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飲食店の敵とは [日記、雑感]

 7月頃だったと思うが、某コンビニのCVSが白糠に移動した。俺の住む町では180人の従業員が就業先を失ったことになる。
 俺のクライアントでもあったので俺は俺で新たな収入口を捜すことになる。

 世の中は色々に移ろっていくものだからして、仕事先である食品工場が移転すればそれに対応した仕事のやり方に変化させていけばいいのだが、さすがと言うべきか、興味深いのは移転したからと言って某コンビニエンスストアで販売される弁当がなくなったわけではないという点だ。相変わらず、同じ商品が同じように陳列されていて見たところ品薄感がないのはお見事。配送システムが充実しているということなのだろうがこのあたりは俺の専門外なのでこれ以上触れない。

 その一方で、相変わらず厨房屋にとっての主要顧客である飲食店は冴えない。
慢性的な不景気で所得が落ち込んでいるのに当面の競争相手だったスーパーの惣菜やコンビニの弁当がしぶといところへ持ってきて自分たちは相も変わらず以前の値段で依然と同じようなメニューなのだから負けて当然だ。
 夜の営業でアルコールの販売が見込めない飲食店は結構厳しいと思う。

 以前、仕事のおりに雑談していて気付いたことだが、上で書いたようにコンビニの弁当やスーパーの惣菜に対して何か対抗措置を講じておくべきだという提言めいた物言いをすると不愉快そうにして話を聞き流すオーナーは少なくなかった。特に自営業に多かったように覚えている。
 人間共通の性癖として、不愉快なことを直視しようとしない。往々にして不愉快なことにはかなり切迫した真実味があるものだが、何事に因らずそういうことはスルーしたくなるのが人の感情というものなのだろう。

 長いことこのようにして、それまでの飲食店の売り上げはスーパーやコンビニによってシェアされているのではなかろうかと考え続けてきたわけだが、最近、この見方も改めるべきだと思い始めるようになってきた。
 根本的に言えば、「食い物に金をかけるのは贅沢で良くないことだ」という考えが俺の住む土地では根強い。身も蓋もない話でこの価値観について語り出すととんでもなく長い話になるので機会を改めるとして、俺の住む土地の住民は幾ら貧乏暮らしをしていても断じて金を惜しまないモノが目下一つはある。

 それはクルマである。以前のスレッドで、俺は閉店間際のスーパーで半額の惣菜に群がる面々について駄文を書いた。
 http://blog.so-net.ne.jp/tuttle/archive/20070331
 それから後、あちこちで外食をする度に気付いたことだが、例えば380円のカレーショップや牛丼の「すき屋」で飯を食ったり、焼き肉バイキングの駐車場を横切ったりしていると、意外にも結構高価なクルマで乗り付けてきている人が多いことに気付いたのだ。クルマのことには全く詳しくないが駐車場の枠からはみ出さんばかりのでっかい4輪駆動車がゴロゴロしている。ベンツやBMWなんかも珍しくない。車両単価は軽く500万を超え、リッター5キロくらいしか走らないようなクルマを転がして380円のカレーライスや480円の牛丼特盛りを食いに来るのだ。勿論閉店間際のスーパーに半額の惣菜を漁りに来る面々の中にもこういうクルマの持ち主は多い。

 某24時間営業のハンバーグレストランがある。これまたジャンクフードの類だが深夜、仕事が遅くなると自宅で飯を作るのが面倒臭くなってたまに利用するときがある。店内はいかにも金のなさそうなアンちゃん達がなけなしの金をはたいて彼女と思しきネーチャンと連れ立っており、店内はそこそこ賑わってはいるものの客単価が低いのだから収益は疑わしい。こういう店舗の駐車場も高価そうな自動車がゴロゴロしている。
 せっかく彼女と一緒に晩飯を食うのだからもう少しお洒落な店でもいいんじゃないのかとは思うが、たまたまそういう場面であるカップルなのかも知れないので余計なお節介はしない。
 少なくとも、予算が一人三千円以上の会食を中心に売り上げが組み立てられている飲食店というのは俺の知る限り皆無に近い。そういう食事はそういう身なりで臨むのが一般常識だが、夕方過ぎのディナータイムにスーツ姿のカップルが夕食を摂っている風景も全く見たことがない。

 俺の知っている某氏は結婚前に奥方とそういう食事を一度だけ摂ったそうだ。独身だった頃のたった一度のフレンチディナーの話をもうかれこれ10回は聞かされてメニューの中身もすっかり暗記できるほどだ。

 可処分所得をどう使うかなどそれぞれの勝手なのは当然だが、それにしても俺の住む土地の人間はクルマに金をかけることを贅沢だと思わないらしい人たちは物凄く多そうに思う。運転しているクルマは目一杯ドレスアップしたセルシオで、着ている服は安物ジャージで、スーパーの売れ残り弁当を漁る姿というのはやっぱり何かひどく歪んだ姿ではないだろうか。これはもう、飲食店と言うよりは外食産業全体の敵とも言うべきライフスタイルであり、価値観だ。

 


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