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オープンキッチンと燃焼器具の相性について(2) [困った業者]

前回記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2014-11-29

 ガスフライヤーの上で少々ビリつき気味の振動音を出しながら稼働している排気フードを眺めているうちに俺はその面速度が少々高すぎるのではないかと疑問を持った。風速を計測する装備をその時の俺は用意しておらず,あくまで体感的な直感に過ぎないのだが、そう思えた。
 
 その居酒屋は多くの飲食店厨房がそうであるように第3種の換気設備(自然給気と強制排気の組み合わせ)であろうことは容易に想像がついた。
 諸兄は既にご存知だろうが,第3種の換気設備は室内が負圧(大気圧よりも低い)となる。
そしてこの居酒屋はオープンキッチンだ。前の記事で書いたように調理中に煙の発生量が多いオープンキッチンはホールでの煙の滞留について問題が起こりがちで、その解決策として排風機(換気扇)の能力を上げる方向に走りがちだ。
 しかし多くの場合,この処置はいい結果を生まない。
空調設備のイロハのイで、換気設備は給気量と排気量はあるバランスを保たないと意味がない。排気能力だけを幾ら上げても給気量が伴っていないと室内の負圧が大きくなるばかりで実際の換気量は殆ど増えない。ストローの途中を潰して一生懸命吸っても飲み物は決してスムーズに吸い上げられることはなくて苦しくなるばかり、という場面を想像して頂きたい。

 俺はガスフライヤーの燃焼自体には特に問題点が見当たらないことを伝えた上であらためて,ホシザキのサービスチーフ殿と居酒屋の店長とに聞き取りを行った。
 判明したことを列記すると以下の通りである。
*ガスフライヤーの途中失火は営業時間中に起き、開店準備の時間帯には発生しない。
*来客数や人の出入りの頻繁な時程多く起こるようだ。
*数ヶ月前に空調工事を行ってからこの事象は起こるようになった。

 ここに、最初訪問したときの現場の状況を重ね合わせてみる。
*厨房はオープンキッチンであり,ホールや通路との間仕切りはない。
*燃焼器具中,ガスフライヤーは店の入り口に最も近い場所に設置されている。
*第3種の換気設備で店内全体が基本的に負圧である。
*階段室入り口と店の入り口の二箇所に自動ドアがあり,風除室を構成している。

 実際に試してみるまでもなく,ここからは容易に回答が導かれる。
 つまり,風除室の二箇所の自動ドアがどちらも開いている時にOA(外気)が店内に吹き込んで,入り口に最も近い場所にあるガスフライヤーのパイロットバーナーが風の障壁となる間仕切り壁がないためにこの風によって立ち消えする。
 二箇所の自動ドアが同時に開くのは風除室の両端(階段室の入り口と店の入り口)に同時に人が立っているときであり,店舗が繁忙である場面で偶発的にこの条件が満たされるのであって、再現性に乏しいのは修理対応したホシザキのサービスマンが開店準備の時間帯にしか訪問できていないからである。もっとも営業中の修理訪問は店舗側が難色を示すに決まっているのだからそれは控えるのが通例だが。
 数ヶ月前に行ったという空調工事の内容を聞き取りしてみると排気用の外調機を風量の大きなものに取り替えたのだと言う。オープン以来,焼き物の煙(カウンターに面したところに焼き物機が設置されている)がホールに滞留する問題を抱えており,その対策として行った工事だとのことで,結果としては店内の負圧の度合いが大きくなった以上の効果を生んでいない。
 店舗のロケーションが雑居ビルの建ち並ぶ繁華街にある路面店であることでこの傾向は助長されることだろう。ビル風の発生によってOAが店内に流入するときの風速なり風量は通常時よりも高まることは間違いないからだ。
img-0050.jpg

画像は本文とは関係ありません。


 俺の結論として,問題点の所在は空調設備や建築構造にあり,改善はこの範囲で行われるべきであり,燃焼器具自体に不具合箇所があるわけではない。対策として具体的には以下の通り。
*厨房の入り口にドアを設けて外気の流入を遮るような障壁とする。
*給気量と排気量のバランスを取る。具体的にはホールに煙が流れ出ない程度に排気量を絞り込む対策をとる。 外調機に排気ダンパーがついているのであればこれを絞って調整する。なければインバーターなどの付加によって外調機の回転数を下げて風量の調整をとる。
 いずれも厨房機材の納入業者にとっては責任区分外のことであり,オーナーは建築業者なり空調設備業者なりに相談して頂きたい,と俺は区切りをつけたつもりになっていたが,この所見をまとめた報告書がその後なんとも苦々しい不条理を現出させることになるとはこの時予想していなかった。(この項続く)
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くるみ

オープンキッチンは色んな意味で賛美両論ありますね(^^;。お客様から見ると臨場感が良かったりするけれど…ある日店主らしき人が弟子を怒り出して!? 見たくなかったです(笑) スタイリッシュではあるけれど 裏事情は大変そうですね。空調であったり。次の続きをお待ちしてます(^o^)/。
by くるみ (2014-11-30 02:04) 

HarryTuttle

くるみ様,コメント有り難う御座います。
私としては厨房というのは基本的にはバックヤードであって,オープンキッチンとすべきところは調理工程の後段を限定的に見せるところであるべきだと考えています。
 コメントにあったように主が弟子を叱りつけるようなことは人前ですべきではないので一旦,裏へ連れ出して行うほうがいいのでしょうがかそもそも未熟な職業者であればお客さんの目につくところに出すべきではないですね。

 空調以外にも水回りや電気など,壁が一面あるかないかで施工のしやすさは段違いですから私はオープンキッチンというのは慎重に企画されるべきだと考えています。
 色々書き始めると長くなりそうなのでそれは本文で述べるとして,ある時期から飲食店でオープンキッチンが当たり前のように造作され始めたのはやはりテレビの影響なのだろうと思っています。
by HarryTuttle (2014-12-01 10:04) 

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