IHI食器洗浄機 JWD-6Cの余生 (2) [修理屋から見た厨房機材]
久しぶりに見たその個体は,タンクの中が赤錆の色に染まっていた。
使い終わってからタンクの水を抜いていないと言う。工事業者はタンクの水は抜かない方がいいと言っていたのだそうだがとんでもない話だ。
聞けば排水配管接続について,露出した本管に直接繋いでいるので匂いが洗浄機に戻ってくるからタンクの水は抜かない方がいいとか,『アホか』と俺は内心呆れた。
設備屋なのか厨房屋なのか知らんがオーバーブローパイプというものがある以上,タンクの水など抜こうが抜くまいが本管と直接接続すれば匂いが来ることに違いはない。匂いの逆流を止めたいのであれば排水配管途中にトラップを設けるかチャッキ弁を取付ければいいではないか。本当に程度が低い。
錆の発生源についてはすぐに見当がついた。
洗浄ポンプのケーシング内に錆が発生していることには疑問の余地がなかった。
運転は毎日ではなく,週に一回程度でその間タンクのお湯は放置され続けているとの話を職員から聞き取って俺の確信は深まった。
JWD-6の洗浄ポンプは厳つい鋳物のケーシングで内部が塗装されているわけではない。建物の給湯温度は約60℃強あり,これが溜められたまま一週間放置されるのだから錆びないわけがない。
作業内容は以下の通り
(1)ポンプのケーシングを分解して内部をサンドペーパーで擦り錆び落とし
(2)ケーシングのドレンプラグを外して3/8の枝配管を設けケーシング排水用のバルブをつける。
(3)皮膜形成用の固形薬剤をしばらく運転しながら使ってもらう。
俺はポンプの分解に取りかかった。
画像は作業途中の様子で,ポンプのケーシングを取り外したところだ。手前側にある赤錆だらけの丸い物体はケーシングの一部でフランジ状の形をしている。
IWD-6の特徴の一つはその整備性の良さにある。特にこのポンプは特筆ものの出来だ。
IHIの食器洗浄機は廉価なものを除くとモーター類は必ず東芝製である。この辺は兄弟会社の縁なのだろう。
汎用品のポンプを仕入れてきて組み込むしか能のない厨房屋の製品とは違って食器洗浄機用に特化したポンプを製作できるところがこういった大会社の底力だ。
ベースモデルは東芝製の汎用品だがケーシングに工夫がある。製造元は西島製作所という。
一般的なラインポンプは大体15m位の揚程だが食器洗浄機の場合はせいぜい1mちょっとあれば良いので,その分とにかく流量を稼ぐ設計である。循環量は実測で650ℓ/minを超え、他メーカーのボックスタイプ洗浄機に比べると明らかに30%以上の能力を持つ。勿論インバーターを用いて回転数を上げるといった小細工なしでこの数字だ。
結果としてでかいケーシングを持つ,およそボックスタイプらしからぬ図体のポンプが押し込まれている。当然物凄く重く、とてもじゃないが一人で取り外してハンドリングできたものではないのでこれを支える意味もあり,JWD-6の筐体はステン板の折り曲げ細工ではなく,アングルで構成されたフレームにパーツを組み込む体裁を取る。甲殻類と脊椎動物の違いと言えばおわかりいただけると思う。
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お粗末な画像だが,洗浄ポンプの度はずれたごつさは何とか伝わるのではなかろうか。とにかくでかくて重い。
整備性,と書いたが画像の様子に辿り着くまでに内部の錆がひどくなければ十分もかからない。ケーシングのフランジは三本のボルトでとまっており,これを抜いてからボルトを二本使い,ジャッキボルトとして交互に締め込んでいくとフランジが外れてドテッと落ちてくる。使う道具は14mmのレンチだけで,勿論画像の通りポンプ本体はマウントされたままの状態でこの作業は出来、ケーシングの内部が丸見えになる。
画像で紹介できないのが残念だが,耐食性を重んじてローターの軸はステンレス製,インペラも同じくステンレス削り出しの恐ろしくごついものがついている。
運転中に洗浄ポンプが誤ってタンクの中に落とした異物を吸い込む,というアクシデントはままあるが,それがスプーンやフォークだった場合,樹脂製のインペラーだとほぼ間違いなく粉々に砕けてポンプは空転する事態に陥る。金属製の場合多くはケーシング内で引っかかりが生じてサーマルトリップ(過電流保護)となる。
しかしIHIの食器洗浄機に組み込まれるこのポンプは何と、巻き込んだスプーンをインペラが引きちぎってガリゴリガリゴリと異音を立てながら遮二無二回り続けるのである。これまで俺は何度もその場面に遭遇し,ケーシングを開けて中からちぎれたりUの字にへし曲がったスプーンを取出したがポンプの内部が損傷していたことはただの一度もない。 (続く)
使い終わってからタンクの水を抜いていないと言う。工事業者はタンクの水は抜かない方がいいと言っていたのだそうだがとんでもない話だ。
聞けば排水配管接続について,露出した本管に直接繋いでいるので匂いが洗浄機に戻ってくるからタンクの水は抜かない方がいいとか,『アホか』と俺は内心呆れた。
設備屋なのか厨房屋なのか知らんがオーバーブローパイプというものがある以上,タンクの水など抜こうが抜くまいが本管と直接接続すれば匂いが来ることに違いはない。匂いの逆流を止めたいのであれば排水配管途中にトラップを設けるかチャッキ弁を取付ければいいではないか。本当に程度が低い。
錆の発生源についてはすぐに見当がついた。
洗浄ポンプのケーシング内に錆が発生していることには疑問の余地がなかった。
運転は毎日ではなく,週に一回程度でその間タンクのお湯は放置され続けているとの話を職員から聞き取って俺の確信は深まった。
JWD-6の洗浄ポンプは厳つい鋳物のケーシングで内部が塗装されているわけではない。建物の給湯温度は約60℃強あり,これが溜められたまま一週間放置されるのだから錆びないわけがない。
作業内容は以下の通り
(1)ポンプのケーシングを分解して内部をサンドペーパーで擦り錆び落とし
(2)ケーシングのドレンプラグを外して3/8の枝配管を設けケーシング排水用のバルブをつける。
(3)皮膜形成用の固形薬剤をしばらく運転しながら使ってもらう。
俺はポンプの分解に取りかかった。
画像は作業途中の様子で,ポンプのケーシングを取り外したところだ。手前側にある赤錆だらけの丸い物体はケーシングの一部でフランジ状の形をしている。
IWD-6の特徴の一つはその整備性の良さにある。特にこのポンプは特筆ものの出来だ。
IHIの食器洗浄機は廉価なものを除くとモーター類は必ず東芝製である。この辺は兄弟会社の縁なのだろう。
汎用品のポンプを仕入れてきて組み込むしか能のない厨房屋の製品とは違って食器洗浄機用に特化したポンプを製作できるところがこういった大会社の底力だ。
ベースモデルは東芝製の汎用品だがケーシングに工夫がある。製造元は西島製作所という。
一般的なラインポンプは大体15m位の揚程だが食器洗浄機の場合はせいぜい1mちょっとあれば良いので,その分とにかく流量を稼ぐ設計である。循環量は実測で650ℓ/minを超え、他メーカーのボックスタイプ洗浄機に比べると明らかに30%以上の能力を持つ。勿論インバーターを用いて回転数を上げるといった小細工なしでこの数字だ。
結果としてでかいケーシングを持つ,およそボックスタイプらしからぬ図体のポンプが押し込まれている。当然物凄く重く、とてもじゃないが一人で取り外してハンドリングできたものではないのでこれを支える意味もあり,JWD-6の筐体はステン板の折り曲げ細工ではなく,アングルで構成されたフレームにパーツを組み込む体裁を取る。甲殻類と脊椎動物の違いと言えばおわかりいただけると思う。
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お粗末な画像だが,洗浄ポンプの度はずれたごつさは何とか伝わるのではなかろうか。とにかくでかくて重い。
整備性,と書いたが画像の様子に辿り着くまでに内部の錆がひどくなければ十分もかからない。ケーシングのフランジは三本のボルトでとまっており,これを抜いてからボルトを二本使い,ジャッキボルトとして交互に締め込んでいくとフランジが外れてドテッと落ちてくる。使う道具は14mmのレンチだけで,勿論画像の通りポンプ本体はマウントされたままの状態でこの作業は出来、ケーシングの内部が丸見えになる。
画像で紹介できないのが残念だが,耐食性を重んじてローターの軸はステンレス製,インペラも同じくステンレス削り出しの恐ろしくごついものがついている。
運転中に洗浄ポンプが誤ってタンクの中に落とした異物を吸い込む,というアクシデントはままあるが,それがスプーンやフォークだった場合,樹脂製のインペラーだとほぼ間違いなく粉々に砕けてポンプは空転する事態に陥る。金属製の場合多くはケーシング内で引っかかりが生じてサーマルトリップ(過電流保護)となる。
しかしIHIの食器洗浄機に組み込まれるこのポンプは何と、巻き込んだスプーンをインペラが引きちぎってガリゴリガリゴリと異音を立てながら遮二無二回り続けるのである。これまで俺は何度もその場面に遭遇し,ケーシングを開けて中からちぎれたりUの字にへし曲がったスプーンを取出したがポンプの内部が損傷していたことはただの一度もない。 (続く)
食器洗浄機…私は規模の小さい物しか出会ってませんし、中古しか出会ってませんm(__)m 確かに使い手は使い方を間違ってるのは多々あります!?任せきりなのです。私は下の者なので指摘も出来ず(+_+) こっそりメンテ?をしてますがf(^^; ブログを拝見させて頂き私自身も勉強させて頂き、ちかしい食器洗浄機には思い入れがわき、大切に扱うようになりました。ありがとうございます(^^ゞ
by くるみ (2012-07-09 00:14)
洗浄機でタンクの水を替えない・・・・・・。それで洗う食器って衛生的に非常に危険ですね。世間一般では、「洗浄機にかけた食器は全て綺麗になっている」と言うイメージだけが先行してしまっているので、洗浄機の正しい使い方や、日々の手入れ・清掃を行っている事業所は少ないのではないでしょうか?日本人の衛生に対する認識って低いなと感じる次第です。
by DW (2012-07-09 07:21)
くるみ様,コメント有り難うございます。
私のブログが勉強になるとは思えませんが,使用者の方々に機材の正しい運用は心がけて頂きたいです。
食器洗浄機は無機物ですが、思い入れを持って扱って頂ければ5年後,10年後には野方図に扱われ続けてきた機体とは違う姿でいることを私は経験上知っています。
by HarryTuttle (2012-07-09 12:06)
DW様,コメント有り難うございます。
そういう使用者は意外と多いのですが、「日本人の衛生観念」というほど大きな枠組みでもなく、個人レベルの予備知識の問題と私は考えています。
ただ,日本人は産業革命以降の機械と接しながら生活する文化を後追いの駆け足で過ごして現在に至っている民族ですから、先鋭的な部分の実態や試行錯誤を重ねた上に獲得できた安定の値がわかっていない面があるように考えています。
いずれまとまった記事にしておこうと思いますが,食器洗浄機ではなく雑菌噴射装置として使われている個体は大変多いです。このコメント欄では差し当たりこれに留めさせて頂きます。
by HarryTuttle (2012-07-09 12:19)