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ローソンの電気フライヤー [修理屋から見た厨房機材]

 そろそろ始まっているかと思うが、ローソン各店の店舗備品である電気フライヤーがおよそ10年ぶりくらいに変わる。
 俺の知る限りでは最初は米国製Wells(ウェルズ)が指定機器であった。その後、国内製(フジマック)に変わったのが大体10年くらい前でこれから先はニチワ電機が採用される事になる。既に導入は始まっているとの噂も聞くがまだ現物は見ていない。

ウェルズのHP:http://www.wellsbloomfield.com/

 使用されていたのはF-58というオートリフトタイプの卓上フライヤーで,これをスタンドに組み込んで床置式としていた。
F-58.jpg

 質実剛健と言うか,アメリカ製とはこういうものだ,という感じの造作である。俺は結構いじくり回した口だがタイマー以外には格別故障した箇所の記憶が殆どない。フライバスケットの昇降動作はカムを介して行われるが駆動するモーターはこれで大丈夫なのかと心配になるくらい小さいが恐ろしくタフで,交換した記憶はない。

 以前にも書いたことがあるが,アメリカ製の食品機械は基本設計は大変優れているがおかず的な付加機能をあとから沢山くっつける小改良にはあまり積極的でない傾向が全般的にあるがウェルズのフライヤーも例外ではない。

 バイヤーであるローソンの希望としては,オートリフト機能を充実させて多くのメニューに対応できるよう,設定時間を多数記憶させる機能が欲しかったと見える。ウェルズの仕様はモータータイマーであって,メニューが異なるとその都度ノブをぐりぐりと回して設定を変えるやり方だったのでこれが面倒臭かったのだろう。

 これを受けて製作されたフジマック製のフライヤーは電気仕掛けを大胆に取り入れたもので,温度感知はベローズ式のサーモではなく測温抵抗体に寄る個体式,オートリフトタイマーはタッチキーによる6 x 2の12個の記憶が可能な多機能版で,一見してわかる現代風の面構えが期待を持たせた。
 弱点はフライバスケットの駆動機構で,駆動機構に油が付着して固形化し、機械抵抗が大きくなるとモーターが焼損するなどのトラブルがあったため,途中で全く新しい設計のリフトユニットを開発して対策を講じたが本家本元ウェルズの耐久性には最後まで追いつけなかったと俺は見ている。
 加えて,タイマー制御の電子化については何と言っても組み込み対象がフライヤーなので油槽からの輻射熱でプリント基板がいかれはしないかというのが懸案ではあった。これについては頻発というわけではないが故障例はやはりあった。電源供給のためのスイッチングレギュレーターも巻き添えを食って憤死,という場面も何度か対応した記憶がある。

 話が本筋から逸れるが,この間セブンイレブンからも揚げ物メニューの店頭販売にあたり開発以来を打診されたことがあったらしい。
 希望の内容は同一外寸で2槽式のオートリフトフライヤーを作って欲しいとのことだったが,内部構造が複雑になり過ぎて出張修理では済まないものになりかねず,この件は流れた。
 結果としてセブンイレブンはタニコーにこの件を持ち込み,製品化を実現させたと聞いている。現物は日頃しょっちゅう目にするが,ウェルズ製,フジマック製,共に小作りな筐体なので修理作業は大変窮屈であるのは経験上思い知らされているのでタニコー製の2槽式となると、これの修理にはあたらない立場で良かったと同業者としては思う。

 ローソン側に話を戻すと,メニューの多様化に伴い数年前より一槽式から2槽式への移行を検討しておりこの開発にに手を上げたのがニチワ電機だったとの伝聞である。

 こうして変遷を辿ってみると気づくが,国内メーカーの開発主眼はもっぱら多機能化に注力されている。しかしメーカーを問わず機器としての信頼度とか耐久性や整備性に配慮されたものは一つもない。むしろそれらを犠牲にしての多機能化という見方が妥当であって、これは変化ではあっても進化ではない。恐らくこれからローソン各店に出回るニチワ製にしても同様だろう。

 俺個人としてはニチワとの関わりはないのでこの先ローソンの仕事はなくなっていくわけだが,負け惜しみではなくローソンの仕事は大して実入りのいいものではなかったので別の稼ぎ口を探せばいいと結構ドライに割り切っている。
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くるみ

確かにコンビニはホットメニューが増えましたね!!しばらく前はローソンで言えば『からあげくん』だけの記憶…。セブンイレブンで言えば記憶になく、おでんや肉まん位で。メニューが増えた分、調理器具も変化せざるを得ないのでしょうね(^^;
by くるみ (2012-06-28 00:18) 

HarryTuttle

くるみ様,コメント有り難うございます。
 コンビニという業態は厨房屋にとっては比較的新しい客層で、数百台単位での受注が発生する上客ですが指定から外された時の穴もまた大きいという意味で良くも悪くもギャンブルがかったビジネスになりがちです。 
 修理受付も地域ごと,各店ごとに出先に行うのではなく本社のコールセンターによる一括受付なので書類も増えてややこしくなるなど修理屋にとっては全く有り難くありません。

 余談ですが,デリバリーのピザとコンビニのサンドイッチは全く理不尽に高いと常々私は考えていますが、諸々のホットメニューもこれに加えたいところです。私はそれを生業としていながらからあげくんも中華まんも買ったことはありません。
 
by HarryTuttle (2012-06-29 01:23) 

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