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昨年末に手こずった修理の備忘録 (終わり) [お仕事上のぼやき]

 本来,12月30日は自宅の片付けやらで過ごし,ここで本当に俺の仕事納めとするつもりでいたのだが、持ち目の要領の悪さと運の悪さでこの日もドタバタが続く。

最初の記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-06
二回目記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-08

 本件の依頼元からは前日,別件で修理の依頼が来ていたので朝一でこれを片付けた。某そば店のフードミキサー修理で電源プラグの中で断線していただけのちょろいもんだ。万事こんな修理ばかりでひょいひょい片付いていけば俺の仕事は随分楽なのだが。
五回目訪問 12月30日
 
 一旦帰宅して,のんべんだらりとコーヒーを飲んでいると携帯が鳴り,俺は本能的にイヤな予感がした。この日も外はひどい雪降りだ。
 電話の主は問題のオーブン修理の依頼元だ。声は前日よりも一段と暗く,何やら怨念がこもってるかのようでさえあった。内容を聞く以前にその声の調子で何が起こってるのかが俺には何となく予想がつき,それはものの見事に的中した。
 何とか今日,対応してもらえないかと電話の主はすっかり懇願口調だ。
俺の作業に何か手落ちがあったのか,見落としていた何かがあるのか,いずれにしてもオーブンは運転途中にまた電源が落ちて止まってしまったことには違いないのだから平謝りに謝らなければならない。しかしだ,俺の手落ちで何度も同じ箇所がいかれるのならともかく,こうまで何度もモグラ叩きみたいにあっちが壊れ,こっちが壊れで振り回され続けていればもういい加減にしてくれみたいな気分にもなろうというものではないか。俺はすっかりやさぐれていて結構ヤケッパチな口調になっていたと思うが板挟みとなって悩んでいるであろう依頼主殿には申し訳ない振る舞いだったと今は反省している。

 手を付けた以上,区切りのいいところまで取り組むのはプロの端くれとして当然取るべき姿勢だとは肝に銘じている。それまでの数日で他の駆け込み依頼に振り回されてもおり、30日になっても残しはあったので,再々再々修理は午後四時頃の乗り込みとなった。
 
 自分の面付きを逐一見ることは出来ないが,俺は相当憮然としていたか、もしかしたら怒っていたかもしれない。なんだか幾分,殺気立った気分でいたのは事実だ。
 バックヤードに残っていたパートのおばさん達は俺の姿を見ると一様におろおろし始めた。
スチーミングの運転をしているといきなりパネルの表示が消えて停止したと狼狽え気味に俺に伝え,俺から注意をそらすようにして持ち場に戻って仕事を始めた。
 最初,彼女らの態度はごく普通に不便をかこつ使用者のものだった。二度目は多少の不満と揶揄を含んだものに変わり,三度目には憐れみが感じられた。四度目ともなるとそれはもう,関係ないこと,関心を持ちたくないことに見えるということか。幸福そうだったり希望を感じられる見え方でないことは確かだ。

 本題に取りかかる前に俺はモチベーションを高めておく必要があると思った。本当にやる気がわいてこない。
現地法人が既に関心を持っておらず,ロクにサポートする姿勢も見せていないような古い機種,オーブン一台に何でこうも粘着されて時間を取られ続けなければならんか。
 俺はダラダラと外装板を外して内部を調べ始めた。
昨日とは別の箇所のヒューズが一本,機能と同じくガラス管の中が真っ黒になって溶断していた。経路を辿っていくと前日俺のいじったブザーとはまた別の系統であることは判明した。これまで手を入れていないどこか別の箇所であるということはそれではっきりしたわけで,これは新たに金を請求する口実が増えたということでもある。

 金の力は偉大だ。
 請求額が増えるのだとわかると俺の中では何かしらやる気がまたむくむくと湧いてきたのだ。配線を辿り,仔細に調べていくうちに庫内灯に不具合があることを俺は発見した。レンズというかカバーというか,そういう透明の樹脂製の物体にひびが入っていて、取付け部分のガスケットが崩れてなくなっている。
 スチーミングの運転中,そのひびから庫内灯の内部に蒸気が侵入してランプのソケット内部に水が溜まってくる。運転を続けるうちに水位が上がり,どこかの時点で端子に触れてショートする。そういう過程だとすると出来事には整合性が取れる。

 処置としては,一時的に庫内灯の活用は諦めてもらうしかない。取付け箇所を塞ぎ,庫内灯のリード線は回路から切り離すことでまた逃げる。調理に大きな影響があるわけではないのだし背に腹は変えられない。

 前日行ったブザーの切り離しはもしかして俺の誤診ではなかったかと再度配線を繋ぎ直して試運転を行ってみると昨日と同じ箇所のヒューズが切れたので俺の初見については妥当だったことがここで証明された。

 完全な復旧は年明けを待たなくてはならないが,かき入れ時の大晦日にどうにかこうにか間に合ったことの意義はあると思う。俺の歳末は無茶苦茶なものになってしまったが。
 年が明けてから,依頼元からは特に出動要請がない。ということは12月30日までの対応で一区切りはついたと受け止めて良い。
 この日,俺は他にも積み残しやら駆け込みの修理依頼があり,帰宅したのは午後9時を過ぎていた。大変臭面白くない気分で俺はグダグダと夜更かしをし,翌日襲いかかってくるハプニングに気づくわけもなく爆睡した。
関連記事:2012年締めくくりの不幸のこと
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31

 この件での仮処置を一通り,ここで整理してみたい。
(1)サーマル破損・・・接点にジャンパー線挿入により運転
(2)トランスの断線・・・・仮処置不可
(3)ブサーのコイルがレアショート・・・・回路から切り離し
(4)庫内灯カバー破損により漏電・・・回路から切り離し

いや,くたびれた。本当に。一つの個体で日にちを違えて良くまあこれだけ次から次へと壊れるものだ。
17年も使用し続ければこういうことが発生するコンディションになってしまうということでもある。

 結末が見えてしまうとスリルはなくなる。スリルが金になるわけではないので大して意味のない話ではあるが,スリルのない仕事というのはプロを成長させない。まあ,うまくまとまらないがとにかく疲れた。疲れた割には大して金にならんだろう。(この項終わり)
タグ:漏電 短絡 断線
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63H

こんなことを書くと不謹慎ですが「面白かった」です。

管理人さんの心情、お客さんの態度等
私の目の前に映像が出てくるかのようにわかります。

自分の場合は家電メインで、今回のケースとは色々違いますが、
年に2回くらい難修理があります(メーカーのサービスでもよくわからないような・・・)。
でもそれを乗り越えたとき「一皮むける」んですよね~。
で、買い替えで(それはそれでありがたいのですが・・・)結局「何が悪かった」のかわからないまま終わってしまう事もよくあり、微妙な立場の自分に嫌気が差すときもあります。

話の内容が少しずれてしまい申し訳ありません。



by 63H (2013-01-10 13:05) 

HarryTuttle

63H様,コメントありがとうございます。
この記事2件のコメントを一つで返すことをお許しください。

>でもそれを乗り越えたとき「一皮むける」んですよね~。
 「一皮むける」ところが大切なのですね。具体的にその障害を解決できた手法自体は抽き出しにしまい込んだまま再び活用する機会はなかなか訪れないのですが,もっと抽象的ではあるけれど原理的な何か,見方とか考え方がステップアップしているような、変化というよりは進化と呼びたいものをイメージしています。
 最も今の私はもう先の見えたオヤジなので,毎度同じことの繰り返しで稼げれば仕事も楽なのになあ,という怠惰な考えに染まりつつあります。
by HarryTuttle (2013-01-11 10:54) 

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