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制水弁の選定でちょっと後悔 [含蓄まがいの無用な知識]

 Frigomatのバッジフリーザー修理である。
htp4_main_img.jpg


製造元のHP
http://www.frigomat.com/

輸入元は俺の得意先であるところの(株)エフ・エム・アイ
http://www.fmi.co.jp/products/hypertron/htf4.html

 設置場所は当然だがアイスクリームの製造室で,乳製品加工という扱いになるので保健所の検査も厳しく、所謂厨房の比ではない。
 使用者殿は律儀にも衛生管理に万全を期すために数年前,室内にオゾン殺菌機をしつらえた。業務終了後などの無人になる時間帯には毎日,一定時間殺菌機が動作する仕掛けな訳だ。

 何でもそうだがここで功罪が相半ばする。
オゾン殺菌自体は結構な話だが機器類の錆が著しい。今回のケースでは冷媒のレシーバータンク取付け部分に発生した赤錆が広がり,ピンホールが発生してガス漏れと相成った。
 タンクを交換して試運転を行い,一区切りついたつもりになっていたところ2,3日してからまた冷えなくなったとのオンコールがあり,俺は結構動揺した。大変ばつの悪い思いでまずはお客さんにお詫びするところから始まって俺は自分のお仕事のあら探しを始めた。
 空っぽになった冷媒を再度チャージして漏れ箇所を調べているうちにリーク箇所が一カ所だけではなかった事が判明した。弁解するわけではないがかなり珍しい症例だ。

 発見された別の漏れ箇所は制水弁のベローズで,停止時にはリークが起こらずに冷却運転を始めて高圧が上昇するとかなりの勢いで冷媒が漏れる。制水弁自体は一般に結構信頼度の高いパーツで,余程水質が悪い場所であったりしない限り故障という場面に立ち会う事はさほど多くない。
img04.jpg

注:上の絵はネット上に転がっていた画像だが制水弁取り付けの一般論からいってこれは正しくない。凝縮不良の発生を避ける意味で制水弁は水経路の出口側に取付けるのが正攻法である。

 水冷式の冷凍機は現在稼働実数が大変少ないので、俺の住む土地では制水弁を補修用パーツとして常時在庫している冷凍機屋はいない。
 たまたま俺は,数年前仕入れたのだがある事情で使う事がなくなり,デッドストックになっていたものを一個持っていた。水,冷媒,共に配管接続の呼び径は合う。但し,元々組み込まれている制水弁はDanfossの製品だが俺の手持ちは不二工機の製品で,細かい部分での仕様なり特性が異なっている可能性があるのでそのまま使うにはややギャンブルがかった場面が予想される。安くないパーツなのでうまく互換が取れれば貧乏自営業としては嬉しい機会だ。
img1264741175.jpg


 客先に事情を説明して対応の協議に入る。ポイントは3点。
(1)アイスクリームの製造予定日が翌々日に設定されている。
(2)正規の補修パーツであるDanfoss製の制水弁をFMIから調達すると到着日が製造予定日を過ぎてしまうのと,パーツの価格は末端渡しで5万円なりと安くない。
(3)バッジフリーザーは稼働歴が10年以上になり、あちこちくたびれ始めているので数年後にはリプレースを検討する事になる。よって,それまでの修繕費はなるべく低く抑えておきたい。

 当日の着地点として,代用品として俺の手持ちを修繕に使い,その後の運転状況を見て正規の補修パーツにスイッチするかどうかを決めましょう,という事になった。正規の補修パーツと俺の手持ちでは3割くらい価格が違う上に手間賃も一回分増える事になるので何から何まで元通りにという措置が必ずしも絶対とは言い切れないところがあるという事だ。

 交換は無事に済み,今度は掛け値なしにバリバリ冷えるようにはなった。しかし何の問題もないというわけではやはりない。
 制水弁を交換してみて分かった事だが,どうも不二工機とDanfossでは仕様が少し違うようなのだ。具体的にいうと俺の手持ちである代用品では流量をどう調整しても冷却水の吐出温度が所定の数字に達しない。流量調整の可変幅がDanfossに比べて狭いので新品当時の特性は出せない事が判明した。そういうところがパーツ価格の違いなのかもしれないが俺の懸念は的中した。

 多少,バッジフリーザーの消費水量が増えたところで施設全体の消費量から見れば大きな影響はないのだし,正規の修繕費よりも割安に済む事になるんだからこのままでいいよ,とお客さんは言ってくださるがしかし水道代に関係する話なので俺としてはちょっと割り切れない。
 水道代もさることながら冷却水の排水温度がせめて36,7℃は欲しいところが流量を目一杯押さえ込んでも33℃程度というのは過冷却だとか液バックを起こしはしないかと気にかかる。仕事仲間に相談してみたところそれくらいだったら問題ねえよという返事が返っては来たもののそれでもやっぱり気にかかる。いっその事排水配管末端に手動の絞り弁でもつけて無理矢理流量を押さえ込んでしまおうかだとかなんだとかあれこれ心配しているうちにもう冬だ。どうか何も起こりませんように,と時々ハラハラしながらもこの貧乏稼業としては結構実入りのいいお仕事になったので入金が待ち遠しい。欲目と不安の入り交じった複雑な心境で毎日を過ごす今日この頃ってわけだ。
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くるみ

まさに本物の職人さんですね!正規のパーツ以外で直してしまうなんて。しかもお客様の事も考えてるのが見受けられます(^o^ゞ 私あたりは白菜を使う所をキャベツで代用とゆう小さい事しか出来ません(+_+)
by くるみ (2011-11-20 02:37) 

HarryTuttle

くるみ様,コメントいつも有り難うございます。
 特に私の腕が優れているわけではなく,この機体は元々他社製パーツでも取付けられるように作られているのです。
 元通りの特性が出せないところは心残りですが修理屋稼業は新たに持ち上がってくる依頼を片付けなければならないのでお客さんのご了解が得られたところで先に進まなければなりません。
 
by HarryTuttle (2011-12-02 10:58) 

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