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あるとき気づいた作業従事者の傾向 [困った業者]

 某病院に納まっている2槽シンクの修理でのこと。
使用年7年強で,シンクボウルを支持する補強用のアングルの溶接が取れて危なっかしい状況となっていたので修繕することにした。
M社二槽シンク.jpg

画像は本文とは関係ありません


 本当であれば修理品は一旦引き上げて鍛冶屋に持ち込み,破損箇所の溶接をし直すのが望ましいのだが依頼元と得意先のやり取りでは補強材を取付けることによる現地補修という落としどころとなった。 依頼元の作業内容説明を聞いている分には『ほんとにそれで大丈夫なのかね?』という処置法だが俺が直接取引している得意先ではないので文句を言っても仕方がない。要は金になればいいかと割り切って当日現場作業に臨んだ。作業員は俺と依頼元メーカーのサービスマンの若い衆との二名。

 待ち合わせ現場に現れた若い衆はステンレス角パイプの加工品である補修部材以外にはなんにも持たずに手ぶらである。その様子から俺は若い衆のやる気のなさを読み取った。
 配管を切り離してシンクを取り外し,作業に取りかかると若い衆の手つきがなんだか心許ない。見るとシンクの脚である丸パイプにピアスビスを立て込もうとして四苦八苦している。
 ピアスビスは確かに板金の作業を革新した大変有り難い部材であるがしかし,幾らなんでも厚みが1.2mmの丸パイプに下穴も開けずにいきなり立て込めるほどステンレスという材料はヤワじゃないのだ。この辺は若い衆の経験不足と見えた。作業を見ているとどうも,ポンチングの習慣がなさそうだ。

 補修部材の角パイプに穴を開けてもらうことにして俺の商売道具を渡してしばらく経つと若い衆が何やら憮然としている。見ると若い衆は俺の道具箱に入っていたドリルの刃を次から次からへし折っており,作業がさっぱり進んでいない。穴を一つ開けるためにドリルの刃を二本づつくらい折っておる。
 脚部分の丸パイプのような局面に穴を開けるのはちょっとしたコツが要るのでこれは無理かと思い角パイプの穴明けを任せていたのだがそれもうまくいかなさそうなのだ。
 
 どうせ錐先(ドリルの刃)をバンバン折るのだったら自分の持ち物でやって欲しいもんだ,と、俺は腹の中でモヤモヤした気分を膨らませる。
 仕方がないので俺はとっておきの錐先を渡した。コバルトハイス、チタンコーティング,3.3mmで一本確か二千円以上したもので、購入以来5年くらい折に触れて使っているが未だに刃先が鈍る気配がない。もう,これでヘタを打つようだったらそいつの腕が悪いとしか言いようがないくらいの高級品だ。
TOL-2382.jpg

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 ところが若い衆はこれさえも一個の穴をあけもしないうちに簡単に折りやがったのでさすがに俺はムカムカするものを押さえきれなくなってきた。
 大したギャラにもならなさそうな板金製品の修理で若造のへし折った俺の錐先の金額は金に直すと大体四千円近くにもなるのだ。そりゃ頭にも来ようってものではないか。
 若い衆はさすがにばつが悪かったようで折った分の錐先は弁償するから請求書を上げてくださいと低姿勢で来たので俺も矛先を引っ込めた。

 作業が片付いて現場を撤収し、帰宅の途中で少し考えことをした。
若い衆のドリルの使い方のヘタクソさは嘆かわしい。しかしこの俺にしたって彼と同じくらいの年齢の頃は同じか、もしかしたらそれ以上にへたくそだったような気がするのだ。

 結論を先に書く。
 メーカーのサービスマンというのは概して電動工具の扱いがヘタクソだ。何故かと言うと普段の作業がハンドツールばっかりで終わるような内容のものが大多数だからである。単純に,扱い慣れていないのだ。
 電動工具の扱いが手慣れているのはむしろ納品現場を多く手がける施工関係の従事者だが,こちらは逆にハンドツールの扱いがなっていない。所持している道具は精度の悪い安物ばっかりだしドライバーとモンキーレンチとプライヤー以外のハンドツールは横着して使いたがらない。全般に稼働後のことは考えていないのでネジ類の扱いが雑で作業跡が汚い。こちらはこちらで困った性質がある。

 以前書いたかもしれないが,この業界の技術職では,修理をやっても現場施工をやっても一流という人材はいない。少なくとも俺はそういう人をまだ見たことがない。向上心があって腕を磨きたい人はそうなる以前の段階で厨房機材メーカーではない別の業種に転出してしまう。必然的に万能選手は奇跡的な確率でしか業界に残らないので後進も育たない。これは業界の誰もが臭いものに蓋をしたい現実である。

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コメント 2

㍉㌣㌃㌢㌧㌢㌧

僕は下穴を空ける作業をしないのは刃先を一々交換するのが面倒で横着しようと思っていることが多々ありますね。結果ビスはヘタって使い物にならなくなり、下穴を空ける為の錐先をへし折り後悔するパターンがよくあります。
本文を見るまで忘れていました(笑)
おそらく僕はこの先も同じ失敗を繰り返しその度自己嫌悪に陥るんでしょう(泣)
by ㍉㌣㌃㌢㌧㌢㌧ (2012-03-11 12:31) 

HarryTuttle

㍉㌣㌃㌢㌧㌢㌧ 様 コメント有り難うございます。

 錐先が最も折れ易いのは私の場合は固定されたリベットを抜く作業の時ですね。
 穴同士がずれている状態で固定されている場合が大変多いので貫通した瞬間ワーク二枚が両側から錐先を挟み込んで剪断するような折れ方になりますがこれは不可抗力みたいなものにせよ毎度頭に来ます。
 破損材料分を後から追加請求できればいいのですがなかなかそういうわけにも行かず結局錐先の代金は持ち出しです。
by HarryTuttle (2012-03-15 12:53) 

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