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閉店間近いラーメン店にて侘び寂びのひととき [日記、雑感]

 怠けの悪循環からなかなか抜け出せずにいる。
 というよりも生活していけるだけの裏付けがありさえすれば毎日毎日喰っちゃ寝喰っちゃ寝の生活くらい気持ちのいいものはない。
 現に俺などは来月金欠で相当ゼンマイを巻いて生活していかなければならないのが明らかであるにも関わらず,たまさか今日明日の生活費に事欠かないだけのことでこんなに気持ち良く怠け続けているのだ。
 怠け続けているうちに貧乏は貧乏なりに段々金遣いが荒くなってくる。ふと気がつくと一日中ひっきりなしに千円札をそこら辺中に放り投げているような具合だ。いかん,これではいかん。

 来月の懐具合は決して楽ではないのだぞ,と自分に言いかせながらもついつい晩飯を作るのが面倒臭くなってふらふらと外出し,夕食を食うためにその辺を徘徊する。今日は繁華街の小路にあるラーメン屋さんに行った。
 そのラーメン店には以前,俺がお仕事でお世話になったことが何度かある。最初に訪問したのは俺が商売を初めて四年目くらいだっただろうか。ある人の紹介でホシザキ製の食器洗浄機を修理しに行ったのが最初だ。

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画像は本文とは関係ありません


 不定期的に運転が中断される,というのがその内容で他の例に漏れず不定期発生というところは修理屋にとって頭が痛い。
 最初に受け持ったホシザキのサービスは随分手を焼いたらしい。10年以上も使い込んだ古い機体なのでリプレースを勧めたとかその後営業と何か悶着があったとか聞いたが詳細は忘れた。
 何せその食器洗浄機は紆余曲折を経て俺の手にかかることになった。

 オーナーの方はそのとき60代半ばで結構年配である。彼曰く,自分はもう結構な年齢なのでこの店をこの先長く続けるつもりがない。従って修繕が利かずにリプレースしなければならないようなことでは先のことを考えると無駄な投資となってしまうのでそれは避けたい、何とか使えるようにしてもらいたいとのことだった。

 ご都合は理解しましたが安請け合いは出来ません,というのが最初に俺の返した言葉で、彼は何ともいえない目つきでわずかに表情を暗くした。
 俺は修理屋であって魔法使いではない。出来ることには限度があり,限度を超えたことをなす能力はないのだ。機体の不具合を調べてみた上での話だが最悪,この先長くはない営業期間は食器は手洗いでという落としどころしかないという場合はあり得るのだ。そこは覚悟しておいて頂きたい、そんな俺の予防線に旦那さんは不承不承ながらそうなったら仕方がないね,と答えた。

 問題の電気ボックスを引っ張り出しながら俺は自分もすっかり擦れっ枯らしになったもんだと自嘲した。いつの間にかこうして自分を守る術を身につけている。何度も痛い目に遭い続けているうちに自然とそうなった。

 ボックスの中にはプリント基板があり,俺はそこが怪しいと見当をつけた。
国産機器にありがちなベークライトの安物基盤で,そこには何個かのリレーソケットがハンダ上げで取付けられていた。
 洗浄機を運転させながら差し込まれたリレーを指で押してみると接点がカチャカチャと音を立ててチャタリングみたいな挙動を示す。『間違いないな・・・』たまには俺の勘も冴えている時がある。旦那さんは心配そうに俺の手元を覗き込みながらモノになりそうだろうかと問いかけて来た。

 俺は洗浄機の電源を落とすと基盤を取り外して腰を上げた。所見としてはこうだ。
プリント基板のハンダあげ箇所が所々白っぽく変色し,劣化している。本来ならば基盤の交換なのだろうがもうその補修パーツはメーカー在庫がないそうなのでこの基盤が補修できるかどうかを試みる。ハンダをあげ直してもうまく動かなければ観念して頂きたい。これはギャンブルだ。結果はお約束できない。

 「これまで15年も使って来て虫のいい考えなんだろうけどうまくいって欲しいなあ。お願いしますよ。どうかもうあと3、4年くらいは使えるようにしてください,何とか!」旦那さんが懇願した。
(以下続く)
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