SSブログ

アンダーカウンタータイプの食器洗浄機考(2) [修理屋から見た厨房機材]

 先日行った某そば屋さんでの食器洗浄機の修理はその後の経過に問題がないため,そろそろ修理代の精算を済ませておこうかと考えている。

 ホシザキの食器洗浄機が営業力頼みではない,マシンスペックが押しも押されもしないだけのものにまで到達したのは俺が今回いじくり回したJW-40TUCあたりからではなかったかと思う。
 以前のエントリーで書いたように,勤め人だった頃を通じて俺にとっての食器洗浄機とはIHIだった。
アンダーカウンタータイプで言うとJMD-3Aに随分力を入れ、残念ながらIHIは食器洗浄機の分野から手を引いてしまったが今でもこれを超えるアンダーカウンタータイプの食器洗浄機は一つもないと断言できる。

以前のエントリーは  http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2009-10-26-1

ishikawajima01.jpg

 少なくとも,俺がそれまで納めたことのあるJMD-3Aは最も古いもので稼働歴20年を超える機体であってもポンプの交換はおろかメカニカルシールさえまだ交換したことはない。嘘でもないが一台もないのだ。一部例外はあるにせよ,ポンプを含めてIHIの洗浄機の耐久性は本当に営業泣かせで一度納めたらまずリプレースなどない。余程のことがない限りその建物を取り壊すまで20年でも25年でも踏ん張り続ける。

 上記のリンク先エントリーでも書いたが
(1)電源仕様3φ200Vのみ
(2)すすぎ用ブースター別置き(しかも別売)
という構成はIHIが頑として譲らなかったものだ。

 今回,ホシザキ製食器洗浄機JW-40TUCの修理で散々手こずり,IHI JMD-3Aが何故そのような構成を取っていたのかがあらためて良くわかった。整備製を損ないたくなかったのだ。裏板を外し,天板を外し,右側板を外さないと洗浄ポンプに触れないJW-40TUCとは違い,JMD−3Aは正面機械室の化粧板を外した後は
 *電装ボックスを外す
 *すすぎポンプを外す
で洗浄ポンプにまで手が入り,恐らくここまでで作業時間としては30分程度で行けるだろう。勿論,正面から全ての作業を行うことが可能であり,洗浄ポンプの交換作業は全部を通じて恐らく,試運転込みで90分を切ることが可能だろうと予想している。

 対してJW-40TUCの場合,正面機械室の化粧板を外した後,
*電装ボックスを外す
*本体タンクのドレンバルブのレバーと取付け板を外す。
*給湯及び排水の配管接続を一旦切り離し,本体をずらして右サイド及びバックスペースを確保
*本体正面上部の操作パネルを取り外す
*天板を取り外す(板金の折り曲げ加工によって引っかかっており,これを外さないとバックパネルが外れない構造!)
*バックパネル取り外す
*右側板を取り外す
*洗浄ポンプの吐出管接続部分のフランジを外す(取り付け時にはちょっとした知恵を労するか,2名で行うかになることを知った)
*洗浄ポンプの吐出管接続部分のゴムホースのバンドを緩めて吐出管のASSYを機体外に取出す。
*洗剤供給用の配管8φくらいのステンパイプを取り外す

という手順を踏む。
 本格的にいじくり回すのは今回が初めてで不慣れなせいもあるのだろうが,今回,俺の作業時間は実に四時間近くを要した。ホシザキのサービスマンであれば手慣れているだろうからもっとさっさとけりを付けるのだろうがそれにしても2時間を切るとはとても思えない。今回のようにフレームの一部切削加工が出れば更に時間が加算される。

 何を言いたいかというと、この所要時間の違いはそのまま修繕費に反映されるということだ。恐らく確実に一万円くらいは違うだろう。
 アンダーカウンタータイプの食器洗浄機の購買者というのは比較的小規模な店舗のオーナーが多いだろうからこの差は結構馬鹿にならないし、修理の所要時間から行っても業務に影響を与えずに済むようなスケジュールの設定が難しくなっても来る。

 違いはこの一万円にとどまらない。
ホシザキに限らず,(三洋電機も同様)アンダーカウンタータイプにしてすすぎ用の貯湯タンク内蔵,ということは機械室部分の実装密度が上がる上にタンクからの輻射熱のため,ゴムなどの高分子系パーツや電装関係の劣化が早い。製造元もここは予見してのことだろうがタンクには断熱用のスポンジが貼付けてあるが10年以上も使用していればこのスポンジが劣化してボロボロになり,熱の輻射量は増す。JW40TUCについてはそれも予見してのことだろうが,すすぎ用ポンプの裏側に排熱用のファンモーターが取付けられているほどだ。しかしこもモーターにしても隈取りコイル型の貧相なもので,さほどの耐久性が見込まれているとは言い難い。

 ホシザキ製のアンダーカウンター食器洗浄機はJW-40TUCからポンプの出力が洗浄用は400W(従来機は250W)すすぎ用も未確認だがそれとはほぼ同等(従来機は未確認だが記憶では150W程度だったと思われる)となり、そのスペックはIHIと肩を並べた。これによってハード的なハンディはなくなりかなりの販売台数をマークできたように見える。
 しかしそれはあくまで初期性能としての話で、経時劣化,耐久性や整備性というところまで推し量ると俺は今でもこの型式には無理な点が残されているように思う。

 こんな事をグダグダと書いてみても全く生産性がない。何だかんだ言ってIHIの食器洗浄機は色々な意味でまずいところがあった。安定度とか耐久性はセールスポイントにはならないという悲しい教訓を残してIHIはこの分野から手を引いたのは事実である。
 俺は心情的に,IHIに肩入れしたい気分なのだが死んだ子の歳を数えるようなもので,これから先天下の石川島が再びこのニッチな分野に再挑戦するとはとても思えない。その後のホシザキ製品はモデルチェンジごとにもっといじり易くなって来ているそうなので、同社の製氷機並みに洗練されたコンストラクションになってくれると俺のようなロートル修理屋にとっては有り難いのだが。(この項終わり)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。