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I'm Getting Sentimental Over You [同級生の再起にまつわる話]

 ガキの頃からの友人から自宅にエアコンの取付け工事を依頼された。
エアコンをいじることは普段ないが俺は結構張り切って臨んだ。友人とは有り難いものだ。

 取付け場所は住宅の二階なので大半は屋根の上での作業となった。昔から言われるようにバカと煙は高いところに上り、俺も例外ではない。季節が夏なせいもあって日頃天井裏だのピット下だので芋虫みたいにモゾモゾしているのに比べると爽快なことこの上ない。
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 使い回しの機体だ。製造年度は古く,使用冷媒はR-22だがまだまだ使える。
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 不慣れな俺が施工しているにしてはまあまあか、と、勝手に悦に入る。

 撤去工事は結構いい加減だったらしく冷媒管の接続口が未処理のまま雨ざらしになっていたので水分などの異物混入を懸念していたが幸い試運転は順調に済んだので俺の心配は取り越し苦労で終わった。エアコンの仕事で気楽なのは冷媒管低圧の蒸発圧力が高いので冷媒のチャージ量を多少適当にやってもちゃんと冷えるってとこだ。同じ冷媒R-22でもこれが冷凍庫となると0.03MPa近辺での蒸発圧力になるので腕前を要求される。

 工事費用をどうしたものかと今は思案中だが使用した材料はあらかた先月農協の工事で購入した材料の余り分なのでなるべく良心的に精算しようかというのが目下の考え。こういうところがいつまで経っても貧乏な理由でもあるのだろう。
 
 一仕事終えた俺はなかなか気分が良く,天気が良かったので屋根の上にこしらえた足場にあぐらをかいて一服決め込んでいたそのときあることに気づいた。
 友人宅は比較的密集した住宅地の中にある。そして現場のごく近所には俺があんちゃんの頃に手ひどく振られたことのある女性の住む(らしい)家がある。
 ご本人は近所の屋根に上がってガサゴソと工事をしているオヤジがまさかうんと以前に袖にしたことのある野郎だとは気づいていまい。というかさほど大掛かりで目立つ工事ではないのでそもそも工事が行われていること自体意識のアンテナには引っかかっていないと思う。

 俺は仕事中に雑念に捕われるような職業人ではないが、いっとき記憶の引き出しを開けて少しの間感慨に耽った。幾つかの思い出が集積される程度には生きて、その頃の時間を結構冷静に顧みることができる程度には老け込んだ。今の俺はそんな年齢に達した。そういうことだ。
 現場を撤収しながら俺は記憶の引き出しを閉じる。次にそれが開くことは俺が生きている間には恐らくもうない。俺は現場から現場へと巡り歩き,いろんな人と会っては別れ,時たま立ち止まって記憶を読み返したり上書きしながら流れていく。どこに流れ着くのかさっぱり見当がつかないが。


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