鉄拳をして知らしめる [日記、雑感]
仕事の間に昼飯を食うために入ったラーメン屋さんにはマンガの本が沢山あり，たまたま手に取ったのが『バンビーノ』というイタリアンレストランで働く調理師が主人公であるものだった。
何と15巻にも及ぶ長編マンガである。
冒頭部分しか読んでいないが，もたつく主人公に先輩のコックが鍋を投げつけたり蹴飛ばしたりする描写がある。
考えてみると近年，キッチンでこういう場面を見ることはほぼ全くと言っていいくらいなくなった。今時こんな事をやっていたら新聞沙汰にでもなってどえらい騒動になるのは請け合いであって、所詮はマンガだ。
現実にこういうことが横行しているとすればそれは先輩の横暴に耐えかねて逃げ出したコックの穴埋めなど無尽蔵にいるような職場なので，それはどんなに就労環境がきつくてもそこで仕事を覚えたい職場と言い換えることも出来るわけだが，そういう一種，虎の穴（これがわかる方は俺同様かなり年配のオヤジということになる）みたいなところは現在ほぼ絶無と言っていいいだろう。
俺は転職歴の多い男で，しかもこれまで大会社とか優良企業とかいったところで働いたことは一度もない。大体厨房業界にそんな会社はただの一つもない。
このことはしつこく何度でも書くが，厨房屋の業界にはそこで長年働いてきたから職業人としての確かな腕や見識があることを証明してくれる職場なんてただの一つのありゃあしないのだ。
にも拘らず，俺の最初の職場には職人仕事にありがちなわけのわからんシゴキめいた風習が一丁前に根付いていた。
俺自身のボンクラさ加減は勿論あるが，年がら年中罵詈雑言を浴び続け，虫けらのように扱われ続け、出勤するのが毎朝いやでいやでたまらなかったもんだ。
当時の俺の上役は実に短気な男でしかも理性的なところがなく，しばしば暴力的な振る舞いに出る実にイヤな野郎だった。背中をどやしつけられる，スパナが飛んでくる，脚立の上からたたき落とされるで俺は連日，アパートに帰ってからは毎晩頭に血が上ってなかなか寝付けないので枕元にノートとペンを置いておき，この男に対する呪詛の文句やあらん限りの悪口雑言を殴り書きして気を鎮めたのだった。
それからかなり長い時間が経ち，俺はその会社を辞めて別の同業者で働くようになっていたある日，俺は偶然その男とある場所で再会した。およそ10年近く時間を隔てたその男は作業服を卒業して営業職となっており，背広姿のせいなのだろうが少なくとも上っ面を見る限りでは常識を弁えた大人であるように感じられた。そして彼は俺に対して、今日日の若い後進には親切に接してやれ，何事も根気よく，懇切丁寧に教えてやれ，怒るな，怒鳴るな，そんなことをしたら今日日の若い衆はすぐに会社を辞めてしまうのだぞ。いいか，社員は会社の宝なのだからあたら無駄に消費するようなことはくれぐれも慎むようにと得々として言い聞かせるのだった。
自分は俺に対して動物に折檻ずくで芸を仕込むようにして無茶苦茶なことをしやがったくせに俺にはそういうことをするなとは一体どういう了見だと俺が言いかけると彼はそれをまるで先読みしていたかのように、
時代が変われば教育の仕方も変わるもんだだとか，当時はおまえ（俺）のことを見込んで敢えて試練を与えただとか，見込みのない奴には怒らないものだだとか，まあ色々な弁解をした。
あとで思うに，この元上役も恐らく，グリーンボーイの頃には殴る蹴るで仕事を仕込まれたのだろう。そういう風習は何代にもわたって継承され続けてきたのではないか。そして不幸にも，この俺の年代がそんなやり方のまかり通る最後の世代だったのではないか。
その後の自分の後輩やら部下やらを考えるに，俺のこの見方は非常に正しい。そしてこれは俺が紛れもなくババ抜きのババを引いた世代であることを表している。
- 作者: せきや てつじ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/03/30
- メディア: コミック
何と15巻にも及ぶ長編マンガである。
- 作者: せきや てつじ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/01
- メディア: コミック
冒頭部分しか読んでいないが，もたつく主人公に先輩のコックが鍋を投げつけたり蹴飛ばしたりする描写がある。
考えてみると近年，キッチンでこういう場面を見ることはほぼ全くと言っていいくらいなくなった。今時こんな事をやっていたら新聞沙汰にでもなってどえらい騒動になるのは請け合いであって、所詮はマンガだ。
現実にこういうことが横行しているとすればそれは先輩の横暴に耐えかねて逃げ出したコックの穴埋めなど無尽蔵にいるような職場なので，それはどんなに就労環境がきつくてもそこで仕事を覚えたい職場と言い換えることも出来るわけだが，そういう一種，虎の穴（これがわかる方は俺同様かなり年配のオヤジということになる）みたいなところは現在ほぼ絶無と言っていいいだろう。
俺は転職歴の多い男で，しかもこれまで大会社とか優良企業とかいったところで働いたことは一度もない。大体厨房業界にそんな会社はただの一つもない。
このことはしつこく何度でも書くが，厨房屋の業界にはそこで長年働いてきたから職業人としての確かな腕や見識があることを証明してくれる職場なんてただの一つのありゃあしないのだ。
にも拘らず，俺の最初の職場には職人仕事にありがちなわけのわからんシゴキめいた風習が一丁前に根付いていた。
俺自身のボンクラさ加減は勿論あるが，年がら年中罵詈雑言を浴び続け，虫けらのように扱われ続け、出勤するのが毎朝いやでいやでたまらなかったもんだ。
当時の俺の上役は実に短気な男でしかも理性的なところがなく，しばしば暴力的な振る舞いに出る実にイヤな野郎だった。背中をどやしつけられる，スパナが飛んでくる，脚立の上からたたき落とされるで俺は連日，アパートに帰ってからは毎晩頭に血が上ってなかなか寝付けないので枕元にノートとペンを置いておき，この男に対する呪詛の文句やあらん限りの悪口雑言を殴り書きして気を鎮めたのだった。
それからかなり長い時間が経ち，俺はその会社を辞めて別の同業者で働くようになっていたある日，俺は偶然その男とある場所で再会した。およそ10年近く時間を隔てたその男は作業服を卒業して営業職となっており，背広姿のせいなのだろうが少なくとも上っ面を見る限りでは常識を弁えた大人であるように感じられた。そして彼は俺に対して、今日日の若い後進には親切に接してやれ，何事も根気よく，懇切丁寧に教えてやれ，怒るな，怒鳴るな，そんなことをしたら今日日の若い衆はすぐに会社を辞めてしまうのだぞ。いいか，社員は会社の宝なのだからあたら無駄に消費するようなことはくれぐれも慎むようにと得々として言い聞かせるのだった。
自分は俺に対して動物に折檻ずくで芸を仕込むようにして無茶苦茶なことをしやがったくせに俺にはそういうことをするなとは一体どういう了見だと俺が言いかけると彼はそれをまるで先読みしていたかのように、
時代が変われば教育の仕方も変わるもんだだとか，当時はおまえ（俺）のことを見込んで敢えて試練を与えただとか，見込みのない奴には怒らないものだだとか，まあ色々な弁解をした。
あとで思うに，この元上役も恐らく，グリーンボーイの頃には殴る蹴るで仕事を仕込まれたのだろう。そういう風習は何代にもわたって継承され続けてきたのではないか。そして不幸にも，この俺の年代がそんなやり方のまかり通る最後の世代だったのではないか。
その後の自分の後輩やら部下やらを考えるに，俺のこの見方は非常に正しい。そしてこれは俺が紛れもなくババ抜きのババを引いた世代であることを表している。
バンビーノ…以前テレビドラマでやってましたね！後に漫画が原作である事を、私もラーメン屋さんで知りました!? 他のそうゆう類いの漫画も含め、確かに時代錯誤ではあるような。現実にその様な職人さんを見ましたが、そうゆう人はただ威張り散らしたいだけのように見えました。実際、私も経験しましたが理不尽に嫌味を言われて、「あんたが憎いんじゃなく可愛いから言うんだよ」と腹の立つ言い訳を(--;) …私も損な時代の最後の不運な人種かもしれません(-゜3ﾟ)ﾉ 歳がバレますねf(^^; でもHarryTuttleさんがされた『仕打ち』は尋常じゃないですね!!
by くるみ (2012-09-25 00:29)