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丸腰バカ [困った業者]

 阪神淡路で被災経験をもつ今村岳司さんのブログを読ませて頂いた。
http://xdl.jp/diary/?date=20110313

 この文中で大変興味深い箇所があったので引用させて頂く。
引用始め
統制もとられておらず装備もなく訓練も受けていない「ボランティア」はただの野次馬観光客です。何の役にも立ちません。 自衛隊は、食糧から水から燃料から寝具から、全て自前で用意して出動します。 しかし、手ぶらのボランティアは、被災者が食うべきものを食い、被災者が飲むべき水を飲み、 被災者が寝るべきところで寝るのです。
引用終わり

 この一節を読んだときに俺の中ではある不愉快な人種の姿が解凍されて腐臭を放ち始めた。
 災害復旧のようにドラマチックな場面ではないが,素人の感情的な思い込みだけでは物事が解決しない,訓練なり経験を積んだプロの手に委ねるしかないという意味で機械の修繕にも似たような性格はある。
 災害復旧であれ機械の修繕であれ,プロは金のために動いている。同情とか義侠心の有無は当人それぞれの意識下の問題なので確かめようはないが,何せそれが仕事だからその場に駆けつけてきて問題の解決に当たるわけだ。

 俺の仕事,修繕だったり施工現場だったりでは人手が必要な場面が当然ある。従業員を雇えるほどの甲斐性が俺にはないのでスポット的に誰かに手助けを頼む事はある。
 そこでだ。当日現場に現れる奴の中には全くの丸腰で現れるバカがいる。生産工場の構内に入るというのに安全靴はおろかヘルメットさえ用意してこないアホがいた。そういう場面でヘルメットを被る事くらい労務作業ではイロハのイのはずだがそんな事も知らないくらい無知なのか,それともヘルメットの一個も買えないほどの貧乏人なのか。あんなものは千円かそこらくらいで買えるはずなんだが。

 立場が逆で,俺が誰かの補助として現場に赴くときには予めどんな作業を行うのか,を聞くのが習慣だ。大体,最低限持参するのは
1:普段持ち歩く手持ち道具,上履き,軍手(予備含む),ウェス(雑巾)
 作業内容、依頼内容によっては
2:電動工具,溶接機材と材料、電材や配管資材
 工場構内や建設現場での作業の場合は
3:安全靴,安全帯,ヘルメット
といったところか。いずれにしても依頼元から道具や資材は全部こちらで用意するので身体一個だけでよい,と言われない限り上記の1、位は最低限持参する。俺が依頼する場合でも大概の人は同様である。

 ところがどんな世界でもある種のバカはどうしてもなくならない。そしてこの種のバカは大変迷惑な存在だ。
 先の引用箇所を思い出して頂きたい。俺が心中,丸腰バカと名付けているこの種のバカ共は俺の道具箱を好き勝手に引っ掻き回しては俺が使うべき道具をどっかに持ち出していき、俺が積算して用意した電線なり配管なりを好き放題にぶった切って無用な端材をこしらえては材料不足になって作業を往生させる。
 道具や材料がなければ仕事にならない,その事だけでも十分迷惑なのにこの手のバカは更に迷惑な事に持ち出した人の道具をどこかに置き忘れてなくす。もしかしたらかっぱらっているのかもしれない。
 丸腰バカと仕事をするときには勢い俺は疑り深くならざるを得ない。現場を撤収するときに忘れ物やなくなっているものがないか、或いは間違って他人の道具を自分の道具箱に入れていないかを確認するのは仕事上の習慣だが丸腰バカと一緒のときには何かがなくなっている事が物凄く多い。そしてこういう時の丸腰バカは俺は絶対に元にあった場所に戻したと証拠立てのしようもない事を言い張り、それどころかあまり根掘り葉掘り追求するとお前は俺を泥棒扱いするのか,と,怒り出す。
 泥棒扱いされるのが不愉快であれば多くの人たちがそうしているように最初っから自前の道具を持ち込んで仕事をすればいいのだし,第一,泥棒扱いも何も,無断で他人の道具箱を引っ掻き回しては何か持ち出していくのだから既にれっきとした泥棒じゃないか。

 先に引用したテキストの丸腰ボランティア同様,俺が出くわす丸腰バカも自分のバカさ加減に呆れるくらい無自覚だ。こういう連中は恐ろしい事に自分が誰かの仕事の邪魔をする役立たずであるという自覚がないどころか,むしろ反対に,自分は随分腕のある有能な人間で俺を助けにきてやっているのだと思い込んでいるフシがある。
 その精神構造が俺には全く理解できないが,傍目から見る限り丸腰バカ共にはある共通項があって、それは待ち合わせた現場で目が合ったその瞬間に察しがつく。このバカ共の物腰は一様に『手伝いに来てやっているんだ』という印象を俺に与える。プロとして金を稼ぎに来ている人間の振る舞いにはどうしても見えない。

 救いようのないバカのうちの一人はある店舗の改修工事で,解体と撤去を行うと予め連絡してあるその現場に丸腰どころか半袖のポロシャツにカジュアルパンツとサンダル履きで現れた。ポケットに手を突っ込んで『おう,何から始めるんだよ?』と抜かしたその大馬鹿者を俺は当然ながら思いっきりどやし付けて現場から追い返した。このバカタレは帰り際に『足代くらいは貰えるんだろうな』とぶんむくれた面付きで捨て台詞を吐いていったが、俺は俺であとから追いかけていってハンマーでこいつの頭を殴りつけたい衝動を抑えるのに努力した。二十歳やそこらのあんちゃんではない,この道数十年,50を過ぎた自称ベテランの同業者のやらかすことなのだから頭の構造を測りかねる。

 よくわからんのは今使おうとする道具を持ち出されて苛立った俺が丸腰バカに「俺は迷惑しているのだ,あんたは自分の手持ち道具も持って来ていないのか」と聞くと決まって黙りこくって俺を睨みつける,または一向に悪びれるふうもなく俺は手ぶらで来たんだとそれが当たり前のように言い放つ物腰だ。ドライバー一本,モンキーレンチの一丁でもいいから手持ち道具は持参してきてくれと事前に何度言っても一向に変わる事がない。余程物覚えの悪いバカなのか,人の言っている事を全然真面目に聞いていない腐った性根なのか,はたまた何が何でも他人の商売道具でしか仕事はしないという何とも不可解な信念の持ち主なのか,いずれにしても普通に考えてそれは依頼を受けて金を稼ぎに来た職人なり技術屋の姿ではないだろう。
 想像するに,これら丸腰バカの意識のありようはこんな風だ。
1:自分は大した腕を持った技術者である。 2:その自分がこいつ(ここでは俺だ)の依頼を受けて「来てやって」いる。 3:だからこいつが俺の仕事のお膳立てをしてくれるのは当然 4:自分は特別な人間なのだから世間の人たちは地のままの自分を受け入れてくれる事になっている。   家でテレビを見ながら横になって鼻毛をむしりながら屁をこいてる自分はそのまんまの姿で世間中   どこにいっても受け入れてもらえるに決まってる。  

 とんだ思い違いもいいところで,この手の丸腰バカで筋金入りのプロなんてこれまで俺はただの一人も会った事はない。俺は若い頃親方に散々言われたが借り物の道具で仕事をするような奴は所詮借り物の仕事しか出来ない。
 この手のバカは折に触れてはこちらが尋ねているわけでもないのにさも自分が大した者であるかのように自慢するが必ず独りよがりな思い込みだ。丸腰バカには共通した性質がある。
1:馴れ合いみたいな人間関係の中でばっかり仕事をしているので物腰が馴れ馴れしい。 2:機械いじりだの工事だのが素手だけで出来るわけはないのでいつも誰かとつるんで歩いており、   つるむ相手の商売道具で自分の仕事を済まそうとする。
 大体に於いて他人の話に素直に耳を傾けるような輩ではないのでこういうバカには直接文句をいっても全く何の効果もない。そのあと仕事の依頼は控える,というのが順当な接し方だろう。
  被災地に於ける自分探しの丸腰ボランティアは独りよがりな役立たずばかりで被災者の方々や救援活動に従事しておられる自衛隊や消防などのプロにとってはさぞかし邪魔臭い有象無象共なのだろうが,俺の接する事のある丸腰バカは一端に報酬を要求してくるのだからもっと始末が悪い。こんな輩こそ津波にでも呑み込まれてとっととくたばって欲しいものだと人格者でない俺は真面目に思っている。
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くるみ

半袖ポロシャツ&カジュアルパンツ&サンダルの彼を想像しながら読み進めると なんと想像の3倍以上の大人の方だったので驚きました!? HarryTuttleさんの仕事に対する真剣さが伝わります。当たり前の事だと言われそうですが、そうじゃない人も信じ難いですが悲しいかないるので。
追伸…『大企業が作る食品機械のこと』へのコメントのコメントの事、理解致しました(^^;
by くるみ (2011-03-16 23:01) 

HarryTuttle

くるみ様 コメント有り難うございます。
『そうじゃない人』が一端のプロ面をして日常お仕事をする事に何の疑問も抱いていない使用者の方々がいる,これも事実です。

 この手の丸腰バカに共通するのは商売道具の扱いが乱雑で無神経な事,というのもあります。一時などは私がハンマーを使っているので自分の作業ができないということで私の道具箱からモンキーレンチを持ち出してハンマー代わりに使っていた大バカ野郎がいました。
 塩だらけになった工具を拭きもしないでそのまんま道具箱に押し込むバカもいました。数え上げればきりがありませんがこういうときには私は問答無用で大体そのバカの頭を殴りつける事にしています。

 自分の金で買ったものではないから幾らでも粗末に扱っていいとでも考えているのでしょうかね?
by HarryTuttle (2011-03-19 12:17) 

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