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冷凍機メーカーと工事屋の相性はあるか [修理屋から見た厨房機材]

 某リゾート施設のビュッフェにしつらえられたパススルー形式の特注冷蔵庫修理のことを備忘録風に書き留めておく。

 バブル真っ盛りの頃に出来たその施設は当然ながら現在,老朽化が目立つようになると冷凍機器類の使用冷媒が修理の上で色々な制約をもたらす。
 件のパススルー冷蔵庫に使用されていたのはやはりR-12であり,今回は膨張弁が詰まり,冷えない症状が現れた。修理の依頼元は俺の元の勤務先からで、現調後に営業担当である現所長殿と対処法の協議を行った。

 営業上は既成の(ということはカタログに掲載されているようなスペックの)パススルー冷蔵庫にリプレースしてしまうのが最善だが,あいにく問題の故障機は建築物に合わせて製作された特注品で寸法場収まりがつかないことと、筐体部分はなかなか造りが良く,まだ当分の間は継続使用に耐えられそうなので修理を行う方向性で提案することにした。優に20年を超える運転歴なのだがとどのつまり,業務用冷蔵庫の寿命とは箱の寿命なのであって機能的な問題は大体何とかなるものだ。

 最小限の処置としては膨張弁の交換だが営業サイドとしてはこれまでの稼働歴と得意先の業績がなかなか好調であることを考えあわせて新冷媒仕様の冷凍機交換を得意先に対して提案する線でプランがまとまり,内示を頂いた。

 使用するのは汎用の小型室内用冷凍機で0,25kwのものとした。現状使用冷媒のR-12と似通った特性となるとやはりR-134aのものを選定することになるが,各メーカーのラインナップをあれこれ調べてみると自動的に三洋(現パナソニック)の製品となる。
 改造工事を受け持つ俺はこの時点でR-134aの膨張弁を一つ,問屋に発注しておいた。

 しかし数日して,依頼元である以前の勤務先からは冷凍機は三菱電機製の0.3kw,使用冷媒はR-404Aのものを支給するのでこの前提で工事の準備をしてもらいたい旨の連絡があり,俺はちょっと慌てたと同時に少々の懸念を持った。
 懸念の理由はR-404Aであり,現状の箱の容積と使用温度帯から考えて冷却能力が過剰であり,ショートサイクルが発生しはしないかというのがその理由である。
 依頼元の言い分としては,今回の工事にあたっては冷却器を継続使用することになるため冷媒管は一部変更に留まる。とすると配管内部をフラッシングすることになるのでリプレースキットを用意しているメーカーからの選定となり,必然的に三菱電機製となったとのことだ。三菱電機の製品ラインの中には三洋製と同等品がなく,近い仕様のものとして0.3kw,R-404Aとなったとの説明である。

 俺はR-404A用の膨張弁を発注し直した。懸念はあるが依頼元もれっきとした冷蔵機器の製造元だからして言い分にはしかるべき根拠はあるし,発注元相手に独りよがりな駄々をこねても仕方がない。故障機の冷凍機は三菱電機製でもあるので内部の電気回路から考えて移行が楽だというメリットも確かにある。R-134aとR-404Aでは単価が何倍も違うのでこれは当然,工事代金に反映させざるを得ないが先方が了解済みなのだからそれは心配ご無用,としておこう。

 仔細に書くと長大な話題になるが,冷凍機メーカーにはそれぞれ個性があるように日頃から俺は考えている。値段とバリエーションで三洋,伝家の宝刀高圧チャンバーの高耐久性を誇る日立,省エネ制御で先端をいく東芝,やる気があるんだかないんだか訳の分からん三菱重工といったところか。
 そんな中にあって三菱電機の冷凍機というのはいい意味での無個性さというか、特徴のないところが特徴であるメーカーだと日頃から俺は捉えている。配管系統も電気系統も,総じて奇抜なところはなく教科書っぽい。そしてこれは,大変重要なことである。
 他メーカーに比べて三菱電機の冷凍機は初見の機種を予備知識なしに現場でいきなり触ってもその動作がヤマ勘で何とか把握できるように造られているように思う。これは俺のようなハンチク野良犬業者にとっては都度都度作業現場からメーカに問い合わせて詳細な製品情報を訊ねる手間が省けるので大変有り難いことだ。

 工事そのものは別段問題もなく本日片付けた。
懸念していたショートサイクルの発生については元々の冷凍機が高温用なためか格別大きな問題はなかったが,敢えて緩慢な冷却特性を出すために蒸発圧力を高めに設定しておく必要がある。但し無闇に膨張弁を開けば開いたで今度は液バックを起こしてコンプレッサーをぶっ壊す恐れもあるのでこの辺のさじ加減が,まあ現場技術といった感じか。
 リプレースフィルターは現在,三菱電機だけが用意している親切キットだが値段は高い,外寸はでかいので取付け方の思案で時間を喰う,高圧配管をやり直して真空引きは2回行わなければならない,とどめに再使用は出来ずに一回使用しただけでの廃棄を指示されているなど大して有り難くない物体だが転ばぬ先の杖というか一種安心料として受け入れざるを得ないだろう。まあ今回についてはひとまず上首尾、と自画自賛しておく。

 余談だが,同じ三菱とは言え重工と電機とではだいぶ印象が違うように感じるのは俺だけだろうか。町々に拠点を構える三菱電機ビルテクノサービスの対応は大変フレンドリーで俺のようなチンピラ業者にとっては大変好ましい。他の電機メーカーと比べても同業者にはかなり親切であるが、これが三菱重工になると一転してクソ生意気で高飛車な態度になるのは重工屋共通の体質と見るべきなんだろう。そんなところも相性と言えるか。
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コメント 2

007

三菱ビルテクノさんには、冷熱部も昇降部も良い印象がありました、、、

見積を発注しないと有料である事を宣言出来る・力・があり、、、自信と誇りを感じます、、、

技術的にも色々教えてもらいました。
by 007 (2012-08-11 04:25) 

007

R12時代に仕事に従事し、その後電気へ移行したので大した知識・経験・技術はありませんが、ビル管時代を経験し、三洋は使い易い印象はあります、、、「資本主義社会において安くて良いモノは存在しない」が当てはまらない例だと思います。

冷媒ガスがコロコロ変わり、修理が非常に難しく(めんどうに)なってる現状はありますね。
by 007 (2012-08-11 05:09) 

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