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食器洗浄機のポンプ修理に四苦八苦する [日記、雑感]

 食器洗浄機の修理にはまったことを書いておきたい。
機種は石川島(IHI)製のJMD-4Cという形式で稼働時間は15年目になる。俺が会社員だった頃に納めさせていただいた機体で,目立った故障歴はさほどない。
 症状の内容はすすぎのお湯が出ないというもので、調べてみるとすすぎ用ポンプのOCR(過電流プロテクター)がトリップしていたので手動復帰させて試運転するとモーターは回っているにもかかわらずすすぎ湯は出てこない。ポンプを取り外してケーシングをあけてみるとインペラー(内部の羽根)が粉々に砕けていた。これ迄納めた事のある同形機種の中でも初めての状態だ。

 石川島の食器洗浄機は上位機種だと比類なく頑健な造作で全く頼もしいがこのクラスだとまだその辺の厨房屋の製品っぽいところがある。とはいえ腐っても鯛と言うかIHIの名前はダテじゃない。
 今回の機体については15年の間にマイナートラブルが幾つかあったが機能不全となるような大崩れをする迄には15年かかったのだからいくら大衆迎合路線とは言えやはり製品作りはしっかりしていると思う。
ishikawajima02.jpg

 自慢じゃないがポンプの整備なら覚えがある。ちょろいものだ、と俺は高をくくったのだった。
IHIの食器洗浄機のポンプが壊れるというのは本当に稀な出来事なので修理用のパーツは普段手元になく,メーカーから取り寄せる事になった。4Cは10年以上も前に生産終了となってしまったが石川島のパーツストックは呆れるくらい物持ちがいい,ブツは二日くらいで手に入った。

 ところで今回いじったポンプとは形式が違うがお節介気味にベーンポンプ(渦巻きポンプ)の簡単な構造を貼付けておく。
22871.jpg

 インペラーの交換のみで事は足りると俺は踏んだ。
意味のない自己満足なのだろうが、最小限の出費で修繕を済ませることには何とも説明し用のない気持ちよさがある。

 組み立ては簡単に済んだ。これ迄何度もやってきた作業であって考える事など何もない,と,その時迄は思っていた。

 ところが,だ。
いざ試運転に取りかかってみるとポンプはものすごい音を立て、続いて何だか焦げ臭い匂いがした。慌てて電源を切ってまたポンプを外し,分解してみると不幸中の幸いと言うべきか,モーターに損傷はなかったのだったがケーシングを分解しようとしてみて驚いた。
 インペラーとケーシングが溶着されたようになってはずれない。焦げ臭い匂いの原因はモーターの焼損ではなくケーシング部分の摩擦熱による溶着だったわけだ。苦心しながらくっついた箇所を剥離させて再度組み立てた。
 インペラーだけを取り付けた状態ではモーターは問題なくするすると回るのだがフロントケーシングを取り付けると途端に軸の回転が重くなる,フロントケーシングの内側とインペラーがこすれ合っている事になる,何故だ,と、頭の中が混乱しかかった。

 一旦表に出て、煙草を吹かしながら俺はない知恵を振り絞ってあれこれと想像してみたのだった。そもそも,当初,インペラーが砕けていた状態も元を正せばそう言う事ではないのか。
 こんな事例は初めてなので憶測するしかないのだが,フロントケーシングに歪みが生じて内側に向かって膨らむような変形が生じている(外から見るとへこんでいる)のではないのか。フロントケーシング内壁とインペラーが接触する事で、モーターは機械抵抗が増して過電流が発生してOCRがトリップする。インペラーは摩擦熱によって砕ける,という成り行きは憶測可能な壊れ方ではあると思ったのだった。歪みは目視で確認できる状態ではないがそのように考えればこの不具合の辻褄は合う事になる。
 
 変形の生じた理由はさておき,問題なのはどんな風にして直面している状況の帳尻を合わせるかだ。
思案の結果,フロントケーシングをバックケーシングに取り付ける際に介するOリングをもう一本追加してインペラーとケーシングとのクリアランスを広げる事を試みた。固定用のボルトの締め具合に注意しなければならなさそうで、締め過ぎれば元も子もなくポンプはロックするし締め具合が緩ければ水漏れが起きる。中間のどこかをヤマ勘で探らなければならない。実にもってギャンブルがかっている。
 幸いこの博打はアタリと出た。アタリと出た迄は良かったが以前からぐらついていたという電源スイッチ(これはセレクトスイッチである)をそのまま使用し続けていたので俺が操作した拍子にリード線が金属疲労を起こして断線した。実に有り難くない付録である。

 七転八倒しながらどうにかこうにか運転可能な状態に迄はこぎ着けたのだが不可解な点やら反省やらが色々で大いにくたびれた。
 Oリングを2本使ってクリアランスを稼いでしのいだのは俺の足りない頭にしては悪くない思いつきだったとひとまず自画自賛してみるがセオリーからいえば当然問題外の処置で,ここはケーシングを一緒に交換しておくべきだろう。得意先には切り出しにくいが追加修理があったにしてもポンプ一台を交換するよりはまだ安上がりなので比較的容易に先方の承認は得られたのだがしかし、ケーシングが歪むという事象にはどうにも面食らうと言うかなにぶん初めての事なので腑に落ちない。
 付録の修理である電源スイッチの断線補修に関しては、断線箇所が引き出し口直近だったため通常はスイッチの交換だが,今回,何が何でも当日中にケリを付けておきたかったのでこれまたギャンブルがかった分解の仕方で半田をあげ直してモノにした。火事場の馬鹿力みたいな話だ。遅かれ早かれこの故障も起こっただろうから,ついでと言うか一日のうちに一緒に始末できてまだ良かったのだと無理矢理納得する事にした。

 総体にイレギュラーな修理作業だったと思う。番狂わせ続きでひどくくたびれた。何でもかんでも手当り次第にパーツの交換,それもアッセンブリーでの交換で済ますのであればもっと楽なはずなのだが所見を出す段階で大風呂敷を広げた手前,やたらと金額が跳ね上がるような追加修理の話もしづらく,結局冷や汗やら脂汗やらを流して四苦八苦する事になる。

 どうもここ数ヶ月,こんな成り行きの仕事が多い。例を挙げると沢山あるが、何だか修理屋としての技能の限界を誰かに試されているような気さえする。或いは俺自身が既に下り坂に差し掛かりつつあるのではないかと自信喪失気味の日々を送っているわけで,この先当分,他にも色々,胃の痛くなるような出来事が連続するだろうと暗い確信を持っているのである。 
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