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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その1) [含蓄まがいの無用な知識]

 所謂スチームコンベクションオーブンという機材は色々な意味でキッチンのありようを一変させたと常々俺は考えており,このブログでも度々記事にしてきた。
 スチームコンベクションが注目を浴びたのはバブル景気がピークに達した頃ではなかったかと覚えている。俺のように田舎でしか仕事をしたことがない者にとってはコンベクションオーブンと蒸し器がそれぞれあれば済む物を何でこんなややこしく高価な機材が出てきたのかと首をひねったもんだ。どういう用途で使われる物なのかさっぱり見当がつかなかった。
 俺の認識としては,真空調理の加熱機器として導入されたことで注目されたのが最初だったと覚えている。国内での嚆矢は富士急ハイランドリゾートあたりではなかっただろうか。それまでは単にコンベクションオーブンとスチーマーの合体でしかなかった単なる省スペース機器だった物に30℃位からの温調を利かせたスチーミングの機能が加わることで真空調理に於いてはそれまで温度計とにらめっこをしながら付きっきりで湯煎を行う工程が劇的に簡略化された。
 しかしなにぶん,当時は高額な輸入機械しかなかったので導入できる施設はそう多くなく,バッジ処理である形式のせいもあってもっぱら高い客単価の成立するホテルや宴会場に限定されていたように覚えている。元々ヨーロッパで開発され,普及してきた機材であるせいもあり,温度や時間といったメニューごとのパラメータが西洋料理のものしか公開されておらず,和食についてはどういうセッティングで活用すれば良いのかについては国内の扱い商社がそれぞれ手探りが続いていたことも普及までには少し時間を要した理由の一つではある。

 前置きが長いのは毎度俺の悪い癖だ。
ともあれそういう高尚な機材も時間が経つにつれて安売り競争に勝つためだけに作られたようなてきとうな劣化コピー機を国内メーカーは粗製濫造し,冬期間には水道凍結が起こりそうな場所にまで見境なしに押し込みまくってはしょうもない障害を引き起こすのが現在の実相だ。

関連記事名:理科の時間だぜ
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-01-29

 国内に紹介されて以来二十数年を過ぎて今やスチームコンベクションは街場の安宴会専門で冷凍食品とレトルトと缶詰ばっかりのしょうもない居酒屋にまで普及するに至った。
 だから今回俺が手がけたような公立大学の学食にあったとしてもそれは何ら不思議な話ではない。

 今回,備忘録を兼ねた修理記録として記事を書くにあたり,本来であれば庫内ファンモーターの不良判定から始めるのが筋なのだが修理個体は操作パネルの汚れが酷く,表示が大変読みにくいので鮮明度の高い画像を言質では撮影できなかったので交換にあたっての実作業から書き始めることにする。あくまでRational社のオーブンに限定された内容であって他社製品の修理実務に対しては恐らく何の参考にもならないのでこの業務に携わることのない同業者にとってはクソの役にも立たない俺の自己満足でしかない記事であることは始めにお断りしておく。

 修理個体はSCC201という自動調理のアプリを内蔵した2004年製の機種で,リリースされた当初かなりの注目を浴びた。当初の依頼内容は,電源は入るが調理操作を受け付けないというものだ。
 Rational社のコンビオーブンは歴代モデルの製品仕様を調べていくとそのまま業務用厨房機材の電装について当時の最前線が反映されており,なかなか興味深い。
IMGP0121.jpg

 殆ど全ての水経路と電装系が左側面に集中配置されたレイアウトなので、最低300mm程度のメンテスペースを必要とするわけだが納入業者の日本調理機はチンピラまがいの輩ばっかりの厨房屋業界にあっては珍しく折り目の正しいお仕事をする会社で,通路に面するように設置されているため交換作業で窮屈な思いをし,イライラすることはない。

IMGP0122.jpg
 破損したファンモーターの取り付け面を正面から見る。オーブンはカートインタイプなので必然的に上下二個のモーターがついており,今回の破損箇所は上段側である。

 他の施設でも故障例としてほぼ共通するが,上背のあるカートインタイプのオーブンで庫内ファンモーターを二個持つものの場合,故障するのはほぼ決まって上段側であり下段側が故障する確率は大変低い。まじめに統計を取ったわけではないので俺自身の経験則として,としかここでは言えない。
 その理由について愚考するに,使用後のクーリングが充分にされないうちにドアを閉じてしまうような使い方があったとすればその影響ではないかとあるときから推察するようになった。
 庫内が蓄熱しているうちに運転を止めてドアを閉めてしまうと密閉された庫内は自然対流によって当然ながら上部が熱いままになる。上部に集中した熱はファンホイールからステーターに伝導してモーター自体を加熱する。機体は停止しているので当然モーターは回転しておらず,ということは冷却されることもないのでその後数時間にわたって低温ではあるものの加熱され続けることになる。
 これまでこの手の障害を見てきて思うに,故障する上段側のファンモーターの多くは出力軸側の軸受け(ベアリング)が焼き付いているかコイルの絶縁が低下しているかのいずれかであり、いずれも熱の影響と見ることが出来る。

 今回交換対象である庫内ファンモーターについてはモーターとインバーターが一体化されたカスタムパーツであり,そういう仕様であれば尚更熱劣化に対して注意を要するのではないだろうか。
 使用後のクールダウンは使用されているファンモーターの数に関係なく充分に行われるべきだが,上下二個配置されているような構造の場合は特に使用者への指示は徹底すべきだと今回改めて感じる。(この項続く)
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くるみ

家電の話で申し訳ないのですが、一時期 油で揚げないフライヤーが日本初上陸!!なんて話題になりました。その後 類似品らしき物も(多分日本製)も見かけましたが 性能はどうなんでしょう(^^; 価格が劇的に安いのでちょっと疑ってしまいます。修理する前提でなければ遜色ないのかも知れませんね。買う気はありませんが(笑)。 機械の中って配線が凄いんですね!まるで時限装置の爆弾みたいです(>_<)。いつも記事を拝見させて頂き、フライパンや皮剥き機に至るまで 正しい使用方法、しまい方を意識するようになりました(^-^ゞ ありがとうございます。
by くるみ (2014-05-24 10:45) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
油を使わないフライヤーについては私に予備知識がなく、何ともお答えできませんいがスチームコンベクションはこれでも以前の機種から比べればかなり内部がすっきりしてきたのです。
 初期のモデルは実体配線が入り組んでおり,いじり倒すには相応の腕前が要求されましたが今は虎の巻を片手のタッチパネル操作で,これも時代の流れなのでしょう。
by HarryTuttle (2014-05-30 11:47) 

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