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Full Metal Jacket(3) [日記、雑感]

 俺の仕事に就いてあれこれ書かれるはずのこのブログで長々と一本の映画について書き連ねるのは適当でないのだろうが,俺のまとめ方のヘタさ加減のせいでどうしてもこうなる。

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 訓練期間を終えた主人公が配属されたのは後方任務であり,Stars and Stripesという軍隊内の出版物の取材や編集を行う部隊である。
 生きた兵器になり切れない主人公は未消化な部分を残したまま不条理な命の奪い合いに関わる事なく業務を続けるが,テット(旧正月)の攻勢に遭遇し,兵舎を襲撃される事で自分の今いる場所が非日常であり,志願前の日常的感覚ではいられない事を余儀なくされる事実を突きつけられる。

 取材の中の1エピソード。ヘリに搭乗した主人公が非戦闘員まで機銃掃射で撃ちまくる兵隊に問いかける場面

よく女子供まで殺せるな,という主人公からの投げかけに対する答えは「簡単さ。動きがのろいからな」であり「ここは地獄だぜ!」とその人物は高笑いを決める。プロになりきる、というのは例えばこういう事なのだろう。

 映画の後半半ばでで主人公は前線の小隊に合流し、市街戦の前線に放り込まれるのだがこの小隊はベトコンの狙撃兵に翻弄されて次々と戦死者を生み出していき、訓練期間中の同期だったカウボーイも巧妙な狙撃に遭って命を落とす。
 残った兵士たちは狙撃兵が立てこもっていると思しき建物に突撃し、どうにか敵を仕留める。敵はたった一人で、しかも年端もいかない女だ。


 致命傷を負って虫の息の狙撃兵は自分を殺してくれと現地語で訴える。
小隊で生き残った兵士達からは、仲間を殺されたのだから仇を取れという意見とどうせ死ぬのだから放っておけという二つの意見が主人公に向けられ、結果として彼は拳銃で狙撃兵の少女を射殺する。主人公の戦場に於ける初めての殺害戦果確認だ。

 映画の中盤あたりでヘリに同乗して非戦闘員の女子供に向けて無差別に機銃掃射する隊員に向けられる主人公の「よく女子供を殺せるな」という醒めたセリフがあった事を思い出して頂きたい。ゲリラとは言え少女だし、放っておけばどうせ死ぬ者に主人公はわざわざとどめを刺す。彼にはスイッチが入って兵器に化けた瞬間だ。

 主人公の過剰な残忍さを喚起させた原因に戦友を殺された事に対する憤激が働いていたのか、そうではなく殺害戦果を上げるために単に仕事としてそれを行ったのかについてこの映画では特に説明的なセリフやカットがない。おそらく後の方だろう、という暗示がミッキーマウスマーチを合唱しながら行軍するエンディングで示される。人が銃弾で撃たれて死ぬ事が日常的な出来事になりつつある事をここでは示している。傍観者である事は許されず、場合によってはそれは自分が死ぬ事を意味するその場所で、当事者として生き延びたければ自分の中の何かを切り替えて平時の精神生活上で働いている何かを抑圧したり狂わせたりしなくてはならない。最後の行軍中の主人公のモノローグは何とも不気味だ。

 ここでもう一つ、同じような状況下を扱った映画の事を取り上げたい。 
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 こちらはもっとわかりやすい映画で、善の心を持った人間は良い事をし、悪い心を持った人間はひどい事をするという構図で登場人物が描き分けられている。
 
 ここで取り上げた映画は人はしばしば善の心を持ちながら悪い事をするもんだという冷徹な視線で貫かれている。ある種の組織は特に軍隊に限らず、例えば会社だったり宗教団体だったりであっても大なり小なりそういう性格を帯びる。ある目的意識の集合体はかならず組織に属する人間に狂気めいたものを要求するのだと俺は以前から考えている。

 人の生死とは無縁のチンケな私事ではあるが、今から20年以上前のある時、俺はある資格試験を受けるために色々準備をしており、既に受験料も送金済みだったのだが受験日の(それも日曜日だ)二日前になって当時の俺の上司は自分が担当する施行中の現場で追加工事が出たので工期を間に合わせるためにおまえはその資格試験を受験しないで日曜出勤しろという指示が出た。そのクソ会社が既に払い込んだ受験料を負担してくれるわけでもない。
 その時の俺は大いに胸くその悪い思いをした。厨房屋というのは本当にどうしようもなく業界だと頭に来た。些末な事かもしれないが立派にキチガイじみていると思う。(この項続く)
タグ:プラトーン
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くるみ

その映画を観るより解りやすく、頭にも浮かびました。尤も自分で観て分析 考察する事を人任せにしてしまった事になりますがf(^^;。後半の実話の試験を中止させる上司の行為はひどいですね!? 公私共に人の人生を邪魔しちゃダメですよね!! とは言うものの、そんな世の中ですよね…。
by くるみ (2014-04-14 11:57) 

HarryTuttle

 くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
私は勤め人の頃,幾つかの会社を転職しましたがこの業界には酷い職場が多いしロクでもない事は多かったです。最後の職場が悪いやめ方ではなかったくらいでしょうか。

終段の実体験について補足させて頂くと,この日曜出勤は当然ながらサービス残業で時間外手当は一円も出ていません。
by HarryTuttle (2014-04-14 19:35) 

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