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鍋洗い [日記、雑感]

 客の立場となって書く。
日頃舞台裏を覗いていていると、自分が客として行きたいところとそうでないところが結構はっきり分かれる。

 私自身は大してきれい好きな人物ではないが、それでもやっぱりキッチンの汚い店にはあまり行きたくない。
 毎度不思議なのだが、紙やら電波やらいろんなメディアでいろんな飲食店の紹介をするが、料理人その人がクローズアップされることは思ったよりも少ない。
 ファストフードのハンバーガーの類は別として、料理は結局人が作るのだ。

 概して言えることは、しかるべき系統を踏んだ勤務先で働いたことのあるコックさんがオーナーである店舗はキッチンが清潔である。コックの世界は軍隊並みの縦社会であって、新人が最初にさせられるのが掃除と鍋洗いだ。これはもうとにかく体に染みつくまでさせられる。今ではどうなのかは知らないが、以前は鍋に洗い残しがあったり床が脂でヌルヌルしていたりすると情け容赦なく先輩の鉄拳が飛んでくる職場も珍しくなかった。
 そういう環境をくぐり抜けてくると、三つ子の魂百までもというか、掃除(彼らの用語では「衛生」)をしないとお仕事の区切りがついた気になれない職業人となるものらしい。

 フランス料理のように一つのメニューを作るために三つも四つも鍋を使うようなキッチンのピークタイムを裏から眺めていると次から次へと鍋が飛ぶ。端から見ているとまるで後輩をいびっているのではないかと思えるくらいの凄まじさだが、門前の小僧よろしくコックさんの含蓄を伺うとフランス料理とはどうしてもそれだけの数の鍋を使う必要があるものなのだそうだ。

 この十数年、外食のキッチンにおける自動化はめざましい。(それが必ずしも良いことだとは思わない、という立場を私は取るけど)しかし幸か不幸か、鍋を洗うとか掃除をするとか行った作業はまだ自動化されていない。そのことが徒弟制度とか職人気質の根幹を守り、プロとしての基本的な姿勢が保たれているのだとすればあながち悪いことでもないと考えている。

何でもそうだが、下積みの苦労というのはいずれどこかで報われるものだ。職種は違えど、同じ職人としてはそう思うんだけど、私は。


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