くあるシロッコファンによる送風、高周波加熱用のマグネトロンは家電製品並みの出力で、ちょっと短時間で調理できるコンベクションオーブンの域を出ないものだった。
 販売元の北沢産業がバブル崩壊のあおりを食って低落傾向が始まりかけていた事が災いして、とにかくぱっとしなかった。時代背景も不遇で、現在ほど冷凍食品のバリエーションがなかったので活用範囲や需要が殆ど全くと言っていいほどなく、早すぎた製品だったわけだ。

 次に手がけたのは総合厨房のフジマックで、設備施工がらみばかりではなく単品販売に力を入れ始めた時期に符合する。コンベアーオーブンの国産化にあたってジェットインピンジメントによる加熱方式の国内ライセンスを取得していた事が幸いした。マグネトロンの出力も本家並みの工業用1.1Kwをおごっており、かなりいい線をいくスペックではある。
 厨房機材メーカーが加熱源としてマグネトロンを自社製品に組み込むのはおそらくこれが最初だったのではないだろうか。初期モデルは不慣れな製品作りで故障も多かったがそれでも対面販売のフードコートやカラオケボックスのバックヤードを中心として一定の納入実績を作った。1995年頃からの話だ。

 実は俺は在籍時に納入したことがあり,品温-15℃の冷凍ピザが4分強の調理時間で上がるそのスピードにはちょっとした驚きを覚えたものだ。しかしここから先は俺の想像だが、調理能力(ここでは調理時間の早さ)についてはターボシェフを超える類似品はおそらく一つもない。
 理由は元祖の機体内部に組み込まれているボトムヒーターで、上下から噴出される加熱空気のうち、下方向からの噴流はボトムヒーターを介する事で更に昇温されるからであり、詳しく調べていないがTurbochef社の取得した特許の勘所はここにあるのではないだろうか。
 似通った構造のフジマック製スーパージェットがこのヒーターを省いている理由はそれが特許に抵触するからではないだろうかと俺は考えている。

 機能面はさておき、意匠的な面に目を向けるとここ数年のフジマックはオープンキッチンとか対面販売用の機材については社内でのデザインをやめて工業デザイナーに委託する傾向がある。現在のスーパージェットは三代目の製品だが垢抜けしないややこしいユーザーインターフェイスの初代機に比べて確かにお洒落になったなあ、と実感する。

 某製菓メーカーの喫茶室に於いては、この手のオーブンとして採用されたのがタニコー製のビトルボという商品名の機種だ。こちらは熱源の一方がガスであるところに特徴がある。
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商品URL:http://eee.tokyo-gas.co.jp/saitekichubo/equipment/biturbo/

 考えてみるとこの商品名はマセラティの車にあった車種名と一緒だ。商標権とかの面でヤバいんではないのか。
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 それはさておき、某製菓メーカーの反応としてはビトルボは決して好意的な迎えられ方をしなかったようだ。プレヒートなしに調理可能という謳い文句には結構眉唾臭いものがあるらしい。
 俺は実機を見ていないし商品知識もないのでこれは想像だが、初代機のスペックを見る限りマグネトロンの出力が650Wという点は明らかに問題があると思う。これは家庭用の電子レンジの出力とまるっきり一緒だ。

東京ガスのHPに新旧2機種の比較表があり、初代機種は加熱源としてガスの燃焼にウェイトを置いた設計だがそれでは調理時間の短縮化は難しいことを示しているとも言える。
 第2世代機で高周波加熱の出力が1Kwに引き上げられているのは正常進化と言えるが,庫内の構造などを仔細に見ていると使い勝手を含めて完全にひと世代時代遅れであり,マシンスペックのみを評価基準とするなら魅力度は今イチではないのか。

 ここで俺なりの勘ぐりを開陳すると,熱源の中心をガスとした場合,導入時にはガス配管工事が発生するわけだが,比較的低出力のマグネトロンで済ませておけば電源の内線工事は省略できる可能性がある。設計上,そういう思惑がありはしなかったか。
 調理時間の短縮化のためにマグネトロンの出力を挙げれば必然的に内線工事の発生を余儀なくされる製品仕様となり、ガス配管の工事と合算すると付帯工事費用がかさむ。イニシャルコストについて考えてみると製品価格が多少安くなったとしても付帯工事費用は全て電気を熱源とする他社製品に比べて相対的に高上がりになるうえに燃焼排気処理のための空調工事も電気式に比べると大掛かりになる。これは日常,俺がタニコーという会社と決して良好な関係ではないという要因を除いて考えても少々疑問の残る製品なんである。

 雑感みたいなことをとりとめもなく書き綴ったが,外食産業の大衆迎合化が更に加速し,冷凍食材の利便性が進み、従事者の素人化と低賃金化が進み,というのが時代の流れのようなのでこの種のオーブンへの参入はこの先活発化しそうに思えている。
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冷凍機メーカーと工事屋の相性はあるか [修理屋から見た厨房機材]

 某リゾート施設のビュッフェにしつらえられたパススルー形式の特注冷蔵庫修理のことを備忘録風に書き留めておく。

 バブル真っ盛りの頃に出来たその施設は当然ながら現在,老朽化が目立つようになると冷凍機器類の使用冷媒が修理の上で色々な制約をもたらす。
 件のパススルー冷蔵庫に使用されていたのはやはりR-12であり,今回は膨張弁が詰まり,冷えない症状が現れた。修理の依頼元は俺の元の勤務先からで、現調後に営業担当である現所長殿と対処法の協議を行った。

 営業上は既成の(ということはカタログに掲載されているようなスペックの)パススルー冷蔵庫にリプレースしてしまうのが最善だが,あいにく問題の故障機は建築物に合わせて製作された特注品で寸法場収まりがつかないことと、筐体部分はなかなか造りが良く,まだ当分の間は継続使用に耐えられそうなので修理を行う方向性で提案することにした。優に20年を超える運転歴なのだがとどのつまり,業務用冷蔵庫の寿命とは箱の寿命なのであって機能的な問題は大体何とかなるものだ。

 最小限の処置としては膨張弁の交換だが営業サイドとしてはこれまでの稼働歴と得意先の業績がなかなか好調であることを考えあわせて新冷媒仕様の冷凍機交換を得意先に対して提案する線でプランがまとまり,内示を頂いた。

 使用するのは汎用の小型室内用冷凍機で0,25kwのものとした。現状使用冷媒のR-12と似通った特性となるとやはりR-134aのものを選定することになるが,各メーカーのラインナップをあれこれ調べてみると自動的に三洋(現パナソニック)の製品となる。
 改造工事を受け持つ俺はこの時点でR-134aの膨張弁を一つ,問屋に発注しておいた。

 しかし数日して,依頼元である以前の勤務先からは冷凍機は三菱電機製の0.3kw,使用冷媒はR-404Aのものを支給するのでこの前提で工事の準備をしてもらいたい旨の連絡があり,俺はちょっと慌てたと同時に少々の懸念を持った。
 懸念の理由はR-404Aであり,現状の箱の容積と使用温度帯から考えて冷却能力が過剰であり,ショートサイクルが発生しはしないかというのがその理由である。
 依頼元の言い分としては,今回の工事にあたっては冷却器を継続使用することになるため冷媒管は一部変更に留まる。とすると配管内部をフラッシングすることになるのでリプレースキットを用意しているメーカーからの選定となり,必然的に三菱電機製となったとのことだ。三菱電機の製品ラインの中には三洋製と同等品がなく,近い仕様のものとして0.3kw,R-404Aとなったとの説明である。

 俺はR-404A用の膨張弁を発注し直した。懸念はあるが依頼元もれっきとした冷蔵機器の製造元だからして言い分にはしかるべき根拠はあるし,発注元相手に独りよがりな駄々をこねても仕方がない。故障機の冷凍機は三菱電機製でもあるので内部の電気回路から考えて移行が楽だというメリットも確かにある。R-134aとR-404Aでは単価が何倍も違うのでこれは当然,工事代金に反映させざるを得ないが先方が了解済みなのだからそれは心配ご無用,としておこう。

 仔細に書くと長大な話題になるが,冷凍機メーカーにはそれぞれ個性があるように日頃から俺は考えている。値段とバリエーションで三洋,伝家の宝刀高圧チャンバーの高耐久性を誇る日立,省エネ制御で先端をいく東芝,やる気があるんだかないんだか訳の分からん三菱重工といったところか。
 そんな中にあって三菱電機の冷凍機というのはいい意味での無個性さというか、特徴のないところが特徴であるメーカーだと日頃から俺は捉えている。配管系統も電気系統も,総じて奇抜なところはなく教科書っぽい。そしてこれは,大変重要なことである。
 他メーカーに比べて三菱電機の冷凍機は初見の機種を予備知識なしに現場でいきなり触ってもその動作がヤマ勘で何とか把握できるように造られているように思う。これは俺のようなハンチク野良犬業者にとっては都度都度作業現場からメーカに問い合わせて詳細な製品情報を訊ねる手間が省けるので大変有り難いことだ。

 工事そのものは別段問題もなく本日片付けた。
懸念していたショートサイクルの発生については元々の冷凍機が高温用なためか格別大きな問題はなかったが,敢えて緩慢な冷却特性を出すために蒸発圧力を高めに設定しておく必要がある。但し無闇に膨張弁を開けば開いたで今度は液バックを起こしてコンプレッサーをぶっ壊す恐れもあるのでこの辺のさじ加減が,まあ現場技術といった感じか。
 リプレースフィルターは現在,三菱電機だけが用意している親切キットだが値段は高い,外寸はでかいので取付け方の思案で時間を喰う,高圧配管をやり直して真空引きは2回行わなければならない,とどめに再使用は出来ずに一回使用しただけでの廃棄を指示されているなど大して有り難くない物体だが転ばぬ先の杖というか一種安心料として受け入れざるを得ないだろう。まあ今回についてはひとまず上首尾、と自画自賛しておく。

 余談だが,同じ三菱とは言え重工と電機とではだいぶ印象が違うように感じるのは俺だけだろうか。町々に拠点を構える三菱電機ビルテクノサービスの対応は大変フレンドリーで俺のようなチンピラ業者にとっては大変好ましい。他の電機メーカーと比べても同業者にはかなり親切であるが、これが三菱重工になると一転してクソ生意気で高飛車な態度になるのは重工屋共通の体質と見るべきなんだろう。そんなところも相性と言えるか。
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IHI食器洗浄機 JWD-6Cの余生 (3) [修理屋から見た厨房機材]

IHIは既に食器洗浄機の事業から手を引いているので今更こんな記事を書いたところで死んだ子の歳を数えるようなもので全然建設的な行いではないのだが,優れたものが正当に評価されずに消え去っていく理不尽さから来るある種の怒りみたいなものが俺にこういうことをさせるのだろう。

 JWD-6のポンプ周りの画像を再掲する。
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 今回,ケーシング内部の錆落とし作業を行うにあたって,当然ながらインペラを外さなければならなかったわけだが、これは結構難儀する作業だった。
 作業自体は単純だが立て付けがごついので腕力を必要とする。馬力勝負だ。以前,JWD-6のポンプを乗せ替えた事があるという方の話を伺ったことがあるが絶対に1人ではやらない方がいいとのこと。無茶苦茶に重いので二人でないと無理とのことだった。
 インペラを取り外せばメカシールが現れる。今回,この個所については損傷がないのでそのままにしておくが,これを交換したことがあるという同業者の方にも1人しか会ったことがない。大して売れた機種ではないにしてもこの稼業を30年近く続けていてたった1人だ。
 その方のことは以前一度記事にしたことがある。

記事名:(有)協洗サービス様を勝手に宣伝する
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2010-03-23
会社URL:http://www.kyousen-s.jp/index.html

 俺自身の履歴でいうと,IHIの食器洗浄機について洗浄ポンプのメカニカルシール交換は,三相電機製の安いポンプを乗せた一般大衆向けシリーズを別にするとこれまで一度だけ、某総合病院で稼働していた2タンクのアラウンドコンベアータイプで2馬力(1.5kw)のものを手がけたことがある。この先は恐らくなさそうに予想しているが、ここで何を言いたいかというと、IHIの食器洗浄機のメカニカルシール交換という場面は修理屋人生の中で2回くらいあるかないかの出来事であり,交通事故並みの発生確率な訳だ。他の国内メーカー製でそんなことは全くないと断言してもいい。

 話をワイン工場の件に戻す。
 この施設の給湯温度は実測で約65℃であり,結構高めである。グラスの洗浄となると通常の食器のように80℃以上のすすぎ湯温度となるとウォータースポットが発生するので低めに設定するのは同業者諸兄であれば既にご存知と思う。
 理想論としてはすすぎ湯温度は70℃近辺で給湯取り込みには純水化させるためのフィルタリングを施すが、現実にこんな事をしている施設は殆ど記憶にない。今回の状況としてはあくまで休眠していた機器をなるべくお金をかけずに再度活用するということらしいので,フィルターはなし,給湯はサバ読みをきかせて給湯配管の直圧で使用ということになっている。
 設備自体の給湯能力は高いので,水質のことはさておきすすぎ温度が若干低い分は量でカバーしようとの意図ですすぎ時間設定をのばしてみることにした。JWD-6の制御ボックス内部は以下の画像の通り。
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 冗談みたいに呆気ない。基盤もカスタムパーツもない。組み込まれているパーツはその辺の電材屋で在庫しているものばっかりだが、障害が発生した時の適応性の高さから考えればむしろこういう構成である方が好ましい。プラグインタイプの汎用タイマーとは今時しびれるスペックではないかw壊れたターマーを引っこ抜いて電材屋迄走り,同じものを買ってきて突っ込むだけで済む。この間,工具だとか道具は一つも使わず所要時間など合計一分以下で済んでしまうのだ。
 画像の左上についているスナップスイッチ二個は洗浄,すすぎそれぞれの強制運転用でドアスイッチやタイマーに関係なくポンプや電磁弁を働かせるためのもので、最終的な緊急措置用として組み込まれているが、何故これが設けられているかについてちょっと能書きを。
 これはIHIが造船メーカーであることに少し関係があり,同社の食器洗浄機は海上保安庁の巡視艇など艦載用として納入されることが多かった。洋上で食器洗浄機がぶっ壊れたときに幾らなんでも修理屋が現場に駆けつけることは出来ないので,補修パーツとしてタイマーなりスイッチなりが船内にないときには次の寄港先までこのスナップスイッチを使って(時間はヤマ勘で)手動運転させながらしのぐのである。
 要するにIHIの食器洗浄機というのは,機関士が本業の合間にちょっと見ても理解でき,いじくり回せるように最初から考えられており,じつはこれは多機能性を持たせてややこしく作るよりもずっと難しい。

 市場に出回る三流製品の数々は,やれインバーターモーターで可変流量の何とか,だとかフルオートマチックの自動給湯やコンピューター温度管理とかなんとかのどうでもいいオカズ満載でありながらこういう緊急時の対応措置が講じられていないものが大半である。修理屋が来ないと問題が解決しない。そのくせ、たかがスナップスイッチを二つつければ済むような緊急時の措置が講じられていない。それが市場での価格競争力を維持するためにスイッチ二つ程度の製造コストもかけたくないという意図の元にされているのだとすれば全くもって噴飯ものというしかない。

 使用者は電源スイッチと操作パネルだけをいじっていればいいのであってそれ以外のことは全て製造元が関与しないと解決できないようなつくりというのは食器洗浄機に限らず,近年あらゆる食品機材で進行中の考えであるように俺には見えているが,信頼度とか整備性というのは一向に顧みられることがなく,修理屋は単なるパーツ交換作業員化していく一方というのが製造元と使用者の全体的な趨勢なのだろう。
 製造元から見れば高学歴だったり高い現場技術を持った修理屋は不要であり,使用者から見ればとにかく安くて高機能で横着でき,都合の悪い出来事があったときには電話一本で修理屋がすっ飛んできてくれさえすればいい,そういうことなのであってこの乖離に起因するしわ寄せは全て現場のサービスマンにのしかかってくる。この業界の人材の定着率の悪さはこういう構図の元にいつまで経っても改善されない。値段が安くて横着できさえすれば機器の信頼度なんていうのはどうでもいいという集合意識は結果として正論を排除し,圧殺していくのである。(この項終わり)
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IHI食器洗浄機 JWD-6Cの余生 (2) [修理屋から見た厨房機材]

 久しぶりに見たその個体は,タンクの中が赤錆の色に染まっていた。

 使い終わってからタンクの水を抜いていないと言う。工事業者はタンクの水は抜かない方がいいと言っていたのだそうだがとんでもない話だ。
 聞けば排水配管接続について,露出した本管に直接繋いでいるので匂いが洗浄機に戻ってくるからタンクの水は抜かない方がいいとか,『アホか』と俺は内心呆れた。
 設備屋なのか厨房屋なのか知らんがオーバーブローパイプというものがある以上,タンクの水など抜こうが抜くまいが本管と直接接続すれば匂いが来ることに違いはない。匂いの逆流を止めたいのであれば排水配管途中にトラップを設けるかチャッキ弁を取付ければいいではないか。本当に程度が低い。

 錆の発生源についてはすぐに見当がついた。
洗浄ポンプのケーシング内に錆が発生していることには疑問の余地がなかった。
運転は毎日ではなく,週に一回程度でその間タンクのお湯は放置され続けているとの話を職員から聞き取って俺の確信は深まった。
 JWD-6の洗浄ポンプは厳つい鋳物のケーシングで内部が塗装されているわけではない。建物の給湯温度は約60℃強あり,これが溜められたまま一週間放置されるのだから錆びないわけがない。

 作業内容は以下の通り
(1)ポンプのケーシングを分解して内部をサンドペーパーで擦り錆び落とし
(2)ケーシングのドレンプラグを外して3/8の枝配管を設けケーシング排水用のバルブをつける。
(3)皮膜形成用の固形薬剤をしばらく運転しながら使ってもらう。

 俺はポンプの分解に取りかかった。
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画像は作業途中の様子で,ポンプのケーシングを取り外したところだ。手前側にある赤錆だらけの丸い物体はケーシングの一部でフランジ状の形をしている。

 IWD-6の特徴の一つはその整備性の良さにある。特にこのポンプは特筆ものの出来だ。
IHIの食器洗浄機は廉価なものを除くとモーター類は必ず東芝製である。この辺は兄弟会社の縁なのだろう。
汎用品のポンプを仕入れてきて組み込むしか能のない厨房屋の製品とは違って食器洗浄機用に特化したポンプを製作できるところがこういった大会社の底力だ。
 
ベースモデルは東芝製の汎用品だがケーシングに工夫がある。製造元は西島製作所という。
一般的なラインポンプは大体15m位の揚程だが食器洗浄機の場合はせいぜい1mちょっとあれば良いので,その分とにかく流量を稼ぐ設計である。循環量は実測で650ℓ/minを超え、他メーカーのボックスタイプ洗浄機に比べると明らかに30%以上の能力を持つ。勿論インバーターを用いて回転数を上げるといった小細工なしでこの数字だ。
 結果としてでかいケーシングを持つ,およそボックスタイプらしからぬ図体のポンプが押し込まれている。当然物凄く重く、とてもじゃないが一人で取り外してハンドリングできたものではないのでこれを支える意味もあり,JWD-6の筐体はステン板の折り曲げ細工ではなく,アングルで構成されたフレームにパーツを組み込む体裁を取る。甲殻類と脊椎動物の違いと言えばおわかりいただけると思う。

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お粗末な画像だが,洗浄ポンプの度はずれたごつさは何とか伝わるのではなかろうか。とにかくでかくて重い。
 整備性,と書いたが画像の様子に辿り着くまでに内部の錆がひどくなければ十分もかからない。ケーシングのフランジは三本のボルトでとまっており,これを抜いてからボルトを二本使い,ジャッキボルトとして交互に締め込んでいくとフランジが外れてドテッと落ちてくる。使う道具は14mmのレンチだけで,勿論画像の通りポンプ本体はマウントされたままの状態でこの作業は出来、ケーシングの内部が丸見えになる。
 画像で紹介できないのが残念だが,耐食性を重んじてローターの軸はステンレス製,インペラも同じくステンレス削り出しの恐ろしくごついものがついている。

 運転中に洗浄ポンプが誤ってタンクの中に落とした異物を吸い込む,というアクシデントはままあるが,それがスプーンやフォークだった場合,樹脂製のインペラーだとほぼ間違いなく粉々に砕けてポンプは空転する事態に陥る。金属製の場合多くはケーシング内で引っかかりが生じてサーマルトリップ(過電流保護)となる。
 しかしIHIの食器洗浄機に組み込まれるこのポンプは何と、巻き込んだスプーンをインペラが引きちぎってガリゴリガリゴリと異音を立てながら遮二無二回り続けるのである。これまで俺は何度もその場面に遭遇し,ケーシングを開けて中からちぎれたりUの字にへし曲がったスプーンを取出したがポンプの内部が損傷していたことはただの一度もない。 (続く)
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IHI食器洗浄機 JWD-6Cの余生 [修理屋から見た厨房機材]

 前回記事のコメント欄で食器洗浄機の話題が出てきたので,最近のお仕事とも絡めてひとつ記事を書きたくなった。俺が会社員だった頃,某病院に納めた食器洗浄機のことだ。

 そこは築年数の結構古い某町立病院で,長く食器は手洗いだったのだが遅まきながら食器洗浄機を導入したいという予算要求の相談が俺のところにきたのだった。
 将来的には病院自体が移転新築する予定であるが時期が未定なので間違いなく取り壊しまで運用できそうな,場合によっては移設してからも充分な期間運用できそうな機種,というのがその条件だった。

 条件としては更にもう一点あり,設置予定場所の近辺にはガス配管がなく,建物自体も古いので電気容量もない。但し蒸気配管は直近にあるので熱源としてこれを利用したいというご希望である。
 
 条件に適いそうな機種は二つだけだ。
(1)HOBART AM-14
(2)IHI JWD-6
これ以外の選定は全てボツと言っていい。俺はかなり迷ったが結局後者を選んだ。HOBARTの製品の優秀さは認めるが如何せん米国製品だけにこちらで作業ラインを形成すると作業高さが90cm近くなり、東洋人の体格では作業性がよろしくない、それが最終的な決め手だった。

 すすぎに関しては電気容量を最大限押さえる意味で貯湯式ではなく直圧式のスチームブースターを選定した。
温調精度は落ちるし配管もややこしいしで大変だが蒸気熱源となるとさすがにIHIのノウハウは凄い。世界一のボイラーメーカーの圧倒的実力の一端をチンケな厨房屋が垣間みた一場面だった。

 その後約12年,JWD-6はただの一度も故障することなしに3食分365日回り続け,病院は移転新築のため取り壊されることになった。

 減価償却は既に済んでいるがこの機体は廃棄するには勿体ないということで,町役場は撤去後の機体をある備蓄倉庫に保管した。
 そして今年,その個体はあるワイン工場で復活したのだった。
今度は病人の食事ではなく,ティスティングルームで試飲の済んだワイングラスを洗浄するために運用されることになった次第である。

 俺のところに点検整備の依頼が舞い込んできたのは先月半ばのこと。某厨房屋と地元の設備屋で取付け工事を済ませて使い始めたが数ヶ月してから内部で錆が発生してグラスに付着するので解決して欲しいというのがその内容だ。
 既に病院は移転新築し,俺は野良犬修理屋で役場との縁も切れたとばかり思っていた。何かこの巡り合わせに俺は因縁めいたものを感じながら引き受けたのだった。(以下続く) 
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コンボスターのにわか勉強 [修理屋から見た厨房機材]

 これまでスチームコンベクションオーブンと言えば俺の場合はもっぱらラショナルの製品ばっかりだった。これは俺の職業人としての出自上仕方がない。
 もう一つ言えば、スチームコンベクションオーブン(長過ぎるので以下、業界の慣習によってスチコンと略す)は例えばガスレンジのように一つのメーカーをきっちり覚えれば他社製品にも応用が利くことはない。制御の中心はカスタムボードだし最近は特に製品作りの顕著な傾向として、特に欧州系のメーカーは自己診断機能がどんどん発展しているのでエラーコードを覚えていないと手も足も出ないケースが多い。
 更に言えば,これは缶切りの入った缶詰みたいな話で,故障診断のためにはLCDパネルで診断モードを表示させなければならず,そのためにはパスワードを入力させなければならない仕様も増えてきた。こんな風な,ある種蛸壷化はこれから先どんどん進んでいくように予想している。

 最初にこういう,弁解めいたことを書くのは俺にとっての他流試合が控えているからだ。
いつか手がけてみたいとはかねがね思っていたが,コンボスターの製品をいじくり回すことになった。

メーカーURL:http://www.convotherm.com/

 スチコンの開祖と言っていい、由緒あるメーカーなのである。他についても言えることだが開祖の悲劇は安売り競争の二番煎じメーカーにどんどんシェアを喰われていくことだ。 とは言え,ラショナルと並んでワールドワイドでは標準の地位を固めているのは事実だ。
もう一方のスタンダードについて覚えておきたいと考えていたわけだ。

 輸入元は(株)エフ・エム・アイであり、俺のお仕事のクライアントでもある。

輸入元 URL:http://www.fmi.co.jp/products/convostar/index.html

安価なインジェクションタイプであるUNOXを併売するようになってからそちらばっかりが売れると所長殿はこぼす次第。
 以前の記事に書いたことがあるが,インジェクションタイプにれっきとした存在意義はあるが所詮はライトユーザー向けというのが俺の味方である。輸入元が本当に使ってもらいたいのはコンボスターである。

 修理にあたって輸入元からは分厚いメンテマニュアルが届いた。分解図抜きでも優に50ページを超すボリュームで,とてもじゃないか俺の低劣な脳味噌では一晩で覚えきれるような代物ではない。明日はお客さんの前で虎の巻と機体を交互に見ながらぶざまな姿を晒すことになるだろう。

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 コンボスターの優れた点は多々あるが,目立って優れているのはドアの立て付けである。ヒンジで開いたドアが本体側面に収納できる構造になっており,食材の出し入れの際には大変作業性がいい。この一点だけを取り上げてももっと売れて良いメーカーである。
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大和冷機製品の困った傾向 [修理屋から見た厨房機材]

ここ数日かかっていた修理というより整備みたいな作業が今日で一段落してちょっとのんびりした気分でいる。
元記事:汎用温調機による代替品修理
記事URLhttp://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-06-21

今朝,エレクターから庫内ファンモーターが届いたので午後から残り作業に取りかかり完結した次第。
前回作業は午後6時から取りかかって終了は午前2時頃までというロングマッチであり,それ以前に温調機の仕様もろくすっぽわからないまま試行錯誤した一日があるので合計作業時間を全部精算すると結構な請求費用になってしまうが俺もれっきとした納税者だ。(まだちょっと返済中の滞納分があるけどなw)出したものを取り返すことには余念がない。

 エレクターは既にESX(SEXではないぞw俺はしょっちゅう間違えそうになる)のサポートを大分以前に終了しており,補修パーツの有無については現在,都度問い合わせとのことだ。
 今回手配した庫内ファンモーターは保有パーツのうちの最後の二個だったらしいのでこのパーツについてはこれでおしまい。同形品を汎用メーカーから探すのは結構面倒臭いかもしれないが、そもそもESX自体,生き残りの個体が全国的にもう殆ど残っていないらしく、某国立病院に於いてリプレースの話題も特にないので来れから先の俺は毎度暗中模索の修理を行うことになる。まあ,かかった手間の分だけ金をくれればいいだけの話だが。

 ところで,前回の記事で俺はESXが大和冷機のOEMではないかというようなことを書いたがこれには根拠がある。
 今日,冷却ボックスをばらして庫内ファンモーターを交換しながらあらためて感じたのだが、俺がかねがね感じていた大和の製品の良くない一面がESXにも現れているからだ。
 具体的に言うとそれは内部配線についてだ。大和の製品はワイヤリングのセンスが絶望的にない。冷機器類でホシザキ,三洋電機(現パナソニック)と並べてみても電気系の修理だと大和の場合は結構手間取るケースが多かったように覚えている。

 古い時期の製氷機などでそれは顕著で,ホシザキや三洋がプラグインソケットである箇所が大和冷機だとリード線がハンダあげされていたり絶縁閉端子で接続されていたりで余計な作業時間を食ったことが随分ある。
 加えて,これが本当に困った部分なのだが大和の製品の内部配線は極限的に切り詰められている。国内製品でいうと通常,内部配線というのは修理の際のことを考えてある程度のたるみを持たせてある。パーツに結線してから取付ける際に作業し易いようにとか,配線同士の接続の際には圧着工具が入り易いようにという配慮から敢えて少々のたるみを持たせてあるが、大和の製品はそうなっていないことが多かった。こういう傾向は米国製の機器に結構見られる。

 何せ配線長がギリギリなので,絶縁閉端子で繋がっている箇所などは一旦切り離すと再度繋ぐ場合には配線を足し増しして延長しないと繋がらない。
 配線の足し増しをする,ということは絶縁電線一本について2箇所の接続箇所が生まれる,ということは元々の接続箇所の倍になるということだ。同業者諸兄は既にご存知だと思うが絶縁閉端子で接続した箇所というのは意外と配線スペースを食う。
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 そして,特に旧来の大和の製品はこの配線スペースが物凄く狭いのだ。とにかく電気系については徹頭徹尾ギリギリであちこち絶縁閉端子で繋ぐと束ねた配線がケーシング内に収まり切らず閉口する場面に出くわす。
 そんなわけで俺の場合,一時期,大和冷機製の製氷機をいじる時には配線接続には突き合わせスリーブを多用していた。
monotaro_6887587.jpg

 絶縁閉端子であれば一箇所圧着すれば済むところを突き合わせスリーブの場合は二箇所に増えるわけで,こんなところもわずかながら作業に手間取る原因ではある。

 配線材料そのものにも注文を付けたい。
初期の製氷機に使われていた撚り線は普段扱い馴れていたホシザキの製品あたりに比べると芯線の本数が少なく,太いタイプのもので正確に測ったわけではないが配線自体の外径もわずかに細くなるものだった。数字で表せば恐らく数十分の一ミリ程度の違いなのだろうが圧着作業となると結構この違いが無視できない。絶縁閉端子であれ突き合わせスリーブであれ,被覆を剥いて差し込んだ時の感触はややルーズ気味で,JIS規格品でない圧着ペンチを使ってカシメる時にはいい加減にやると圧着が足らずにスリーブがすっぽ抜ける。
 更に言うと,芯線が少なく,各一本一本は太くということは必然的に配線そのものが固く,しなやかさに欠ける。製氷機の場合は稼働中に絶えず色々な微振動が加わっているので大和の製品の場合は断線故障が起きるケースがあった。多くは絶縁閉端子のカシメ箇所やハンダあげ箇所で、熱や塑性変化の影響であると思われた。20年ほど前,マイコン制御になってからの大和の製氷機はこの粗い配線材料をやめてホシザキや三洋と同じような材料に変わったのでこの手の故障はなくなったが断線障害というのは,特に被覆内の断線というのは本当に修理屋を苦しめるものだ。

 以前,三洋の製品についてケチを付ける記事を書いた。
記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-05-11

製氷機に関しては,それでも大和は三洋の次くらいには金がかかっている。冷媒管系統の信頼度はやはり高く,膨張弁が詰まったりガスが漏れたりする障害の発生確率は物凄く低いし,コンプレッサーの交換作業など数えるほどしか思い出せない。(ホシザキの製品については嫌になるほどやったなあ)

 実は製氷機に関してはホシザキ,三洋,大和と三社並べてみて一番安っぽいのがホシザキ製だと俺は考えている。個々の構成パーツはチープなのだがまとめ方がうまいのと製造段階での品質管理に優れているのがホシザキ製氷機の特徴であり,長所でもあるということか。いい意味で家電製品的とも言える。
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ローソンの電気フライヤー [修理屋から見た厨房機材]

 そろそろ始まっているかと思うが、ローソン各店の店舗備品である電気フライヤーがおよそ10年ぶりくらいに変わる。
 俺の知る限りでは最初は米国製Wells(ウェルズ)が指定機器であった。その後、国内製(フジマック)に変わったのが大体10年くらい前でこれから先はニチワ電機が採用される事になる。既に導入は始まっているとの噂も聞くがまだ現物は見ていない。

ウェルズのHP:http://www.wellsbloomfield.com/

 使用されていたのはF-58というオートリフトタイプの卓上フライヤーで,これをスタンドに組み込んで床置式としていた。
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 質実剛健と言うか,アメリカ製とはこういうものだ,という感じの造作である。俺は結構いじくり回した口だがタイマー以外には格別故障した箇所の記憶が殆どない。フライバスケットの昇降動作はカムを介して行われるが駆動するモーターはこれで大丈夫なのかと心配になるくらい小さいが恐ろしくタフで,交換した記憶はない。

 以前にも書いたことがあるが,アメリカ製の食品機械は基本設計は大変優れているがおかず的な付加機能をあとから沢山くっつける小改良にはあまり積極的でない傾向が全般的にあるがウェルズのフライヤーも例外ではない。

 バイヤーであるローソンの希望としては,オートリフト機能を充実させて多くのメニューに対応できるよう,設定時間を多数記憶させる機能が欲しかったと見える。ウェルズの仕様はモータータイマーであって,メニューが異なるとその都度ノブをぐりぐりと回して設定を変えるやり方だったのでこれが面倒臭かったのだろう。

 これを受けて製作されたフジマック製のフライヤーは電気仕掛けを大胆に取り入れたもので,温度感知はベローズ式のサーモではなく測温抵抗体に寄る個体式,オートリフトタイマーはタッチキーによる6 x 2の12個の記憶が可能な多機能版で,一見してわかる現代風の面構えが期待を持たせた。
 弱点はフライバスケットの駆動機構で,駆動機構に油が付着して固形化し、機械抵抗が大きくなるとモーターが焼損するなどのトラブルがあったため,途中で全く新しい設計のリフトユニットを開発して対策を講じたが本家本元ウェルズの耐久性には最後まで追いつけなかったと俺は見ている。
 加えて,タイマー制御の電子化については何と言っても組み込み対象がフライヤーなので油槽からの輻射熱でプリント基板がいかれはしないかというのが懸案ではあった。これについては頻発というわけではないが故障例はやはりあった。電源供給のためのスイッチングレギュレーターも巻き添えを食って憤死,という場面も何度か対応した記憶がある。

 話が本筋から逸れるが,この間セブンイレブンからも揚げ物メニューの店頭販売にあたり開発以来を打診されたことがあったらしい。
 希望の内容は同一外寸で2槽式のオートリフトフライヤーを作って欲しいとのことだったが,内部構造が複雑になり過ぎて出張修理では済まないものになりかねず,この件は流れた。
 結果としてセブンイレブンはタニコーにこの件を持ち込み,製品化を実現させたと聞いている。現物は日頃しょっちゅう目にするが,ウェルズ製,フジマック製,共に小作りな筐体なので修理作業は大変窮屈であるのは経験上思い知らされているのでタニコー製の2槽式となると、これの修理にはあたらない立場で良かったと同業者としては思う。

 ローソン側に話を戻すと,メニューの多様化に伴い数年前より一槽式から2槽式への移行を検討しておりこの開発にに手を上げたのがニチワ電機だったとの伝聞である。

 こうして変遷を辿ってみると気づくが,国内メーカーの開発主眼はもっぱら多機能化に注力されている。しかしメーカーを問わず機器としての信頼度とか耐久性や整備性に配慮されたものは一つもない。むしろそれらを犠牲にしての多機能化という見方が妥当であって、これは変化ではあっても進化ではない。恐らくこれからローソン各店に出回るニチワ製にしても同様だろう。

 俺個人としてはニチワとの関わりはないのでこの先ローソンの仕事はなくなっていくわけだが,負け惜しみではなくローソンの仕事は大して実入りのいいものではなかったので別の稼ぎ口を探せばいいと結構ドライに割り切っている。
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スーパージェットのメンテ講習のため遠征二日間 [修理屋から見た厨房機材]

元の勤務先からのお声掛かりで二日間ほど留守にします。

今回のメニューは スーパージェット という高速オーブンである。
http://www.fujimak.co.jp/contents/hp0088/list.php?CNo=88&ProCon=5

FESJ1502.jpg


フードパークに設営されている店舗とか、カラオケボックスのバックヤードのような半調理品の再加熱には結構重宝がられた機器である。

加熱方法は2種類が組み合わされており,
1:電気を熱源とするジェットインピンジメント(説明すると長くなるが,熱風をスポット状の噴流として食材に吹き付けて加熱する強制対流加熱)
2:高周波加熱(電子レンジでお馴染みのマグネトロンによる)

セールスポイントとしてはとにかく早いの一言に尽きる,
冷凍食品が得意で、直火でないにも関わらず焼き目のつき方はなかなか奇麗である。
但し結構高価な機材であり,全然売れない。(こんな事を書くと元の勤務先から怒鳴り込まれそうだな)

高周波加熱となると気になるのはマグネトロンの寿命であり。初期モデルは何と工業用をおごっていたので無類の耐久性を誇っていた。が,初期モデル特有のインターフェイスの取っ付きにくさと駆動系(電子レンジのようにラウンドテーブル式の焼成皿がある)に信頼度がないことから、当時としては結構画期的な製品だったのだが売れなかった。

 製造元は諦めがつかず,マグネトロンを業務用電子レンジと同じ汎用品にスペックダウンし,インタフェースをもっとわかり易いものにモデルチェンジして値段もぐっと落とした第2世代機をリリースしたのが大体10年くらい前だったか。
 余談になるが,マグネトロンの価格は工業用か汎用品かでかなり違う。本機の用途からいうと中間くらいの能力のものが望ましいのだが目的に合致するものはなかなかないと聞いた。

 それで今回は第3世代機というわけだ。
錆び付いた頭でどれくらい覚えられるかは全然自信がないが若い衆に混じってお勉強。
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三洋電機製品の気になる点 [修理屋から見た厨房機材]

 今ではパナソニックに吸収された三洋電機だが,これまで外食の市場には一定のシェアを確保しており,先々の市場戦略はともかく,現在市場で稼働中の機器類について新体制の元でこの先どれくらい面倒を見てくれるのかについては未知数な部分もあると聞く。

 個人的には,ということは修理屋の立場から見て、と言い換えることも可能だが,三洋電機の製品と俺はあまり相性がよろしくない。汎用の冷凍機類については別の機会に書くとして,業務用の食品機器,厨房機材については,という限定枠でここでの話を進める。

 三洋の製品についてはっきりわかる特徴はビスやボルトにある。三洋の製品というのはとにかく滅多矢鱈にビスが多い。例えば製氷機,国内標準と言って良いホシザキの製品と三洋の製品とを見比べると歴然たる差がある。
 正確に時間を測って比較したことはないが,同じ修理作業をするにしても三洋の製品はホシザキ製に比べて格段に手間取る。例えばホシザキ製品であれば4本くらいのビスを外して辿り着けるパーツに三洋の製品は10本以上のビスが使われているといった具合だ。

 しかも近年特に感じられることだが,どう考えても三洋電機の製品には品質管理状の問題点と思われることがあり,ビスやボルトのトルク管理は明らかに杜撰であり,傾向としてはオーバートルクに偏向している。

(1)ビスの頭がなめている。
(2)塑性域(ねじれが戻らなく,かつ,破断しないでいる状態)まで締め込まれており,ビスを緩める際に頭がねじ切れる。
(3)ワークが樹脂製の場合,オーバートルクによりタップ(ネジ山)が潰れており締め付けが効いていない。或いはひびが入っている。

 三洋の冷機器類は冷蔵ショーケースやチェストフリーザーなど中国製のものも一定割合を占めているが上に書いたような状態はむしろ国内生産された機器類に多い。製造工程に於けるトルク管理なんていうのは生産管理のイロハだが、こんな事も満足に出来ていない。
 それらは無用な故障を招いたり,作業時間のずれ込みとなるわけで修理屋としては迷惑な話だ。

 電気系統について話題を変えると,三洋の製品の特徴はとにかく回路が入り組んでおり、配線がややこしい。
実体を目にして明らかなのはやけにリレーが多い。仮に冷蔵庫や製氷機として同等品を三社,三洋,ホシザキ,大和冷機と並べて比較してみると記述した順番に回路は簡素なものである。比較対象を大和の製品として回路図を見比べてみると,同じ機能をさせるためにどうしてこんなに違うのかと思えるほど配線図のややこしさが異なる。
 俺なりに無理矢理こじつけると三洋の製品はヨーロッパ風,大和はアメリカっぽく中間くらいにホシザキの製品がある。

 技術屋の端くれとして意地悪く三洋の製品の配線図を眺めていると,先に書いた配線のややこしさ,リレーの多さにある種の不自然さを感じることがある。結論から言うと無駄なリレーが多い。もっと具体的に言えばリレーを動かすためのリレーとかスイッチを動かすためのスイッチとかいった個所が三洋の製品には結構多く、これが回路をややこしくしている。
 正直なところそれは回路設計としては洗練されておらず,悪い見本みたいな制御系だと俺は思っている。実際,ある機種によっては配線を変更して幾つかのリレーを省略させながらも出荷時と同じ動作をさせることも可能な場合がある。俺のような田舎の修理屋がそういう拡大解釈も可能なくらい設計としては甘いと言うか緩い。

 本来であれば製造原価を切り詰めるために使用パーツというのは出来るだけ少なく,ということは電気回路としてはシンプルなものを心がけるのが回路設計の鉄則なはずだが三洋はそうではない、何故か?
 使用されているリレーのメーカーは、例えばオムロンだとか松下といった汎用品ではない事に俺はあるとき気づいた。ピンやソケットの互換性はあるがIDE(この辺記憶が曖昧)とかいったようなロゴマークのプリントされた黒いリレーがある時期から多用され始めるようになった。
 三洋の製品以外ではおよそ見かけることのないパーツメーカーだが,不確かな風聞によるとこれは三洋に関係した、半ば身内がかった中国のパーツメーカーであるとかないとか。
 だとすると無用にややこしい回路設計の原因には説明がつきそうだ。要するに,身内のパーツメーカーをどんどん引き立てて量産効果を出すためなのか,と俺は想像している。

 ついでに書くと,この中国製リレーは大変出来が悪く,一時期は故障原因のうち結構な割合を占めていた。ある業務用冷蔵庫があんまり良く壊れるので頭にきて松下のリレーに換装してみたところ故障がぴたっと治まったことが幾つかある。
 メーカーからすれば純正パーツを使わずに代用品で済ます行いは改造に類することであってけしからんのかもしれないが故障なんていうのは少ない方がいいに決まっているのだから文句を言われる筋合いはねえ,と,俺は図々しく構えている。

 不満を書き連ねたが美点がないこともない。
未整理で雑な造りの三洋製品だが金はかかっている。製氷機を例にとるとポンプやファンなどのモーター類はホシザキの製品に比べると格段に耐久性があり,俺としては交換歴が殆ど記憶に残っていないくらいだ。良くホシザキの製品は最初からプロユースを想定しており,対して三洋は基本的に家電メーカーなのだから造りも家電品並みでチャチだという風聞を耳にすることはあるが実は全く逆である。業務用冷蔵庫のメーカー中,唯一三洋だけが自前のコンプレッサーやらモーターを内製できる企業だということは重要だ。

 おおざっぱな対比として,スマートで合理的な造りだが線の細いホシザキに対して不器用で粗い造りだがはらわたには金がかかっている三洋電機,というのが修理屋である俺から見た印象である。
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ロボクープからBLIXERへ [修理屋から見た厨房機材]

 ロボクープと言えばカッターミキサーの代名詞みたいなブランドで、キッチンが一つあれば結構な確率で一台ある機材だ。

 ロボクープのことは以前ひとつ記事を書いたことがある。
フードプロセッサー(カッターミキサー)の選定 URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2009-05-15

 文中でBLIXER(ブリクサー)という製品のことを少し書いたが,ここではもう少し掘り下げて書いてみたい。
 ブリクサーとは一般的なフードプロセッサーに幾つかの追加機能があるものだ。
(1)容器にスクレーパーがついていて運転中に遠心力で外周部に盛り上がった食材を掻き落とす。
(2)容器蓋に穴が空いていて運転中に液状の追加物を入れてミキシングできる。

 文字にしてしまうと格別何ということもない機能に読めるだろうが使ってみると大違いらしい。


 輸入元のURL:http://www.fmi.co.jp/products/blixer/3d.html

発売以来,ボウルの容量3ℓとか5ℓの場合,ロボクープではなくこちらが選定されるケースが増えた。

 競合他社であるクイジナートにはない製品なので,ロボクープ社としてはちょっとしたイメージアップに繋がっているのではないだろうか。
 
 ここから先は修理屋としての都合をちょっと書く。
 ブリクサーはロボクープを基本形としてミキシングボウルや蓋の形状に工夫を加えたものであるように見えるが実はそうではない。全く別の製品であり,パーツの互換性は殆どない。
 決定的に異なるのはモーターで,軸受けの劣化によるベアリング交換がロボクープは可能だがブリクサーは不可能である。ブリクサーに使われているモーターは分解できない構造のもので,障害の発生時にはモーターをそっくり交換しなければならない。ベアリングはおろか,冷却用の羽根さえ補修パーツとしては存在しない。
 購入にあたっては,ここを事前に認識しておいた方が良い。フードプロセッサーの運用期間を仮に8年位と考えた場合,その間にかなり高い確率で軸受けの劣化による騒音発生は起こるからだ。

(追記)この記事を書いている最中に輸入元(株)エフ・エム・アイ様から修理依頼のご連絡があり、偶然だが妙な気分である。俺にとってはここは開業以来お世話になり続けている大変有り難いクライアントなのですよ。
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アンダーカウンタータイプの食器洗浄機考(2) [修理屋から見た厨房機材]

 先日行った某そば屋さんでの食器洗浄機の修理はその後の経過に問題がないため,そろそろ修理代の精算を済ませておこうかと考えている。

 ホシザキの食器洗浄機が営業力頼みではない,マシンスペックが押しも押されもしないだけのものにまで到達したのは俺が今回いじくり回したJW-40TUCあたりからではなかったかと思う。
 以前のエントリーで書いたように,勤め人だった頃を通じて俺にとっての食器洗浄機とはIHIだった。
アンダーカウンタータイプで言うとJMD-3Aに随分力を入れ、残念ながらIHIは食器洗浄機の分野から手を引いてしまったが今でもこれを超えるアンダーカウンタータイプの食器洗浄機は一つもないと断言できる。

以前のエントリーは  http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2009-10-26-1

ishikawajima01.jpg

 少なくとも,俺がそれまで納めたことのあるJMD-3Aは最も古いもので稼働歴20年を超える機体であってもポンプの交換はおろかメカニカルシールさえまだ交換したことはない。嘘でもないが一台もないのだ。一部例外はあるにせよ,ポンプを含めてIHIの洗浄機の耐久性は本当に営業泣かせで一度納めたらまずリプレースなどない。余程のことがない限りその建物を取り壊すまで20年でも25年でも踏ん張り続ける。

 上記のリンク先エントリーでも書いたが
(1)電源仕様3φ200Vのみ
(2)すすぎ用ブースター別置き(しかも別売)
という構成はIHIが頑として譲らなかったものだ。

 今回,ホシザキ製食器洗浄機JW-40TUCの修理で散々手こずり,IHI JMD-3Aが何故そのような構成を取っていたのかがあらためて良くわかった。整備製を損ないたくなかったのだ。裏板を外し,天板を外し,右側板を外さないと洗浄ポンプに触れないJW-40TUCとは違い,JMD−3Aは正面機械室の化粧板を外した後は
 *電装ボックスを外す
 *すすぎポンプを外す
で洗浄ポンプにまで手が入り,恐らくここまでで作業時間としては30分程度で行けるだろう。勿論,正面から全ての作業を行うことが可能であり,洗浄ポンプの交換作業は全部を通じて恐らく,試運転込みで90分を切ることが可能だろうと予想している。

 対してJW-40TUCの場合,正面機械室の化粧板を外した後,
*電装ボックスを外す
*本体タンクのドレンバルブのレバーと取付け板を外す。
*給湯及び排水の配管接続を一旦切り離し,本体をずらして右サイド及びバックスペースを確保
*本体正面上部の操作パネルを取り外す
*天板を取り外す(板金の折り曲げ加工によって引っかかっており,これを外さないとバックパネルが外れない構造!)
*バックパネル取り外す
*右側板を取り外す
*洗浄ポンプの吐出管接続部分のフランジを外す(取り付け時にはちょっとした知恵を労するか,2名で行うかになることを知った)
*洗浄ポンプの吐出管接続部分のゴムホースのバンドを緩めて吐出管のASSYを機体外に取出す。
*洗剤供給用の配管8φくらいのステンパイプを取り外す

という手順を踏む。
 本格的にいじくり回すのは今回が初めてで不慣れなせいもあるのだろうが,今回,俺の作業時間は実に四時間近くを要した。ホシザキのサービスマンであれば手慣れているだろうからもっとさっさとけりを付けるのだろうがそれにしても2時間を切るとはとても思えない。今回のようにフレームの一部切削加工が出れば更に時間が加算される。

 何を言いたいかというと、この所要時間の違いはそのまま修繕費に反映されるということだ。恐らく確実に一万円くらいは違うだろう。
 アンダーカウンタータイプの食器洗浄機の購買者というのは比較的小規模な店舗のオーナーが多いだろうからこの差は結構馬鹿にならないし、修理の所要時間から行っても業務に影響を与えずに済むようなスケジュールの設定が難しくなっても来る。

 違いはこの一万円にとどまらない。
ホシザキに限らず,(三洋電機も同様)アンダーカウンタータイプにしてすすぎ用の貯湯タンク内蔵,ということは機械室部分の実装密度が上がる上にタンクからの輻射熱のため,ゴムなどの高分子系パーツや電装関係の劣化が早い。製造元もここは予見してのことだろうがタンクには断熱用のスポンジが貼付けてあるが10年以上も使用していればこのスポンジが劣化してボロボロになり,熱の輻射量は増す。JW40TUCについてはそれも予見してのことだろうが,すすぎ用ポンプの裏側に排熱用のファンモーターが取付けられているほどだ。しかしこもモーターにしても隈取りコイル型の貧相なもので,さほどの耐久性が見込まれているとは言い難い。

 ホシザキ製のアンダーカウンター食器洗浄機はJW-40TUCからポンプの出力が洗浄用は400W(従来機は250W)すすぎ用も未確認だがそれとはほぼ同等(従来機は未確認だが記憶では150W程度だったと思われる)となり、そのスペックはIHIと肩を並べた。これによってハード的なハンディはなくなりかなりの販売台数をマークできたように見える。
 しかしそれはあくまで初期性能としての話で、経時劣化,耐久性や整備性というところまで推し量ると俺は今でもこの型式には無理な点が残されているように思う。

 こんな事をグダグダと書いてみても全く生産性がない。何だかんだ言ってIHIの食器洗浄機は色々な意味でまずいところがあった。安定度とか耐久性はセールスポイントにはならないという悲しい教訓を残してIHIはこの分野から手を引いたのは事実である。
 俺は心情的に,IHIに肩入れしたい気分なのだが死んだ子の歳を数えるようなもので,これから先天下の石川島が再びこのニッチな分野に再挑戦するとはとても思えない。その後のホシザキ製品はモデルチェンジごとにもっといじり易くなって来ているそうなので、同社の製氷機並みに洗練されたコンストラクションになってくれると俺のようなロートル修理屋にとっては有り難いのだが。(この項終わり)
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アンダーカウンタータイプの食器洗浄機考(1) [修理屋から見た厨房機材]

 先週,某そば屋さんで行った食器洗浄機の修理のことでしばらくぶりに色々と思うところがあったので書き留めておきたい。

 製造元はホシザキ,型式はJW-40TUCといい,製造年度は1994年だから現時点では約18年の稼働歴となる。随分頑張ったもんだ。
 症状としては洗浄ポンプがくたびれており,メカニカルシールがイカれた。それでケーシングから水漏れが起きているのを放置したまま使い続けているうちにモーターに浸水して絶縁不良となった次第。

 どういうわけだか製造元ではなく俺のところに依頼が来てしまい、ホシザキに断りを入れてから現調となった。
 この型式を触るのは初めてだが,内部構造がひどく入り組んでいて分解には大いに難儀した。後でホシザキのサービスマンと話してわかったことだが社内的にもサービスマン泣かせの機種らしい。
2-0528-0702.jpg

画像は本文とは関係ありません


 洗浄ポンプを取出すだけでも大いに手間取ったのだがケーシングを分解してみようとしてフランジボルトを緩め始めると錆びて固着したものが2本あり作業は一旦中断した。
 ケーシングの固定はモーターケースに雌ねじを立ててここにフランジボルトがねじ込まれるわけだが,モーターケースはアルミダイキャストで出来ている。
 経験則としては,アルミダイキャストで錆び付いたとか変形したとかいった場合,うまい抜け道はない。今回のケースでは無理なトルクをかけてボルトを緩めようとするとまず間違いなくボルトはねじ切れて雄ねじ部分がモーターケース内に折れ残る。そうなるともう手の打ちようはない。
 トーチでモーターケースを加熱して膨張させれば固着部分が剥離してうまく外れるのではないかと考えたがケーシングは樹脂製であるためモーターケースからの熱伝導で変形する可能性がありこれも選択肢からは排除された。

 従って不本意ながら,状態としてはメカニカルシールの破損であるが洗浄ポンプを一台そっくり交換する方向性で修繕することに使用者の方にはご理解いただいた。
 18年も使ったのだし本当ならばリプレースを検討して頂きたいのだが,数日前のエントリー記事にもあるようにこの使用者の方もそこそこ年配の方であり,この先数年後にはお店を畳むご予定だとのことで俺の役どころは毎度ながらの終末医療専門みたいな様相である。

 繰り返すが,構造はひどく複雑で,修理作業は難航を極める。おまけに同一使用のポンプはもう製造元が生産終了したらしくホシザキからは代用品としての補修パーツが届いたのだが,これが元々の仕様よりも外寸がでかく,何をどうやっても機体のフレーム内に納まらない。仕方がないのでベビーサンダーを持ち出してフレームの一部を切り欠き,どうにかこうにか納めた。修理というよりも改造に近い。

 そのようにして散々難儀しながらも修理は片付いたのだが、年がら年中この機種の修理を行っているホシザキのサービスマンのことを俺は冗談抜きに物凄く尊敬するようになりつつある。(この項続く)
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板金製品の価格差種明かしと板厚のこと(1) [修理屋から見た厨房機材]

Amazon.comというのは何とも凄いところで,業務用でないとはいえ流し台まで売っている。

屋外シンク 屋外用 流し台 【ザ・シンク 73160228】

屋外シンク 屋外用 流し台 【ザ・シンク 73160228】

  • 出版社/メーカー: LOGOS ロゴス
  • メディア: その他



板金製品には特に機能はないので粗い意味では保守を必要としない。長期使用によってシンクの排水トラップが水漏れを起こしたりはするだろうが交換用のトラップなど金物屋で幾らでも売っているし交換はマイナスドライバーとトンカチがあれば誰でも出来るのでこんなものは修理のうちに入らない。
 だとすれば,新築工事の仕上がり寸法に合わせた製作品でない限り標準的な外形寸法の什器は値段さえ安ければネット通販であっても構わないバイヤーだってそのうち現れてくるのではないか。

 そう,バブルが弾けてからこっち,もう20年もの間,何でもかんでもとにかく安けりゃいいのだ。カタログスペックなんて関係ない,厨房機器なんてどこのメーカーだっておんなじだ、安けりゃいいんだ,安くするのが企業努力なんだ,そんな論調に業界は塗りつぶされて久しい。
 複数の厨房機材メーカーのカタログを見比べたことのある諸兄は比較対象によっては同一外形寸法の機材にどうして大きな価格差があるのかを不思議に思われたことはないだろうか?数%程度の違いならいざ知らず,場合によっては20%くらい違ったりもするが決して根拠のない話ではない。

 一般に,トップ(甲板)の厚みはどこのメーカーも1mmである。外寸で言うと間口が1500mmを超えたくらいのサイズからは1.2mmにスペックが上がるメーカーもある。造作によっては面積が大きくなるとトップがベコベコと凹んだり波打ったりすることがあるからだ。
 稀に,標準的なトップの厚みが1.2mmの製作元もある。たかが0.2mmと侮るなかれ。製作してみるとこれが大違いだ。例えばワークテーブル(作業台)としようか。
t010001446625.jpg

画像は本文とは関係ありません


 貼付けた画像にはW1200という表記があり,間口が1200mmであることを示している。最も良く出回る外形寸法だ。
 先に書いたように,この外寸では一部例外的なメーカーを覗いて全て,1.0mmのステンレス甲板が使用される。現物を見る機会のある諸兄にはこのとき,トップを裏側から(つまりしゃがんで下から見上げるようにして)眺めてみることをお薦めする。製造コストを下げるための手抜きが如実に現れるのがこのアングルからの眺めだからだ。(この項続く)
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モービルシンクのどうでもいい含蓄(1) [修理屋から見た厨房機材]

 食数の多い,例えば300人分くらいの食器をいっぺんに洗うような現場ではコンベアータイプの食器洗浄機の周辺を取り巻くようにして諸々ものカート類が走り回るレイアウトが多い。

 扱う食器がメラミンだとかポリプロのような樹脂製に限定されるのであれば浸漬槽と一体化されたかき揚げ式のコンベアー洗浄機という選定はあるがイニシャルコストはかなりのものになるのとかなり設置場所をとるので俺の知る限り導入例は多くない。

 一般的なコンベアータイプの食器洗浄機の場合は浸漬と下洗いに使われるのがモービルシンクで,乱暴に言えばキャスターのついた移動式の流し台だ。
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 でんぷん質や蛋白質など,いきなり食器洗浄機に放り込むのはまずい食品の付着した食器は事前に一定時間浸漬させておくのが望ましいわけだが固定式の流し台では大きすぎて作業動線上不便が生じる。よってモービルシンクに水をはって浸漬させておき、洗浄機に通すまでの間わきの方へどけておくといった使い方をする。洗うときになってモービルシンクをゴロゴロと洗浄機の方まで押してくるというわけだ。

 水の入った箱を移動する,と,文字で書けばただそれだけのことだが実際そういうものを製作してみるとなかなかうまくいかないことが多い。
 俺自身が製作して納めたものを含めて今まで見た中で『これだ!』と思えたものは一つもない。
失敗例の多くはキャスターの選定にある。
 少し大きめのシンクボウル,外寸で言うとW900 x D750 x H350くらいの内容積で考えてみると,7分目くらいまで水をはった時の内容物の重量は既に160kg位であり,これに食器の重量が加わる。
 経験則から言うと,これくらいの大きさのシンクボウルであるモービルシンクに100φくらいのキャスターがついているものはまず使い物にならない。キャスター単体の耐荷重をカタログスペックで調べてみると楽々クリアーできそうに思えるのだが実際取付けてみると重くて重くてとてもじゃないがおばさん一人の力ではびくともしないのが実情だ。
 このくらいの大きさだとキャスターの最低でもタイヤ径150φくらいのものを選んでおいて、移動の際には二人で扱うことを事前に使用者に言い含めておくのが無難だ。

 ところでどこかのHPを見ていて凄いものを発見した。
http://blog.業務用流し台.jp/?eid=362176

 幅1800×奥行1500×高さ800 槽深350 (mm)のモービルシンクなんだそうだ。こりゃ凄い。
同じく7分目くらいまで水を入れてみた時の重量を計算してみると実に600kgを優に超えるのである。一旦水をはってしまったら二人掛かりどころか四人だって微動だにしないだろう。浴槽だってこんなにでっかいものはそうザラにない。真ん中へんに沈んでいる食器を取出そうとしたら腕が届かない。無理に取ろうとすれば腰が突っ張って傷めることにもなりかねないからかき寄せ用の熊手みたいな道具を傍らに置きながらのお仕事にでもなるのだろう。寸法の表記自体がどこか間違っているんじゃないのかと疑わしい。こんな物体を俺はこれまで見たことがないのだ。しかも画像を見てみると,使っているキャスターのタイヤ径はどう見ても100φくらいしかない。水をはる前から既に移動が大変なのじゃないかと思える。
 どこまで本当なのか知らんがこのモービルシンクが使われているところを一度拝見したい気がする。
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電機メーカーの業務用冷蔵庫 [修理屋から見た厨房機材]

 某総合病院の売店にはその一角にインストアベーカリーの部屋がある。
尤も,と言うか勿論と言うかスクラッチで行っているわけではなく冷凍生地を使った簡易的なベーカーショップである。

 その,病院の売店にて移設工事があったのが昨日の事。
 ドゥコンデショナーとオーブンの組み合わさった『パン職人』なる商品名の機材がある事を俺はこのとき始めて知った。
 松下がこの不毛な業界に今でも見切りを付けずにいるのはある意味偉い。

 移設する事になっていたのは業務用冷凍庫とコールドテーブルだ。いずれも松下ブランドだがこれらは某総合厨房機材メーカーからのOEMである。
 以前は独自仕様のラインナップを持っていた松下だが数年前からついにOEMに切り替えた。このメーカーとは現在の業務用冷蔵庫を共同開発し,冷凍機は完成品を供給しているので持ちつ持たれつといったところなのだろう。

 総合電機メーカーのうち,東芝や日立は前々から自社製品は生産しておらず,ホシザキや福島工業(東芝),大和冷機やレイキ工業(日立)からのOEMを受けている。
 まあこの辺の会社になると業務用の冷蔵庫など全体の事業規模から言えば鼻糞以下のスケールでしかないのだから何もわざわざ自社仕様で作る必要がない。大体,黙っていても専業メーカーがコンプレッサーを買い付けてくれるのだし,それが一台も売れなかったからといっても特段,痛くも痒くもないような大会社だ。

 電機メーカーと言えば,今から20年くらい前に三菱電機の業務用冷蔵庫を修理した事がある。
ドアハンドルに木目調のアクリルプレートが貼られており,ドアの縁にはクロムメッキされたモールが回してある。何とも演歌調というか30年くらい前の白物家電チックなデザインの業務用冷蔵庫だった。
 ものの造りはさすがに天下の三菱電機だけあって業務用の厨房機器メーカーみたいなチンピラ臭い出来ではなかったが、こんなに大真面目な造りではいずれこの分野に嫌気がさして投げ出してしまうのではなかろうかと当時の俺は心配になり、いつの間にかそれは的中していた。現在,三菱電機は業務用冷蔵庫からは一切手を引いている。

 今から一昔以上のある時,当時会社員だった俺は三菱自動車の研究施設と社員宿舎の現場施工を担当していた。
 施設の性質上,ゼネコンは三菱建設,サブコンが空調,衛生設備が新菱冷熱で電気設備は弘電社,設計管理は菱名エステックと何から何まで身内だらけで笑い出しそうなメンツだ。
 このとき,冷機器類の選定は三洋電機のカタログから拾い出した。ロクに調べてもいないのだが三菱電機では既に業務用冷蔵庫の製造は終了していたはずだ。

 それで完成検査のとき,現れた菱名エステックのお偉いさんは厨房を見渡して冷蔵庫が三洋電機である事にいたくご立腹の意を示した。
 「どうしてウチの施設に三洋みたいなメーカーの製品を持ち込むんだ!あなた,一体どういうつもりなのかね!」彼は俺に食って掛かって来たのだった。常識的に言ってウチ(同じ三菱グループという意味でここでは三菱電機の事なのだろう)の製品を使うものではないのか,と彼は続けた。

 身内を大切にする気持ちはある面偉いと思うがこの御仁は何にも分かっちゃいないのだ。
元々,三菱電機製の業務要冷蔵とは物凄くバリエーションが少なくプランニングには大変不便なのもである事が一つ。
 次にであるが、家電製品並みの仕切り価格であるため原価が物凄く高くつく。出来の良さは先に書いた通りだがいいものを作ったから売れるとは限らないのは世の常だし,ましてや業務用の厨房機器なんぞ買い付ける人間が俺を含めてバカばっかりなのだから真面目に作ったって値段が高ければ相手にされず骨折り損なのだって事をご存じないらしい。
 それらをクリアしたところでこの時期,三菱電機では業務用の,それも厨房で使う冷蔵庫など作っていなかったはずなのだからチョイスのしようがない。御仁に納得して頂くのには本当に説明に骨が折れた。

 自動車と電気製品は日本の屋台骨であり世界に冠たる製造分野なのだからこういう考え方やもの言いは全く正しい。しかし厨房屋みたいな三下稼業を同列に見て頂きたくはないのだ。この業界は自動車や電気製品みたいにお行儀が良くはないし立派でもないのだよ。そんな風に見られるのはちょっと辛い。

 結局,所謂電機メーカーのうち,業務用厨房で使う冷蔵庫を今でも自社生産しているのは三洋電機ただ一社となってしまったわけだが,言っては悪いが松下に既に吸い取られてしまった負け組だ。ましてや御三家とは格が大違いでもある。とどのつまりこの分野は総合電機メーカーという巨体の持ち主である日立や東芝,三菱電機から見れば会社の体格にはおよそ不似合いな,それこそ絵に描いたような隙間産業に過ぎないって事なのだ。
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オザキの立ち位置とはどのようなものか [修理屋から見た厨房機材]

 某病院に置いて最近,オザキのスープレンジを修理した。
修理というよりも整備と言った方が実情に近いくらいの大掛かりなもので,外観的なもの以外,つまりフレームとバーナー以外は総とっかえとなった。
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画像は本文とは関係ありません。

 燃焼器具の修理,殊に自然燃焼の裸火で使う機器は作業としては楽な方に属する。
但し今回は少々金がかかった。事前に事務長様ご了承の上での事なので修繕費についてはいいのだが,オザキのパーツ代金は高い。例えばの話,ガスコック一個とってもサーモカップルで点火保持する形式のものだと俺の元の勤務先で製造していたガステーブルに組み込まれていたガスコック(こちらは立ち消え防止の機能なし)の2倍近い値段だ。その上俺のような自営の野良犬業者に対しては現金先払いで入金確認後に出荷とくる。
 現金代引きだろうが何だろうがとにかくおまえにパーツは売りたくない,というタニコーみたいな底意地の悪い会社よりは幾らかマシだがそれにしても強気な事だ。

 しかしだ。その強気なスタンスはきっとオザキという会社にとっては必ずしもプラスに働いていないのではないか。俺の住む土地ではもう大分以前に営業所を閉めてしまったし,時たま元の勤務先に寄ってカタログを貰っても十年一日の如く同じ製品バリエーションで新製品の開発はここ十年以上も目立ったものはない。俺個人の見え方としては現状維持の低空飛行というのが実情ではないだろうか。

オザキのURL:http://www.ozaki-gasrange.co.jp/

 オザキの燃焼器具と言えばコメットカトウといい勝負をするくらいのステイタスである。良質な燃焼器具が欲しいとなれば多少割高ではあってもオザキを選ぶという時期が確かにあった。
 しかしバブル崩壊後のデフレスパイラルや電気厨房の普及などで業務用の燃焼器具一本やりの製品群で直販はせずに卸売りだけ,というスタンスのオザキは徐々にジリ貧の道を辿り始める。
 大きな強みであった日本ガス機器検査協会の認証も総合厨房を手がけるメーカーが次々と取得し,非耐火構造壁であっても密着設置可能な唯一のガスレンジというアドバンテージは既に他メーカーの製品群に肩を並べられて久しい。
 ナショナルチェーンに対して指定器具の承認を取り付けたり,販売力のあるホシザキや北沢産業などに対して積極的にOEM供給を行ったり,あるいはまた燃焼器具ばかりでなく電熱機器類へと製品展開を拡げるコメットカトウに見られる戦略の柔軟性がオザキには見受けられない。良くも悪くも愚直と言うか硬直した姿勢を感じるのは俺だけだろうか?

 詳述すると長くなるのでここは別の機会に詳しく論じてみたいのだが,俺はこの先,電力会社に供給を依存し続けている状況が続くと電気厨房の普及にはいずれ減速が生じ,燃焼器具の導入が見直される局面が生まれてくるように予想している。
 これまで折りに触れて何度も書いてきたが,修繕費だって立派にランニングコストなのだ。電磁調理器の加熱ユニットを一つ交換するとき修繕費が幾らかかるのか諸兄はご存知だろうか?同じ加熱能力のガステーブルを3,4台くらいはフルオーバーホール可能なくらいだと言っても過言ではないのだ。

 既に多くのアドバンテージを失ってしまったオザキのガス器具だが,まだ幾らかは持ち札がない事もない。例えば1レバーで二重バーナーの火力調整を行える機構は未だにオザキのみで,プリセットされた弱火の火力をレバーの定位置で決められるというのは他のどのメーカーにもない。ガスコックの微調整で所定の弱火位置に合わせる煩わしさはオザキの製品にはないし,弱火使用での途中失火に対して立ち消え防止機能を働かす事ができるのも強みだろう(上級グレードのみだが)。
 幾らスチームコンベクションが普及しても加熱テーブルが厨房から消えてなくなる事は絶対にない。少なくとも弱火での長時間調理が多用される洋食系の調理業務に於いてはまだオザキの製品を使うメリットはあると俺は考えている。
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Vintage Dishwasher [修理屋から見た厨房機材]

 アジア市場向けの一部手抜き製品は考えから外すとして,きちんとNSFの認証を取得したホバートの食器洗浄機が売る側からすると痛し痒しの存在なのは間違いない。

 現地法人の社員はしばしば嘆くが,何せやたらと長持ちする。リプレースなんて死語だ。一度納めたらもう、いつまでたっても次なんて売れないのだ。

 得意先である某焼肉店にはAM-14というボックスタイプの食器洗浄機がある。
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 俺が会社員だった頃に納めさせて頂いたもので今から大体20年近く前の事だ。とにかく壊れない。今までの間に発生した呼称など全部そらで言える程度でしかない。
(1)稼働後8年目に本体タンクヒーターのリード線が断線したので交換(ヒーターは大丈夫でした)
(2)稼働後10年目にすすぎ配管のバキュームブレーカーが壊れたので交換
(3)稼働後15年目にドアスプリングが外れて落っこちたので取付け直し
20年近くも動いていて起こった故障がこれだけなのだから次が売れないどころか修理で稼ぐ事も期待できない。本当に,一度納まったらそれっきりというのがホバートの製品である。

 それであるとき,Youtubeの動画をあれこれほじくり返していたら妙なものを見つけた。世界は広いと言うか,上には上があるものだ。稼働歴20年どころか40年というのだからぶったまげる。
URL:http://youtu.be/9mFGwZCaSjE


 型式名はAM-9という。ホバートのボックスタイプ洗浄機の型番末尾の数字はまちまちで必ずしも一つずつ年を取っていくわけではない。現行機種はAM-15でその前がAM-14,その前はAM-12といった具合である。俺がいじくった事のある機種はAM-12が最も古くそれ以前の機種は見た事がない。
 1971年から使い続けているというのだからもう40年にもなる。細部を見ていくと洗浄ノズルアームがステンレスのプレスではなく何と鋳物であるとか洗浄ポンプのマウントの仕方がラックコンベアータイプのCラインと同じだったりとかで、修理屋としては色々な意味で興味深い。
また,洗浄ポンプはケーシングのフランジ部分からシール剤がはみ出しているのが確認できるのでこれまでの間にメカニカルシールの交換歴はありそうだ。まあ40年も使っていればメカシールだって何度かはいかれるだろう。

 以前IHIの社員と雑談したときに,製品開発にあたってホバートの製品をお手本にしたと伺った事がある。コンベアータイプに関しては確かにそうだな,と思えたがボックスタイプについてはうまく連想が働かなかった。しかし今回こうしてAM-9の動画を見つけてこれがJWD-6のお手本だったのだと理解できた。
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 単なる厨房屋であればてきとうに汎用品のポンプを取付けておしまいのところだが,さすがにIHIはマウントしたままでもケーシングを分解してメンテナンスできるようなポンプであることに強いこだわりを見せてわざわざ西島製作所にホバートの内製品に大変似通った構造を持つ(実はもっとごつい)特注品を発注していたのである。

 こちらも稼働25年くらいはザラで一度納めたらそれっきりの代表選手みたいな機種だがさすがに40年動いたという話はまだ聞いていない。いずれにしても機械よりも先に建物の方が参ってしまうんじゃないのかとか,縁起でもない話だが納めた営業担当の方が先に死んでしまうんじゃないのかとかいったクオリティである。

 そしてここが大事なところだが,そういう機械は日本では絶対に売れない。
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ガステーブルについて雑談 [修理屋から見た厨房機材]

 雑用があって元の勤務先に顔を出して油を売っていたときの事。
後任の所長である某氏と雑談しているうちに話題はガステーブルに及んだ。
オザキやコメットカトウといった専業メーカーの製品はさておき,総合機器メーカーの出来映えを同業者視点で論評してみた。

 各社それぞれ圧電着火の内管式,パイロット点火の外管式がある。
実名を出していいものかどうか測りかねているので以下,イニシャルでのみ表記するが諸兄にとっては既に分かりきった話かもしれないし何か厳密に特性を測ってみたわけでもない。あくまで体感的な評価だがおよそこんな性格付けに思えた。

(1)T社の製品は実売価格は物凄く安いが火力はいまひとつ。
(2)M社の製品はT社と大体似たり寄ったりの実売価格で火力で勝るが耐久性に乏しい。
(3)F社の製品は火力,耐久性ともに優れるが実売価格は高い。

FGT90A.jpg
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 製品設計時の想定として,どのくらいの初期性能を持たせてどのくらいの耐久性を見込むかはあらゆる工業製品のスタートラインであるのはいうまでもない。
 俺の勝手な思い込みだがバーナーの発熱量に見合った筐体という何か適正範囲があるはずだ。会社員だった頃に製造部門とこの事であれこれ議論した事があるが,そのバランスについて何か数値化された指針があるかと言うとそんな事はなく,未だにヤマ勘とか手探り,サバ読みで成り立っている製品作りだ。同業他社も大体同じで最適化を突き詰めるといったメーカーなど実はない。

 裸火の熱効率はほぼ35%と考えると発生熱量のうち残り65%は輻射熱や対流としてバーナー周辺にまき散らされる事になる。ガステーブル(ガスレンジも含む)のゴトクと天板とフレームは第一次的にこの65%を受け止めるので大なり小なり歪みや錆が不可避的に発生する。
 つまり無闇と火力のあるバーナーを詰め込めば筐体の骨材や天板はその分劣化の進行が早い。先に上げた3社のそれぞれがどこに重点を置いていてどういった使用者を想定した製造元なのか、という性格付けはこんなところから浮かび上がってくる。

 別の言い方をすればこうだ。
ガステーブルに限らず厨房の機材には明らかにヘビーユーザー向けとライトユーザー向けがある。しかし現実には製造販売している側にも購入する側にも適正な選定がされているかどうかの自覚がなく、市場で稼働している機材には運用目的に叶っていない事がかなり多い。
 俺は営業兼務だった勤め人の頃から事あるたびにこの事を訴え続けているがまともに耳を傾けてくれる事は殆ど全くと言っていいくらいない。機材の購入は全てと言っていいほど購入者の金銭的な事情や感情論で決定されていて製品のスペックが掘り下げて議論される事はまずない。ある意味それは小さいながらも不幸な事だがこの先改善される事もまずなさそうに俺は見ている。 
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