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ボックスタイプ食器洗浄機のドア修理 [修理屋から見た厨房機材]

 今日,ボックスタイプの食器洗浄機を選定する際に洗浄セクションのレイアウトがストレートであるかL字型であるかによって形式を指定することはもうない。
 俺の知る範囲でいうとどの製造元も現在ではボックスタイプの食器洗浄機は3方開きのドア形状ばかりなので作業ラインのレイアウトがどうであれ単一の機種で用が足りるからだ。

 製造元としてはストレートとコーナーとで二つの形式を製造するよりも生産時の効率は良くなるのでそれは商品のコストを下げる働きがあるのだろうし,使用する人にしてみれば突っ立っているフレームがなくなるので作業性は良い。今や2方向開きの無骨な食器洗浄機など用なしというのが趨勢だろう。

 しかし物事,光があれば影を生むもんだ。
単純に二本の樹脂レールの間を平たい板が上下するだけの二方向開きと違い,3方開きはドアローラーを多数使ってレールの間を滑走させるので色々な意味でデリケートな仕掛けだということを使用者は頭に入れておいた方がいい。
 ドアローラーやレール(樹脂製が多い)が破損してドアが引っかかって動かなくなり,使用不可という状況が3方開きでは起こり得るが旧来の2方向では起きない。開閉が渋くはなるが動かなくなることはない。

 3方開きのボックスタイプの食器洗浄機がドアレールやローラーの破損を起こした場合,下の画像のような風景が現れる。
IMGP0246.jpg

 某総合病院の職員食堂に俺が15年くらい前に納めた個体の修理風景である。作業時間にして2時間から3時間,費用にして大体5万強から6万の間くらいは覚悟しておいて頂きたい。
 実際、ドアを取り外すのは結構難儀な作業で一人で行う分には結構な馬力を要するし、楽をしたいと思って作業補助の人手を頼めばその分修繕費は跳ね上がる。

 IMGP0248.jpg

 ドアローラーを新旧並べてみる。右側が劣化したローラーである。ローラーの素材はデルリンであるが,長期の使用によって摩耗しているだけでなく,成形時に混ぜ込んだ可塑剤は抜け切っておりぽろぽろと簡単に欠ける。

 60℃以上のお湯が循環しており,それには今日アルカリ性の洗剤が含まれているという使用環境を考えるとこういったドアローラーにデルリンが向いていないのは明らかだが,だからと言って最適な素材がなかなか見つかりにくい現実もある。厨房機器メーカーなどというのはどこも大した見識はないので何でもいいから安上がりな素材をそこら辺から買い込んできて組み込んでいるのが実情だと俺は見ている。

 ドア周りの造作についてはEU圏の製品(主にドイツ製)ではこの手の障害に出くわした記憶がなく,いずれ機会があれば構造や材料などを調べてみたいと思っている。
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コメント 3

くるみ

当初の仕様では、なかった洗剤等の進化もありますよね。 家庭の調理器具で言えば 今まで使ってた物がIHでは使えなかったり(^^;。フライパンをあおるとゆう自己満足的な動作も出来なくなります(笑)。…話題がずれましたがm(__)m。
by くるみ (2015-09-04 12:16) 

HarryTuttle

 くるみ様,いつもコメントありがとうございます。
洗剤の変化による影響というのは実はあまりなく、食器洗浄機の場合はお湯の温度により樹脂パーツ類の寿命が変化します。
 運転温度が高い状況,ということは汚れがバンバン落ちる運転環境下である程短くなるわけで,重装備の施設で稼働率の高い使用者で見識のある方は機種選定の際に記事にあるような樹脂パーツを多用した食器洗浄機を敬遠する傾向がありました。
by HarryTuttle (2015-09-10 11:29) 

cyberterro

特定の部品が意図的に樹脂パーツで作られ、過大な負荷や長期使用した場合にそのパーツのみが破壊・摩耗して全体を保護する・・・と言った感じ?
でも簡単に交換出来る設計でなかったら意味ないな、その部品が製造中止とかだったら最悪。
by cyberterro (2016-07-20 10:30) 

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