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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その2) [含蓄まがいの無用な知識]

 俺には構成能力などないのでこの作業についての記述も内容が飛び飛びになるが,今回は庫内での作業のコツみたいなことを書いておく。 

修理の作業に於いて時間を浪費する番狂わせのトップはビスやボルトがなめるとか折れる出来事だ、というの が俺の経験則だが嵌合(かんごう)した擦り合わせ箇所が固着して外れないというのも結構上位に来るのではないか。一度手こずると後戻りが効かずに場合によっては丸一日潰しても解決できないという点で修理屋にとっては難儀な場面であり、駆動系の修理作業では山場と言って良い。

 オーブンの庫内ファンモーターといえばそれらは殆どシロッコファンであり、ファンホイールの取り付けかたはほぼ必ず円柱状のシャフトに差し込んでボルトで固定する。

 これは俺が勤め人だった頃から一貫して変わっていないが、Rationalのコンビオーブンの庫内ファンを分解するにあたってはファンホイールの脱着についてメーカー推奨のギヤプーラーがある。三本爪の物凄くごついプーラーで扱いづらく、社員のサービスマンは脱着作業に於いてしばしばワークであるファンホイールを壊してひどい目にあった例が少なくない。
 俺自身も勤め人だった頃に経験したがメーカー推奨のギヤプーラーは脱着に失敗する確率が低くない。
コンビオーブンの庫内ファンモーターのステーターはファンホイールとの嵌合面がテーパー加工されており,シャフト中心部には雌ねじを切っており,ここにボルトを締め込むことで嵌合させている。
 だから脱着の際には嵌合面が多少の焼き付きを起こしていても,うまく剥離させさえすれば勝負は一瞬で決まる理屈だ。多くのファンモーターはステーターとファンとの嵌合面は断面が平行になっているので擦り合わせ面の長さ分だけジワジワと引き出していかなければならないから整備性という面に於いては大変親切な造りのはずなのだが少なくとも俺の周辺を見る限り何故か元の職場の同僚達は誰もがこのファンホイールの脱着に酷く苦労し,プーラー爪の引っかけの箇所を変形させて手も足も出なくなり,挙げ句の果てにはサンダーを持ち出してファンホイール自体をズタズタの細切れにして顔面は金属粉まみれの苦闘の果てに数時間かけてやっとこすっとこ取り外しの作業を終える憂き目に遭う。

 結局それはメーカーの推奨が間違っているというのが俺の経験則に根差した持論だ。
ファンホイールは決して安いパーツではない。壊さないとモーターがはずれないなんていう設計は常識的に考えてあるわけないのだ。
 俺は会社で働いていた頃,工場の専従者や同僚に自説の正しさを何度となく説いたが誰もが鼻でせせら笑い,脱着にはメーカー推奨の二万円以上もするギヤプーラーを使うものであり,それでうまくいかなければファンホイールを壊して外すのは決しておかしな話ではないのだという定説を頑として譲らない。

 だからここで,俺は自説の正しさを証明したいがためにわざわざこうして図解入りで記事を一つこしらえることにしたのだ。俺は勤め人だった頃、職場で自説の正しさが受け入れられなかったことを根に持っており、その時の腹立たしさをぶちまける機会を待っていたのだ。俺は執念深い性分なのだよ。
IMGP0128.jpg
 ファンホイールとホットエアーヒーターの組みつけられた状態を示す画像だ。外寸をわかりやすくするために中心のボルトを外すためのソケットレンチを引っ掛けた状態で撮影した。ハンドルの全長は大体220mm位なのでファンホイールの直径は大体400mm弱であることを把握して頂けると思う。

 出来の悪いサービスマンの中にはプーラー爪の引っかけ箇所を破損してファンホイールをぶっ壊すためにサンダーを持ち出しての切断作業モードに入ったのがいる。しかし外見からは想像しずらいかもしれないが直径100mmの切断砥石がすんなり入る場所は大して多くないのできれいに真っ二つみたいな切れ方にはならず、あちこち細切れにして作業を進めていかなければならない。切削分は飛び散るわ切断はなかなか進まないわの上に,これはやった者でないとわかってもらえないと思うがオーブンの庫内は音の反響が物凄いのでサンダーの切断音が喧しく,頭痛がしそうな苦行だ。挙げ句の果てにはサンダーを持つ手が滑ってホイールを取り巻くような形状のホットエアーヒーターにヒットさせてしまい,更なる深みにはまり込んで大赤字修理となった大馬鹿者がいる。何を隠そうこの俺だw(笑い事じゃねえよ)
 俺はそういう,過去の失敗を糧としてここでのやり方を思いついた。大した内容ではなく既に同様の方法で従事しているご同業の諸兄はおられるだろうから何を今さらの感はおありだろうが,こうして文字としてネット上に表しておくことにはささやかながら意味はあると俺は勝手に思い込んでいる。

IMGP0129.jpg

 脱着に使う工具はベアリングプーラーである。ワークの引っかけ箇所は丸みをつけた切削加工がなされているのでギヤプーラーではどうしても爪の掛かりが甘くなり、センターボルトを締め込んでいくと腹立たしい位はずれる。引っかかった状態でプーラーのアームが斜めになるのも良くない。中心から円周の外方向に向かって応力の分散成分が発生するので余計はずれやすい理屈だ。
 ベアリングプーラーを使うことの利点は,キャップスクリューを締め込むことでワークを外側からホールドし,ラジアル方向の応力の分散を押さえ込むことが可能なのですっぽ抜けを防止できることが一つと,ギヤプーラーに比べると爪の角度が鋭いのでワークの引っかかりが確実になることだ。

 スムーズな作業遂行のためのコツとか手順のようなことを以下に列記する。
(1)センターのボルト(13mm)は一旦抜き取る。モーターシャフトとファンホイールの嵌合面が露出するのでここにCRCのような潤滑剤をぶっかけて数分放置し,嵌合面に含浸させる。
(2)ハンディトーチで中心部をてきとうに加熱する。ワークが赤熱化するまでは必要なし。殆ど全ての場合に於いて嵌合面は焼き付いて固着しており,常温ではすんなり外れないので熱膨張させることにより嵌合面の剥離を促進させるのが目的だ。
(3)(1)で一旦抜いたセンターの固定用ボルトを何山か分だけねじ込み、ベアリングプーラーをセットする。ボルトの頭にプーラーのセンターボルトが当たる状態にする。それぞれの中心位置がずれていると締め込んだときの力の伝達が行われないので可能な限り目測できっちり合わせる。ワークの中心はまだ熱いので火傷に注意。
 プーラーのアームの平行とセンターボルトの鉛直を補正しながら交互に締めてワークに対する遊びを詰めていくところがコツで、これが上の画像で示した状態である。
(4)普通にセンターボルトを締めると「がっこん」と結構でかい音がしてファンホイールは一瞬で外れる。嵌合面がテーパー加工されていることの有難味を実感する瞬間でもある。外れたファンホイールが固定用のボルトに引っかかってぶらんぶらんしている様子は作業が一区切りしたことを実感させるなw
IMGP0130.jpg

 取り外し終わりの状態。所要時間は大体20分あれば充分だろう。

ここまでで庫内の作業は終わり。残りは外側のモーター取り外しとなる。(以下続く)

追記:しかし自己満足もここに極まれりと言うか,何の役にも立たない記事だ。
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63H

どのタイプのベアリングプーラーですか?
by 63H (2014-05-24 23:38) 

HarryTuttle

63H様、コメントありがとうございます。
タイプを尋ねられて回答できるほど多くの種類を使った事がなく、お答えできる能力は私にないのですが、
使用したベアリングプーラーは二番目の画像に映っています。
私の使用しているものは既に生産終了しており、現在はモデルチェンジ後の製品がリリースされているようです。
http://www.supertool.co.jp/products/products.php?eid=00541

by HarryTuttle (2014-05-25 14:22) 

63H

今日、星崎のサービスマンの車の中をちらりと覗いたら、
介護用品?のデオドラントシートが沢山ありました。
何に使っているのかな・・・?
除霜する際とかにウエス代わりとかでしょうか?
by 63H (2014-05-25 20:17) 

63H

介護用オムツ的なものでした。
by 63H (2014-05-25 20:23) 

HarryTuttle

63H様,返事が遅れました。
ホシザキのサービスマンの件ですが,私が思うには吸水用の補助材料として持ち歩いていたのではないかと思います。だとすると製氷機とか食器洗浄機の修理があったのではないでしょうか。あまり確信の持てない憶測です。
by HarryTuttle (2014-05-29 23:51) 

63H

タブレットからの書き込みでわけの分からない文章になってしまいすみませんでした。
昨日星崎のサービスマンに聞いてみたら、コンプや凝縮器が上に乗っかっている冷蔵庫の凝縮器の洗浄の際に、下に敷いて洗浄すると上手くいくんだと言ってました。
家庭用の冷蔵庫の蒸発器の解氷作業にあれ使ったら嫌がられるだろうな・・・・。
by 63H (2014-06-06 17:59) 

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