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厨房屋の業界とTPPについて低次元な妄想 [日記、雑感]

 土曜日の午前中,年明けのドタバタが一段落したので元の勤務先に顔を出すと後任の所長殿は休日出勤で帳票類やら報告書の作成をしているところだった。
 俺も会社員だった頃には同じような生活を送っていたので何だか少し気の毒な気が、だからといって自営業がいいのかと言えばそんな事は全然ない。自営は自営で別種のしんどさがある事はこの7年で嫌というほど思い知らされたし今もしんどさのまっただ中だ。

 所用が済んで所長殿も一区切り付き,少しの間世間話に耽った。
話題は松下に吸収された三洋電機のサービス体制がまだ落ち着いておらず,三洋がらみの機材調達やら修繕やらの状況が幾らか混沌としているのでやきもきする場面があるというのがその中心だった。

 電機業界は自動車と並んで日本国経済の優等生であり,屋台骨だった。
ここで”だった”と過去形で書かなければならないところに技術職の端くれとしては何ともいえない悲哀を感じるぞ,俺は。

 屋台骨の自動車や電機産業は海外に生産拠点を置き,関税障壁など関係なしに現地で人を雇い,海外で製品を販売し,本国の業績なんぞ関係なしに一定の収益を上げる事だろう。
 しかしそれは,これら業種の製品がワールドワイドで通用するだけの品質を備えているからこそ可能なのであって俺の棲息する業界の製品ともいえないような屑製品ではとてもじゃないが無理だ。

 以前にも書いた事があるが,日本製の業務用厨房機材なんていうのはワールドワイドで言えば三流品ばっかりで欧米の市場ではまるっきり相手にされていない。唯一例外と言えそうなのは世界シェアが大体30%と推測されるホシザキの製氷機くらいだが米国市場で言えば既に30年近く前からアトランタに工場を造って現地生産しているので総販売数のうち国内と海外との生産比率がどうなっているのかは俺のような田舎住まいの小物には不明だが、何せ海外市場が売り上げの屋台骨であるような厨房屋なんていうのは国内にはないと言っていいのではないか。

 輸出市場があろうがなかろうが会社として収益が上がり,社員を真っ当な就労環境や給料で雇用できていればそれでいいのだが現実には人材の定着率はどこもひどいものだしバブルが弾けてからはや20年になるが国内市場のパイはすっかり頭打ちでもはや急成長などどこの会社も望めない。

 これまで俺がしつこく繰り返してきたように,この業界は日本国民のある属性を如実に体現しているところがある。その一つは物事に絶対性とか基準とか規範を自ら定めようとせず、周りの空気に流される事で何となく自分のやっている事には正当性があるのだと独りよがりに思い込む傾向だ。

 同業者とこういう話をしていると,良くいるのが『いや,うちの会社はこないだこれこれのオーブンをどこそこの国に何台輸出した』だとか『今は中国でホテルを施工中だ』とかいった話題を返してくる奴だが,こんなものはその会社にとっては例外的な案件に決まってるのだ。
 自分に都合の良さそうな些末な例外を持ち出して,それがさも全体的な傾向であるかのように語りたがるのは厨房屋に限らず世の中色々な場面で見かける。

 まとまりのつかない展開だが,俺個人としては業務用の厨房機器製造業なんていうのはTPPに組み込まれて一度,完膚なきまでに叩きのめされないと次元の低い独りよがり体質を自覚できなさそうに思えている。
タグ:TPP
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くるみ

雇用でも自営でもお仕事は大変ですよね(^^; ブログを読ませて頂き日本の世界に置ける立ち位置が少し解った気がします。最後の方のくだりは、少数意見を『皆』が言ってると誇大表現する人みたいな事でしょうか?
by くるみ (2012-01-24 09:36) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
テキスト後段についてのご指摘はその通りで,世間の人々は(それはしばしば私自身をも含めて)「正しいか誤っているか」と「多数派であるか少数派であるか」がうまく区別できず,混同しがちであるように思っています。

 そしてしばしば,『皆』が言っている事だからそれは『正しい』事なのだと考えがちであり,自分は『皆』の側にいるから正しいのだという錯覚を抱きがちであると私は思っているのです。
by HarryTuttle (2012-01-25 15:14) 

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