食物の未来について愚考する [日記、雑感]
以前の勤務先のコーポレートシェフが定年退職した。
コーポレートシェフの主なお仕事は以下の通りだ。
（１）展示会や講習会のデモクッキングで講師を務める。
（２）テストクックによってレシピと機器のパラメータを作成する。
調理の経験などろくすっぽないような時給800円のバイトがタッチキーを操作するだけで一端のメニューが出来上がる背景にはこういう方々の日頃の試行錯誤があるわけだ。
コーポレートシェフは厨房機材のメーカーにとってはソフト面での大黒柱であり，販促時に於いては表看板でもあるのでどんな調理師でもなれるわけではなく，殆どの場合，経歴を聞くとひっくり返りそうな方がそのキャリアの終盤部分での過ごし方として就任することが多い。
俺が会社員だった頃に随分お世話になったのその方は，俺の退社後もときたま連絡を取り合っていたのだがこれから先はどんどん疎遠になっていくのだろう。１人また１人とだんだんお仕事仲間が退場していくのはやはり少々寂しい気はする。
以前，その方と話題に上がったことをここで書き留めておきたい。
調理はどんどん自動化され，職人的修練はどんどん消費の表舞台では否定されて喫食者の目の届かない，あるいは一般的な外食ではないごく限られた場所でしか活用できないものになっていく。それを更に突き詰めていくと何が現れてくるのか。
俺が思いついたのはこういうものだ。
錠剤というかペレットというか，とにかくそういうものがここにあるとする。その中には生存のために必要な栄養素から食物繊維から，まあ諸々のものが成分として含まれており，ついでにこれを飲むと一定時間空腹感がなくなるという薬物的効果を持つ。
それは既に食物と言えないのだが、人が口に放り込んで生命活動を維持するものを突き詰めていくとこういう姿になるのではないか。善し悪しはさておき，ちょっとした時間の合間にその錠剤を飲んですぐまた仕事なり勉強なりに取りかかるような生活形態も不可能ではない。俺はそんな妄想を垂れ流し、そんなものが一般に普及して人の生活に定着したらうちらの商売は数％しか生き残れないね，と結んだ。
するとシェフ殿は真顔でそうだね，きっといずれそうなるよ，と返してきたので俺は少々驚いたのだ。そういう状況は調理師を不要とする世界な訳で，彼にとっては我慢のならない話ではないのかと想像していたのだが反応は真逆だった。勿論調理師も十人十色な訳で色々な考えの方がおられるのだろうが，こういう反応を示す方がその中にはおられたことが俺には意外だった。今から10年と少し前の話だ。
俺個人の生活手段という利害関係は抜きにしても，広い意味での外食は、だんだんこういうものに近づきつつあるような気がしている。合理性をどこまでも追求することはどこかで文化を押しつぶすのではないのか。一市井人としてその是非を語ることは出来ないしその流れを変える力も勿論ないのだが，世の中だんだん無機的に変質していった先には多くの人がこういうものを飲みながらのべつまくなしに何か有益なことや生産的なことに追い立てられる世界が待っているように思えている。そういう世界には住みたくないなあ，ということで俺のくだらない妄想なここでおしまい。
コーポレートシェフの主なお仕事は以下の通りだ。
（１）展示会や講習会のデモクッキングで講師を務める。
（２）テストクックによってレシピと機器のパラメータを作成する。
調理の経験などろくすっぽないような時給800円のバイトがタッチキーを操作するだけで一端のメニューが出来上がる背景にはこういう方々の日頃の試行錯誤があるわけだ。
コーポレートシェフは厨房機材のメーカーにとってはソフト面での大黒柱であり，販促時に於いては表看板でもあるのでどんな調理師でもなれるわけではなく，殆どの場合，経歴を聞くとひっくり返りそうな方がそのキャリアの終盤部分での過ごし方として就任することが多い。
俺が会社員だった頃に随分お世話になったのその方は，俺の退社後もときたま連絡を取り合っていたのだがこれから先はどんどん疎遠になっていくのだろう。１人また１人とだんだんお仕事仲間が退場していくのはやはり少々寂しい気はする。
以前，その方と話題に上がったことをここで書き留めておきたい。
調理はどんどん自動化され，職人的修練はどんどん消費の表舞台では否定されて喫食者の目の届かない，あるいは一般的な外食ではないごく限られた場所でしか活用できないものになっていく。それを更に突き詰めていくと何が現れてくるのか。
俺が思いついたのはこういうものだ。
画像は本文とは関係ありません。
錠剤というかペレットというか，とにかくそういうものがここにあるとする。その中には生存のために必要な栄養素から食物繊維から，まあ諸々のものが成分として含まれており，ついでにこれを飲むと一定時間空腹感がなくなるという薬物的効果を持つ。
それは既に食物と言えないのだが、人が口に放り込んで生命活動を維持するものを突き詰めていくとこういう姿になるのではないか。善し悪しはさておき，ちょっとした時間の合間にその錠剤を飲んですぐまた仕事なり勉強なりに取りかかるような生活形態も不可能ではない。俺はそんな妄想を垂れ流し、そんなものが一般に普及して人の生活に定着したらうちらの商売は数％しか生き残れないね，と結んだ。
するとシェフ殿は真顔でそうだね，きっといずれそうなるよ，と返してきたので俺は少々驚いたのだ。そういう状況は調理師を不要とする世界な訳で，彼にとっては我慢のならない話ではないのかと想像していたのだが反応は真逆だった。勿論調理師も十人十色な訳で色々な考えの方がおられるのだろうが，こういう反応を示す方がその中にはおられたことが俺には意外だった。今から10年と少し前の話だ。
俺個人の生活手段という利害関係は抜きにしても，広い意味での外食は、だんだんこういうものに近づきつつあるような気がしている。合理性をどこまでも追求することはどこかで文化を押しつぶすのではないのか。一市井人としてその是非を語ることは出来ないしその流れを変える力も勿論ないのだが，世の中だんだん無機的に変質していった先には多くの人がこういうものを飲みながらのべつまくなしに何か有益なことや生産的なことに追い立てられる世界が待っているように思えている。そういう世界には住みたくないなあ，ということで俺のくだらない妄想なここでおしまい。
サラリーマン時代、調理人の給料の多さと女子社員にモテルのを見て、「道を誤ったかな？でも今更進路変更出来る歳でも無いし、、、」と諦め？てましたが、、、バブル期を過ぎると厨房内に大型の調理機が導入され始め、随分と工事立ち合いをしました、その後に冷凍した食材を大型レンジでチンして調理する姿を見てると、簡単な世界に成ったことを実感しました。
次第にベテランが辞めて行き、頭の空っぽな奴が上にあがり、言う事やる事がマヌケで呆れてました、、、TVに出る位でないと、調理人の未来は暗いと思います、経済効率優先の自動化とデフレ化により調理の世界は変わりましたね、まあ写真もデジタル化で写真家の価値も下がりましたが、。
まともな食事は最早自分で造り食べる力量とその時間を確保出来る余裕が無いと、誤魔化した食品を食べるしかない現状でしょうね。
by 007 (2012-11-15 12:18)
007様，いつもコメント有り難うございます。
皮肉なことに，テレビやマンガで料理というものがクローズアップされるに連れて調理師の内実は徐々に荒み始めてきたように私は考えています。
丸暗記の繰り返しだけで一日が終わる安月給の兄ちゃんという構図は私の同業者にも蔓延しつつあります。実に色々な業種がそんな風に変質しつつあるのはやはり寂しい気分です。
by HarryTuttle (2012-11-16 16:38)
『コーポレートシェフ』なる職業があるのですね。意味合いは変わってしまうかもしれませんが…私達が自宅で簡単に調理？出来るレトルトや冷食も、開発の裏には何ヵ月間も太る程食べ続け研究する人達がいますね。その製品を作る機械の裏にも何年も試行錯誤で研究した人も。家庭で本格的に正当なお料理を作るのが趣味ですが♪、作ってみると手間と時間とお金が掛かるのは解ります(^^; 私は食べるのが大好きなので、そんな『錠剤生活』が主流になったら…(泣) まるで燃料で動くロボットですねm(__)m 動かなくなってもいいやって気持ちです(T-T)
by くるみ (2012-11-19 10:23)