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Full Metal Jacket(2) [日記、雑感]

 軍隊を描いた映画の話題は決して場違いではない。会社員だった頃の俺自身の経験を含めてコメントを頂いた厨房二年目様の心象風景と重なるところが結構ありそうに思える。
 付け加えるとこれは軍隊とか戦争とかいった題材を足がかりに,組織と個人という古くて新しいモチーフについての問いかけであるように俺は受け止めている。
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 何も俺ごときがここで講釈をたれなくてもこれまで色々なところで議論され,解説されている映画だがまあ我慢してください。

 兵隊になる,ということは合法的だとは言え殺人者になる事だ。勿論例外はあるが。
それで罰せられる事はないにせよ,日常の感覚として人を殺したい欲求をいつも内在させている人物がいるとすれば疑問の余地なく犯罪者の資質を持っており、そういう人は社会の中では極めて特殊な,ごく少数の存在だ。
 ましてや殺す対象が何の怨恨もない,話をした事も名前も知らない人だとなればこれは普通の感覚で出来るものではない。兵隊になったその人は、素の自分ではない何か別のものに化けることを求められるのだろう。

 常日頃思う事だが,同じ悪い事をするにしても罪悪感を抱きながらやむなく行うのとゲーム感覚の確信犯ではその悪質さに於いて当然大きな違いがある。本当に悪い奴というのは悪事に罪悪感を持たない。良い事,真っ当な事をしていると確信しながら酷い事をする。
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 画像の人物は生まれつきのクズであり,先天的に他人に迷惑をかけるために生まれてきた男であるが,こういう輩とは別種の,一般的な道徳心の持ち主であっても訓練される事によって同じような生き物に変身する事が可能である。

動画のクリップ

 映画の冒頭,海兵隊に入隊した新兵達がみんな頭を丸刈りにされる。個性を否定される,画一化を迫られる。組織に合わせた人格の矯正とはこういうところから始まるのだぞ,という出だしである。
 新兵を整列させて訓練教官のぶつ一節。
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貴様ら雌豚どもが俺の訓練に生き残れたら―――
各人が兵器となる。戦争に祈りを捧げる死の司祭だ 。

その日まではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ。
貴様らは人間ではない。
両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!

貴様らは厳しい俺を嫌う。だが憎めば、それだけ学ぶ。

俺は厳しいが公平だ、人種差別は許さん。
黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん。
すべて―――平等に価値が“ない”!

俺の使命は役立たずを刈り取ることだ。
愛する海兵隊の害虫を!分かったか、ウジ虫!」

 教官である軍曹の大袈裟な激越ぶりを主人公が茶化し,ヤキを入れられる。
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スキン小僧が!じっくりかわいがってやる!泣いたり笑ったり出来なくしてやる!さっさと立て!隠れてマスかいてみろ クビ切り落としてクソ流し込むぞ

 教官の訓練は肉体的にも精神的にも過酷を極める。ついこの間までは女の尻を追いかけ回してはしゃぎ回っていた普通のあんちゃん達を物の数ヶ月でお仕事として赤の他人を殺す殺人マシーンへと変身させていく。この教官の私的な姿は映画では描かれないが、仕事以外では普通の父さんである,ということはよくある話で、彼は極めて職務に忠実で,かつ有能な「調教のプロ」なのだ。

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 調教の効果が出過ぎた男の表情。魯鈍で能天気な男は完膚なきまでに本来的な人格を破壊された後,最優秀クラスの狙撃兵候補として変身するが発狂し,教官を射殺した直後にその銃で自殺する。

動画クリップ

主人公が恐らく生まれて初めて目にする殺人の場面だ。まだ彼は素の自分を残している、言い換えるとまだ未熟であり,なりきれていない。(この項続く)
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