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食中毒事故と冷蔵庫 [含蓄まがいの無用な知識]

 真夏である。暑い。そして真夏は食中毒事故の季節でもある。
ブログの主旨に則り、ここでは外食産業での食中毒事故について書いておきたい。

 飲食店での食中毒事故は怖い。これが表沙汰にならないということはまず殆ど絶対と言っていいくらいない。
 保健所の指導するところにより1週間の営業停止。それから新聞報道。
喫食者、営業店の双方に注意を喚起する目的があるので、事故は必ず報道される。
営業停止による機会損失もさることながら、悪評によるイメージダウンは結構尾を引く。

 経験上、事故原因は腐敗蛋白に因るところがこれまでは多かった。食材で言えば、魚介類、卵、精肉類の順である。
 貝毒は日常的に注意を払う事象なので意外と発生要因としては少ない方だったと思う。むしろ魚肉がこの時期の食中毒事故の要因としては多い。トップはマグロである。肉類で言えば鶏、豚、牛の順。牛肉は普段の調理でもそうだがさすがに腐敗には強い。

 料理のカテゴリーで区別するのは心苦しいが、経験上の遭遇確率なので致し方ないが敢えて書く。
 発生頻度で言えば和、洋、中の順か。中華メニューは殆ど全てと言っていいくらい完全に火を通して調理されるので余程のことがない限り食中毒事故にまでは至らない。
 和食メニューが要注意である。夏の生魚は慎重に管理されなければならない。規模の大きい飲食店ほど注意を要する。調理助手にアルバイトやパートを使っている場合、事故発生の危険度は上がる傾向がある。
 プロの板前は生魚を触った瞬間、その感触で腐敗を察知する能力を備えている。これには私の知る限り、一人の例外もない。
 事故が発生した事例では、調理助手が口頭指示を受けて生魚を冷蔵庫から取り出しておいたケースが危ないのだ。
 常温場所に長時間おくことも危険だが、冷蔵庫の中に置いていたからといって鮮度がいつまでも保たれる訳は当然ない。
 問題なのは、業務用の冷蔵庫には食材のロスを発生させるデッドスペースが生まれがちな点にある。デッドスペースが発生する原因を更に掘り下げれば、業務用冷蔵庫のスペックに問題があり、具体的には奥行き寸法の不合理さに行き着く。

 一般に、業務用冷蔵庫の奥行き寸法は外寸が約85センチである。ある時期からは65センチの製品も出回り、普及してはいるが全体比率から言えばまだ85センチが圧倒的に多い。
 85センチが規格めいたサイズとして定着した理由は不明だが、一般にドアの開口幅を90センチと考えた場合、搬入、搬出可能な最大限の寸法であることが一つの根拠と考えることはできる。
 算数として考えた場合、冷蔵庫の外寸から箱の厚みとドアの厚みを加えたものを減じると75センチであり、これが冷蔵庫の有効内寸である。
 だが、日本人一般の体格から言えば、リーチが75センチ以下の人など大勢いる、ということは、奥に押し込まれたままなかなか取り出されないでいる食材が生まれる頻度が上がるということでもある。取り出されないまま長時間おかれた食材がつまりロスである。
飲食店での食中毒事故は、これら複数の要因が合致して発生するケースが何度かあった。整理しよう。
(1)食材の鮮度に対する勘の備わっていないスタッフが冷蔵庫に入った食材に触れる場面がある。
(2)冷蔵庫に、ロスを生みそうなデッドスペースがある。
(3)調理師が調理の直前に食材の鮮度確認を見落とす。

 キッチンレイアウトのプランを立てる立場としてできることとして、私はなるべく奥行き寸法の短いものである65センチ企画をお勧めしている。容積と価格の割り算で行けば高くはつくが、食材管理の容易さにはだいぶ差が出るからだ。85センチというスペックは日本人の体格には合わないように思うのだ。
 しかし残念ながら、こういった提案がプランとして受け入れられないケースは多い。
 

 


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