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至る所にトラップはある [含蓄まがいの無用な知識]

 ブログを休止している間の修理のことを書いておこうと思う。

 FMIからの依頼で山間の某所にアイスクリームのバッジフリーザーの修理に出かけた7月のこと,最初現調に出かけた輸入元のサービスマンは液管の電磁弁からガス漏れがあることを発見し,俺がその後を処置を引き継いだ。

 使用されている電磁弁はごくありきたりなダンフォスの製品で,配管の接続径は 3/8(inch)だそうで、電磁弁は俺が手配して交換することにした。
 輸入元からの依頼事項として,電磁弁の接続形式は元々溶接タイプのものだが,今後同様の障害が出た場合に溶接機なしでも交換可能なようにフレア接続のものに変えてほしい旨のリクエストがあった。

 お易い御用と快く引き受けて現場に乗り込み,冷媒回収の後に溶接機を取出して接続箇所を外しにかかったところ最後にトーチの火が急に赤色になった。酸素ボンベのゲージを見ると空っぽである。
 (やけにタイミングよく酸素がカラになったものだわい)と内心一人ごちながら俺は冷や汗もので電磁弁を取り外した。
 どうせこの先は,接続されていた銅管をフレア加工するのだからもう溶接機に用はない、今日はついているな,と俺は切り離した銅管にフレアナットを差し込もうとして焦った。
 配管が太く,フレアナットが入らないのだ。何かの理由で配管の断面が楕円状に変形したのかとあれこれ試してみたがやはり入らない。フリーザーの冷媒管と元々ついていた電磁弁を睨みつけているうちに俺は声を上げそうになった。
 ハンダであれ,ろう付けであれ,一般にヤクモノの配管接続箇所は内径部分に配管を差し込む前提で呼び径が謳われているが、元々ついていた電磁弁をあらためて問題の冷媒管に元通り差し込んでみると冷媒管は電磁弁の接続箇所の外側に被さるようにしてささり込むではないか。
 要するに,冷媒管が通常俺が使うようなサイズのものではなく,太い。しかし3/8サイズの上と言えば1/2となるのだがそれにしては細い。何とも中途半端に細いというか,太いのだ。中間サイズと言えば7/16だがそんなサイズの銅管を俺はこれ迄見たことがない。大体そんな接続径のヤクモノなどどのパーツメーカーのカタログにも載っていない。
 しかし現実に俺が冷や汗をたらしながら睨みつけている冷媒管は確かに微妙に太いサイズではあるのだ。
その回答は簡単に導ける。持参した3/8の銅管でフレアーソケットを現場製作すれば良いのだ。中途半端に太い元々の冷媒管とぴったり合うように7/16でスウェイジング(オーバーサイズ)させれば帳尻が合うだろう。

 そこでもう一つ,頭の痛い問題が持ち上がってくる。
フレアーソケットの製作は上首尾で収まり具合の悪くない。しかしここで二箇所,溶接箇所が発生するわけだが俺の持参した溶接機は既に酸素がからでガス欠だ、どうするか・・・・・・俺はこめかみを押さえて考え込んだ。
 事情を使用者に話して頭を下げ,酸素の充填を済ませて出直してくるか,と一時的に俺は観念したのだが、山間の農場にもう一度出直してくるのも大儀な気がした。

 俺はギャンブルに出ることにした。
繰り返すが溶接機は酸素がガス欠で使えない。ならば給湯管工事の際にハンダ用に使うガストーチで何とか代用できないか? 
 


 これ迄の経験則や仕事仲間から得た情報で言えば,この手のガストーチでろう付け可能なのは呼び径で言えば1/4迄で,あくまで配管同士の突き合わせ部分に限定であり、それ以上のサイズとか膨張弁やドライヤーなどヤクモノとの溶接は無理,というのが通り相場だった。
 俺は気を取り直し,ダメ元で試してみたのだった。結果は下の画像の通りで何とか問題なく溶接は出来た。
IMGP0150.jpg

 賭けに勝って山場を乗り切った俺はここから一気に作業を進める。
IMGP0151.jpg
 電磁弁のボディを取付けてポンプアウト(真空引き)
IMGP0152.jpg
 修理終わり,一丁上がりだ。
IMGP0153.jpg
 どうにかワンストップで切り抜けて俺は現場を後にしたわけだが,この時にあらためて輸入機械は油断できないもんだとつくづく思った。
 冷媒管の呼び径というのがこのときのトラップだったわけだが,特にヨーロッパ製品はビスやボルトの形状やサイズなど,日本製では通常使われない材料に出くわして立ち往生するケースが少なくない。普段使いのガストーチが何とか使えたのが成功要因であり、さもなければ俺はぶざまに頭を下げて出直すところだった。
 しかしだ,銅管の呼び径で3/8と7/16なんて諸兄よ,ちょっと見ただけでは殆ど見分けがつかないもんだぞ。弁解みたいに聞こえるかもしれないが本当に。

 ブタンガストーチについては近いうちに一つ記事を書いてみたい。
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コメント 4

007

現場修理や改修では何が起こる?か分からないですよね!、、、
故に、お道具備品管理や常用部品補充、想定対応等を最優先課題でやっております、、、一仕事終えても即時確認してますが、ヘトヘト後に実施はストレスが溜まります!!、、、でもやる、でないと次の現場で泣きを見る事に成りますから、、、。
by 007 (2014-12-14 05:49) 

007

P.S.
トーチの使用は難しいですね、、、
以前ビニル配管を曲げる為使用したとき、見事に一本目を焦がしました(汗、恥)、、、
流石にHarry Tuttleさん、お見事です。。。
by 007 (2014-12-14 05:55) 

HarryTuttle

007様,いつもコメントありがとうございます。
>お道具備品管理や常用部品補充、想定対応等を最優先課題でやっております
 さすがですね。私はこういうところが出来ていないのです。
ヘトヘト後にはいつもとっとと寝床に潜り込み,出かける前にはいつも大慌てでドタバタして現場で冷や汗をかくわけです。
 
 しかしまあ,ここで多少,自己弁護というか弁解のようなことを書かせてもらいますと,日常の備品や材料の管理が行き届いてなおわけの分からんハプニングが発生するのも現場の常でありまして,経験則や身に付いた理屈から生まれる閃きによって乗り切るところにある種,ドラマが生まれてきたりもするように思っています。

 PS:ビニル配管のトーチ加工は私は大変下手でいつも焦がします。腕のなさを補うために最近,ヒートガンを買い込みましたがこれだと大変具合がいいです。
by HarryTuttle (2014-12-14 11:50) 

007

>ドラマ・・・その通りでございます、、、
サラリーマン時代から経験を重ねまして、周囲からは「そこまでやる?」とか「粘るなぁ!、業者にまかせたら?」等の批判はありましたが、カマワズやりました、、、自営の今その経験が生きています、、、更には”ピンチはチャンス!”とか”トラブルを楽しんで、自分を俯瞰して観る”ようにしています、、、でも回避後には胃痛がしたりしますが、(冷や汗)、。


by 007 (2014-12-14 19:10) 

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