SSブログ

人事の季節に聞く風の噂 [無能社員の生態]

そろそろ春の気配がする。
毎年のことだが春というのは何かこう,人生の転機と重なっている。
俺が勤め人を辞めて今の商売を開業したのも,現在住んでいるボロ家に引っ越したのも春だった。

俺に限らず諸兄も,春というのは何かしら人生の節目と重なってはいないだろうか?
勤め人の人事異動もその一つだろう。場合によっては退職もある。定年退職ならそれは結構な話だが年度末一杯での中途退社となると人生にはなかなか複雑な色合いが漂うのだよ,と俺もたまには結構文学的な修辞を垂れ流してみたくなる今日この頃。

 俺は以前,元の勤務先の社員に手ひどい目に遭わされて随分な損害を被ったことがある。

 http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300785592-1

 思い出すだけでも頭に血が上ってくるのでなるべくそのクソ野郎のことは考えないようにしていた。
俺が無能社員と呼んだその男が退社してからそろそろ丸2年が経つ。ここは田舎町なので特段聞きたくもないのに無能社員のその後の動向はちらほらと耳に入ってくる。

 会社で借り上げていたアパートに退社後も居着いており,会社は無能社員の退社に伴って家主と賃貸契約を解除したが問題の唐変木はその後個人で家賃を払うでもなく居座り続け,大家が会社に相談に来て会社が閉口しているとかいないとか,嫁や子供をほっぽらかしてそのアパートに女を引っ張り込んでヒモまがいの暮らしをしているとか,まあおよそロクでもない噂ばっかりだがどれもこれもあのカス野郎だったらいかにもありそうな話ばっかりだというところが何ともだ。

 俺は既に人生の折り返しを過ぎたオヤジだが,生まれてこのかた心底親の面を見てみたいだとか,もしもこいつがくたばったら赤飯を炊いて宴会でも開いてやろうだとか思った人物はそう多くはない。人間誰でも嫌いな奴は少なからずいるだろうがだからといってこうまで思える輩はそう多くないはずだ。
 俺にとっての無能社員はその数少ないうちの一人である。

 きゃつが2年前に会社を辞めて以来,俺が耳にした噂のうち最も腹立たしかったのはあるれっきとした電材メーカーに再就職を決めたというものだった。このとき俺はつくづく世の不条理を実感したのだが,ああいう根性の腐った野郎はどうせ遠からず馬脚を現してまたしても職場の中で居場所を失ってしまうだろうという確信もあったので何とか気を鎮めた。

 無能社員はその,某電材メーカーに営業職として入社したらしい。あんなボンクラに営業など務まるのかというのが俺を始め元の職場の共通した懐疑だったが実務の内容は販売店を回って歩くご用聞きみたいなものらしいということで,それなら何とかなるのかもしれんな,と,一同はほぞを噛んだ。
 つくづく面白くないのは,その某電材メーカーは無能社員を雇うにあたって身体検査の意味で元の職場に勤務の様子がどうだったか,みたいな問い合わせをしてくれれば良かったのにという点で俺と現在の社員達の意見は一致した。もしもそんな場面があったらもう,ボロカスにこき下ろして再就職をぶち壊してやったのにな,と,悔しがった。

 奇しくもその無能社員は再就職後,俺の仕入れ先である電材屋にもご用聞きに現れているらしかった。フロントの社員に探りを入れてみると,無能社員曰く,自分は東証に上場している某大手厨房機材メーカーでバリバリにやっていたのだが職場でパワハラに遭って退社を余儀なくされたのだと不遇を訴えたのだそうだ。誰でも知っているような得意先の名前を次から次へと並べ立て,俺にはこれだけの実績があったのだと噴かしたらしい。全部嘘っぱちなんだが。
 その,某電材メーカーだって聞けば誰でも知っているような大手なのだが世の中の習いとして,元の職場に対して悪口雑言を並べ立てて再就職に望む奴など大体ロクな奴はいない位のことはわかりそうなものだが空気はそのようには働かなかったものと見えて無能社員はまんまと新たな職場に潜り込んだというわけだ。
 俺はフロントの兄ちゃんに『その男(無能社員)と接し続けているうちに,いずれおまえはきゃつの脳天にドライバーを突き立ててやりたくなるような暴力衝動に駆られるだろう,だから殺人者になりたくなかったら無能社員の勤務先であるそのメーカーとは関わらない方が身のためだぞ』と、大変親切な忠告をしてあげた。およそ一年と少し前のことだ。

 果たしてその後,幾らも経たないうちに電材屋で聞く件の男の伝聞はそれ見たことかと言わんばかりのものが相次いだ。曰く,発注した物と届いた物の仕様がまるっきり違っていて言った言わないの水掛け論が物凄く多い。曰く,発行した注文書と届いた請求書の金額や数量が滅茶苦茶に合わない。曰く,納期がさっぱり守られない,他にも色々。
 だから関わるなと言っておいたじゃないかと俺は電材屋を気の毒がりながらも妙にウキウキしていたのだ。もうそんなメーカーと取引するのは止めちまえだとか,札幌の支社にクレーム入れろだとか散々煽動した。
 俺は生まれてこのかた,これほど誰かの不幸を願ったことはない。因果応報と言うがいや本当に,かつて自分が手ひどい目に遭わされたことのある奴に対してはこうも残虐な気分になれるものかと自分で自分が空恐ろしくなるほどだ。

 それからしばらくして,何ともメシウマな伝聞が飛び込んできた。
無能社員は製品の返品在庫を山と抱え,おまけに帳票処理をさぼってそれら全てを架空売り上げ計上していたことが社内監査でバレたとのこと。請求書の金額が合わないことを不審に思った販売店からのクレームと長期売り掛けから脚がついたらしい。案の定,こいつの元の職場で俺がやられたのと同じことを別の職場で性懲りもなく繰り返していたことになる。

 普通に考えて懲戒解雇だわな,これは。今年度一杯でお払い箱らしい。
ざまあみやがれ!

世間を舐めるなよ,口からでまかせのインチキ野郎が!おまえみたいな害虫以下の迷惑千万な生命体は事故った原発の格納容器の中にでも叩き込まれて被爆死しちまえ!それが貴様の人生の中で行った唯一の社会貢献だ!

 誰に何と思われようが,俺は心底そのように思う。断固としてそう思う。未来に悪い因子を残さないうちに消えてしまった方が良い人間はやはりいるのだ。勿論俺もそのうちの一人なのだろうが。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:仕事

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。