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調子悪い [困った客]

 大きな枠の話などできるだけの度量は元々あるわけがないが、鼻につく事象を断片的に書き留めておきたいとは思っている。

 何というか、人間の質は日に日に劣化しているのではないかという思いが俺にはあって、自分の仕事にもそういう変化に気づかされる場面はあるわけだ。
 そのうちの一つは修理依頼の電話にある。いつの頃からか「○○○が調子悪いから修理してくれや」という使用者からの依頼が増えた。

 「調子悪い」とはどういう事か?何とも漠然とした言い草だ。調子の悪さには色々な事象が想定されるのであって、内容によっては普段使わないような道具立てで乗り込まなければならない可能性はあるので修理屋としては事前にできる範囲で詳細を押さえておきたい。
 それで、状況を知りたいので、とこちらから問いかけると多くのバカ客どもは怒り出すのである。
*「調子悪いって言ってるじゃないか!」
*「修理してくれないのか!」
*「それでもプロか!」
 こういう言い草を聞き続けていると俺の中には段々大衆蔑視思想が醸成されてきそうだ。

 こういうバカどもは例えばの話、自分の自動車が故障して整備工場に持ち込む時には「調子悪い」としか言わないのだろうか。医者にかかる時には「調子悪い」だけで済むのか?世の中自分に関係する森羅万象何でもかんでも「調子悪い」だけで解決してもらえるんだったら誰も苦労なんかしねえんだよ!このノータリンが!と、俺は内心毒づきながらお仕事に取りかかっているのだという事を依頼主は知るべきだが、元々がバカなのだからどうせ自分が他人にバカだと思われている事すら自覚できんだろう。

 俺が駆け出しのあんちゃんだった頃、使用者というのは全般にもう少し理知的だったような記憶がある。
中古市場など無いに等しかったし、実売価格も今よりはずっと高かったので厨房機材を購入するのは覚悟と準備を必要としたし、導入された後は「これを運用する事で経費を浮かして利益を得ているんだ」という意識は今よりはいくらかあったように思う。
 修理依頼の電話を受けていても,やり取りの中でどういう措置を講じるためにどういう装備で訪問すればいいかの想像がつくような伝え方をしてくれる使用者の方は確かに現在よりも多かった。

 我欲という言葉が去年の震災以来良く使われるようになったがこういう状況も当てはまるところはあるのではないか。『調子悪い』と言いさえすれば修理屋が『ハイハイ確かに承りました。何時にお邪魔させて頂きます』とすっ飛んできてお望みの状態に復旧してくれるのが当たり前だと思い込んでいる馬鹿者は想像以上に多いがこっちにしてみれば難儀なことこの上ない。

 一つ気づくのは,こういう横着な依頼の仕方をしてくる奴ほどいろんな場面に於いて他人に対する配慮が欠落している。有り難いお客さんの中には作業中の俺の様子を見て床に敷くためのダンボールを出してきてこれを使ってくださいとか,撤収時に汚れた床を拭こうとし始めると『そこはやっておくからいいですよ』とか言ってくださる例があるが,ここで取り上げるような人種にこういう気遣いは期待できない。

 と、ここまで書いていて思い出したことがある。
具体的にここがこういう風におかしいと言わずにただ漠然と『調子悪い』としか言わずに修理屋を呼びつける人種が明確に一つ俺には記憶されている。
 それはヤクザだ。更に絞り込んで言うと綿飴だのかき氷だのを扱うテキ屋がこういう横柄な振る舞い方をする手合いだ。
 俺が勤め人だった頃,夏頃になると決まって何人かこういう連中が職場に乗り込んできたものだ。かき氷のスライサーを抱えてやおら事務所に入ってきてどすんとカウンターに起き,『調子が悪いから直しとけ』としか言わない。おまけに故障診断も済んでいないうちから『何時頃に使えるようになるのか』と問いつめてくる。そうだ,俺はこういう姿勢をヤクザ特有のものだと思い込んでいたがいつの間にかそうではなくなっていたということなのだ。今では一般の(飲食店に限らずだ)人間がヤクザ化しているということなのだな。

そうそう、
依頼内容は『調子が悪い』としか言わず
訪問時間は使用者の希望を伝えずに『何時に来れるのか』とこちらに言わせようとし
現場に到着すると作業に取りかかった途端に『何分くらいで直るのか』と問いつめてくる
 これは以前,二昔くらい前だとヤクザやそれに類する者に特有の作法だったのだ。他の色々な場面で一般市民のヤクザ化は言われるところではある。俺自身,購入者だの使用者だのの立場になってみると不具合の対応をしてもらうときに業者の謙り具合が異様に思える場面が随分増えた。消費者のヤクザ化というわけかw

書いていて段々イヤになってくるぜ。
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コメント 4

くるみ

本当にそんな人がいるのかと悲しく腹立たしくなりますが、目の当たりにした現実なのですよね!?私の見解では『お金』が諸悪の根元かと。人類、お金が発生してから争いが増えたように社会科で習ったようなf(^^; 使用者も金銭を払うんだからとおごった気持ちになり業者さんに横柄な態度を取るのでは?確かに普段の人間関係に置いても 相手を思いやらない人が増えたと感じるのは、寂しい事ですね(;_;)/~~~ 私も日々 肝に命じて気を付けたいと思いますm(__)m
by くるみ (2012-07-21 00:30) 

DW

ホントにこの手の客が増えましたよね・・。「自分は客」、業者は自分の言う事に従って当然だ、みたいな事を平気で言ってきますね。正直、腹が立ちますね。本来、業者が一段低い訳ではなく、対等の筈なんですがね。売上欲しさで。バ〇な客の我儘を断りもせずに文句も言わずに従ってしまうプライドの無いしょーもない業者が多いのも事実・・。でも私の経験ですが、繁盛している店って業者を大事にしている店の方が多いと思います。業者だって仕事を離れれば客ですからね。自分を馬鹿にする様な店には行かないですよね。
by DW (2012-07-21 00:48) 

HarryTuttle

くるみ様,コメント有り難うございます。
 機械は所詮,人が考えて作るものですからどこまでいっても未完成だしどこかの時点で障害も当然起きるのですが,この手の連中にとってそれは受け入れ難い事象であって何か物凄い被害を被った,という認識なのです。
 私はここで繰り返し書いていますが,利便性とリスクは表裏一体なわけです。自然災害に遭っても原発事故を目の当たりにしても,学ぶ気のない者はいつまで経っても真実に気づかないものですね。
by HarryTuttle (2012-07-21 10:13) 

HarryTuttle

DW様,コメント有り難うございます。
 迎合し過ぎの業者,というご指摘は全く正鵠を得たものだと思います。更に一歩踏み込むと,安易に迎合する業者ほど職業人としての確たるバックボーンが出来ていないとも私は考えています。
 後段についてのご指摘もまさにその通りで,こういう輩共は立場が入れ替わる場面があるという想像は働かないのでしょう。
by HarryTuttle (2012-07-21 10:26) 

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