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人為的にして作為的な [困った客]

 もう大体20年くらい前からなのだろうが、空冷式冷凍機のコンデンサーフィンが詰まると凝縮不良が起きて冷えなくなるのは冷凍の理屈のうちイロハのイといってもいいくらい一般に敷衍されたものだとある頃からの俺は思うようになった。
 実際,俺が駆け出しのあんちゃんだった頃に比べれば使用者はコンデンサーフィルターの清掃を手がけるようになってきたし,それなりの運転時間が経過しての修理業者によるコンデンサー清掃にしても経費請求はしやすくなった。コンデンサーの凝縮効率が良いというのはどういう状態であり、良い状態を維持するためには手間なりお金なりがかかり続けることが周知されてから大体20年くらいになると言い換えてもいいだろう。

 しかし世の中は広く,色々な人がいる。
機材は大概の場合、基本的には使用者のものだから何をどうしようが、その結果何が起きようがそれは使用者の責任に於いて好きにすれば良く、例えば俺のような外部の修理業者があれこれ口出しする筋合いのものではない。知識なり技能なりがありさえすれば使用者の方自身が修理するのも十分ありだという持論だって俺にはあるのだ。

 自己責任によるメンテは大いに結構。上手くいけば修繕費も浮くしね。わかることは何でも教えますよ、と、日頃常々俺は得意先に伝えているし、事実、いじり方を俺から聞き出して機材の修繕をある程度行う使用者の方はいくらか居る。
 それではおまえの仕事が減ってしまうではないかと心配される人もおられるだろうが心配はご無用であって、俺だって一応はプロの端くれで、だてに30年以上もこの世界で飯を食っている訳じゃないのだ。片手間の機械いじり程度では踏み込めない領域というのはやっぱりあるのだよ。

 それで、正しくない理解のもとに自分のところの機材をいじると何が起きるかの悪しき実例を俺はここで晒そうと思う。
 
 今年の春頃だったと思うが、得意先の某コーヒーショップから製氷機の氷ができない旨のコールを受けて俺はなんだか腑に落ちないものがあった。
 大型スーパーの一角にテナントとして構えているその店は10年近く前にある方からご紹介していただいた得意先で、当時でいうと10年落ち(ということは現在は20年落ちくらいということになる)のホシザキの製氷機が稼働しており、ある経緯があって俺のところに修繕の依頼が来るようになった。

 以来俺は他の機材の修繕も含めて取引を続けさせていただいている訳だが、件の製氷機は2年ほど前にコンデンサーに堆積した埃を洗浄しており、それ以来結構いいコンディションで動き続けてきたはずなのだ。
 しかし電話で色々状況を尋ねると、どうも凝縮不良が起きているらしい。コンデンサーファンモーターがいかれている訳でもなさそうで、これは現場を見てみないと判断がつかないな、と俺は考えた。

 それで現物の機械室カバーを外してみて俺は目を丸くした。諸兄よ、この通りだ。
IMGP0242.jpg

 3列くらいは直してみたがコンデンサーフィンがものの見事に潰れている。まるでこてをあてがってならしたようにコンデンサーの表面は真っ平らで、アルミの地金の真っ白い色をしているではないか。凝縮不良の原因とはこういうことなのだ。

 潰れたフィンを起こして立てればこの不具合は解消するのは容易に察しがつくのだが、一体全体どこの誰がこんなふざけた真似をやらかしたのか。何をどう考えても自然に起きることではない。
 そして当然ながら、文字通りこれはただでは済まんぞ、と俺は多少忌々しい気分になった。修繕の労務は俺のギャラとして割り切ればいいのだろうし、そもそも俺の製氷機でもないのだからあれこれ文句を言う筋のものでもないのだが、このまま放置されていればコンデンサーファンモーターやコンプレッサーにまで障害は波及しかねない。何せ20年落ちの個体なのだから何があってもおかしくないロートルにこういうふざけた真似をするのはなんでだ?
 俺は店舗の主と従業員のおばさんにそれぞれこういう状態は作為的に何かやらかさないとならないもんだと説明して問い質したがどちらもそんな真似をした覚えはないとしらを切る。あり得ない話だ。

 単純労務ではあるがそれなりに時間を要する作業になるから修繕費はある程度見てもらいたい旨を俺は伝え、それは簡単に受け入れられた。
 それで俺はねちねちと精密ドライバーで潰れたアルミフィンを一枚一枚起こしては通風の状態をライトで照らして確認しを延々と繰り返した。
 機械は正直なものでコンデンサーフィンの修復が進むにつれて高圧配管の表面温度は段々下がり始め、結局は30分以内に製氷サイクルが一回終了するくらいのところにまでは持っていくことができた。
IMGP0243.jpg

 なにぶん手作業なので工場出荷の状態にとまではいかないが、運転上問題はない。所要時間がどれくらいだったのかは覚えていないが床にあぐらをかいての作業だったので尻が痛くなった。

 数日してから俺は修理代を集金に行き、もらうものを貰って一区切りをつけた訳だがあれから数ヶ月経ってこの記事を書きながら未だになんだか腑に落ちない気分が残っている。
 2年前にコンデンサーの洗浄かたがたフィルターの清掃やその他あれこれ、俺は結構色々な説明をしているはずなのにその得意先のおばさん達はなぜああいう作為的な障害を引き起こしたのか?
あれこれ考えてもあまり意味がなさそうなのでとにかくこの件はこれで終わり。
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コメント 11

時々拝見中♪

自分はこれ使ってます。
フラットノーズプライヤー
monotaro で¥4,490
http://www.monotaro.com/g/00073563/

自分のは札幌の渡辺食品工業で買ったのですが同じものです。
フィン修正が大変な現場では、中指の第一と第二関節の間に水ぶくれが出来るので、最初からバンソコ貼って修復しています。


by 時々拝見中♪ (2015-08-29 15:39) 

くるみ

風の通りをライトを照らして確認するのですね!! 畑違いながら興味深く拝見している私には感動的でした(>_<)。きっと当たり前の事なんですね? なぜそんな状態になったのかも気になる所ですが(^^;。
by くるみ (2015-08-30 03:47) 

63H

やっぱりおもしろいですね~。管理人さんのブログ。

で、写真にCRCとかアサダのコールドシールドが映ってますが、CRCはわかるとして、アサダのやつはモーター分解とどのような関係があるのですか?
by 63H (2015-08-30 08:52) 

63H

すみません、書くところを間違えました。

by 63H (2015-08-30 08:54) 

HarryTuttle

63H様,ご無沙汰しています。
 ステーターの先端にピンが擦り合わせで刺さっており,これをはずすためにはトーチなどで加温する必要があるかと思って他の箇所の防護のつもりでコールドシールドを持ち込みましたが実際にはピンを抜かなくても作業が完了したので結果としては出番がありませんでした。
 手探りの作業だとついついなくても良い物を現場に持ち込みがちなのが私の性癖のようです。
by HarryTuttle (2015-09-01 09:38) 

007

隠しているわけです、、、
なぜならば自分自身の責任が問われるので、回避のために、自然になった事に装って修理依頼が来ます、、、

当方(修理者)は困惑しますが、雇われ者の人間の弱さ(要領、醜さ?)は、まあ仕方ないですね、。
by 007 (2015-09-02 11:39) 

HarryTuttle

007様,コメントありがとうございます。
仰る通り,こういう場面で正直に白状することがあるのは唯一,その機材の所有者だけ,ですね。

by HarryTuttle (2015-09-02 23:23) 

中古厨房買取

コレはすごく大変な作業をしたことはすごくわかります。
しかも精密ドライバーで直すなんて!
嫌になってきますよね。 僕も経験あります。
僕も一度やってもう2度とやりたくないと思い、
http://item.rakuten.co.jp/astroproducts/2007000008577/
↑ 買いました。
 活躍するときはなかなかないですが、一度使ったら精密ドライバーで気の遠くなる作業をして直すことがばからしくなってきます。
しかも1000円。 でも何年かに1回しか活躍しませんが・・・
by 中古厨房買取 (2015-09-03 22:13) 

HarryTuttle

 時々拝見中様,コメントありがとうございます。
フラットノーズプライヤーも入らないようなフィンの潰れ方,と言うとわかって頂けるでしょうか?
 私は以前,一丁買い込んだことがありましたが,以前油汚れの酷いコンデンサー洗浄の際に使って洗剤がかかり,固着したまましばらく放置して元に戻すのに結構難儀しました。
 そういえば最近しばらく使っておらず,倉庫の肥やしになってます。
by HarryTuttle (2015-09-10 11:36) 

HarryTuttle

中古厨房買取 様,コメントありがとうございます。
フラットノーズプライヤーもそうですが,私の場合以外と出番がなく,常時携行していないので,必要な場面で持参してこなかったことを後悔するわけです。
 私が思うに,フィン修正のハンドツール類はあらかたフィンとフィンの間に閉塞物があることを想定してのものであって、今回のようにフィンが完全に潰れて塞がっている場合は記事にあるように愚直なやり方でネチネチ時間をかけるしか今のところ思いつかないわけであります。
by HarryTuttle (2015-09-10 11:43) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメントありがとうございます。
コンデンサーの裏から光を当てて透過の状況によって詰まり具合を判断する,のが私なりの点検の仕方です。
 コンデンサーフィンの隙間は2ミリ前後で奥行きは50ミリ,或いはそれ以上はありますから今のところこれが最も簡単で確実な方法かと。
 小型で輝度の高いポケットライトが安価で出回るようになってきたことの恩恵ですね。

 あと、こういう状態になった原因はというと,「人為的に潰した」以外には想像できません。やらかしたことを誰も決して白状しないところが困った点なのです。
by HarryTuttle (2015-09-10 11:52) 

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