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冷凍冷蔵庫大改造の巻(3) [含蓄まがいの無用な知識]

 度々のご指摘だが,『おまえのブログは尻切れとんぼのエントリーが多くてなっとらん!』と結構いろんな方からお叱りを受ける。(義務感で書くのは嫌なんだがな)
 確かに尻切れとんぼは良くない。反省します。与太話ではなしにお仕事上の出来事ととなると現実にお仕事で俺と接する事のある方は修繕や工事も尻切れとんぼで終わらせる野郎なのかと誤解を与えかねず、このエントリーは職業人としての信用にも関わるのできっちりありのままを最後まで続けます。

以前のエントリーは以下の通り
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-08-03-1
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-08-04

安請け合いだろうが出たとこ勝負だろうがとにかく商売人として一旦引き受けた以上,結果は出してやろうでねえの。

08030003-2.jpg
右が焼損したコンプレッサー,左がインチキ修理に使おうとしているR-404A用の代替品,松下製のコンプレッサーだ。

 冷媒管の取り回しには相当悩んだ。また,元々ついていた縦置きロータリーにはコンプレッサーに付属する形でアキュムレーターと思しき部品がある。
 そうだとすれば同じく低圧管についているもう一つのアキュムレーターは何のためについているのか?機能が重複するパーツが直列についているとは考えにくい。或いは縦置きロータリーの吸入管部分の膨らんだ部分は冷媒のフィルタリングとか別の機能を持つものなのかもしれない。そう考えると単体でアキュムレーターがついている事の辻褄は合う。

 幾らインチキ修理とはいえ、できるだけ原型に近い形での修復を行いたい。ここでは元々ついていたアキュムレーターは使い回したいというのが俺の方向性だ。元々とは異なる冷媒であるR-404Aを想定していたのでなおの事だ。
 しかし代替品のコンプレッサーは元々ついていたよりも裕に二周りはでかいのでスペースファクターが厳しい。物理的にうまく納まるものなのかどうかと頭の中であれこれとせめぎ合いが起こる。

 冷媒管の取り回しをああでもないこうでもないと思案した結果,アキュムレーターは使い回しながらでも何とか納まる事は納まった。正真正銘ギリギリの納まり方だ。
08030004.jpg
脚立に上がって爪先立ちしながらの撮影なのでフレーミングは最低だが,ホラ話ではない事の証拠程度にはなるのではないか。念のため,作業前の状態を繰り返し貼付けておく。
08030001.jpg

 コンプレッサーの形式変更に伴う配線変更につついてはここでは詳述しない。(企業秘密なんだぜ)レシプロからロータリーへの変更であれば色々と付加物が増えてややこしくなるのだが今回は逆なので楽だったと書いておこう。
 但し,個人の見解として,三相電源の誘導負荷を2線切りで動作させる(保護動作も含めて)やり方は好ましくないと考えている。
 今回の個体はバイメタルサーモのOCR二個による保護だが,まだ実例を見た事がないとは言えOCR一個の不具合によってコンプレッサーが単相運転となり焼損に至る可能性はゼロではない。開閉器は必ずマグネットスイッチとして二重の保護を行い,三線を同時に切るようにしておくのが親切な設計ではないかと思うのだが安売り競争に勝つためには製造コストも切り詰めなければならず,なりふり構わず省略できるものはバンバン端折るのがこの20年くらいの風潮だ。
 俺にいわせれば手抜きもいいとこだがこういうケチ臭いスペックは業冷庫全体に蔓延するものであって,決して大和冷機に限った話ではない,と、大和の名誉のために書いておこう。
 画像はないが,電気ボックスについていた電磁接触器は上記のような俺の判断でマグネットスイッチに変更されてボックスの外部に取付けた。でかくなるからね。

 冷媒のチャージについては最初,元々の冷媒(R−22)と同量のR-404Aを充填してみたところ蒸発圧力が高くなり(0.1MPa以上あった)-15℃程度で頭打ちとなり無惨にNGとなった。
 ここから先は混合冷媒であるがために抜き取りができず、充填量を手探りで試すには時間も惜しいし冷媒は高価だしなので潔く諦めた。
 オイルの相性が心配なので本当は使いたくないのだが冷媒をR-22として規定量の300gだけチャージすると-17℃程度までは引っ張れた。低圧配管の霜の伸び具合が今ひとつだったので50g程度のオーバーチャージを行うとアキュムレーターの真ん中くらいで配管表面の着霜が途切れるのでここでよしと判断した。コンプレッサーのケースが従来品よりでかくなる分だけ冷媒は足す必要があるという事か。何せ,多少アバウトにガスチャージを行っても何とか帳尻が合うという意味ではアキュムレーターを残したのは正解だった。
 
 コンプレッサーの仕様に倣って冷媒をR-404Aとするのであれば元々ついているキャピラリーチューブを外して膨張弁に変更しなければならない。必然的にドライヤーも出口側が1/4サイズであるものに変更となる。
 当然と言えば当然だがR-22で運転されている冷凍機で使われているキャピラリーで作り出す圧力損失の幅でR-404Aだと、高圧の差(大体0.4MPaくらいか)がそのまんま低圧側にも影響して上方にスライドしてしまうので蒸発圧力も高くなり,結果として冷えないという事だ。
 だから冷媒の種別が変わるのであればその個体はキャピラリーから膨張弁に変更するのが改造としては正しい作法なのだが俺はそうしていない。せこいサバ読みの結果そうしていない,というところがインチキ修理のインチキたるゆえんなのですよ、諸兄。
 冷媒の種別なり封入量なりについての試行錯誤を行ったのはコンプレッサー交換を行った翌日で,この修繕には都合丸二日間(夕食配膳終了後)を要した。結果としては蒸発圧力0.03Mpaくらいで庫内温度は-20℃を割るところまで引っ張れたのでひとまずこのインチキ修理は短期的には成功だと自惚れる事にする。
 オイルの相性によるコンプレッサーの過熱運転はその後の俺の懸念材料だが,現在,作業後三ヶ月を経過して特に問題は発生していない。

(この項終わり)

追記:使用者の方々は,こういう実例を見てどんな無茶でも修理業者は聞いてくれるもんだ,などとは間違っても思って欲しくない。自己責任の覚悟もなくこの手の依頼をしてくる上に,やれ費用はどれくらいかかるんだだとか、時間はどれくらいかかるんだだとかいったことを訊ねてくる大馬鹿者には一切取り合わない事にしている。



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63H

おもしろいですね~
メーカーでは絶対聞けない話だ。
いや、今のメーカーサービスではわからんレベルでしょうね。
by 63H (2011-11-19 18:11) 

HarryTuttle

63H様 レスが遅れてすいません。
使用者の方のご理解があれば何とかならない事もない,という実例の一つな訳です。
無手勝流と言うか,乱調もここに極まれり,でお恥ずかしい仕事です。
by HarryTuttle (2011-12-02 11:18) 

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