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使用者の半端ない劣化ぶりが将来もたらすもの [困った客]

 最近特に強く思うのだが,色々なことが終わりつつあるような気がしていて,今はその断末魔の中にあるのではなかろうか。

 大きくは,何でもかんでも消費者至上主義みたいな風潮が明らかに行き過ぎたところにまできている。
業界を鳥瞰的に眺めてみると,設備工事がらみの一括納品での契約で追加チャージもなしに補償期間を3年に延長するとか,修理依頼に関してオンコール後2時間以内の訪問を確約するなどといったとんでもない迎合ぶりを見たり聞いたりもして俺は大変イヤな気分になっている。
 その土地に根付いており、購買者と個人的なしがらみのある住設業者や電気製品の販売店がではない。業務用厨房機材のメーカーがこういう馬鹿げた媚びかたをしてアホなバイヤーに取り入っているのだからもう,終わってる。

 メーカーがこういった安請け合いの大風呂敷を重い責任感覚のもとに貫徹するのかというとそんなことはなく、都合の悪いことは例えば俺のような協力会社のところに押し付けられて来る。
 使用者は大概が考えの浅い連中で,大風呂敷を拡げた担当者はアクシデントが起こるとさっさとどっかにトンズラし,現場に現れるのは社員でもない協力会社であることに対してさしたる疑問がないようだ。
 何でもいいからとにかく使えるようになりさえすればいいという考えを非難するつもりはないが、その営業担当者が障害が発生してから収束するまでの間に何故どっかに雲隠れしているのかという疑問は持たないことが大変多い。俺のような立場の者にとってここは癪のタネである。

 この業界を取り巻く構図には大変問題が多く,いずれどこかで全体的な機能不全を引き起こすことはほぼ間違いないと俺は考えているのだが,根本的な原因のうちの一つは使用者であり購買者である人達の無知にある。

*一度購入した機材はいつまで経っても購入当初の状態を保ち続けるものだ。
*故障があった場合は納入元は即応してくれて当日のうちにどんな問題でも解決してくれる。
*修繕費用は文句を言いさえすれば幾らでもタダにしてもらえる。

 書き始めるときりがないが,こんなたわけた考えの大馬鹿者に俺はこれまで胸焼けがするくらい沢山関わってきた。機器類は全知全能の神が造りたもうたものではなく人間が考えて作っているものなのだからどこまでいったって未完成なものだし,これまで繰り返しここでは書いているように利便性とリスクは等価のものだ。社会の構成要員は仙人ではなく霞を食って生きているわけではないから労務が発生すれば同時にコストも発生する。全て当然のことだが何故か俺の仕事の場面ではこれが通用しない。
 このブログを読まれている方の中にはバイヤーや使用者の方はあまり多くないらしいので,俺がここでこういうことを書いても状況には全く何の変化も起こらないのだが,上に青字で書いたようなしょうもない属性はどこかの誰かさんのことではなくお前らのことなのだぞ。

 あるとき何かで読んだか聞いたかしたことがあるのだが,サービス(Service)という英語に置き換えられる日本語は存在しないらしい。周りの人,それが誰であってもいいのだが「サービスってどういう事だと思う?」と訊ねてみるといい,代金をタダにしてもらえること、という答えかたをする人が圧倒的に多いはずだ。何しろある時期までの俺自身がそういう奴だったからこれには確信がある。
 正しくは,『神の代理として行動し,それを受けた側は純粋に感謝の念を持つ』ということだそうだ。これはキリスト教的な社会観であり,人間観である。だから欧米の社会ではサービス業務を行う人に対してチップをはずむという習慣が存在するのである。

 常々書くように,機材に関するコストというのはイニシャルコストだけではないし,修繕費用はれっきとしたランニングコストである。自分は機材を購入したお客様なのだから未来永劫導入したことのメリットを無償で享受し続ける権利があるのであってトラブルが発生した場合には瞬時に解決されるのが当たり前だなどというアホな考えが蔓延するとそれはいずれどこかでクライシスを引き起こす。その萌芽は既に現れているが俺が見る限り誰も問題意識を持っていない。(これについては別の機会に改めて書く予定)

 これはかなり確信のある未来図だが遠からず,故障して機能しない厨房機材に囲まれて手作業に明け暮れる厨房があなたの身辺のあちこちに現れるだろう。それは例えば夫婦二人で営む自営業の飲食店で,席数は30かそこらのところで冷蔵庫が5台もあって食器洗浄機があり,スチームコンベクションや真空包装機まであるようなところから始まっていくだろう。
 厨房を高機能化して調理業務を合理化していくという価値観は既にその足元が崩れつつあり、その根本には『安く済むなら何をやってもいい』というムシのいい感覚があることをバイヤーや使用者達は知っておくべきだ、どうせ聞く耳持たんだろうが。
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くるみ

いつも為になる記事をありがとうございます。読ませて頂いた頃から目からウロコであり自分の考えを改めたり。そして職場の厨房機器環境が大変気になり(^^; 確かに使われなく場所だけ取ってる可哀想な食洗機なんかもありましたm(__)m。サービス…私はぱっと思い付くのは「お客様に居心地よいよう空間やお水、お料理を提供する」という事です。職業柄でしょうか。確かに無料もサービスって言いますね!? 客側から「サービスしてよ」ってゆうのは間違いですね。感謝の気持ちが伺えませんから。
by くるみ (2013-08-11 19:47) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメントありがとうございます。
 大袈裟に聞こえるでしょうが、調理の業務に従事される方々のうちほぼ全てはその設備を使いこなす資質のない人達だと私は考えています。
 お金を払いさえすれば(その機材を導入しさえすれば)スイッチを押したりダイヤルを回したりしているだけでいつまでも利便性が享受できるのが当然だという考えは大変危険なものです。

 福島の原発事故から2年が経ちましたが,ああいう出来事から何も学んでいない人は物凄く多いな,と、最近の私は思います。
by HarryTuttle (2013-08-23 15:39) 

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