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HOBART FTNのポンプ交換 [日記、雑感]

 ブログを休んでいた間の出来事というか、手がけた修理のことを記録しておく。

 某総合病院で稼働中の食器洗浄機は以前このブログで取り上げたことのあるホバートの製品(ドイツ)で、納入業者は北沢産業,稼働歴は8年目になる。
 以前にも修理がらみでゴタゴタに巻き込まれたことのある因縁つきの個体だ。

関連記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-02-16

 以前の修理依頼では第二タンクのポンプが断線し,これは納入業者の北沢産業が交換したのだが今回は第一タンクのポンプがいかれた。
 どういう理由で俺のところの修理依頼する気になったのかはよくわからないが,金になることなら過去の不愉快な経緯を押さえる程度には俺も大人のつもりでいる。

 この個体は導入後6年で第一タンクのポンプが断線し,8年目の今回はベアリングの劣化による騒音発生から始まって運転温度が上がり,モーターコイルが内部ショートした模様である。
 以前のモデルのFTXは過去,幾つかの個体を整備していたがその頃にはなかった事象であるがモデルチェンジに伴って使用するモーターが変わったようにも見えない。

 交換作業を振り返っての雑感みたいなことを書くと,国内メーカーの製品でのポンプ交換に比べると大変楽な作業だった。
 以下,作業時の画像を脈絡なく貼付けてみる。

IMGP0265.jpg

 FTNの洗浄ポンプは定格2.2kwとなっているが、国内製品に使われる電機メーカーの汎用モーターに比べると小型であり,モーター部分は1.5kwくらいの外寸だ。とは言えしかるべき重量はあるので一名作業の時にはモーターを支持するための補助材を必要とする。
 今回は筐体を利用して2x4のスタッドを使って支持した。現地法人のサービスマンはパンタグラフジャッキを使うのだそうだ。

IMGP0264.jpg

 ポンプの脱着に作業補助の人員を必要としない大きな理由はケーシングがステンレスで出来ているからだ。国内汎用ポンプの鋳物のケーシングに比べると呆気ないくらい軽い。ついでに書くと国内厨房機材のメーカーでこれと同じケーシングを内作出来るメーカーは恐らくないと思う。
 上の画像はケーシングの内部を組み立て終えたところ。インペラーは流用する。画像では見づらいと思うが3mmくらい厚い板を折り曲げて溶接したもので強度は半端ない。溶接などして耐食性に問題はないのかと考えたことがあるがこれまでの経験から言うとFTXのインペラーで溶接箇所がばらけてしまったことはない。

IMGP0262.jpg

 新旧ポンプを並べてみたところ。修理代を抑制するために古いケーシングは流用するが取り付け後の試運転では特に水漏れはなく,精度や強度の高さを実感させる。

IMGP0263.jpg

 EU圏のメーカーの製品は全般的に日本国内の配電事情とそぐわないところがあり、本国で使用している時の耐久性を保てないことが多いが、勘所というか骨格部分の出来の良さは国内メーカーが恐らく100年かかっても追いつけない。
 ポンプをマウントする際に国内製品の大半はボルト穴がずれていたり取り付け面のフランジから水漏れが起きたりすることが多いがこれは板金の材質が悪かったり加工が悪かったりするせいで、数年稼働した食器洗浄機というのはほぼ例外なくタンクが歪んでいる。
 画像にはタンクの突き合わせ部分をアルゴン溶接した跡が写っているがこういう溶接ができる組立工を抱えているメーカーは国内メーカーには全くと言っていいくらいいない。

 IMGP0267.jpg

 ポンプをタンクにマウントしたところ。この上からケーシングのフランジがナット締めされることになるが,取り付けはシビアでインペラーとフランジが擦れてロックしやすく,1ミリ以下での微調整を繰り返しながらフランジ位置をずらし、ちょうどいい取付け位置を探す。実のところ一連の作業の中で最も神経を使うのがここで,時には輸入元でさえ嫌気がさしてフランジをサンダーで削るという荒技で決着を付けることがあるという。今回俺もその誘惑に駆られたがどうにか乗り切った。

 作業開始が午後8時半で終了は確か午前1時を過ぎていたと思うが,所要時間の半分近くがこのインペラーとフランジのあたり調整に費やされていたと記憶している。
 最後の最後に落とし穴というのも疲れるもんだぜ。俺もいい歳なんだからもう少し楽に終わらせて欲しい。
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きたぞう

ご無沙汰しております。
色々あってK社を辞職して以降しばらくこちらのブログからも離れてましたが、
相変わらずこのヤクザな業界に居続けております。

さて本題ですが、
>EU圏のメーカーの製品は全般的に日本国内の配電事情とそぐわないところがあり、本国で使用している時の耐久性を保てないことが多い
と、ありましたが、どうりで前職の製品は故障が多発するポンコツばかりだったと改めて納得しました。
食器洗浄機(特にアンダーカウンタータイプ)はもちろん、スチコンなんかもトラブル続きで苦情が絶えませんでした。
by きたぞう (2015-09-21 09:22) 

HarryTuttle

きたぞう様,お久しぶりです。お元気でしたか?
 EU圏の商用電源は電灯,動力共に日本の約2倍の電圧なので総じて内部配線が細く,ヤクモノ類は日本の電源事情に合わせて変更されているが内部配線はそのままなので日本では電流容量が不足して配線の発熱による被覆劣化や電圧降下などの問題がある,というのが過去痛い目に遭い続けた私の所見です。
 アメリカ製は日本の電圧に近いのでこの手の弊害は少ないですね。

 業界に留まり続けておられることは嬉しいような侘しいような,『同類相哀れむ』でこれから先もやっていきましょう。
by HarryTuttle (2015-09-21 20:36) 

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