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フラワーケースの修繕 [日記、雑感]

時たま,毛色の変わった修繕の依頼が飛び込んでくることはある。本日のメニューは花屋さんにある冷蔵ショーケースで天井面からオイルが滲んでくるとの依頼内容である。
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画像は本文とは関係ありません。

 オイルが滲んでくるということは冷媒が漏れているのであってとどのつまりガス漏れ補修を行うことになる。
 営業中に溶接機だの真空ポンプだのと無粋な機材を持ち込んで何時間もどたばたやるのはまずいと判断して本日は冷媒を補充し,漏れ箇所を特定する作業に留めて本編は次回の定休日に行うことでご了解を頂いた。

 この生花店がどうして俺のことを知っているのかは不明だが,フラワーケースとは言っても結局は冷蔵庫なのだから俺の脳味噌程度でもわからんこともないだろうし何と言っても金のためだ。断る理由はないな,と,結構高をくくりながらのお仕事であった。
 多少横着な話だが,フラワーケースの温調は大体15℃で行われるので冷媒のチャージは結構適当にやってもちゃんと冷えるところは気楽である。

 活動のフィールドとしては首尾範囲外だが機械自体には心得があるので何となくその分野を手がけているという意味では俺の場合医療用の冷蔵機器がある。
 共通して言えることだが日頃の索漠とした食品関係,特に厨房でのお仕事に比べると同じ作業を行うにも拘らず色々な意味で心象風景が異なる。
 第一にこれらの分野の使用者の方々は平均して厨房機材の使用者に比べればまだ幾らか修理屋に対してリスペクトを持って接してくださるのでこちらも物腰が普段よりも丁寧になっているのをしばしば自覚する。
 第二に金だ。厨房にある業務用冷蔵庫に比べるとこれらの分野の方が(特に医療関係)明らかにギャラが良いし、修繕費が高額化してしまう状況に対しても物わかりが良い。

 フラワーケースの上に上がって作業の合間に店内を鳥瞰すると気のせいではないと思うがやはり可処分所得がそれなりにありそうな方々が来店するのだな。
 閉店間際の食品スーパーで半額の惣菜を漁るとか何でも一品286円の居酒屋でチューハイを飲んでいそうな人種は見かけない。
 
 当然だが花を眺めていても空腹は満たされない。餓死してもいいから花を眺めていたいという人には今のところ俺はまだ会ったことがない。
 言い換えれば花を眺めることを楽しめる人は一定程度,生活の基底部分は満たされてなお余剰な富のある方々なのだろうと想像する。店内に漂う食品分野と異なるムードというのはきっとそういうところに根ざしているのだ。

こういう得意先がもっと沢山あると俺のお仕事も少しは楽なのだろうな,と,俺はフラワーケースの天井に這いつくばってバルブレンチを操りながら考える。なごやかな雰囲気に率のいい作業単価の得意先だけで収入が満たされていればもう少し呑気な生活が送れそうな気はする。
 しかしそういうことは起こらない。理由はわからないが俺の生活にそういう場面が訪れることはない。俺は軍手を油でベタベタにしながら何が飛び込んでくるのわからず、しょうもない依頼に戸惑いながら手探りでドタバタし,あたふたしながら切羽詰まった毎日を過ごしていくのだ。

 作業が一区切りし,脚立に降りながら俺は後ろ髪を引かれる思いで商売道具を片付け始める。
これから出向く殺伐とした普段の客先のことを考えて気持ちを切り替える。こういう生花店のような得意先というのは,言ってみれば俺の日常にあっては特異点なのだ。中華丼に乗っかったウズラの卵とかショートケーキに乗っかったイチゴみたいなもので、そればっかり山盛りで出てくることはない。

 後ろ髪を引かれるわけについてもう少し書く。
いつも思うが,生花店で働く女性というのは結構可愛い子が多いのだな、理由はよくわからんが。
尤も,従業員の女性で後ろ髪を引かれると言えば普段の仕事でお水さん関係の店舗で見かける刺激的な服装のネーチャン達も少し異なる意味で手仕舞いにかかるときには後ろ髪を引かれる思いを駆り立てる存在であることを白状しておこう。

 
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くるみ

中華丼のウズラの玉子(^^;…主体の日常のお仕事にあたる『中華丼』自体が、べらぼうに絶品ならよいのでしょうね。もしくは焼売のあまり要らないたった1つのグリーンピースがちょっと厄介なお仕事であるか。(グリーンピースが好物だったら失礼しました。) お花屋さんのお話…確かに高価で自分の為じゃなく贈り物か仏壇にしか買いません。従業員も綺麗所ですね(^-^ゞ面接があるなら、私はきっと「もう決まりました」と言われるでしょう。一番乗りの面接者なのにm(__)m??
by くるみ (2012-03-05 01:10) 

HarryTuttle

 くるみ様,コメント有り難うございます。
 素性の詮索は良くないと思いながら,ですがくるみ様は女性だったのですね。
 何と言うか,これまで女性に読まれることをあまり意識していなかったので何かまずいことを書いたことはなかっただろうかと少し焦っております。
 
by HarryTuttle (2012-03-20 11:28) 

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