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理研機器ゆで麺器修理の経過(1) [含蓄まがいの無用な知識]

 更新をすっかりさぼりがちなこのブログだが書くべきことがないわけではなく,むしろ逆である。
 考えてみるとこれまで本業である修繕の成り行きを画像を追ってまじめに記事にしたことは殆どなさそうに思う。元々世の中に広く認知されるべき高尚な仕事をしているわけでもないし,ブログ記事を書くために仕事をしているわけでもないのだからまあどうでもいいことではある。

 某総合病院は今から約15年ほど前に移転新築した施設で,この時俺は転職して間もない頃だったがそれ以前の勤務先の頃からお世話になり続けており,プランニングの段階からご依頼を頂き,機材の納入と施工管理までを手がけさせていただいた。
 以後は現在に至るまで,修繕の仕事を頂いてもおり,何と言うか職業人としての俺の時間がそのまま重なり合っているような関係にある。

 外来食堂で使用しているゆで麺器は理研機器という製造元の製品で,認証を取得していない製品なのでどこにでも設置可能というわけにはいかないが値段が安いのと新築物件での設置なので建築工事の防火構造を厳格に行ってもらうことで最終的に選定した経緯がある。
 15年も使用していれば故障の一つや二つ,それはあるだろうし、いつかはリプレースを検討することを余儀なくされる場面は訪れる。

製品のURL:http://www.riken-kiki.co.jp/assets/img_1103.jpg
さすがに15年もの間,毎日使用しているとやつれは出て来る。
理研 ゆで麺器-3.jpg


 障害の内容は水漏れというものだ。
漏れ箇所は比較的簡単に発見できたが漏れの箇所が問題で、配管系統の継ぎ目からのものであれば修繕は楽だし費用もそこそこで済むが今回は湯槽を加熱するためのパイプにクラックが入っている。
理研 ゆで麺器-6.jpg

 よくある構造だが湯槽に突き合わせ溶接されたパイプの中を燃焼排気が通過することで加熱される仕組みだ。湯槽の下部にバーナーがあり加熱されるが,燃焼中は当然,加熱パイプに熱膨張が発生し,消火時にこれは収縮するので応力ひずみによる金属疲労が蓄積していくことになる。
 結果としてどこかの時点でこのような亀裂が発生し,水漏れが生じるが一般に,15年使用してこのような状態だとリプレーズを検討すべきである。湯槽の交換は高額であり,もう少し頑張れば新品に手が届くほどのものとなるからだ。

 新品の購入は固定資産の購入であり,組織上は色々と手続が必要なので対処について結論を出すまでには検討するための時間が必要であり,だからといって使用を中止するわけにも行かないし水漏れを放置したまま使用を続けるわけにもいかない。色々な意味で俺が板挟みとなる。
 当面なすべきことは方向性が定まるまでの間応急処置を施して仮運用できるかどうかの可能性を探ることで,物事はだんだん面倒臭い方向に転がり始める。

 応急処置,と素人は簡単に言うが修繕は応急の方が難しい。これは声を大にして言いたい。
加熱パイプには目視で歴然とわかる亀裂が発生しているが,幸いなことにパイプの断面には大きな歪みが発生しているわけではないので何かしらペースト状のものを塗布することで一時的に水漏れを塞ぐことは可能なわけだが使用時には先に書いたように熱膨張が起きる点が問題で,耐熱性と弾性が両立できるような素材でないと応急処置の効力が持続できない。
 勿論,そういう場面に於いて回避策としてこういう材料を用いてくれなどという裏技の答えを製造元が用意してくれているわけなどない。メーカーの答えは「速やかに湯槽を交換してください」しかないに決まっている。立場を置き換えれば俺だってそう答えるに決まっているのだ。

 応急処置の大変さとは,正規の答えが適用できない場面で即日、自分がその場で別の答えを捻り出して実行しなければならないところにある。 
 加熱パイプの外側は水で,沸騰時の温度は摂氏96℃であり,激しい対流が起きている。内部には燃焼排気が流れていてその温度は大体400℃を幾らか割り込むもので、熱膨張による応力が発生している。

 応急処置は大なり小なりギャンブル的な判断を求められるものであって、成功の確率を高めるためには知識なり経験が必要だ。
 用いる素材として俺の頭の中で残ったのは金属粉を練り込んだエポキシパテと蒸気配管に用いる耐熱性を持ったシリコンシーラーの二つで,前者はその弾性に,後者はその耐熱性に懸念が残る。
 ギャンブルというのはそこから先で,俺は今回後者を選んだ。

理研 ゆで麺器-10.jpg

 補修後の状況。亀裂箇所に刷り込むようにして範囲は広めに,厚めに塗布するのがコツだ。

 今回,仮処置はラッキーなことにあたりと出た。
経過を見るために数日期間を置いたが問題はなく,水漏れはどうにか塞がった状態で使用は再開され,リプレースするか修繕するかについて事務方との協議に入る段階となる。(この記事続く)
タグ:ゆで麺器
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稼働歴18年目の食器洗浄機で起きた障害のこと [含蓄まがいの無用な知識]

 ここで何度か取り上げたことがある俺の得意先であるところの某病院にある食器洗浄機はいまから大体20年近く前に増築,改修工事を行った際に導入されたもので,当時会社勤めをしていた俺が納めた。

 贔屓目抜きに,ここまで幾つかのマイナートラブルはあっても機材の使用停止という場面は免れ続けてきたのでIHIの食器洗浄機というのはやはり、障害に対する耐性は高い造りだったのだな、と俺は自分の眼力にちょっと自信を持つのだが,IHIは数年前にこの事業分野を北沢産業に譲って手を引いてしまったのでこの点は少し残念。

 IHIの製品ラインナップ中,アンダーカウンタータイプとブースター一体型のボックスタイプはMシリーズと呼ばれており、重工屋らしからぬ一般大衆路線で,細部のスペックは上位機種に比べると見劣りするがそれでもまあ,腐っても鯛ということではあるらしい。

 ここで取り上げるのはJMD-4Cという機種だが先月来故障が続いている。以下列記する通り。
(1)先月末頃にはドアスイッチが破損し,電源投入と同時に洗浄運転が始まるトラブルが発生
(2)今月初頭,ドア開閉部分のローラーが破損し,開閉動作に支障が出る。
(3)昨日,洗浄ポンプの運転時に異常音があり,噴射量の低下と思しき状態となる。

(1)と(2)は片付き,現時点では(3)について対処法の協議中である。

 検証を進める。
破損については全て樹脂成形のパーツという共通項がある。(3)での運転時の騒音と噴射量低下はインペラーとケーシングの機械的な接触によるものと考えられるが摩擦抵抗によって運転時の噴射量が低下するとは考えにくく,インペラーが破損して羽根部分が欠けているために時間あたりのかき出し量が落ちたものと考えられる。(ポンプを分解してのケーシング内目視確認はしていない。外見と運転音からの推測である)

 樹脂製パーツが割れたり欠けたりしており,弾性や可塑性が失われた結果これらの障害は立て続けに発生しており、食器洗浄機が10年程度の稼働年数でリプレースされていれば遭遇することはなかったはずの故障と俺は見ている。
 弾性や可塑性の低下は成型品から可塑剤が抜けていくことによって発生するわけだが,こういう症例を見ていると,金属パーツの有難味を改めて認識することになる。
 しかしプラスチックパーツの可塑性が低下して脆くなり,故障が発生するまでの時間が18年というのは製品寿命としては充分過ぎるものであって一般大衆路線の製品でさえこれくらいの耐久性を見込んでいたところはやはり重工屋的な挟持を感じるところではある。

 (3)の対処については洗浄ポンプの交換となるか,ポンプ自体の分解整備となって樹脂成形パーツ群であるケーシング関連の交換とするかについては現時点では未定だが,今回の修繕でこの先20数年の稼働歴を持つ機体となっていくわけで,低価格路線の製品でさえこういう製品作りをしていたのではリプレースは進まず,販売台数が低下していくのは明白であって,一般的な厨房機材の使用者にとってこういう稼働歴は最早想像可能な範疇外の出来事だろう。
 
 その製品群は一部を除く形で現在北沢産業が引き継いでいるわけだが、ホバートの製品の販売に軸足のあるこの会社が販促に力を入れていくとは思えないし、北沢という会社のカルチャーから見るにいつまでもネチネチと修繕を重ねて長い稼働歴を達成せしめるだけのサービスマンが現れて来るとも思えない。購入者にしたところで念頭にあるのは購入価格のとこしかないのが大半だから結局,正しく理解されないままIHIの食器洗浄機というのはこうして徐々に,市場から姿を消してくのである。
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中華バーナーと燃料の相性について一考 [含蓄まがいの無用な知識]

 これ見よがしに休日中の俺に出動を迫るバカ客だの詐欺師まがいの悪徳店主だの,どうも仕事の本筋とは関係ないところで精神衛生上よからぬ輩によってこのブログが使われるのは本来好ましい話ではない。
 本日8月15日は,俺はのんびりと休日を満喫しているので7月1日に書きかけたテキストに加筆し,プロの端くれとしてもう少し諸兄にとって有益となるような問題提起をさせて頂きたい。大半の同業者の方にとっては何を今さらの内容だとは思うが俺自身の備忘録というか記憶の整理の意味もあって書いておく。

 先月度の仕事内容を振り返ってみると,俺にしては珍しく燃焼器具を扱うことが普段の月より多かったように思う。
 それらのうち,多くの割合は中華レンジのバーナーだった。
 和洋中と並べてみた場合,俺の経験則としては一番刺々しい態度で口うるさいのは和食の調理師だが調理の中心である火口については中華のバーナーが一番シビアな調整を求められるように思っている。これまた経験則だが和洋中と並べてみた場合,中華のコックさんには比較的人当たりの円満な方が多い。よって,大して燃焼状態の良くないバーナーではあるが何とか使いこなされているケースは結構多いのではないだろうか。

 俺は元々高級な脳味噌の持ち主ではないので,燃焼という物理現象に関して理論だった説明が出来ない。大体この糞ブログは俺の垂れ流しが目的であって同業者の実務指導になんか役に立つわけがないのでここから先は俺が勝手に書き飛ばす。

 俺の住む土地は田舎町なので都市ガスの供給範囲はあまり広くなく、ほぼ市街地限定と言ってよい。数年前に全面的に熱量変更が行われ,現在は13A(天然ガス)が供給されている。
 これは例えば,若い頃に大都市圏で仕事を教わってからUターンして来た調理師にとって朗報であるようだ。とは言え需要家の大半はLPG(プロパンガス)であり,特に中華の調理師にとっては帰郷後の仕事に於いてしばらくの間違和感を覚えるもののようだ。

 横浜帰りの中華のコックが「いやあ,ここはプロパンガスだからちょっと調子が狂っちゃって・・」と帰郷当初ぼやくのを俺は一度ならず聞いたことがあり,ある時期まではそれが何のことだかわからなかった。
 どのメーカーのカタログを見てもそうだが,燃焼器具は全てガスの種別に関係なく定まった発熱量である。だからガス種が何であれ使用感は変わらないはずだ,と、ある時までの俺は信じ込んでいた。それは調理師の錯覚に過ぎないのだとばかり思っていた。
 一つ不可解だったのは,燃料の種類と使い勝手に言及するのは決まって都市圏で勤務経験のある中華の調理師だったことだ。何故か和食や洋食の調理師らはそのことを聞いた記憶がない。

 ヒントというか暗示というか,手がかりらしきことを耳にしたのはそれから何年も後,勤務先の先輩と雑談の最終のことだった。
 燃焼器具の燃料の種別のことでああでもないこうでもないと話している最中,その先輩がこういうことを口にした。
 片方はLPG仕様,もう片方は種別はともかく何かの都市ガス,同じ機種のガステーブルで,同じ大きさの鍋に同じくらいの水をはり、ごとくにかけて火をつける。よーいどんで二台同時に沸き上がる時間を測ってみる。
 現実にそんな比較検証を行うことは出来ないと言っていいのだが,うろ覚えの記憶,体感的なものとして都市ガスの方が沸騰までの時間は早いように思える,そういう内容だったと覚えている。

 その話は何年も俺の頭の中の引き出しで眠っていた。検証する機会も日常業務ではあるわけなどなく,ダラダラと時間が過ぎた。
5年ほど前,俺の住む土地では都市ガスの転換が大々的に行われた。この時,地元のガス会社からは俺のような者のところにも幾らかの発注があり,幾らかの売り上げにはなった。
 それまでの燃料は4Cであったものが13Aとなり、単位堆積あたりの発熱量は約3倍となるためこれから後は敷設する配管径が1サイズダウンでも何とかなる場面は増える。これはいいことだ。

 4Cから13Aへの切り替え作業を行い,点火試験をしてみてはっきりわかるのは炎の大きさが明らかに異なることだ。体積あたり発熱量の小さい4Cは当然ながらそれを補う意味で炎は大きい。
 使用者の方に言わせると4Cの頃の方がほんの少し,お湯が沸くのは早かったような気がするそうで、これは複数の方から伺った話なのであながち個人の錯覚とも言い切れないだろう。

 そこで俺の中には何年も燻り続けていた疑問が持ち上がり,ある憶測が働いた。
燃料の種別によって燃焼温度に若干の差はあっても,それは大体ある範囲の中に収斂する類いのものだ。だとすると炎の最高温度である先端部分と火にかけた鍋底との距離によって沸き上がり時間に差が生じてくるのではないのか。言い方を変えると同じ発熱量のバーナーであった場合には火脚の長い(単位体積あたりの発熱量が低い)燃料で燃焼させた方が炎の大きさとその先端と鍋底との距離が近い分だけ加熱には有利に働くのではないのか。

 俺は無学な人間なので,この辺りの関係性を数式立てて説明できる能力がない。ただ,使用者の方に折りに触れてこの話題を投げかけるとある種の見識ある方々は確かに違いはあると仰る。
 このブログでこれまで何度か取り上げさせて頂いた俺の得意先である方とあるときこの話題でしばらく雑談すると,LPGと13Aでは鍋が加熱される面積が体感的には異なる感じがすると仰った。具体的には前者に比べて後者は広い気がするのだそうだ。
 LPGは都市ガスに比べて小さな火でも発熱量を稼げる,ということは鍋底を焦がし易い燃料でもあるわけで,この方に言わせると確かにそういう傾向はあるらしく,都市部で調理の仕事を覚えた中華のコックが地方に帰郷してLPGの燃焼器具で仕事をするにあたって違和感を覚えるのがそれなのだそうだ。

 俺はここで燃料の種別に優劣をつけているわけではない。
同じカタログスペックの燃焼器具ではあっても燃料の種別と使用目的によっては伝熱のされかたに違い(差とは言わない)が生じ,ある種の調理師にとってそれは感知可能なものであることを言いたいのだ。
 
 某オーナー様のお話を続ける。
 横浜で10数年勤務して仕事を覚えて帰郷し,開業したときLPGでの調理に最初は軽い違和感を覚えたが火加減と鍋の扱い方を少し変えることでそれには適応した。
 一見何気ない話ではあるが、これをさらりと語るところにプロフェッショナリズムを感じない人はクラフツマンシップとは無縁の輩である。

 もう一つ,その方のお話を最後に書き残しておく。
LPGに比べると天然ガス(13A)のほうが柔らかい火に感じられる。

 俺はこれまで仕事で接した中で調理師から伺った火に関する言葉のうちでこれ以上に奥深さを感じたものはない。

 某店舗のURL:http://blogs.yahoo.co.jp/kamibi0125 
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救えるときもある [含蓄まがいの無用な知識]

 このブログで何度か取り上げたことのある隣町の中国料理店からの修理依頼である。
オープン以来13年が経ち,さすがに機材にもくたびれ加減が目立ち始めており、今回は中華レンジを手がける。

 障害の内容はバーナーの混合管が折れたというものだ。
混合管はSSのメッキ管(白ガス管)で片ねじを切っており,バーナー本体にねじ込まれている。当然だが折損箇所は決まってねじ込み部分である。折れる理由は
(1)酸化、燃焼に伴うものと塩分の付着の両方
(2)混合気の流動摩擦により肉厚の減少

 混合管の折損はバーナーの交換がその対処法となる。汎用パーツとして販売されているバーナーに混合管は付属していないのでこのときは元の個体についていたのと同じ長さの短管を切り出すことになる。
 しかし場合によってはバーナーの交換を免れることが出来る。一般にバーナーの価格は2万かそこらくらいの請求額になるケースが多いので,ある種の使用者にとっては折れた短管の交換だけで済むかバーナーの交換まで行くかでは出費に結構な違いが出る。

 今回は結構見込みのある折れかただったし、長らくお世話になっている得意先でもあるので俺はせこい修理法で切り抜けることを試みた。
 バーナーのねじ込み部分に折れて残った短管は、当然ながらそのままでは新しい短管を取付けられないので取り除かなくてはならない。取り除く,と,言葉にすれば簡単だが現実には錆び付いたテーパーネジ部分だからバーナー本体とはほぼ一体化しているようなものでねじ込み部分を露出させるのは容易でない。どのようにして除去するかについては幾つかの方法があるが,それら全部についてここでは説明しない。
130430_2039~02.JPG

 画像に示す混合管接続箇所のうち手前側が折損箇所である。接続部に見える細長いひげ状のものは短管(混合管)のうちねじを切った部分であり,肉厚の減少した混合管が折れる際に生じたものだ。

 今回試みたのはこのひげ状の部分をねじ込み部分の内壁から剥離させていく作業だ。
ねじを切った部分は螺旋状に内壁に残っていることになり、噛み合わせ部分は錆びてバーナー本体に固着しているので、剥離を促進させるためにトーチで加熱し傍聴させる作業とシリコンスプレーを合わせ目に含浸させる作業を交互に行い,ひげ状の部分をプライヤーで掴んで引っ張りながらほどくようにして剥離させていく。
 ネジ山部分が根元からちぎれた時点で作業は終了となり,この時ネジ山が2山以上残っていれば新しく切り出した短管(混合管)は何とか取付けることが出来る。締め込み箇所はどうしても甘くなるのでそこはシール剤の工夫で切り抜ける。
 力加減を間違って一山程度のネジ山露出で終わってしまうと作業としてはNGであり,バーナー本体交換となる。また,テーパーねじであるからして剥離作業の最初は除去物は太く,強度があり,ほどき易いが進むに連れてだんだん細くなり切れ易くなる。
 ねじ込み部分の全てをこのやり方で除去できたことは俺の経験上ではまだ一度もない。今回の作業で言うと3山と半分程度のネジ山が露出する程度には剥離作業が進んだので、ひとまず旧来のバーナーは活かせることになった。
130430_2112~01.JPG

 下側のメッキされた短管が新しく切り出した混合管である。元々ついていた混合管と長さを揃えて切断し,ダンパーを取付けて作業は終了。

 救えるものは救う,と日頃俺は考えているのだが最近それは何だか馬鹿馬鹿しく思い始めるようになってきた。今回の件に限らず,修繕費を押さえるための努力と俺自身は心がけているがそれは果たして使用者の方々に一体どの程度理解されているのだろうか。
 バーナー丸ごと交換を要するからその到着までの間は仕様禁止,という所見を出したからといって同業者に後ろ指を指されることは全くない中で低い出費だとかワンストップで即日復旧させる努力がどの程度理解され,また評価されているのかが最近は疑問だ。

 今回の以来元は幸い俺の仕事に理解を示してくださる方だったのでこれには該当しないが,日常業務の場面で問題の発生した使用者の口から修理屋に対して『応急でもいいから何とか使えるようにしてくれ』などという要望が出ているうちは保全業務に従事する者の真価は全く理解を得られていないと受け止めざるを得ない。
 障害の復旧というのは応急処置こそが困難であり,高度な知識なり技量なりが求められると常々俺は考えているが使用者がこれを「でもいいから」という風に簡単に捉えているとすれば大変な誤解である。

 今回記事の作業については,実用上は問題がないものの混合管のねじ込みが浅いという点でこれは応急処置の域を出ないものであり本来的にはやはりバーナーの交換が望ましい。
 俺としては使用後13年を経過した機体でもあるので,あまり多額の補修費をかけることへの疑問もあり、今後の措置は使用者であるオーナー様に委ねることにした。
 同業諸兄の方々には重ねて伝えておきたいが,今回記事はあくまで応急的なレスキューの可能な一例を取り上げただけのことであって,この症状が発生した場合に於いてバーナー交換を要するという所見を否定するものでは全くない。
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マイナスドライバーの使い道 [含蓄まがいの無用な知識]

 某総合病院にて合成調理機の修理依頼である。導入後13年を経過してさすがにギヤケース内の摩耗が目立ち運転中にギヤが抜けてハブの回転が止まったりギヤが入らなかったりする。
FCM400H-3_2.jpg

画像は本文とは関係ありません。


 合成調理機についての説明はここあたりをご参照願いたい。
http://www.fujimak.co.jp/contents/hp0093/list.php?CNo=93&ProCon=204

 可動歴13年でギヤの摩耗となるとこれはもう機体自体のリプレースを検討すべきだが,合成調理機の実売価格はほぼ間違いなく固定資産に該当するものであり,ある種の管理部門にとっては踏み切りたくない場面であるようだ。
 当然,費用はしかるべき額になるがそれを承知の上でギヤケースの分解整備を依頼してくる得意先はいる。しかし俺を含めて厨房屋の平均スキルはさほど高いものではないのでこれを受ける業者はそうそう多くはないはずだ。あっても外注業者に丸投げのパターンだろう。
 俺の住む土地が田舎なせいだろうが俺以外にこれを手がけた同業者の話を聞いたことはない。合成調理機のギヤケースのオーバーホールはこれまでに三度手がけたがいずれも手こずった。

作業内容は大きく分けて以下の通り。
*クラッチの交換
*スプロケットの交換
*ベアリングの交換
*内部洗浄とオイル交換

 軸周りについている各パーツには歪みが発生していることが多く,脱着に物凄く苦労したのがこれまでの経験則である。6年前,20年落ちの合成調理機について補修パーツの問い合わせをAIHO(http://www.aiho.co.jp/)に持ちかけたところ、そんな作業はうちのサービスマンでもそうそうやらないんだから20年も使った機体ならもうリプレースを勧めてほしいと対応を渋られた。板挟みの立場は結構辛い。

 何せ,仕事を選んではいられない。金のためなら出来ることはやる。
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稼働後7年目くらいでハブ軸を交換している機体である。現在のコンディションはグレーゾーンでシールの摩耗による油漏れや目立ったガタの発生はないが手で回したときのタッチはあまり芳しいものではない。今回の整備に組み入れるべきかどうかは目下思案中。

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 ギヤケースは正面がフランジ上の形をしており,M5のキャップスクリュー6本で止まっている。ここで便宜的にフランジと呼ぶこの部分は擦り合わせによってギヤケース内部のオイルをシールしているが、製造時の塗料が合わせ目に流れ込んでいたり嵌合面が錆びていたりで外すのに結構苦労する。

チゼル(たがね)は普段持ち歩く道具ではないので今回のように”ちょっと開けて中をのぞいてみるか”というときにはマイナスドライバーを持ち出してフランジ嵌合部の合わせ目にあてがい,叩く。実際のところマイナスドライバーというのは本来的なねじ回しよりもたがねの代用品として使っていることの方が多いのではないだろうか。

 上の画像に写っているのはベッセルの貫通ドライバーでウッドグリップの安物である。
貫通ドライバーは一昨年,PBの製品を一揃い買い込んでいるのだがそれは使わない,というか使えない。
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 貧乏自営業の俺としては一本三千円以上もするPBの貫通ドライバーはやはり高額なもので,無造作にトンカチでバンバンぶっ叩くのは忍びないのですよ諸兄。よってたがねの代用品としての場合を想定して俺のサブの道具箱には捨て工具としてこの安いマイナスドライバーを数本,いつも放り込んである。それでは一体何のためのPBの貫通ドライバーか,本末転倒みたいな話だが貧乏なのだから仕方がない。


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パルス燃焼フライヤー最後の個体 [含蓄まがいの無用な知識]

ファストフード大手チェーンの某は例年,ガスフライヤーの定期点検を行う。使用しているフライヤーは大別すると二種類で,一方は圧力フライヤーで、もう一方はフライドポテトやナゲットなどを揚げる,社内ではオープンフライヤーと呼ばれるものだ。

 オープンフライヤーと呼ばれるものは店舗により型式が異なるが,チェーン展開当初は一般的な自然燃式の中間加熱フライヤーで、その後はパルス燃焼式のフライヤーが導入されることになった。
 パルス燃焼という方式についてはネット上で幾らでも解説されているのでここ俺の拙い理屈を書き連ねることはしないが、元々は航空機のエンジンのノウハウがヒントになっているらしい。
 俺は内燃機関には詳しくないが,爆発によってチャンバー(燃焼室)内に発生する負圧が次の燃料を引き込み,吸入された燃料がチャンバー内の熱により自然発火して爆発するという連続燃焼の理屈は2サイクルエンジンに似ているようにも思える。

導入例を見ているとナショナルチェーンについてはパロマの製品がスタンダードとして定着していると言っていい。某Mも某Kも同一機種を採用しているということは事実上の業界標準と言っていいだろう。

製品URL:http://www.paloma.co.jp/product/professional/flyer/detail.php?id=230

product_230.jpg

画像は本文とは関係ありません。


 他にも取り組んだ業務用厨房メーカーは幾つかあったが結局どこもうまくいっていない。ガス燃焼器具についてはやはりリンナイだとかパロマというメーカーが本気を出したときの完成度は業務用厨房屋では足元にも及ばない。

 俺の元の勤務先では一時期手がけたが結局うまくいかずに手を引いた。
パルスフライヤーを初めて運転させたときにびっくりしたのは燃焼中に結構派手な振動音がすることで,最初俺はどこかがぶっ壊れたのではないかと焦ったが、それはチャンバー(燃焼室)の中で連続的な爆発が起きるため加熱パイプが振動するからだと知ってやっと安心できた。

 うまくいかない原因の一つはそれで,10年くらい使っていると油槽にピンホールが発生して油漏れを起こす。燃焼中はのべつ油槽が機械振動しているわけで,溶接箇所が金属疲労を起こしてやられるらしい。
 点火動作はイグニッションによる連続スパークで行われるが,先に書いたように機械振動が出るのでよくあるようなスパークロッドではなく内燃機関に使うようなスパークプラグを使うがこれの交換頻度も結構高かった。

 あれこれあって修理も続けたが,会社としては10年以上も前に生産を終了しておりメンテナンスモードに移行し,納入先では大きな故障があれば順次パロマの製品にリプレースされる撤去対象品だから、俺のやっていることは敗戦処理とか撤退戦なわけだ。
 そんなわけで修理するサービスマンも高齢化が進んでいて触る人が暫時減少傾向である。俺の住む土地では既に今年の秋,油槽にピンホールの空いた個体が発生し,オーバーホールは行わずに退役が決定した。
 大手ファストフードチェーンのKではオープンフライヤーは2台体勢での運用が標準的なオペレーションであり、次候補は自動的にパロマ製品となるが、2槽式フライヤーが1シャーシで出来上がっているため生き残りの個体一台も自動的に退役が決定する。
 元の勤務先に於いても若いサービスマンは既に誰も修理に手をつけなくなった機種であり,俺のような年寄りサービスがほぼ専従としてこれをいじり続けるが,今回の点検整備が恐らく最後となるだろう。こんな風にして再び開くことのない抽き出しはどんどん増えていくのである。

 なんだか職業人としては物凄く効率の悪い人生を送っているような気がしている。
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ナイログの正しい用法に迷う [含蓄まがいの無用な知識]

 俺が駆け出しの小僧だった頃を思い出すに,近年冷媒管工事は随分親切なツールや材料が増えてきた。配管工事諸々のうちにあって冷媒管というのは結構特殊な分野に属していた時期がある。今のようにエアコンの工事が沢山なかった頃で,水回りを扱う設備屋と冷凍機屋の間には結構きっちりした棲み分けがあった時代があったのだな。
 工事高や就労人口などから言えば前者の方が圧倒的多数なので,長い間冷媒管の扱いというのは一種,閉鎖社会に代々伝わる秘技のような見られ方をされる側面があったと思う。作業工具や工事材料で便利なものがどんどん出てきたのは物品税の廃止によってエアコンが広く一般に普及し,冷凍機屋の手が回り切らなくなったせいで住設屋までもが工事に手を出すようになってきた時代背景と重なっている。

 そうなってくると,工事初心者でもしくじらないようにとメーカー再度で色々とご親切な工事の手引きみたいな資料を用意してくれて,余程トンチンカンな施工をしない限り余り不具合は起こらないことになってくる。
 従来からの従事者にしてみれば長年手探りで身体に刷り込んだ技能を文書化されてそこら辺中に配布されるのは愉快でないかもしれないだろうが物事が一般化して敷衍されるというのはそういうことなのだな。

 冷媒管の接続は溶接によるかフレアー接続かのいずれかに限られるといっていいと思う。他にもあるのかもしれないが俺は見たことがない。どちらの方法もそれなりにコツみたいなものがある。
flare.jpg

 同業者諸兄が散々見慣れたフレアー接続である。銅管のカットとバリ取り,ツバ出しの際の飛び出し量など色々コツはあるが二昔くらい前に比べれば今日日はフレアーツールの出来が飛躍的に良くなったので余程変なことをやらない限り成形の失敗はまずない。

 但し,いたちごっこみたいな話だが現在の混合冷媒は漏れ易い傾向がある。このことは以前記事にしたことがあったかもしれない。俺は自分の腕が悪いせいだと凹んでいたが周囲の仕事仲間に聞くとどうもやはり混合冷媒にはそういう傾向があるらしく,配管接続には気を使うようになったという人は結構いた。

 それまではたいして気にしてもいなかったシール材に関心が向いたのは10年くらい前だったと思う。随分長い間無頓着な施工をしていたことを反省すると同時にシール材を上手く活用すると腕の悪さがある程度カバーできるご利益も実感できた。

 漏れ止め用の補助材料としてはアサダが販売しているナイログが結構一般的ではないかと思う。

アサダ 冷媒漏れ防止剤 ナイログ 赤 [RT200R]

アサダ 冷媒漏れ防止剤 ナイログ 赤 [RT200R]

  • 出版社/メーカー: アサダ
  • メディア: エレクトロニクス



赤いパックはR-22などの旧単一冷媒用


アサダ 冷媒漏れ防止剤 ナイログ 青 [RT201B]

アサダ 冷媒漏れ防止剤 ナイログ 青 [RT201B]

  • 出版社/メーカー: アサダ
  • メディア: エレクトロニクス


青いパックが塩素を含まない新冷媒(混合冷媒)用である。品種は違うが仕様管はどちらも違いはない。

使い方については俺がここで駄文を並べるまでもなく親切な動画がある。


 使い始めてからフレア部分の冷媒漏れ事故は確実に減少した。但しその使用方法について俺の周辺では見解が分かれている。
 一方はフレアのコーン部分裏表を始め,全域に塗るものだといい,もう一方はあれは単なる弛み止めであってネジ山部分だけに限定するのが本当の使い方だと言う。非常に粘性が高いので配管内部に入り込むと膨張弁やドライヤーを詰まらせる原因になりかねないというのがその主旨だ。
 動画によれば前者の用法で問題ないはずだが後者の意見にも一定の信憑性を感じているので正直,俺には判断がつかない。

 判断基準としては冷凍機の製造元がどういう指針で施工の指導をしているか、なのだが困ったことに各社の統一見解はなく,件数的にもほぼまっぷたつに割れている。どんどん積極的に使用して構わない派と,あくまでフレアーコーンの奇麗な成形と締め付けトルク管理の厳格化で対応して頂きたい派の構図である。
 俺自身の現状としては,少し前まではフレアーコーンへの使用は慎重だったが製造元の動画を見てからはバンバン使い始めるようになった。施工現場で結果が出るのは数年後だろうが一件こなすたびに落ち着かなさが堆積してくような気分である。
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ビット交換式ドライバーの使用感 [含蓄まがいの無用な知識]

TONE(前田金属工業)のビットドライバーセットRDS32を買い込んでから大体10ヶ月くらいが経った。当初考えていたよりも出番が多く、これから先は更に費用頻度が上がりそうなのであれこれと使用感の事を書いておきたくなった。
元記事:ラチェット式のビットドライバーRDS32
URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-03-19

RDS32とはこんなセットである。
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 購入の動機は二つあり、俺は手首に爆弾を持つ身の上なので腱鞘炎を起こした時には手首を大きく返す挙動に問題が出る。通常のドライバーでは作業製が低下するのでその打開策として、というのが一点目。もう一点は近年、トルクスねじやポジドライブといった形状に接する機会が増えてきてそれぞれドライバーを揃えていたのでは道具箱が窮屈になってしまうからだ。

 ここで俺の、乗り込み用の道具箱の中に入っているドライバーを開陳してみよう。

1:精密ドライバー 2mm,4mmの−、 3mmの+
2:+ドライバー *50mmのNo.1か2 安物のウッドグリップ製であまり使い勝手は良くない。
        *80mm No.1の貫通ドライバー
        *100mm No.2の貫通ドライバー これがもっとも使用頻度が高い。
        *200mm No.2
3:−ドライバー *50mm No4 上と同じくベッセルのウッドグリップ
        *80mm No.3の貫通ドライバー
        *100mm No.4の貫通ドライバー
        *140mm No.5の貫通ドライバー
4:ボックスドライバー  7mm,8mm,10mm
5:板ラチェット式のドライバー 15mmのビット交換式

ドライバーだけで有に10本以上になる。しかもここには今や俺の作業には欠かせないアイテムとなったFacom R2 nanoが含まれていない。
600x450-2010060400002.jpg


 トルクス用のドライバーは10年以上前に必要に迫られて俺にとって物凄く高価なKTCのセット品を買ったが今は毎度持ち出すのが面倒臭いので全部R2 nanoで済ましている。
 六角穴のセットスクリューなりキャップスクリューについても六角レンチではなくR2 nanoで用を足している。
 そうなってくると出来るところはなるべくR2 nanoで済ませる割合が増えてくる。単体のドライバー群は補助的な位置づけへと徐々に代わってきつつあるのが俺の実情だ。
 とはいえR2 nanoのドライバーグリップはこの手のセット品にしては大変使い易いにしても如何せん小さく,力をかける箇所や狭い場所では役不足なので、ここでRDS32の利用価値がクローズアップされてくる。

RDS32のシャンクは中間部に細かいローレットがきってあり,仮締めや緩める作業の終わりなど低トルクでの作業時にはシャンクを直接回す作業が可能なのでこの作業は早い。
 シャンク交換可能なビットドライバーの難点は,シャンク自体が太いので剛性が高すぎ,堅いビスを緩めるときに強い力で押し付けてシャンクのしなりを利用する使い方が出来ないことでここはビットの選定で工夫するしかない。
 TONEのセットで元々ついてくるビット類は丁寧にメッキされており,ベッセルあたりの造りと比べると総体に良い。加えて加工精度もなかなかだが、しばらく前,試しに買ったドイツ製のWeraのビットを取付けてみてその喰いつきの良さにたまげた。シャンクのしなりを利用できないマイナス面を充分に補えると思う。

 いずれ俺の道具鞄からは単体のドライバー類はサブのツールバッグに引っ越しそうな見通しである。ビットがなめてくればドライバー一本を買い替えるのではなくビットだけの買い物をすれば良いという金銭的なメリットもある。因にWeraのダイヤモンドコーティングされたビットは一個200円くらいで買える。単体で同じビットのついたWeraのドライバーを買おうとすれば恐らく二千円は下らない。

 グリップ側について言えば,シャンク交換可能でグリップエンドには六つまで収納できるビットホルダーがついているから普段良く使うビットをここにおさめておくと作業性が上がる。但しスタビー用のグリップは全長が短いのでついていない。
 探せば他社にもあるのだろうが,ビットホルダー付きでシャンク交換可能,ギヤの山数45というのはかなりいいスペックで(大体は山数24とか36くらいだ)かなり使える。
 そうなると必然的にグリップは重く大きくなるので、手の小さい方にとっては余り使い勝手の良くないドライバーではあるのだが俺にとってはどうにか許容範囲で,半ば付き合いで渋々買い込んだセットだったが今になってみるとわりかしいい買い物だったのではないかと考えが変わり始めている。       
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燃焼器具と厨房内のエアコンの相性問題 [含蓄まがいの無用な知識]

 電気厨房のメリットはかねてから色々言われてはきた。
俺個人は巷間言われるメリットは承知の上で懐疑的な姿勢を取り続けており,それは長いこと変わらないでいた。
最大の理由はエネルギーコストの高さで,何をどうやったって熱源としてはガスより安くはならない。少なくとも,サプライ(供給)を電力会社に全面的に依存することを余儀なくされる状況ではこの関係は絶対に変わらない。他にも色々電化のメリットはあるにせよ,単位熱量あたりの単価は絶対的なものだと長く思い込んできた。

 しかし近年,他の要因によって俺はそろそろこの関係を見直すべきではないかと思い始めている。
理由はある時期から厨房にエアコンが導入され始めてきたことによる。俺の住む町では保健所の指導により厨房の室温は28℃(この数字については記憶が曖昧だが、とにかく30℃以下ではある)ことが推奨され,新築にせよ改修工事にせよ使用者側でこれに準拠する動きが活発だからだ。
 
 言うまでもなく,電気熱源の大きな特徴の一つは燃焼排気がない点にある。機体からの輻射熱と煮炊きの際の湯気やオイルミストだけが排気の対象なのだから空調設備総体が軽装備で済む。一方吸気に目を向けるとあくまで換気のための吸気であって燃焼器具に酸素を供給するという考えは持たなくても良い。
 他にも色々あるが,総じて電気熱源はエアコンと相性がいい。言い換えると燃焼器具とエアコンの共存には事前にかなり慎重な機械設備のプランを要する。

 数年前の施工例から顕在化している不具合があり,燃焼器具の不着火が頻発するとか不完全燃焼が発生するとかいった事例に俺は幾つか遭遇している。
 いずれも厨房内に数点あるうちの特定の燃焼器具で,当初俺はその原因を探りあぐねていたがあるとき天井設置のエアコン室内機に関係があることに思いあたった。
 不具合の発生するのは特にパイロットバーナーを持つ燃焼器具に多く,点火保持はサーモカップル,イグニッションとフレームセンサーの種類に関係なくある条件下で不具合が発生する。

 どういう事かと言うと,エアコン室内機の送風方向とか循環能力によっては燃焼器具とのある位置関係で燃焼用の空気の流れを妨げるような対流が発生する。
 周辺からバーナーに向かって流れる一次空気がエアコンの送気によって攪乱され,バーナー周辺は酸欠に近い状態で燃焼することになる。
 殊に影響を受けるのがパイロットバーナーで,何分ノズルからの射出量が微々たるものなので周辺の空気が攪乱されるとてきめんに不完全燃焼を起こす。燃焼器具の種類によっては,特に煙道を持つものはしばしばこの不完全燃焼を起点として煤だらけになる。

 某店舗に於いて半年に一度程度の割合で不完全燃焼を起こして煤だらけになるガスフライヤーがあり,何度清掃しても一定時期で再発するのである時,上に書いたような状況を想定してみて燃焼中に厨房のエアコンを発停させてみたところ,エアコンの起動から少し遅れてパイロットもメインも不完全燃焼の赤い灯が発生して俺は自分の仮説を確認できたのだった。
 便宜的な解決策としてそのとき俺が取ったのは、エアコンから出る空気の流れがフライヤーの燃焼用吸気の流れとかち合わないように、或いは流速が減じるように複数の薄い板(アクリル板)を天井面に複数ぶら下げてみることで,見てくれは最低だが燃焼不良の予防効果は結構あった。

 何かを解き明かした気分になり,俺は結構自己満足に浸ったが考えてみれば俺が駆け出しのあんちゃんの頃には起こり得なかった障害だ。そもそも30年近く以前には厨房にエアコンなどなかったのだからこんな不具合も怒らなかったというわけ。

 調理の勝手で言えば電気熱源に比べて燃焼器具の方に分があるのはこれから先も変わらないと俺は考えているが,室内空調(ここでは冷房)にエアコンを導入することに近年疑問を持っている。燃焼器具に与える悪影響をここでは書いたがそれ以上に調理師が局部的に冷風を浴び続けることで関節痛をはじめとして体調に色々問題が発生する話をちらほら聞いたりもするからだ。理想論としてはやはりソックダクトということになるのだろうがこちらはエアコンに比べて初期投資が高価につくところが問題か。
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本当に必要なもの [含蓄まがいの無用な知識]

 何事によらず,本当に必要なものはさほど多くはないはずだ。

きりがないので個別に例を挙げることはしない。

 幸か不幸か,俺は勤め人の頃大変人使いの荒い会社で働いていたので設備設計から修理までこなすことを余儀なくされていた。自営開業するにはいい経験だったのだろうが仕事としてはきつかった。

自分で商売を始め,それまであまり多くは出入りしていなかった店舗関係のバックヤードを見ていて思うのは設備の過剰さで、これは個人営業の店舗で特に多い。社名を挙げていいのかどうか知らんがホシザキの得意先には凄い人が多いように思う。
 50席もないようなホールなのに製氷機が3台ある。排気フードもないところにボックスタイプの食器洗浄機がある。壁一面に並ぶ冷蔵庫,挙げ句の果てには天井から吊りボルトを降ろした平棚の上に乗っかったコールドテーブルとか、まあ凄い凄い。(地震があったらどうするよ!)水切りシンクの上にアンダーカウンタータイプの食器洗浄機が乗っかっていてシンクボウルに間接排水なんていう傑作なセッティングもあったな。

 前置きが長くなり過ぎるのは俺の悪い癖だが、こういう光景を見るたんびに俺は『こんなにたくさん機材が欲しいのか?』と可笑しい気分になる。

 ここで本題。厨房で本当に必要な機材は以下の通り。
(1)火口,こんろ(ガスなり電気なり)
(2)シンク
(3)ワークテーブル
(4)冷蔵庫,冷凍庫
(5)棚
 調理の仕事なんていうのはこれで殆ど出来るのだ。難しくも何ともない。これ以外のものは全て,『ないよりはあった方が良い』ものでしかない。

 今日日の厨房屋はこの『ないよりはあった方が良い』モノでしのいでいる。

 ないよりはあった方が良い程度の機材を溢れ返らせて保守契約料金や修理代の支払いに呻吟するオーナーさん達よ,あんた型はバカだぜw
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給水系統の水質について落とし穴にはまる [含蓄まがいの無用な知識]

 某病院のデイルームに設置されているヤマミズ(富士電機)製のティーサーバーについてはこれまで結構故障が多く,ヤマミズをこき下ろす俺の記事は尻切れとんぼになったままだが,記事が完結しないうちに最近コンプレッサーが焼けてしまい,この先の運用について病院事務方との協議となった。
 しかしまあ,富士電機の給茶機も落ちたもんだ。しばらく前までの俺の認識では最も信頼度が高くて耐久性のあるのが富士電機製だったのだがな。冷水機能を持つティーサーバーの中で冷媒管系統の故障発生はホシザキ製にのみ事例が見受けられ,富士電機や東芝製にはこれまで出くわしたことがないので、今回が初めての遭遇となる。

 使用している機種は既に生産終了品だが、リプレースを促したいためなのかヤマミズのパーツ価格の提示はおっそろしく高い。160Wのコンプレッサーがなんと¥47000(税別)なり。交換修理は確実に10万円を超えることになる。
 使用者もヤマミズの協力会社によるこれまでの修理対応にかなり頭に来ている状況だったので,減価償却が3年前に済んでいることもあり,修理なんかしないでこの際リプレースしちまおう,という結論となった。

 後釜の機種選定については選択肢があまりないので時間はかからなかった。
富士電機製はオミットとして,ホシザキ製はというとここがまた病院の心証がよろしくない。消去法で折っていくと自動的に東芝製となる。正式には販売元である鳳商事ブランドである。

鳳商事URL:http://www.ohtori.com/

 製造は東芝から分離独立した別会社となった。大手電機メーカーは次々と業務用から手を引いていく現況を俺は寂しく思うが富士電機があのていたらくである現状では最後の頼みの綱だ。新会社に期待したい。

 契約が済んで実機が届き,セッティングのために中を開けてみると冷水のタンクは鳳商事製とヤマミズの製品では大変似通った造作である。同じメーカーが製造しているのじゃないかと思えるくらい似ている。なんだか将来に不安を残すがこの機体がくたばる頃には俺もどこかで野垂れ死にしているだろうからもう関係ない。

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 何せ,状況がリセットされること自体は俺に安堵をもたらす。
ある時期からのティーサーバーが全てそうであるように,この機体も冷水機能は蓄氷式の間接冷却である。
給水配管接続工事を済ませて開栓すると,電磁弁が開いて貯湯タンクに給水が始まる,というのはそれとして冷水タンクへの給水はバケツと漏斗による手動給水である。

 このとき,水はたっぷり入っているにも拘らず機体はいつまで経っても給水不足の表示が消えずに冷水の取出し操作を受け付けないし冷凍機も起動しないので俺は大いに焦った。新品のうちからこんな調子ではこの先俺は一体どんな目に遭わされるんだよ!

 この問題の原因は思いもよらないところにあった。以前,これを俺は記事にしようと思っていたのだがついズルズルとせずじまいだった。これを機会に書いておきたい。

 この病院は院内の給水系統にとんでもない水質の水が供されている。
なんと,機械室に於いて逆浸透膜処理された水だとのことで,透析治療にそのまま使えるくらいの水質であり、とどのつまり純水、精製水である。そんな水質の水が院内中どこの蛇口を捻っても出てくるのだそうだ。いや,やっぱり国の機関というのは豪気と言うか金があるなあと俺は変に感心した。
 俺は物性についてはロクな勉強をしていないので知識がないが,こういうとんでもなく純化された水は時に困った事態を引き起こす。

 逆浸透膜処理された水,というのが純水であるとして,純水というのは電気的には絶縁体であることを諸兄は既にご存知と思う。
 給茶機の冷水タンクで蓄氷用に入れる水はフロートレススイッチによってタンクの水位を感知し、冷凍機を始めとする系統の運転を行うための第一条件がフロートレススイッチがon状態にある,ということなのだな。
 蒸留水の導電率は物凄く低い(絶縁物だからな)ので、この病院での給水だとこれが働かずにタンクの水は満杯であるにも関わらず給水不足のエラーを出し続けて運転されない。

 数年前,俺はこの病院ある別な病棟で冷水タンクの水を院内の保全担当職員が入れ替えた後に冷凍機が起動せずに七転八倒してああでもないこうでもないの試行錯誤に陥り,まるまる一日を潰してしまったことがある。その時の解決はというと,冷水タンクの水を全部抜き,院内の取水箇所に井水があったのでこれを入れたら症状がぴたっと治まって拍子抜けしたことがある。(この時の井水はあくまで間接冷却の蓄氷用であって飲用ではないので問題はない)
 このことを俺は思い出して同じように機械室から井水を汲んできて入れ直したら同じように不具合が治まった。入院患者はとんでもなく上質な水を普段飲んでいることになるわけだが,まさか風呂や便所の水にまでこんな物凄い水質のものが給水されているのだろうか?

 いいような悪いような副産物が一つある。
 今回の機種には標準で活性炭フィルターによる浄水器が給水配管途中に外付けされる濾過器として付属してくるが,こういう水質の施設にあっては無用の長物となる。
 浄水器は要らないからその分値段をまけてくれ,と病院から言われはしないかと俺は内心ヒヤヒヤしていたが幸いそのようなことはなく,俺は付属の浄水器をタダで貰った。貧乏自営業としてはこれを商売ネタにしていずれどこかで小金を稼ぐネタにしようかと、虫のいい皮算用を働かせているのである。
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汎用温調機による代替品修理 [含蓄まがいの無用な知識]

 寄る年波に夜業は結構きつい。本日の俺は思いっきり朝寝坊をしてグダグダ状態にある。

某国立病院で稼働している温冷配膳車の修理を以前取り上げたことがある。

記事タイトル:地球上の天然無重力地帯での出来事
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-07-27

この個体は俺が18年前に納めたもので販売元はエレクターだが製造元は不明である。(恐らく大和冷機製品のOEMと思われる)

 さすがに18年も使うとあっちもこっちもとモグラ叩きゲームよろしくぶっ壊れる。
(1)コンデンサーフィルターの清掃は行っていても経時的に凝縮不良は発生する。ESX(本製品の型式)は冷凍機が下置きなので床に這いつくばっての清掃作業で事情を知らない人が作業中の俺を見かけたらどこか具合が悪くなって倒れている人に見えるようだ。実際,作業中に病院職員数名が駆け寄ってきて「どうしました!大丈夫ですか?」と声をかけてきた。この社会にはまだ幾らかは公衆善というものは残っているようだ。
 ついでに書くとESXのコンデンサー清掃はコンデンサー裏側のファンモーターを取り外す際に併せてキャスターを外さないと手が入らないのでジャッキアップしての長い長い前置きがあるので結構時間を喰う。今回の作業時間はおよそ3時間強である。

(2)前回記事では温蔵側の温調機がぶっ壊れて代替品を持ち出し回路変更を行ったが今回は冷蔵側がいかれて同じ措置をとった。
120620_2325~01.JPG

 
 前回記事の画像を再掲する。左側が冷蔵側の温調機である。

 困ったことに本機には,というか温冷配膳車はどこのメーカーもそうなのだが配線図が添付されていない。前回は温調機に書かれている回路図を見比べながら帳尻を合わせたが今回は少しばかり勝手が狂い手間取った。

 前回同様、使用した代替パーツはオムロンのE5CSVである。
http://www.fa.omron.co.jp/product/family/1624/index_p.html

 最近は一万円を切る激安温調が登場したが,端子台タイプでは結構安価で使い易そうな部類ではあるので日頃結構常用している。
 今回の落とし穴は測温部分にあって,温蔵側は熱電対を使っていたが冷蔵側には白金測温抵抗体(Pt100)であった。しかも型式の記載がなく
 入手した回路図を見ると2端子であるが実際には3端子。こういういい加減さは良くあることで,まあ何とか乗り切れないこともなかろうとタカをくくっていたが実際に繋いでみると温調機がエラーを連発して動作しない。
 温調機の内部設定変更で何とかなるのだろうがクソ分厚いマニュアルを読むのは難儀なので(こういう横着に走るところは俺が既に成長する意欲を失ったことを良く現している)勝手知ったる熱電対に変更して強行突破。何万円もするパーツでもないのでお客さん,ご勘弁を。設定変更に消費する時間を考えればこっちの方が安い。

 備忘録風に書いておくと,今回使用した温調機はリレー出力のものでb接点一個を持つ。出荷時の設定は測温値が上昇方向でoffになるので加熱機器の制御にはそのまま使って構わないが冷機器など測温値が下降方向でoffとさせるためには中身をほじくり出してディップスイッチをいじり,設定を変更する必要がある。実は俺は今回,回路変更の作業が深夜になってきたのでいい加減思考能力が衰え,これを忘れて冷凍機が誤動作して慌てたのだよ。

(3)そんなわけで18年ものの温冷配膳車はどうにか機能を取り戻したわけだが試運転の最中に庫内ファンが段々その回転数を落とし,俺の目前で停止した。リアルタイムで絶命するところを目の当たりにするのは殆ど記憶にないが何せこれでまた宿題が増えた。エレクターが補修パーツを持っているのかどうか不明だがあんまり見かけない格好のファンモーターなのでここでまたない知恵を絞ってインチキ修理の発動か。いい加減疲れてくる。
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ペン型テスターの使い勝手とアナログテスターの復権 [含蓄まがいの無用な知識]

 ペン型テスター KEW1030を使い始めてからおよそ一ヶ月近く経つので使用感のようなことを少し書き留めておきたい。

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 ペン型ということは上の画像のような姿をしているわけだ。本体があってリード線が二本伸びている型式の場合,使用中にリード線が伸び切って本体がドテッと倒れて表示が見えなくなるとか,三和あたりの安物だと本体が倒れた瞬間,伸び切ったリード線が切れて使えなくなるとかのアクシデントがある。

 使い続けていた共立のキューメイト2001(目下修理中)とは色々な意味で使い勝手が違うのは予め覚悟していたがいざ現実に使い始めてみると予想以上に違和感が強い。
(1)本体がテスターリードでもある,ということは何ともでっかいテスターリードでもあるわけだ。狭い場所,入り組んだ場所ではちょっと不便か。
(2)当然だが,ペンタイプのテスターは本体を右手に持つことを前提としている。測りながら値を読み取りたい時,左手に本体を持つと表示は逆さまになる。

 色々な意味で慣れを要するな,というのが目下の粗い結論である。明らかなメリットとしては棒状のスリムな外形なので収納性が良い。というところか。

 俺としては使い勝手優先で行きたいので代用品として買い込んだ安物のアナログテスターが復活して修理品が出来上がるまでの代打を務めることになった。
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画像は本文とは関係ありません。


抵抗レンジで電圧を測らないこと,という鉄則を守りさえすれば大変使い勝手が良い。俺の修理屋としての大部分はこの型式でお仕事をしてきたのだから当然ではあるが。身体に馴染んだ道具というのは重要なことだとあらためて実感する次第。
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敢えてアナログテスターの美点を語ってみたい [含蓄まがいの無用な知識]

テスター(回路計)は俺の身体の一部であると言っても過言ではない。
ここ数日,俺は何度かテスターのことを書いた。商売道具のことをこれまであれこれ書いたが,テスターはそのうちでもとりわけ重要なものに属する。

 修理の現場に於いて温度計は別として,何かしら計測器を持ち出して何かを測る。計測値を使用者に伝えてその意味するところを説明する。これは大変重要な場面なのだ。
 ある意味それは,使用者から見て作業労務者と技術者との区別を付ける一線ではないのかとある時からの俺は考え始めるようになった。経験則として,それまで高をくくったような態度でいた使用者の背中が少し丸まって上目遣いになる。設備保全関係の職員の態度が寛大で融和的にになる。電圧なり絶縁なりを測っているところを見せる行為には未だに幾らかはそういう効能はあると思う。
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 あらためてアナログテスターの面構え。LCDではない針式のメーター,ど真ん中に居座るロータリースイッチがアナログテスターのアイデンティティだ。

 どうも見た目の問題として,この,針式のメーターというのは素人さんに対しては何かしら威張りのきくもののようだ。測り始める前にロータリスイッチをカリカリカリカリッと操作して測定レンジを合わせる動作にも『俺は素人ではないのだぞ』というデモンストレーション的効果があるように思う。何だかんだ言って俺はキャリアのうちの2/3はアナログテスターで過ごしてきたので色々と思い入れが深い。

 心情的、感覚的な話だがアナログテスターはディジタルと違って指示値をホールドできないので現場にあっては修理屋の口から出た数字は大きな意味を持つ。
 床に落っことすとメーターの狂いが生じる,うっかり抵抗レンジで電圧を測ってしまい内部の整流回路がぶっ飛んでしまう,直流回路でこれまたうっかり逆接してしまってメーターがいかれるとか扱いに予備知識や注意が必要なところはオートレンジのディジタル一辺倒でやってこられた諸兄にはなかなか理解してもらえない面倒臭さだと思う。

 ある時から胸ポケットにすっぽり納まるカードサイズのテスターが出回るようになり、オートレンジが当たり前のスペックになってから修理屋の見識は確実に堕落した。
 俺は会社員だった頃,部下だの後輩だのには絶対にディジタルテスターを使わせなかった。最初の一台は必ずアナログテスターをあてがうことにしていた。電気という目に見えない物理現象と接することに対して一定の緊張感を持つ習慣を身につけて欲しかったからだ。
 あともう一つには,スケーリングの感覚を鍛えて欲しいという考えがあった。電気という分野の特徴として扱う値の幅が大変広い,というのがある。ロータリーダイヤルの測定レンジとメーターの指示値を頭の中で組み合わせて値を割り出すのとLCDに表示された数字と補助単位記号で値をイメージするのとではその後の実務計算能力に雲泥の差が出てくるのである。これは断言する。

 他にもコンデンサーの容量抜けをチェックする時だとか薄暗い場所で作業する時だとか,アナログテスターがアドバンテージを発揮する場面はまだまだ多いのではないか。こんな事を書いているうちに俺も何か気の利いたアナログテスターを一台,買い直そうかという気分になりはじめている。
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ペン型テスター KEW 1030 を買い込んでくるまで [含蓄まがいの無用な知識]

商売道具であるテスターを巡って色々と忙しいここ数日である。

開業以来使い続けてきた共立計器の Mondel2001、ここ10年近く潰しては買い替えで3台目が爆発したのが四月四日である。

Model 2001の仕様 URL: http://www.kew-ltd.co.jp/jp/products/multimeters/2001.html
イカれた当日の状況:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04

テスターは俺の身体の一部だ。ドライバー一本やレンチ一本であればないならないで何とかしようがあるがテスターがないのはお仕事としては完全にお手上げなんである。

焦った俺はすかさず問屋に駆け込んだ。Model 2001のグレードアップされた新製品が発売されたばかりなので今度更新するときにはそれにしようとかねがね考えていたのだ。

新製品 Model 2012の仕様 URL: http://www.kew-ltd.co.jp/jp/products/multimeters/2012R.html

 厨房屋の仕事ではあまり使う機会はないが,直流電流の測定で2001ではドリフトがひどくて零点が定まらず使い物にならなかったのが2012では押し釦のワンプッシュで零点調整が可能となり動作が安定して実用レベルになった。
 もう一点,ここが最大の売りだが旧機種では平均値表示だったものが2012からは実効値表示となった。よってサイリスタやインバーターを潜った負荷の測定用に別のテスター(クランプメーターも含めて)を用意する必要はなくなった。三千円高価になるが使い道を考えれば充分おつりの来る内容だ。俺の知る限り,他メーカーを含めて1ボディでここまで多用途なテスターは他にない。
 諸兄のうちでこれから一台テスターを買おうと考えている方がおられるのなら俺は断然2012を推す。パソコンと繋いで何かやりたいとか,コンデンサーや半導体の細かい特性を測るために使うのでない限り,ということは強電関係の用途に限定すれば他の選択肢はないと言ってもいいくらいだ。
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 しかし,だ。
 従来機の2001も人気機種であったが新製品の2012は目下,大反響を呼んで流通在庫はまるっきりないのだそうだ。製造元の共立計器ではバックオーダーを山のように抱えて製造が追いつかず、次回の入荷にまで一ヶ月以上かかるとのアナウンスが問屋からあったので俺は大いに焦った。
 幾ら何でも一ヶ月以上もテスターなしで仕事ができるはずなどないので仕方なしに代品を買うことにした。
 店頭には俺がぶっ壊したのと同形の2001があった。2012の機能は俺の他の手持ち計器で代替できるのだからこの際今までと同じものを買おうかと思ったがやはり新製品が気になる。
 フロントの兄ちゃんは2001も未だに売れ筋商品で,製造元の生産体制が新型の2012にシフトしており,現在在庫の2001は一台だけであってこれが売れたら次の入荷の目処が立っていないとのこと。

 俺は葛藤した。
知恵熱を出して思案した挙げ句,間に合わせでとりあえず安物を一台買うことにしたのが四月五日。

その日の状況:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-04-05

 あんちゃんの頃を懐かしみながら一日アナログテスターでお仕事をしていた,のだが。
当然だが間に合わせのアナログテスターには活線電流を測る機能はないので単独でクランプメーターが必要になる。
 クランプメーターについては一昨年,やっとの思いで買い込んだリーククランプが大活躍しており,五年前に買った実効値測定用のものの出番がめっきり減っていた。

当時の記事:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2007-05-19

キューフォーク2300という商品である。
http://www.kew-ltd.co.jp/jp/products/clampmeters/2300R.html

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 俺の作業環境では2001の電流計測機能とリーククランプの間に埋没するような位置づけとなってしまい,しばらく影の薄い時間が続いたがあらためて単体のクランプメーターとして使ってみるとスリムな外形のせいもあって道具箱の収まりがいいし検電器としての機能が大変有り難い。
 クランプメーターは2300を常用とする形態で行こうと俺は考えはじめた。
だとすると注文していた2012とは機能が重複してまた位置づけがややこしくなるし,何せ今は金がないのに加えてブツが届くまでには一ヶ月以上も待たなければならない。俺はない知恵を振り絞って先のことを思案した。

 結果,同じくスリムで道具鞄の納まりが良さそうなペンタイプのテスターであるKEW 1030を俺は問屋に注文して2012はキャンセルとした。いずれ金が貯まったらそのときあらためて購入を検討しよう。

 KEW 1030の仕様:http://www.kew-ltd.co.jp/jp/products/multimeters/1030.html
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 こちらは入荷が早く,本日7日に届いた。発注してから二日後ということになる。
ペンタイプのテスターを使うのは,実は初めてである。何せ身体の一部だからして実戦投入までの間に慣れておかなければならない。
 それで本日土曜日,俺は月初の仕事がたまっているというのにそれはそっちのけでああでもないこうでもないと新しいテスターをいじくり回してあれこれ測っている間に日が暮れちまったのだ。インプレみたいな記事をそのうち書くことにする。

 







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ホシザキ製氷機IM-20L改造機を巡る話(1) [含蓄まがいの無用な知識]

 下に示す画像はホシザキ製氷機IM-20Lを改造したものの背面だ。
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 この機体は某地方のスナックにあったもので,コンプレッサーが焼損しておりリプレースされる際に放出されたもので,俺は入れ替えの工事に行ったときにパーツ取りにでも使わせてもらおうかという条件で頂いてきたのだ。

 本来であれば中古パーツとして抜き取りを終えた後は産廃物として廃棄されるべきこの個体は何故かこうして改造されて俺の手元にある。その経緯は別の機会に譲るとして,今回は技術論っぽく改造箇所について偉そうな能書きを垂れてみる。

 左下部分についているパーツは遠心式の起動リレーとコンデンサーで、俺のいう改造箇所というのはここを指している。
 コンプレッサーはまだ補用パーツがあり,修繕は利く。冷媒はR-134aでありこれも問題はない。現状この機種で問題なのは始動リレーが補修用パーツとしてはないことで,一般論としてコンプレッサー交換の際には始動機と保護装置は一緒に交換するものなので、起動リレーが調達できないということは修理そのものが成り立たなくなる、ここで書くようなインチキ改造を別にすればの話だが。

 近年の冷凍機は段々単純化されてきて単相コンプレッサーの始動コイル切り離しはPTCサーミスタで行うものが増えてきた。家庭用冷蔵庫に使われているものなどは殆ど全てこれ式ではないかと思うが業務用ではあっても冷凍能力からいえば流用が効く範囲なのでパーツの製造や供給は大手電機メーカーに生殺与奪の権を押さえられている。いかな大ホシザキとは言えどもさすがに自社製品用に半導体を製造するところにまでは至っていない。

 この個体がコンプレッサーを焼損させた敬意について考えてみた。
PTCサーミスタの端子に導通がない,というのがその根本原因というのが俺の所見である。
始動コイルに通電されず,回転磁界の形成がなされないため主コイルだけに流れる電流で発熱がドンドン進んで主コイル焼損と相成った。依ってコンプレッサーはパーになり、同形のPTCサーミスタはもうストックパーツがないので必然的に修理不可能、直接サービス担当者から聞いたわけではないが,これが恐らくホシザキのサービスマンの所見であり,その論旨にはどこにも穴はない。

 恥を忍んで白状するが,ある事情(これはおいおい記事にしておく。大変頭に来るクソ客の所行で俺はこんなわけのわからん改造を迫られたのだ)で俺はこの個体を修理することになり,当初,コンプレッサーの交換だけで済むものとタカをくくっていたのだが,試運転の段になってコンプレッサーが起動せず、大慌てで周辺を点検したときにPTCサーミスタの不良を見落としていたことに気づいたので急遽、改造に踏み切ったというのがことの真相だ。

 対処法としては廃却予定のどうでもいい冷凍機から抜き出してきた遠心分離スイッチをPTCサーミスタの代替品として取付けた。当然だがコンプレッサーの端子にはここが始動コイルの端子ですよ,などというご親切な表記はないので端子間のDCRを測って三つの端子それぞれの役割を割り出さなければならないのが頭の使いどころだ。
 当然ながら遠心分離スイッチはPTCサーミスタに比べると物理的にでかいのでコンプレッサーの端子ケース内には収まらずに外付けとなる。
 
 試運転がうまくいった俺は調子づいた。
抜いてきた中古パーツの中にコンデンサーがあったのでコンプレッサーの周辺回路は変更し,始動用コンデンサーとして組み込むことにした。どうせこの先俺しかいじらない機体なのだからもうやりたい放題の何でもありだ。改造箇所は物理的に肥大化するため背面の配管保護用の外装板は外した。

 後付け始動コンデンサーのご利益は大したもので正確な計測は出来ていないが始動電流は推測で2割減り,モーターに優しい回路となったわけ。堂々たるスペックアップだ。(誰にも褒めてもらえないので侘しく自画自賛する)

 そういうわけでこの機体は見事に蘇生して目下絶好調でバンバン氷を作っている、のだが.・・・

 何故その機体は客先ではなく俺の手元にあるのか?という疑問を諸兄,お持ちではなかろうか。
その経緯は長くなるので別の機会に。現時点でいうとこの修繕及び改造はまるっきり俺の持ち出しで一円の儲けにもなっていない。ここで俺の腹の中にはある種の怒りが沸き起こってくるのである。

しかし,幾ら怒ったところで財布の中身が増えるわけではない。糞ブログにかまけていないで仕事仕事!稼がねば。
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2011年末のインチキ修理例をひとつ [含蓄まがいの無用な知識]

 前回,年末年始のドタバタする状況について腹立ち紛れの雑文を垂れ流したが俺は俺で一応はプロの端くれだと思い込んでいるので職業人としての誠意は持ち合わせているつもりだ。

 ただ,これは近年,世の中の人々全てに蔓延する風潮だと思うがあなた任せであったり野放図になったり図々しくなったりの度合いが際限なくエスカレートする事甚だしい。  俺はそういう傾向にいい加減嫌気がさしており,いっその事この世の中など一度ぶっ壊れてしまえばいいとさえ思う事が最近は時たまある事を白状しておく。

 以下は2011年12月24日のインチキ修理例。備忘録風に垂れ流す。
 場所は繁華街(とは言ったって俺の済む田舎町の事だからたかが知れている)にある某居酒屋。ブツは食器洗浄機で製造元は三洋電機,型式はDW-31何とかというアンダーカウンタータイプで結構良く見かける機種だ。
03_01_DWUD44U.jpg

 ドアクローズで自動的にスタートする機能はなく,運転時は都度都度スタートキーを押す。操作系は全てタッチキーなので造りは決して頑強ではなく、タッチキー全てについて言える事だが耐久性は大した事がない。同一機種の他の機体全てについて言える事だが使用状況によっては3,4年でへたりが出てくるケースもある。今回の機体は稼働年数は11年くらいでこの状態が出ていた。
 タッチキーは当然ながら全てオンボードなので一カ所へたりが出てくれば操作基盤をそっくり交換となる。この機種の場合は送料を含めると9千円前後くらいのパーツ代金になったと思う。

 日が日だけに当日は宴会の予約がびっしり入っていて手洗いが大変なので今日中に何とかならんだろうかとオーナーが泣きついてきた。当日業務の立て込み方以外にも問題点がある得意先だが脇道の話題なのでここではそれは書かない。

 操作基盤を取り寄せていたのでは当然間に合わないし時期が時期だ。そうでなくても三洋電機のサービス体制は現在混乱気味で色々と不透明なところがあるので俺は例によって場当たりのアドリブで解決策を捻り出す。

111224_1554~01.JPG
操作基盤からヘタリの出たタッチキーを取り外す。四角い正方形の小片がそれに当たる。テスターで動作を調べ既にon動作しない事を確認する。

 一旦,自分の作業場に引き返してジャンクパーツを漁って現場に戻る。ドナーみたいな感じで用意した某社のガス自動炊飯器から抜き出した操作基盤から似たような大きさのタッチキーを抜き取り元の操作基盤に移植する。
111224_1540~01.JPG

(注)画像の順番が逆になっているが,ドナーを用意した後で操作基盤からタッチキーを抜き取る作業手順です。俺的にはこの手の修理の常套手段だ。

 オムロンの技術資料によれば,タッチキーの半田あげには注意点があり、
(1)使用する半田ごては20W以下のもの
(2)こてを当てる時間は2秒以内
(3)脱着の回数は2回以内
なのだそうだが半田ごての選定はともかく既に一度基盤上に実装されているパーツだし,俺の腕前では2秒以内なんてとてもじゃないが無理だ。
 まあ,製造元というのは何でも安全サイドで規定する傾向があるので多少のサバ読みは許されるだろうという事で移植は終え,動作を確認する。

 落とし穴みたいな話として,当然ながらタッチキーなるパーツには無茶苦茶に多様なサイズがある。操作基盤を取付けるステンレスの枠にはタッチキーの大きさに合わせた四角い穴が窓抜きされているわけだが移植したタッチキーは元々実装されているものよりも若干一辺のサイズが大きいのでそのまま取付けると引っかかって動かない。
 よって,ここで取付け枠の窓抜き部分はヤスリで擦って少し拡げてやることでうまく納まる。後の事は知らんw
 試運転時の動作は快調で納入当初の操作感が戻ったとオーナー様はひとまずご安心の様子だった。それで俺のギャラはというと全部ひっくるめて七千円也で新品のパーツ代以下だ。俺の人が良すぎるせいなのかもしれないが修理屋なんて儲からない商売だぜ。
 
 有り難がられるのなんかほんの一時で,ちょっと修理をしくじって何度か脚を運ばなければならないような場面になると途端に無能呼ばわりで不真面目だのなんだのとボロクソに言われるのだからかなわん。自分はのんべんだらりと普段通りの生活を送っているくせに他人には何かにつけて目一杯の努力を要求したがるクソ客共には殺意を覚えるぜ。
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制水弁の選定でちょっと後悔 [含蓄まがいの無用な知識]

 Frigomatのバッジフリーザー修理である。
htp4_main_img.jpg


製造元のHP
http://www.frigomat.com/

輸入元は俺の得意先であるところの(株)エフ・エム・アイ
http://www.fmi.co.jp/products/hypertron/htf4.html

 設置場所は当然だがアイスクリームの製造室で,乳製品加工という扱いになるので保健所の検査も厳しく、所謂厨房の比ではない。
 使用者殿は律儀にも衛生管理に万全を期すために数年前,室内にオゾン殺菌機をしつらえた。業務終了後などの無人になる時間帯には毎日,一定時間殺菌機が動作する仕掛けな訳だ。

 何でもそうだがここで功罪が相半ばする。
オゾン殺菌自体は結構な話だが機器類の錆が著しい。今回のケースでは冷媒のレシーバータンク取付け部分に発生した赤錆が広がり,ピンホールが発生してガス漏れと相成った。
 タンクを交換して試運転を行い,一区切りついたつもりになっていたところ2,3日してからまた冷えなくなったとのオンコールがあり,俺は結構動揺した。大変ばつの悪い思いでまずはお客さんにお詫びするところから始まって俺は自分のお仕事のあら探しを始めた。
 空っぽになった冷媒を再度チャージして漏れ箇所を調べているうちにリーク箇所が一カ所だけではなかった事が判明した。弁解するわけではないがかなり珍しい症例だ。

 発見された別の漏れ箇所は制水弁のベローズで,停止時にはリークが起こらずに冷却運転を始めて高圧が上昇するとかなりの勢いで冷媒が漏れる。制水弁自体は一般に結構信頼度の高いパーツで,余程水質が悪い場所であったりしない限り故障という場面に立ち会う事はさほど多くない。
img04.jpg

注:上の絵はネット上に転がっていた画像だが制水弁取り付けの一般論からいってこれは正しくない。凝縮不良の発生を避ける意味で制水弁は水経路の出口側に取付けるのが正攻法である。

 水冷式の冷凍機は現在稼働実数が大変少ないので、俺の住む土地では制水弁を補修用パーツとして常時在庫している冷凍機屋はいない。
 たまたま俺は,数年前仕入れたのだがある事情で使う事がなくなり,デッドストックになっていたものを一個持っていた。水,冷媒,共に配管接続の呼び径は合う。但し,元々組み込まれている制水弁はDanfossの製品だが俺の手持ちは不二工機の製品で,細かい部分での仕様なり特性が異なっている可能性があるのでそのまま使うにはややギャンブルがかった場面が予想される。安くないパーツなのでうまく互換が取れれば貧乏自営業としては嬉しい機会だ。
img1264741175.jpg


 客先に事情を説明して対応の協議に入る。ポイントは3点。
(1)アイスクリームの製造予定日が翌々日に設定されている。
(2)正規の補修パーツであるDanfoss製の制水弁をFMIから調達すると到着日が製造予定日を過ぎてしまうのと,パーツの価格は末端渡しで5万円なりと安くない。
(3)バッジフリーザーは稼働歴が10年以上になり、あちこちくたびれ始めているので数年後にはリプレースを検討する事になる。よって,それまでの修繕費はなるべく低く抑えておきたい。

 当日の着地点として,代用品として俺の手持ちを修繕に使い,その後の運転状況を見て正規の補修パーツにスイッチするかどうかを決めましょう,という事になった。正規の補修パーツと俺の手持ちでは3割くらい価格が違う上に手間賃も一回分増える事になるので何から何まで元通りにという措置が必ずしも絶対とは言い切れないところがあるという事だ。

 交換は無事に済み,今度は掛け値なしにバリバリ冷えるようにはなった。しかし何の問題もないというわけではやはりない。
 制水弁を交換してみて分かった事だが,どうも不二工機とDanfossでは仕様が少し違うようなのだ。具体的にいうと俺の手持ちである代用品では流量をどう調整しても冷却水の吐出温度が所定の数字に達しない。流量調整の可変幅がDanfossに比べて狭いので新品当時の特性は出せない事が判明した。そういうところがパーツ価格の違いなのかもしれないが俺の懸念は的中した。

 多少,バッジフリーザーの消費水量が増えたところで施設全体の消費量から見れば大きな影響はないのだし,正規の修繕費よりも割安に済む事になるんだからこのままでいいよ,とお客さんは言ってくださるがしかし水道代に関係する話なので俺としてはちょっと割り切れない。
 水道代もさることながら冷却水の排水温度がせめて36,7℃は欲しいところが流量を目一杯押さえ込んでも33℃程度というのは過冷却だとか液バックを起こしはしないかと気にかかる。仕事仲間に相談してみたところそれくらいだったら問題ねえよという返事が返っては来たもののそれでもやっぱり気にかかる。いっその事排水配管末端に手動の絞り弁でもつけて無理矢理流量を押さえ込んでしまおうかだとかなんだとかあれこれ心配しているうちにもう冬だ。どうか何も起こりませんように,と時々ハラハラしながらもこの貧乏稼業としては結構実入りのいいお仕事になったので入金が待ち遠しい。欲目と不安の入り交じった複雑な心境で毎日を過ごす今日この頃ってわけだ。
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冷凍冷蔵庫大改造の巻(3) [含蓄まがいの無用な知識]

 度々のご指摘だが,『おまえのブログは尻切れとんぼのエントリーが多くてなっとらん!』と結構いろんな方からお叱りを受ける。(義務感で書くのは嫌なんだがな)
 確かに尻切れとんぼは良くない。反省します。与太話ではなしにお仕事上の出来事ととなると現実にお仕事で俺と接する事のある方は修繕や工事も尻切れとんぼで終わらせる野郎なのかと誤解を与えかねず、このエントリーは職業人としての信用にも関わるのできっちりありのままを最後まで続けます。

以前のエントリーは以下の通り
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-08-03-1
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2011-08-04

安請け合いだろうが出たとこ勝負だろうがとにかく商売人として一旦引き受けた以上,結果は出してやろうでねえの。

08030003-2.jpg
右が焼損したコンプレッサー,左がインチキ修理に使おうとしているR-404A用の代替品,松下製のコンプレッサーだ。

 冷媒管の取り回しには相当悩んだ。また,元々ついていた縦置きロータリーにはコンプレッサーに付属する形でアキュムレーターと思しき部品がある。
 そうだとすれば同じく低圧管についているもう一つのアキュムレーターは何のためについているのか?機能が重複するパーツが直列についているとは考えにくい。或いは縦置きロータリーの吸入管部分の膨らんだ部分は冷媒のフィルタリングとか別の機能を持つものなのかもしれない。そう考えると単体でアキュムレーターがついている事の辻褄は合う。

 幾らインチキ修理とはいえ、できるだけ原型に近い形での修復を行いたい。ここでは元々ついていたアキュムレーターは使い回したいというのが俺の方向性だ。元々とは異なる冷媒であるR-404Aを想定していたのでなおの事だ。
 しかし代替品のコンプレッサーは元々ついていたよりも裕に二周りはでかいのでスペースファクターが厳しい。物理的にうまく納まるものなのかどうかと頭の中であれこれとせめぎ合いが起こる。

 冷媒管の取り回しをああでもないこうでもないと思案した結果,アキュムレーターは使い回しながらでも何とか納まる事は納まった。正真正銘ギリギリの納まり方だ。
08030004.jpg
脚立に上がって爪先立ちしながらの撮影なのでフレーミングは最低だが,ホラ話ではない事の証拠程度にはなるのではないか。念のため,作業前の状態を繰り返し貼付けておく。
08030001.jpg

 コンプレッサーの形式変更に伴う配線変更につついてはここでは詳述しない。(企業秘密なんだぜ)レシプロからロータリーへの変更であれば色々と付加物が増えてややこしくなるのだが今回は逆なので楽だったと書いておこう。
 但し,個人の見解として,三相電源の誘導負荷を2線切りで動作させる(保護動作も含めて)やり方は好ましくないと考えている。
 今回の個体はバイメタルサーモのOCR二個による保護だが,まだ実例を見た事がないとは言えOCR一個の不具合によってコンプレッサーが単相運転となり焼損に至る可能性はゼロではない。開閉器は必ずマグネットスイッチとして二重の保護を行い,三線を同時に切るようにしておくのが親切な設計ではないかと思うのだが安売り競争に勝つためには製造コストも切り詰めなければならず,なりふり構わず省略できるものはバンバン端折るのがこの20年くらいの風潮だ。
 俺にいわせれば手抜きもいいとこだがこういうケチ臭いスペックは業冷庫全体に蔓延するものであって,決して大和冷機に限った話ではない,と、大和の名誉のために書いておこう。
 画像はないが,電気ボックスについていた電磁接触器は上記のような俺の判断でマグネットスイッチに変更されてボックスの外部に取付けた。でかくなるからね。

 冷媒のチャージについては最初,元々の冷媒(R−22)と同量のR-404Aを充填してみたところ蒸発圧力が高くなり(0.1MPa以上あった)-15℃程度で頭打ちとなり無惨にNGとなった。
 ここから先は混合冷媒であるがために抜き取りができず、充填量を手探りで試すには時間も惜しいし冷媒は高価だしなので潔く諦めた。
 オイルの相性が心配なので本当は使いたくないのだが冷媒をR-22として規定量の300gだけチャージすると-17℃程度までは引っ張れた。低圧配管の霜の伸び具合が今ひとつだったので50g程度のオーバーチャージを行うとアキュムレーターの真ん中くらいで配管表面の着霜が途切れるのでここでよしと判断した。コンプレッサーのケースが従来品よりでかくなる分だけ冷媒は足す必要があるという事か。何せ,多少アバウトにガスチャージを行っても何とか帳尻が合うという意味ではアキュムレーターを残したのは正解だった。
 
 コンプレッサーの仕様に倣って冷媒をR-404Aとするのであれば元々ついているキャピラリーチューブを外して膨張弁に変更しなければならない。必然的にドライヤーも出口側が1/4サイズであるものに変更となる。
 当然と言えば当然だがR-22で運転されている冷凍機で使われているキャピラリーで作り出す圧力損失の幅でR-404Aだと、高圧の差(大体0.4MPaくらいか)がそのまんま低圧側にも影響して上方にスライドしてしまうので蒸発圧力も高くなり,結果として冷えないという事だ。
 だから冷媒の種別が変わるのであればその個体はキャピラリーから膨張弁に変更するのが改造としては正しい作法なのだが俺はそうしていない。せこいサバ読みの結果そうしていない,というところがインチキ修理のインチキたるゆえんなのですよ、諸兄。
 冷媒の種別なり封入量なりについての試行錯誤を行ったのはコンプレッサー交換を行った翌日で,この修繕には都合丸二日間(夕食配膳終了後)を要した。結果としては蒸発圧力0.03Mpaくらいで庫内温度は-20℃を割るところまで引っ張れたのでひとまずこのインチキ修理は短期的には成功だと自惚れる事にする。
 オイルの相性によるコンプレッサーの過熱運転はその後の俺の懸念材料だが,現在,作業後三ヶ月を経過して特に問題は発生していない。

(この項終わり)

追記:使用者の方々は,こういう実例を見てどんな無茶でも修理業者は聞いてくれるもんだ,などとは間違っても思って欲しくない。自己責任の覚悟もなくこの手の依頼をしてくる上に,やれ費用はどれくらいかかるんだだとか、時間はどれくらいかかるんだだとかいったことを訊ねてくる大馬鹿者には一切取り合わない事にしている。



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ネギマについて同級生の受け売り [含蓄まがいの無用な知識]

 板前である同級生はしばしば俺の住む土地の客はものも知らんくせに一端の通ぶった口をききやがると時たま嘆いたり怒ったりする。
 俺も食べ物の事には疎いが疎いという自覚はあるのでその分まだマシではないかと勝手に思い込んでいる。

 以前から折りに触れて彼は,俺がブログをやっているのなら是非エントリーとして取り上げて欲しい事があるのだそうだ。
 書きたい事があるのなら自分でブログを立ち上げればいいではないか。一体何が悲しくておまえ(板前であるところの同級生)の代弁を俺がしなくちゃならんのだ,と,俺は文句をたれるのだが一回くらいは彼のご希望に添って受け売りをさせて頂こう。

ネギマという食い物がある。焼き鳥の仲間みたいなもんだと俺は思い込んでいた。
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 鶏肉と長ネギを交互に串に刺してある。鶏肉の間にネギがあるのでネギマ(間)なのだと俺は思い込んでいたフシがあるが本当はそうではないらしい。
 ネギマの『マ』とはマグロの事なのだそうだ。ネギと鮪でネギマというのが本当らしい。
串焼き.JPG
こんなブログを見つけた。

http://suehilosusi.eshizuoka.jp/e245794.html

 同級生がネギマの定義について一言言わずにいられないその背景事情を俺は知らないが、想像できるのは以前,正しいネギマをハンチクなお客さんに出したらブーイングが出て逆にハンチクな講釈を客に聞かされて頭に来たとかいった事があったからのかもしれない。 
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