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IHI食器洗浄機 JWD-6Cの余生 [修理屋から見た厨房機材]

 前回記事のコメント欄で食器洗浄機の話題が出てきたので,最近のお仕事とも絡めてひとつ記事を書きたくなった。俺が会社員だった頃,某病院に納めた食器洗浄機のことだ。

 そこは築年数の結構古い某町立病院で,長く食器は手洗いだったのだが遅まきながら食器洗浄機を導入したいという予算要求の相談が俺のところにきたのだった。
 将来的には病院自体が移転新築する予定であるが時期が未定なので間違いなく取り壊しまで運用できそうな,場合によっては移設してからも充分な期間運用できそうな機種,というのがその条件だった。

 条件としては更にもう一点あり,設置予定場所の近辺にはガス配管がなく,建物自体も古いので電気容量もない。但し蒸気配管は直近にあるので熱源としてこれを利用したいというご希望である。
 
 条件に適いそうな機種は二つだけだ。
(1)HOBART AM-14
(2)IHI JWD-6
これ以外の選定は全てボツと言っていい。俺はかなり迷ったが結局後者を選んだ。HOBARTの製品の優秀さは認めるが如何せん米国製品だけにこちらで作業ラインを形成すると作業高さが90cm近くなり、東洋人の体格では作業性がよろしくない、それが最終的な決め手だった。

 すすぎに関しては電気容量を最大限押さえる意味で貯湯式ではなく直圧式のスチームブースターを選定した。
温調精度は落ちるし配管もややこしいしで大変だが蒸気熱源となるとさすがにIHIのノウハウは凄い。世界一のボイラーメーカーの圧倒的実力の一端をチンケな厨房屋が垣間みた一場面だった。

 その後約12年,JWD-6はただの一度も故障することなしに3食分365日回り続け,病院は移転新築のため取り壊されることになった。

 減価償却は既に済んでいるがこの機体は廃棄するには勿体ないということで,町役場は撤去後の機体をある備蓄倉庫に保管した。
 そして今年,その個体はあるワイン工場で復活したのだった。
今度は病人の食事ではなく,ティスティングルームで試飲の済んだワイングラスを洗浄するために運用されることになった次第である。

 俺のところに点検整備の依頼が舞い込んできたのは先月半ばのこと。某厨房屋と地元の設備屋で取付け工事を済ませて使い始めたが数ヶ月してから内部で錆が発生してグラスに付着するので解決して欲しいというのがその内容だ。
 既に病院は移転新築し,俺は野良犬修理屋で役場との縁も切れたとばかり思っていた。何かこの巡り合わせに俺は因縁めいたものを感じながら引き受けたのだった。(以下続く) 
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DW

この記事を拝見致しまして、質実剛健という言葉が真っ先に浮かんできました。やはりユーザーさんにとって良い製品とは、長く使える(長く性能を維持出切る)確かな品質の製品ではないでしょうか。導入時のコストは多少高くなっても、長く使えれば結局は安い買い物で、提案段階で顧客へしっかりとメリットを伝えてあげる事ができれば、顧客との最高のパートナーシップとなるのですね。
by DW (2012-07-07 17:05) 

HarryTuttle

DW様,コメント有り難うございます。
返答が遅れて申し訳ありません。

 この業界一般に言える傾向として,トータルコストという考えが働いていません。
 コストというのはイニシャルコストのことであり,ランニングコストという意識の働く使用者も幾らかはいますがそれは電気代や水道代のことであって修繕費という項目は頭の中にないのです。購入した機材はいつまでも購入した時の状態のまま働き続けるのであって故障が発生して修繕費を支出するのは物凄く理不尽なことであり自分は被害者なんだ!という考えの持ち主が大多数です。
by HarryTuttle (2012-07-16 14:54) 

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