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溶接工の最盛期 [お仕事上のぼやき]

 先日行った某総合病院でのスープケトルの修理について書く。

 スープケトルというのはとどのつまり蒸気の回転釜で,下の画像のような格好をしている。
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画像は本文とは関係ありません


 不具合の状況はスチームジャケットの溶接部分にクラック(亀裂)が生じており蒸気が漏れるというものだ。
 過去に於いてはクラックが全周に及び,ある日突然使用中に突然釜が飛んで前に立っていた調理員を直撃して重傷を負った事例も一件ならずある。
 表面に現れているクラックは数センチであっても内部ではその数倍の長さにわたっていることが俺のこれまでの経験則であり,先に書いた『ある日突然使用中に』というのは溶接箇所の内部,肉眼で外がわからは見えない場所でひび割れが成長し続けて行く性質を指している。

 そういう事象なので,使用現場に於いてはスチームジャケットからの蒸気漏れは微小なピンホールであってもその解決は喫緊を要する。
 こういうことは出回っている個体の中でもそう多くは起こらないものであり、あったとしても既に減価償却期間を終えてからの発生であることが大多数なので殆どの場合は発見された年度内にリプレーズの予算要求をあげ、ほぼ必ずと言っていいほど決裁が下りる。幾ら日陰者の給食分野とは言っても人命に関わる事故のリスクはやはりきちんとヘッジしてもらえるということだ。

 しかし世の中,そんなに物わかりのいい事務屋さんばっかりではないのだ。そして何故か俺にはとんでもなくごうつくばりな得意先があたる。
 その方々のご希望とは,クラックの入った箇所を溶接して再び使えるようにしてもらえないかというものだ。一言に溶接とは言うがその難易度はピンからキリまである。そしてスチームジャケットの溶接は厨房屋の業務範囲のうちではかなり難しい部類に入る。
 最大の問題は,加熱による膨張と収縮を繰り返す箇所なので金属疲労の度合いが激しく,溶接の直後にひび割れが起こり易いことだ。
 更に言うと,病院給食というのは年間365日3食ひっきりなしに使用するので機材を一旦引き上げて念入りに整備することが出来ない。溶接箇所にクラックが生じて補修しなければならないとなると溶接機を現場に持ち込む出張修理を余儀なくされ、条件は大変厳しいものになる。

 作業時間の制限という問題もある。夕食の配食は午後5時からであり,それまでの間は当然ながら使用時間なので手をかけられない。また,病院のボイラーというのは大体午後8時に送汽を停止するのでそれ以降の時間になると通汽して試運転確認が出来なくなる。ボイラーマンを拝み倒して運転を続けてもらえなくもないが後々面倒なことが多い。

 俺の知る限り,厨房屋でこういう作業を自前で出来る人を知らない。ほぼ確実に外注となる。

整理する。
*ステンレス製の圧力容器
*加熱されて膨張と収縮を繰り返す
*出張修理
*作業時間は午後5時からの3時間以内で試運転を含めて完了

修繕費が幾らかかるか以前に,そもそもこういう条件で修繕してくれる職人さんを捜すことが難しい。
一朝一夕ではこのレベルに達しない。俺は勤め人の頃から通算してある鍛冶屋さんと20年以上取引があり,某総合病院での溶接補修が必要な場合は都度,溶接工を派遣してもらうのだが圧力容器の溶接に関しては決まって年齢は確実に50歳を過ぎた年配の方が現れる。
 これを言い換えると、上に示したような条件をクリアできる腕前の溶接工となるためには30年くらいの実務経験が必要になってくるということだ。

 しかも、このレベルがどれくらいの期間続くのかというと案外短い,長い実務歴の中でゴーグル着用とは言っても長時間溶接のアークを見続けているわけだから腕が最高に研ぎ澄まされた段階に達するとほぼ同時に視力の減退が始まっている。
 溶接工のピークは短い。生涯の殆どを土中で過ごし,成虫となって飛び回るのは最後の一週間だけのセミに似ている。
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 俺の得意先に於いてはある不文律がある。
今回のような修繕については,溶接工の作業性が全てに優先する。
作業中に白衣を着ろだの何だのといった細かい注文は溶接工の都合でどうにでもなるようにしている。
この道一筋三十年のエキスパートがわざわざ出向いてきているのだからそれくらいのリスペクトは示されて当然だと俺は考えている。
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冷媒値上げのアナウンス [お仕事上のぼやき]

 仕入れ元からのアナウンスによると,4月一日付けで製造元は足並みを揃えて冷媒の値上げに踏み切るとのことだ。
 対象冷媒はR-125aを使用した4系のもの,具体的にはR-404A,R-407A,R-410Aの三種類。134aについてのアナウンスは特になく,値上げ対象であるかどうかは不明。
 製造元は既に駆け込み購入対策として生産量の調整に入っているとのことで,流通在庫の奪い合いが起きる可能性もある。

 値上げ幅は大体30%くらいが予想されている。一昨年の震災後は製造プラントの被害によって暴騰したが今回もそれに近いくらいの仕切り価格になることが予想される。
 ある意味,小刻みにじわじわ値上げされるよりも今回のように一気に上がる方が得意先に対しては単価見直しの話がし易いので助かると言えば助かる。

 世間の隙間を這い回る虫けらとしては少し支出を抑えて今のうちに少し多めに仕入れておいて4月以降の儲けにつなげておこうかというせこい算段の最中である。だから同業者の諸兄は俺の真似をしてはいけない。裕福な諸君らは値上がりしてから律儀に購入して頂きたい。

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それは運次第なのか [お仕事上のぼやき]

 まずは画像をご覧頂きたい。
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 某社製の食器洗浄機の電源ラインにあたる箇所である。これは某飲食店に18年前に納められた機体の一部であり,納入したのは何を隠そうこの俺だ。
 被覆を剥いたあとに巻かれているビニールテープが少しほどけているのは俺の腕のまずさを表している。(床放水の調理場なこともあり,濡れた手で作業していたような記憶があるがそのせいだろうか)画像はピントが甘く詳細はわかりにくいかもしれないが、テーピング箇所の一部が黒ずんでいるのは鼠がこの箇所をかじった結果芯線が露出し,短絡とそれに伴う焼損が起こったことを示している。鼠のその後がどうであったかは不明だ。

 感電した鼠のその後の運命よりも問題はこの食器洗浄機に何が起こったかだ。
結論から言うと制御用のプリント基盤がいかれて交換と相成った。文章にすればこれだけのことだが末端渡しで実売価格が10万円にもなろうかというパーツなるとその深刻さが諸兄にも少しは伝わるのではないか。

 俺自身の現場での作業はまず,この損傷したケーブルを切り詰めて接続した上で試運転を行ったが基盤の内部で何かしら短絡なり地絡が発生しているらしく,ELBのトリップが収まらないので基盤の交換となった次第だ。
 切り詰めたケーブルを持ち帰って調べてみると,鼠にかじられて露出した芯線はぐちゃぐちゃに絡まっており,充電部分の電線と接地線との間で短絡が発生していることがわかった。
3相電源R,S,Tのうちのいずれかから接地線に向けて200Vの電圧がかかり短絡電流が流れるということは、DC12Vで動作し,必ずシャーシアースを拾うプリント基板はひとたまりもなく爆死する。今回の状態はそういうものだ。

今更言っても詮無い話だが,こういう仮定はある。
どっちみちネズ公の運命は一緒だが,もしも電源ケーブルの短絡がR,S,T相のうちのどれかでのみ起こっており,接地線が無傷であったなら・・・・
 その場合はアースラインを回り込む短絡電流はないのでケーブルのショートによるブレーカーのトリップだけでことは済んでおり,基盤は無事であった可能性がある。当然,修繕費は大違いだ。もしかしたら数千円で済んだ修理だったかもしれない。電線一本,鼠のかじり具合の問題で修繕費にはここまでの開きが出る。
 使用者の方には気の毒だがこの辺はもう,運としか言いようがない。

 と,ここまで書いて運の一言で片付けていいものか,とも思う。
 そもそも鼠の跳梁跋扈を放置している周辺環境はいかがなものかという根本的な問題があるわけだが,それは俺の職務範囲を超えたところにあるのでここでは言及しない。
 鼠がそこにいて何かしらの悪さをする,という前提で機材の側に何かしらの防護策はないものかを考えてみたい。
 米国製のホバートあたりは内部配線のほぼ全てが金属製のプリカチューブとジョイントボックスに納められており,露出箇所は無いに等しい。シャレは抜きにして,ここまでガードが固いとさすがに鼠は文字通り歯が立たない。

 食器洗浄機に限らず,大半の機材は内部配線が露出したままなので鼠害の対応として現在俺が試みているのはスパイラルラップを方向を変えて二重に巻いてみることで,とりあえず即時の障害は起こっていない。
 但し,金属管とは違って柔らかい材質なので恒久的な防護の効果があるわけではない。定期的に目視確認は要し,鼠にかじられた形跡があればその箇所を切り取ってあらたに巻き直す必要がある。




 乱暴な意見かもしれないが,そもそも論として基盤で制御されている機材というものに対して選定する側はもう少し懐疑的な態度をとってもいいのではないだろうか。
 今回の件について言えば,回路全体が原始的なリレーシーケンスで構成されていれば焼損箇所の配線補修だけで済む話なのだ。大体,プリント基板などというものは生ものであって使っても使わなくても劣化が進行する脆弱な部品だから機材の信頼度とか耐久性を損ないこそすれ益するところなど殆どない。
 
 コンピューターによる制御だとか,半導体とか基盤といった実装を持つものを基本的に俺は薦めない。こういったものはコストダウンのための技術に過ぎないというのが俺の捉え方であって,どうしてもそれを選定せざるを得ない場面,例えばスチームコンベクションの導入などにあたってはその実装が持つ脆弱さをあらかじめ想定に入れておくべきだとこれまで何度もバイヤーに対して言い続けてきたがまともに耳を傾けてもらえたことは数人の例外を除いて殆ど全くといっていいほどない。
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昨年末に手こずった修理の備忘録 (終わり) [お仕事上のぼやき]

 本来,12月30日は自宅の片付けやらで過ごし,ここで本当に俺の仕事納めとするつもりでいたのだが、持ち目の要領の悪さと運の悪さでこの日もドタバタが続く。

最初の記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-06
二回目記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-08

 本件の依頼元からは前日,別件で修理の依頼が来ていたので朝一でこれを片付けた。某そば店のフードミキサー修理で電源プラグの中で断線していただけのちょろいもんだ。万事こんな修理ばかりでひょいひょい片付いていけば俺の仕事は随分楽なのだが。
五回目訪問 12月30日
 
 一旦帰宅して,のんべんだらりとコーヒーを飲んでいると携帯が鳴り,俺は本能的にイヤな予感がした。この日も外はひどい雪降りだ。
 電話の主は問題のオーブン修理の依頼元だ。声は前日よりも一段と暗く,何やら怨念がこもってるかのようでさえあった。内容を聞く以前にその声の調子で何が起こってるのかが俺には何となく予想がつき,それはものの見事に的中した。
 何とか今日,対応してもらえないかと電話の主はすっかり懇願口調だ。
俺の作業に何か手落ちがあったのか,見落としていた何かがあるのか,いずれにしてもオーブンは運転途中にまた電源が落ちて止まってしまったことには違いないのだから平謝りに謝らなければならない。しかしだ,俺の手落ちで何度も同じ箇所がいかれるのならともかく,こうまで何度もモグラ叩きみたいにあっちが壊れ,こっちが壊れで振り回され続けていればもういい加減にしてくれみたいな気分にもなろうというものではないか。俺はすっかりやさぐれていて結構ヤケッパチな口調になっていたと思うが板挟みとなって悩んでいるであろう依頼主殿には申し訳ない振る舞いだったと今は反省している。

 手を付けた以上,区切りのいいところまで取り組むのはプロの端くれとして当然取るべき姿勢だとは肝に銘じている。それまでの数日で他の駆け込み依頼に振り回されてもおり、30日になっても残しはあったので,再々再々修理は午後四時頃の乗り込みとなった。
 
 自分の面付きを逐一見ることは出来ないが,俺は相当憮然としていたか、もしかしたら怒っていたかもしれない。なんだか幾分,殺気立った気分でいたのは事実だ。
 バックヤードに残っていたパートのおばさん達は俺の姿を見ると一様におろおろし始めた。
スチーミングの運転をしているといきなりパネルの表示が消えて停止したと狼狽え気味に俺に伝え,俺から注意をそらすようにして持ち場に戻って仕事を始めた。
 最初,彼女らの態度はごく普通に不便をかこつ使用者のものだった。二度目は多少の不満と揶揄を含んだものに変わり,三度目には憐れみが感じられた。四度目ともなるとそれはもう,関係ないこと,関心を持ちたくないことに見えるということか。幸福そうだったり希望を感じられる見え方でないことは確かだ。

 本題に取りかかる前に俺はモチベーションを高めておく必要があると思った。本当にやる気がわいてこない。
現地法人が既に関心を持っておらず,ロクにサポートする姿勢も見せていないような古い機種,オーブン一台に何でこうも粘着されて時間を取られ続けなければならんか。
 俺はダラダラと外装板を外して内部を調べ始めた。
昨日とは別の箇所のヒューズが一本,機能と同じくガラス管の中が真っ黒になって溶断していた。経路を辿っていくと前日俺のいじったブザーとはまた別の系統であることは判明した。これまで手を入れていないどこか別の箇所であるということはそれではっきりしたわけで,これは新たに金を請求する口実が増えたということでもある。

 金の力は偉大だ。
 請求額が増えるのだとわかると俺の中では何かしらやる気がまたむくむくと湧いてきたのだ。配線を辿り,仔細に調べていくうちに庫内灯に不具合があることを俺は発見した。レンズというかカバーというか,そういう透明の樹脂製の物体にひびが入っていて、取付け部分のガスケットが崩れてなくなっている。
 スチーミングの運転中,そのひびから庫内灯の内部に蒸気が侵入してランプのソケット内部に水が溜まってくる。運転を続けるうちに水位が上がり,どこかの時点で端子に触れてショートする。そういう過程だとすると出来事には整合性が取れる。

 処置としては,一時的に庫内灯の活用は諦めてもらうしかない。取付け箇所を塞ぎ,庫内灯のリード線は回路から切り離すことでまた逃げる。調理に大きな影響があるわけではないのだし背に腹は変えられない。

 前日行ったブザーの切り離しはもしかして俺の誤診ではなかったかと再度配線を繋ぎ直して試運転を行ってみると昨日と同じ箇所のヒューズが切れたので俺の初見については妥当だったことがここで証明された。

 完全な復旧は年明けを待たなくてはならないが,かき入れ時の大晦日にどうにかこうにか間に合ったことの意義はあると思う。俺の歳末は無茶苦茶なものになってしまったが。
 年が明けてから,依頼元からは特に出動要請がない。ということは12月30日までの対応で一区切りはついたと受け止めて良い。
 この日,俺は他にも積み残しやら駆け込みの修理依頼があり,帰宅したのは午後9時を過ぎていた。大変臭面白くない気分で俺はグダグダと夜更かしをし,翌日襲いかかってくるハプニングに気づくわけもなく爆睡した。
関連記事:2012年締めくくりの不幸のこと
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31

 この件での仮処置を一通り,ここで整理してみたい。
(1)サーマル破損・・・接点にジャンパー線挿入により運転
(2)トランスの断線・・・・仮処置不可
(3)ブサーのコイルがレアショート・・・・回路から切り離し
(4)庫内灯カバー破損により漏電・・・回路から切り離し

いや,くたびれた。本当に。一つの個体で日にちを違えて良くまあこれだけ次から次へと壊れるものだ。
17年も使用し続ければこういうことが発生するコンディションになってしまうということでもある。

 結末が見えてしまうとスリルはなくなる。スリルが金になるわけではないので大して意味のない話ではあるが,スリルのない仕事というのはプロを成長させない。まあ,うまくまとまらないがとにかく疲れた。疲れた割には大して金にならんだろう。(この項終わり)
タグ:漏電 短絡 断線
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昨年末に手こずった修理の備忘録 (続編) [お仕事上のぼやき]

前記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-01-06

前回記事の補足
 サーマルの破損に伴い,ジャンパー線を挿入しての応急処置作業の際,コンタクターの端子を緩めようとして何の気なしにドライバーをあてがったところ派手にアークが飛んで俺は大いに焦ったのだった。分電盤内の開閉器は切ってあるはずなのにどうしたことかと狼狽えながら調べてみると,オーブンというステッカーの張ってあるその開閉器はどうやら別の機器に振り当てられているらしく,肝心のコンビオーブンの開閉器はずらずらと盤内に並ぶどれにも表記がない。機器の電気容量と名称不明な複数の開閉器それぞれの容量を見比べながらヤマ勘で当たりを付けて該当する開閉器を探し出すという余計な労務に手を取られたわけだがこういう適当な(いい加減な,という意味だ)工事は止めてくれ!と、声を大にして言いたい。

(ここから本文です)
 一旦は小康状態を取り戻したかに見えたコンビオーブンはその後どうにかクリスマス時期を乗り切った。断線しかかっているトランスがどのくらい持ちこたえてくれるのか俺は毎日心配だったがどうにかこうにかオーブンは12月26日まではノントラブルで持ちこたえたのだった。
三回目訪問 12月26日

 前日どうにか本国からトランスは届き,手配済みだったサーマルを携えて俺は結着を付けるべく件のスーパーに乗り込んだ。
 作業は事前のイメージ通りに進み,試運転を済ませた俺は意気揚々と撤収してその夜,久しぶりに熟睡したのだった,がしかし・・・・・
四回目訪問 12月29日

 この日の朝,俺は依頼元から暗い声の電話を受けた。例のオーブンがまた運転を停めてしまったという。電源を投入して少しの間はLEDの表示が出ていたのだがすぐに消灯し,以後電源が入らないという。
 俺は狼狽し,昨日の試運転に見落としがあったかもしれないことを詫びてその日の夕方四度そのスーパーに向かった。パートのおばさん達は困惑を通り越して俺を不憫がる。使用者に憐れみをかけられるようでは修理屋も終わっとるな、一体今まで何をやっていたのかと俺は自嘲した。
 落胆すると集中力も高まらないものらしい。これまでの作業中でどこか過失があったのかと最初からの作業を検証し直してみたがどこにも変な様子がない。こんな七面倒臭い状況にはまるのももう、いい加減に卒業したいもんだと俺は更に気落ちした。いっそのことどこかの誰かに丸投げして自分はどっかにトンズラしたい気分だったがあいにく誰にも心当たりがない。そうでなくても俺などはこの業界では半ば鼻つまみ者みたいなもんだ。自分で何とかしなければならないのだ、と,半ば諦めつつ気持ちを落ち着けて配線図を眺め,沢山ついているヒューズの溶断箇所がないかを探しているうちにある一本に行き当たった。ガラス管のミゼットヒューズはいかにもどこかがショートしました風に内部が真っ黒になっている。,再び配線図を眺めているうちにある考えが閃いた。
 溶断したヒューズの経路を辿っていくうちに前例のないイメージができあがりはじめたのだった。
 そのヒューズは幾つかの分岐をもっており,そのうちの一本にはブザーがぶら下がっている。オンボードリレーのb接点を潜ったそのブザーは基盤上のタイマーで設定された調理時間がタイムアップすると鳴動し,調理モード(ホットエアー及びスチーム)をキーをオフにするか電源を切らないと鳴り続ける。

 CCというモデルは操作系が全てタッチキーとなり,調理プログラム機能を備えた最初の機種であるが、最初なだけに機能的には未消化な面もあり,設定された庫内温度は記憶されるが調理時間は電源を切ると消去される。そして運転時、調理モードを選択した直後には00:00で起動するのがデフォルトでありこれを変更することは出来ない。

 文字だけで説明することには困難を感じるが行きがかり上最後まで書いてしまおう。つまりこういう風だ。
例えば調理モードがホットエアーで温度は160℃,時間は20分としよう。
 電源を投入し,調理モードを選択すると(この場合はホットエアー)まず,設定温度の表示と同時にブザーが鳴動するのでこのときすかさずタイマー設定のアップダウンキーを操作してなにかしらの時間設定、又は連続運転(continue run)を行うことで初めてブザーは止まり,ヒーターと庫内ファンモーターの運転が始まる、というものだ。

 そしてこのブザーがどういうものかというと,ACソレノイドを励磁させて鉄片を振動させる式の旧態依然たる形式である。シートパネルにはでかでかとComputer Controlなどと大書していながら電子ブザーを使っているわけでもないのはご愛嬌というか何と言うかだが,俺はこういうことを憶測したのだった。
 *オンボードリレーでスイッチングされてはいるが、ブザーの定格電圧はAC200Vであり,溶断したヒューズを潜っている。
 *パートのおばさんからの聞き取りによれば,調理モードを選んだ直後に電源が落ちた,とある。
 *だとすれば,ブザーのコイルがレアショート(層間短絡)を起こしかけており,見かけ状のDCR(直流抵抗値)が下がったために過電流が流れ,ヒューズが溶断した可能性はないか。
 俺の経験則では,コンビオーブンについてブザーのショートという故障事例はない。がしかし,パートさんの話と配線図から読み取れる動作を突き合わせて検証してみるとどうしてもそのように考えないと出来事との整合性は取れないのだ。
 意識のアンテナが尖り始め,俺は配線図を睨みつけては唸り,表に出て脳味噌にニコチンを補給しながら推敲し始めた。
 
 やがて考えのまとまった俺は制御基盤からブザーのリード線を取り外してヒューズホルダーに新しいヒュースを入れ,クランプメーターを引っ掛けて電源を投入してみるとオーブンは正常に運転され,この枝路の電流値はヒューズの定格1.5Aに対して約0.6Aを示した。
 仮にここでブザーのDCRを測ったところで,抵抗値を比較できる良品の個体がなく,俺の頭の中にも正常値が入っていないので意味がなく,そうなるとは何本かのヒューズを潰すつもりで試すしかない。それで次に基盤の端子にブザーを繋いで同じように立ち上げてみるとブザーが低い音で唸ると同時にその分岐枝路は(定格1.5Aに対して)瞬間的に5Aくらいの表示を示した直後,操作パネルの表示は消えて機体は停止したのだった。問題のヒューズをホルダーから抜き出してみると案の定,派手にブローした形跡がありありだ。
『これだったのか!』
 歳末の駆け込みが多く,身体はヘトヘトだが俺は妙に興奮し,応急処置である配線の変更に取りかかったのである。
 ブザーの機能を切り離すことで全体の機能は保たれる旨を俺はスーパーの店長とパートのおばさんに伝え,修理が完了するまでの間は内部のタイマー設定と同時にキッチンタイマーを併用することで調理終了に注意して対応してほしいと念を押した。内蔵ブザーが鳴らないのは不便だがオーブンが全く使えないよりは余程マシなわけでこれは快く受け入れられた。

 試運転をしながら俺は依頼元に連絡を取り,内容を伝えた。新しい症例の発見で結構興奮気味だったかもしれない。依頼元にとっても初耳のぶっ壊れ方だったようで妙に感心され、俺は何か壁を一つ乗り越えたようなある種の達成感に浸りながらその日は帰宅してから修繕費を精算し、その労務経費にホクホクしながら修理見積りをこしらえて送信してからグデグデになって風呂に入り,爆睡したのだ。この日12月29日は得意先に対して仕事納めと伝えてあるその日である。

ところが,だ。
話はここで終わらない。ここで終われば結構な仕事納めで,俺の人生もそう捨てたものでもないのだが現実はそうではない。試練は更に続き,いい加減俺は頭にきて爆発しそうになるのである。(この項続く)
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昨年末に手こずった修理の備忘録 [お仕事上のぼやき]

 ラショナルのスチームコンベクションオーブンのうち、90年代半ばまでに製造されていたCMやCCといった機種はそろそろサポートも撤収モードに入り,補修パーツの供給は在庫払底のためにNGであるケースも出始めてきたようだ。
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画像は本文とは関係ありません

 俺の元の勤務先で言うと,これらのモデルが現役当時テク二カルサポートを勤めていた方は既に定年退職しており,現在この職務は若い兄ちゃんなので実機をいじり回した経験がなく,構造など諸々の細かいディティールが予備知識として心許ない。事情は現地法人関係でも似たようなものではないだろうか。
 よって現在,この頃の機種を初めて修理する同業者諸兄は配線図をきちんと読みこなせるスキルがない限り安請け合いは控えた方が良い。

スチコンに限らず,ヨーロッパ製の機材の特徴として言えると思うが電気系の障害がある時を起点として連続する傾向がある。
 何か一つを起点としてモグラ叩き風に立て続けに不具合が起きる経験がこれまでにも結構ある。昨年末にはまった修理のことを備忘録としてメモ帳を頼りに記述しておく。

 某地元食品スーパーにはCK,各店舗バックヤードを含めて合計8台くらいのコンビオーブン(Rational製品)が納入されており,俺が会社員だった頃には例年歳末にどこかの機体がへそ曲がりな壊れ方をして仕事納めギリギリまで追加修理の対応に振り回されるのが伝統芸能みたいな最低の習慣があった。
 俺が8年前に会社員を辞めて現在の商売を開業し,件の食品スーパーには見切りを付けられるような格好で出入りはなくなり,この困った習慣からは解放されたかに思えた,がしかし。

 その後,この某食品スーパーの食品関連機材を全面的にサポートしていたある同業者から某店舗のバックヤードに於ける機体の修理依頼が俺のところに舞い込んできた。
 多くの例に漏れず,素人にでも判断のつくようなマイナートラブルはつまみ食い的にこなすがややこしい判断の要求されるような症状だと俺のようなものに振ってあとは事務屋に変身して修理見積もりを書くだけの典型的な厨房屋体質の某がその依頼元である。

 以下、メモ帳の日付を追って俺のはまりっぷりをここに晒す。
機体の型式はCC-6で1995年8月に製造された。同業の諸兄はご存知と思うがラショナルの製品はシリアルナンバーの初め4桁で製造年月が表されている。定休日のない食品スーパーのバックヤードで稼働歴17年というのはかなり長持ちしている方だと思う。
一回目訪問、12月8日

 機能は全停止しており、庫内ファンモーター保護用のサーマルリレーに破損が認められた。サーマル接点が解放されたままで固定され手動復帰ができないので回路全体が保護停止となる。同一品は市中に販売されておらず、モーターの運転電流が正常値である事を確認し、使用者了解の上で保護用の接点をジャンプしてサーマル交換までの間仮運用とする。
 純正パーツとして現地法人から供給されるサーマルは仕切価格が何と5万円近くもする。俺は一桁間違っているのじゃないのかとひっくり返りそうになった。定格動作値2A、3回路プラスNC,NOの補助接点を各一個ずつという何の変哲もないサーマルが一個5万円近いのだからぶったまげる。
 俺は断然、同一スペックの国内汎用品にて代用する事を提案した。富士電機あたりの製品だと三千円も出せばお釣りが来るから一個5千円くらいで積算しても罰はあたるまい。こんな風だから俺は儲からないのかもしれないけど。
 ファンモーター用の電磁接触器も併せ、マグネットスイッチとして交換するのは先を見越すと更に有効だが取り付けスペースがなくこの案は見送りとなった。

二回目訪問 12月9日

 電材屋にサーマルの注文を済ませて入荷待ちのところ、以来元から件のオーブンが再び動かなくなったとの連絡が入る。よりによって日曜日な上に大雪が降って車が出せない。何とか頼むと懇願されたので嫌々除雪に精を出し、現場に駆けつけて内部を調べると、制御基盤に電源供給するためのダウントランス二次側コイル2系統のうち1系統に断線が発生していた。
 当然ながら特注品のトランスであり、これは純正パーツとして供給してもらう以外にない。無線関係のパーツショップで複数個のトランスを買ってきて二次側配線を現場で試行錯誤しながら組み合わせて帳尻を合わす応急処置をやったことはある。CC-6の場合は平衡出力14Vと不平衡出力18Vで、今回の破損状況は前者のうちの平行出力に断線が発生したため平衡出力14Vのところが不平衡出力7Vとなっており制御基盤が正常動作しないものである。仮処置は苦労が大変多い作業であり余程のギャランティが提示されない限り間に応急処置ですべき労務ではないと俺は考えているので使用が不可能な事を告知し、トランスを手配したが国内在庫が既に払底しているとの事で急遽、ドイツ本国から取り寄せる事にした。年内に届くかどうかで大いにヤキモキする局面だが何故か、数日後、何の気なしにパートのおばさんが電源を入れてみたところ起動したそうでそのまま使えるだけ使ってもらう事にした。
 どうも断線箇所が不安定ながらも接触状態に戻る事がありそうなのだがそうであったにせよ交換は必須である。

 ここまででも結構な振り回されっぷりだが、まだまだ序の口である事を後に俺は思い知らされる事になる。長くなりすぎるので後日後段を続ける事にする。
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この労務経費は安くないぜ・・・と言いたいが [お仕事上のぼやき]

 某生産農家はラズベリーの栽培と加工の2枚看板で運営されており現在業務拡大中。そのソーズを練り込んだクッキーは品切れ状態が頻発するため現在生産量を大幅にあげる必要に迫られており,今回はリバースシートを購入しての試運転調整。

 今までリバースシートといえば鎌田機械しか触ったことのない俺だが今回,大久保商会様のご好意により上記のお仕事をやったこともないくせに承った次第。金のためなら大風呂敷も拡げるさ。

http://ohkubo-shokai.com/products/rondo/index.htmlhttp://ohkubo-shokai.com/products/rondo/index.html

 スイスメイドのロンドというメーカーである。他の例に漏れずヨーロッパ製は実にスタイリッシュでかっこいい。
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 現場での番狂わせについて書き残しておく。
 リバースシートは梱包されたままクッキー製造室の台下キャビネットに鎮座していた。小型とは言っても優に100キロ近くはあるので梱包を解くのにまず一苦労する,というのは織り込み済みだからまだ良い。
 内線工事は済んでおり天井コンセントがついているので念のため電圧を確認したところ0Vである。開閉器が入っていないのかと分電盤を調べてみるが2次側には問題なく電圧があり,欠相もない。

 内線工事を行った電気屋に問い合わせて頂いたところ、大雪が降った影響で手が離せなく,現場に行けないから俺に何とかしてくれとのことだった。
 若い頃に電気工事士の資格を取っておいてよかった、がしかし、ついてない話ではある。リバースシートを動かさないことには俺のチャージも叶わないのだからなんで厨房屋の俺がこんな事をしなくちゃならねえんだ,だとか、こんな仕事をさせやがって,文字通りタダじゃ済まねえからな,だとか内心ぶつくさ唸りながらテスターとドライバーを取出して急遽電気屋に化けた。

 障害の原因はコンセントの取付け方にあって,VAのうち2本が被覆の剥き方が足らないので端子が被覆箇所を挟んでしまいコンセントには電圧が出ない。
 文字にしてしまえばたったこれだけの話だが,俺の要領の悪さのせいもあって結構時間を食った。
他人の失敗を見つけ出すのは難しい。俺はそこまでの達人ではない。

 電源が確保できた,というところまでは良かったがその先にもコンベアーの保護停止を行うためのリミットスイッチが輸送中の振動で動作角がずれていて動かないとか何とか幾つかあったがひとまず動くのは動いた。

 試運転の途中,施工した工事業者からは間接的に,手間を取らせて申し訳なかった旨の連絡が入ったそうだが,俺としてはこういう労務をタダで済むと思ってもらいたくない。
 輸入元に請求できるものではないからその電気屋宛というのが筋なのだろうが,実際の俺は結構腰砕けになることが多いから結末はブツブツ言いながら泣き寝入りのパターンだろう。大久保商会様からの実入りに期待して何となく終わり。 
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ビルトインコンロに四苦八苦する [お仕事上のぼやき]

 昨日日曜日の出来事を書く。
ご近所さんの某焼肉店のオーナーから数日前に電話があり,住宅のガステーブルが火口に点火保持せず、不調なので修理してもらいたいとのこと。

 電気製品と同様,俺のような修理屋にとっては家庭用の燃焼器具というのもこれまた難物だとここでエクスキューズを出しておく。
 何しろ『家庭用』というのは修理が難しい。とにかく手こずる。そして,いじっていて大変苛々する物体が所謂『家庭用』だ。一見,似通った格好をしていながら冷蔵機器といい燃焼器具といい何でこうもいじり方の勝手が違うのかと俺はしばしば脳天から煙を上げる。

 そんなに苦手なら断ればいいではないかという諸兄のご仕手には全くもって真っ当なことを俺は認める。
 しかしご近所さんの依頼を無下に断るのはいかがなものかという心情的問題が一つにはあり,それ以上に俺には金が必要なのだよ、ロクでもない長期売り掛けに引っかかってもいるしな! (どうせ本人は読んでいないだろう)
 家庭用は心得がないので自信がありませんとへっぴり腰になりながら俺はツールバッグを担いでご近所さん宅へと赴く。
 一階が店舗,二階が住宅のその焼き肉屋さんは以前も記事にしたことがあるが他にも色々としがらみがあって俺は依頼ごとを断れないのだよ。
 
 住宅での仕事は不慣れで疲れる。
ワックスの効いたフローリングの床に靴を脱いで上がるところから既に緊張は始まっている。
この床に無骨なツールバッグを無造作に置いていいものかと迷い、主の方に床に敷くための古新聞を求める.。道具箱は床に敷いた古新聞の上に置くのが俺の流儀だ。主の方は大体、「そんなに気を使わなくていいからどんどんやってよ」とは言ってくださるがやっぱり遠慮が出る。今回もまたしかり。
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 点火保持されないガスコンロで、家庭用のビルトインタイプという事は点火保持に使われているのはサーモカップル(熱電対)であり、経時劣化による出力低下、あるいはガスコック側でのプランジャーの動作に引っかかりが生じていることが想定できる、と、ここまでは教科書的なスキルである。

 問題なのはそれからで、家庭用というのはおしなべてスタイリングとかファッション性が勘案された造りなのでビスだとかボルトがむき出しにはなっていない。中身を見ようとしてもどこから手を付けていいのかすぐにはわからずに機体を回したりひっくり返したりしながらあっちから眺め、こっちから眺めて分解のとっかかりを捜すことに結構な時間を費やすわけだがこの時間が結構馬鹿にならない。
 内部の構造を見るための労務という意味ではある種の欧州製品にも共通点がある。

 ビルトインコンロというのは俺自身、自宅で当たり前のように使っているがいざ商売として中身をあらためようとするとそのややこしさに閉口する。



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 内部の構造がとにかく入り組んでいるのでバーナー一つを取り外すだけでもパズルのようにややこしく、無茶苦茶に手間取る。冷や汗やら脂汗をたらして作業する。考えてみればトップバーナー3口にオーブンというと業務用のガスレンジならばW900 x D600 x H850、家庭用のビルトインコンロは同じ数の火口で外径寸法はおよそW600 x D450 x H200くらいだろうか、体積比で言えばほぼ10:1のところに同じ数の火口が詰め込まれているのだからややこしくもなろうってもんだ。業務用であればビスやボルトでとまっているところがピンであったりするところにも戸惑う。

 点火保持できない問題について俺は焼肉店のオーナーとその奥さんにある含みを持たせてご了解を頂いた上で仮処置を行った。
 やってはいけないこと,と言うと同業の諸兄には簡単に想像がつくであろう『ある処置』によって俺はひとまずこの問題を回避した。週明けには問屋にパーツを発注して正規の処置をとる段取りにかかる。
 初見なのでああでもないこうでもないの試行錯誤に手を取られて時間を食ったが,一度はまれば二回目以降は大体何とかスピーディになっていくのがこれまでの通例である。
 残念なのはせっかくこうして現場で四苦八苦して構造を頭に叩き込み,ばらし方を覚えても次にそれが生かされる機会が俺のような野良犬業者にはまず訪れないことだ。ほぼ必ずと言っていいくらい,こういう仕事は一回きりであって丸暗記したことを繰り返せば済む仕事が俺には全くない。

 カウンターキャビネットから引っこ抜いたビルトインコンロを元に戻してガスの配管を繋ぎ直し(これは余計な作業だったと途中で気づいた),点火動作の確認をしているとオーナーご夫婦は親切なことにコーヒーと灰皿を用意してくださっていた。タバコに火をつけて時計を見るとこのインチキ作業に俺は実に二時間弱の時間を費やしていたことを知ってがっかりきた。普段いじっている業務用の燃焼器具であれが確実に1/4の作業時間でケリがついているはずの作業だ。不慣れ,初見というのはこうも非効率的なものかと俺は煙を吐き出しながら凹んだ。
 とてもじゃないが作業時間に則った作業費を請求するわけにはいかない。もしも仮にメーカーサービスがこれと同じ作業をしていたら20分かそこらで済ませていただろう。それ以前に俺のようなその場しのぎのインチキ修理はせずに保安上の理由を盾に補修パーツの調達までの間使用しないようにと使用者の方を説得しているだろう。これは不親切でもなんでもない。製造責任を持つ立場としては至極真っ当な対応である。

 結局,俺のような野良犬業者の存在価値とは作業の手早さとか代金の安さよりも緊急時に於いてサバ読みをきかせ、反則技を駆使して切り抜けるクソ度胸にあるのだろう。
家庭用の住設機器となれば常識的に考えて請求できる作業費は数千円程度ではないかと俺は想像していて,日曜日の午後2時間、プラス再度の乗り込みでその金額が割のいいものなのかどうかはさておいて,家でゴロゴロして一円にもならない時間を過ごしているよりは幾らかマシではないかと自分を納得させた。

 丸暗記と手癖の繰り返しだけで済むような仕事がもっと多いと楽なのだが世の中そんなに甘くはない。 
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オペ室の仕事は日延べ [お仕事上のぼやき]

 諸兄はご存知と思うがオペ室とは病院の手術室のことである。
厨房屋であるこの俺が一体全体何の因果で病院のオペ室に出没するかについては長くなるので別の機会に書いておくとして,本日俺は夕方、長らく出入りさせて頂いている某総合病院のオペ室にて冷凍庫を修理する予定だったがこれは日延べされ,後日再訪問となった。

 オペ室の機材の修理は一定確率でドタキャンが発生する。
理由は大別して二つあり,
(1)手術が長引いており,まだ空かない
(2)予定外の緊急オペがあり,使用中である
 オペ室の冷凍庫やら保温庫というのは全て壁に埋め込まれているので室外に持ち出すことが出来ない。勿論手術中に修理屋が入室することなどできない。だからいずれの理由であれ後日再訪問となる。修理屋としては無駄足を踏むわけで,修理完了後の精算に於いては食品用との冷蔵機器に比べると割高なチャージも事務方には容認されるのが不文律である。

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 何せ人の命がかかっているのだからドタキャン再訪問の割り増し請求もやむなしということなのだろう。およそ金には厳しい某総合病院だがこの点についてはさすがに物わかりがいい。

 病院のオペ室というところは勿論誰もが来易く入れる場所ではなく,ナンバーロックされた厳重な鉄扉で閉ざされている。入室者は入り口のインターホンでNCに身分と訪問目的を告げ,内側から開けてもらうのを廊下で待つ。
 昨日病院と取ったアポでは午後から問題のオペ室は使用予定があり,5時頃訪問して状況を伺うとしていた。それで今日,俺はインターホン越しに目下手術中との告知を受けて出直すことにした次第だが帰宅の道すがらかねてからモヤモヤしていた考え事を頭の中で整理していた。
 近年特に言えることだが,故障診断の最中に横からしきりと『原因はわかったのか』だとか『あとどれくらいで終わるんだ』などと邪魔臭いことを抜かす無神経な客のことだ。
 その総合病院は手術科(オペ室)と同じフロアーにICU(集中治療室)があり,一角に控え室という部屋がある。手術中、身内の方が待機する部屋な訳だがテレビドラマにあるような、ジリジリ来た家族が控え室を飛び出して「うちの○○の手術はどうなっているんですか!?助かるんですか!」と病院職員に眦を決して詰め寄るような場面を俺は目撃した事がない。大体は黙りこくって手術の終了(必ずしも完了ではない)が告知されるまでひたすら待ち続けるものだ。

 こういう対比を挙げて俺が言いたいのはつまり、医者と厨房機材の修理屋という職業の社会的なステイタスの目も眩むような格差についてだ。
 勿論、一人の人間が医師免許を取得するまでの過程に比べれば厨房機材の修理屋なんぞ鼻糞以下のリソースで済む。極端な話、新聞だのハロワだのの求人状況を見て履歴書を一枚書けば厨房屋程度の職業は誰でもなれる程度のものでしかない。
 しかし広い意味では、何かしらの障害を取り除いて問題を解決するという意味では共通するとは言えないか。診る対象が尊厳を持った生命体かしょうもない出来損ないの機械かで、受ける待遇はこうまで違うのだ。

 修理という時間の予測の立たない仕事でありながら『今日の何時に来られるのか』などという約束を迫り,約束の時間通りに到着しても『今は使っているから待ってろ』などと手前勝手な都合で待ちぼうけをくわせた上にその後のスケジュールのずれ込みには頬被りを決め込む。作業に取りかかれば外装板を外して中を覗き込んだ途端に『原因は何なんだ』だの『何分くらいで終わるんだ』だのとこれまたテメエの都合だけの雑音を吐き散らかして修理屋の仕事を邪魔し,ほんの少しでも作業がずれ込むとまるで自分が物凄く甚大な被害を被ったような面付きで修理業者を面罵したりなじったりする。こういうバカ客は(俺はこの現象を最近,『消費者のヤクザ化』と適当に名付けて結構気に入っている)修理屋を自分のわがまま通りに動く召使いか何かだとでも見ており、そのくせ金のことになると途端にああでもないこうでもないと手前勝手な難癖を付け始めて全くもっチンピラよりも始末の悪いクズ共なのだが,こういう連中が例えば自分の健康上の問題で病院にでもかかったとしよう。俺は断言してもいいが,こいつらのうちの少なくとも95%くらいは外来の待ち時間が長いからといっていきり立つこともなくテメエの名前が呼ばれるまで辛抱強く待ち続け,医者の所見には毛ほどの疑問を持つこともなく,注射針の刺さる痛みを無言でこらえて処方される薬をそのまま受け取り,診療費は提示される金額を値切ろうとするような横紙破りには及ばない。どこまでも羊のように従順なはずなのだ。

 なんだか書いているうちに段々頭に来てしまって支離滅裂な流れではあるがここでの話題をまとめておきたい。要するに俺はここで二つのことを言いたい。

 まず一つ目,医療という行為はここに書いたような自分の施設に出入りする設備関係業者には横暴極まりないクソ客共をも言いなりにさせるほどの威力がある聖職であり,故に結構儲かる。
 それで二つ目,このことは結果として医療機関の裏方である諸々の修理屋のうち,ある種の業者に対してはそのチャージに対して結構鷹揚に対応してくれるようだ。いい意味でゆるいというか。

 実際出入りしていて俺は思うのだが,食品用であれ医療用であれ,冷蔵庫の使用パーツなどというのはまるっきりおんなじものでありながら同じ壊れ方をして同じ処置をしても一方では3万円くらいの修繕費を事務方に値切られながらもう一方では5万円くらいの修繕費が何のネゴもなくすんなり決裁される。その両方を行っている者としては何と言うか,複雑な気分なのだな,実に。
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朝ご飯を得意先で頂く [お仕事上のぼやき]

先週末土曜日の出来事を書く。

 俺は生来怠け者だ。本当は仕事なんかしたくないのだ。一日中ぼーっとして家の中でゴロゴロしているうちに日が暮れるなんていう生活が俺の理想だが,現実にはそういう生活を続けるだけの経済的な裏付けはないので金のために仕方なく働いているだけの話だ。

 8年前の開業以来決めていることがある。土曜日には極力スケジュールを入れないというのがそれだ。
そうでなくても夜中だの日曜日だのと不規則な生業だから休めるときには休みたいのだ。歳も歳だしな。
 俺の目覚まし時計は月曜日から金曜日に賭けては午前7時30分にセットされているがそれ以外の日には鳴らないようになっている。何故かというと俺はガキの頃から意味もなく夜更かしをするのが大好きで土曜日や日曜日の朝は誰憚ることなく思いっきり朝寝坊をしたい性分だからだ。
 健全なる一般市民の諸兄は土曜日や日曜日には何か建設的な予定があり、元気一番飛び起きて健全な朝飯を食ってからその予定に取りかかるのだろうが俺はそうではない。
 諸兄が健全にして活発な休日を満喫しているとき、俺はグダグダと寝床でうたた寝を続けて昼頃になってばつが悪い気分でダラダラと寝床から這い出す。着替えを済ませて飯を食い、少しぼーっとしていると晩秋の昨今は既に日が陰り始めている、時間を無駄遣いする事の後ろ暗い快感が俺には染み付いている。

前置きが長くなり過ぎる悪癖をご勘弁願いたい。
先週末の土曜日,俺の予定は訪問時刻は俺次第のちょろい修理が一件だけというもので、前置き通り俺は前日存分に夜更かしを決め込んでグダグダの状態で寝床から起き出した。居間の時計は午前7時30分位を指していた。思いっきり朝寝坊を決め込もうにも否応無しに目が覚める昨今は俺が年寄りになりつつある証拠なのかもしれない。
 二度寝でもして思いっきりだらけた週末を過ごしたい気分だったが歳のせいだか段々早起きが習慣づいてくる。どうせ早起きしたのだから予定の修理一件をとっとと片付けてしまおうかと思案していると携帯電話が鳴った。電話の主はとある食堂の旦那さんからで,ゆで麺器がぶっ壊れて水漏れがひどいので開店前に何とかしてくれという。

 先約の予定は終日好きな時間に入って構わないものなので,俺は先にその食堂のお仕事に取りかかることにした。
 携帯電話の着信履歴を見ると午前6時30分から大体30分おきに電話をくれていたらしい。俺が完全に高鼾モードの時刻だが使用者というのは自分の都合でばっかりものを考えたがるヤクザ的傾向を強めているのは以前書いた通りだ。

 依頼元の現場に到着したのは9時少し前だった。
ブツはタニコーのゆで麺器で,不具合箇所は直圧式のシスターンに付いている逃がし弁の破損である。
タニコーという会社との関係やその製品に付いてグダグダ書き連ねることはここでの本題から外れる。
状況を見て材料屋に走り,適当な部材を調達して即日、営業一時間前に仮処置と試運転が完了した。俺も商売人として結構年季が入ってきたんだ,と、ここでひけらかしたいのですよ,諸兄。

 旦那さんは大変出来た方で,早朝の無理な依頼のことを丁重に詫びてくれた。
朝ご飯を作っておいたから食べていってくれと仰る。考えてみるとこの稼業を始めて30年近くになるが,昼食や夕食を得意先で御馳走になったことは随分あるが朝食というのは実に少ない。自営の商売を開業してからは初めてだと思う。
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 聞けば旦那さんには勤め人の娘さんがおり,出勤前に持参するお弁当はパパが毎日作ってくださるのだそうでこの日,俺に用意してくださった朝ご飯というのはその娘さんのランチと一緒のもので上の画像の通りだ。

 開店前の掃除が済んだホールで,俺は上の画像の朝食を恐縮しながら縮こまって頂いた。
一つ種明かしをしておく。俺がこの得意先に関して多少無茶な依頼を断らずに引き受ける理由についてだ。
上に書いたようなありがたい付録もさることながら,この得意先はお仕事が終わると即金で修理代をくれるのだ。ここは商売として実に重要な点である。金の力は偉大だ。
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キャピラリーチューブ20m [お仕事上のぼやき]

 某農協店舗にて冷蔵ショーケースの修理である。
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 実はまだ作業は完了していない。山場は乗り切ったがちょっと残し作業がある。

 この件については,いつもながら七転八倒しながらの修繕で俺にはいつまで経っても成熟という言葉に縁がないことをしみじみ実感する。
 全体の流れを追っていくと長くなるので幾つかに切り分けて書き置くことにするが,これは某冷設屋の引き継ぎ修理である。厨房屋が手に負えなくて冷設屋に引き継ぐのは良くある話だが今回は逆なんである。そして,どういうわけだかこういうイレギュラーでややこしい話がよりによって俺のようないかがわしい野良犬のところに持ち込まれてくる。

 全体の流れはこうだ。
(1)冷蔵ショーケースが冷えなく,某冷設屋のサービスマン登場。コンデンサーには埃がびっしり詰まっていたらしく,コンデンサーの洗浄を行う。

(2)試運転を行うが庫内が冷えず,サービスマンは思案の結果,ガス漏れかコンプレッサーの圧縮不良と所見を出すがまだグリーンボーイだったらしく使用者は言質の曖昧さに不安を抱く。←ここから俺登場

(3)ガス圧を測った形跡がなく,(サービスバルブがついていない)低圧側にゲージを当ててみるとガス漏れはなしと判断。

(4)試運転を行うがコンプレッサーは定格電流以下で回転するも低圧下がらず,高圧上がらず,圧縮能力に問題があり,交換要すの所見を出す。
 冷えなくなる前にはなんだか普段は聞かない変な音がしていたとの店舗の方の話があり,リードバルブがイカれたのかもしれないと推察。

(5)コンプレッサーを交換後に試運転を行うと真空運転となり大いに焦る。オイル上がりが発生してキャピラリーを詰まらせたのではないかと推論する。

(6)キャピラリーチューブを交換して所定の冷却性能を得て一安心するが冷蔵ユニットの組みつけられたベースがレールにつっかかってうまく収まらず、3cmくらい手前に出っ張っているので外装板を取付けられない。←今ここ

 キャピラリーチューブが詰まる事例は俺の場合でいうとさほど多くはないので出くわした時のドタバタ具合は大きくなる。
 膨張弁とは違ってきっちりした選定の手順があるわけではなく,機種ごとにサイズはバラバラなのでたかが細い銅管に過ぎないこの物体は補修用の純正パーツとして販売される時には結構な単価の請求書が来る。
 圧力損失を算定するためのややこしい計算がバックグラウンドでは行われているからたかだか外径2ミリそこそこの銅管は2メートルかそこらで何千円もの単価が生まれてくるわけだ。

 俺はそのことを以前から面白くなく思っていて,いっそのこと自分で一巻きキャピラリーを買って,現場現場で都合良くちょん切って使おうかと目論んでいた。

 巻物のキャピラリーを購入するにはエスコかタスコのカタログをめくってみるのが手っ取り早いが、同じ仕様のキャピラリーチューブでも随分値段が違うのは不可解なところだ。俺は当然,安い方から買う。

http://ds.esco-net.com/out/DispDetail.do?volumeName=00003&itemID=t000100005403

一巻き20mで当然ながら切り売りはしてくれない。
まあ,いいかと買ってしまったが今回の使用量はたったの3mだ。物凄く大量の在庫を抱え込むことになったが今のところ使い道はない。バカなことをやっちまったもんだ。

 自分のアホさに溜め息をついていると設備資材の問屋がいいことを教えてくれた。
凍結配管を蒸気で溶かすときにはキャピラリーチューブを使うと結構便利らしい。冬に向けて知り合いの設備屋にでも宣伝してみようかと俺は画策している。


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平常心を失って自業自得 [お仕事上のぼやき]

 他の色々な職業がそうであるように,修理屋稼業にもメンタルの強さは求められるだろう。
機械いじりを生業とする者としては,実務に感情を反映させないことを心がけてはいるがなかなかうまくいかない時もある。

 某病院に於ける食器洗浄機の修理である。例によって夕食下膳終了後の作業であり,20:00作業開始となった。
個体はIHIの食器洗浄機JMD-4Cで俺が会社員だった頃納めたものだ。稼働歴は20年近くになる。
 いかなIHIとは言え,20年も使っているとさすがに主要パーツのなかで参ってくる箇所は発生する。今回は洗浄ポンプのメカニカルシールがいかれてケーシングからの水漏れが起きたのでポンプの修理となった。メカニカルシールとベアリングを交換する。

 この施設は系統によって市水(上水道の水)と井水を使い分けている。厨房については調理用が市水で下膳や清掃用の取り出し口は井水であり,カルキ分が多く高度の高いその水質は食器洗浄機にとっては好ましくない。今回の修理も給水が市水であればもう少し先延べされたものではないかと俺は考えている。
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 ポンプ周辺の取付け状況。電装ボックスは取り外した状態で、手前側の小さいポンプはすすぎ用,メカニカルシールのイカれた洗浄用ポンプが奥側である。
 一見,脱着に難儀しそうなレイアウトだが厨房屋の製品とは違ってIHI製は組つけの精度が高いのとポンプ周りの固定に使われているのが全てM6のボルトで統一されているのとで作業は嘘みたいにスムーズに進行する。ポンプのリード線が予め長めに作られているのも修理屋としては助かるところだ。

 余談だが,洗浄ポンプの吸い込み側に短く切った強化ホーズが平バンド二本で取付けられているところに注目して頂きたい。実はここは6年前に俺が施した改造個所である。タンクとポンプの接続方法については設計上のウィークポイントと俺は考えており,実際幾つかの個体でこの接続個所であるゴムホースが破れて以前水漏れが発生したのだが俺の改造によってこの出来事は根絶された。
 俺は当時得意満面でIHIにこのことを自慢した。営業担当殿は俺に気を使ってくれて一応,感心したそぶりを見せてくれたが所詮,田舎の野良犬修理屋の思いつきに過ぎないこの改造は製品に反映されることなくIHIは食器洗浄機の事業を北沢産業に譲渡してこの業界から去った。

 しまらないオチのことを書いておかなければならない。
洗浄ポンプのメカニカルシールとベアリングを交換してポンプを組み上げた俺は予想以上の早い作業完了に多いに気を良くしていた。浮かない気分の日々が続いていたが悪いことばかりでもないか,と嬉しい気分で撤収作業をしているうちにあるものを見つけて気が重くなったのだ。

 それはM8のボルトに使用する平ワッシャーである。
 使用されている場所はすぐに想像がついた。洗浄ポンプの,インペラーを固定するロックナットを取付ける前に入れるワッシャーがそれなのだ。13mmのレンチを使用する唯一の箇所がそれなのでここは間違えるはずはない。
 組み付け御の試運転では問題なしに動いてはいたものの、この先何年かの稼働を想像するとなんだか心許ない。なんでまたよりによってこんな大事な場所のワッシャーを入れ忘れるかと俺は自分がイヤになった。逡巡した結果,俺は一旦組み立てたポンプをまた取り外して分解し,問題のワッシャーを入れ直した。絵に描いたような二度手間だ。完全に予定の二倍の時間がかかっているわけで,我ながらアホとしか言いようがない。
 
 ワッシャー一個のために二倍の作業時間とは全く俺が注意不足であることを示している。
生来,うっかり者ではあるが今日のミスには訴訟沙汰が頭をよぎる昨今の心象風景が反映されているのか,と,本日俺の気分にはやや翳りが見られるのである。
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語学力とお仕事との関係 [お仕事上のぼやき]

 前置きとして元記事のURL
記事名:バカンスのあおりを喰う:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22

 状況に誤認があり,コンプレッサーはイタリア本国にはあった。但し,バカンスの期間は厳然として揺るがず(こういうところは見習いたいな)問題のコンプレッサーは先月末,ようやく国内に入荷して俺の手元に届いた。
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画像は本文とは関係ありません


 コンプレッサーの交換と文字にすればそれだけだが現実の作業は結構難航する。パステライザーの中身は実装の密度が高くぎゅうぎゅう詰めなので取り外そうにも手が入らないし、何しろ3.5Kwの半密閉コンプレッサーだ。重量を量っていないが優に80kgはあるのではないか、何しろめちゃ重い。
 相棒の冷凍機屋さんはさすがに手慣れたもので,アングル材を持ち出してきてやぐらを組み,チェーンブロックを巧みに操って交換は終了した。

 何かをやり遂げた気分になり,試運転に取りかかったところで俺は青ざめる。
パステライザーの液晶ディスプレイにはわけの分からん言葉が現れ,パステライザーはウンともスンとも言わない。焦って電装ボックスから配線図を取出してみたがこれまた何が書かれているのかがわからない。
 三か国語で何かが併記されている。イタリア語,ドイツ語,フランス語のようだ。俺は学生の頃,ドイツ語を教わったが遠い過去の話であって今やさっぱり頭から消えている。だから何をどうやっても配膳図に書かれていることや機体のディスプレイに表記されていることが理解できないのだ。

 輸入元に電話をかけ,俺はラジコン人形となってFMIの技術担当者の言うままにタッチキーを操った。どうも制御基盤に乗っかっているEPROMの書き込み内容が化けているらしく、設定データを入力し直さなければならないようなのだが何をどうやって操作すればいいのか自分の頭で考えても手も足も出ないのでラジコン人形に徹する。
 言語の選択から初めて見たが,イタリア語,英語,日本語の三つから選択できるらしい。しかし悲しいかなメニュー画面はあくまでイタリア語なのだ。「日本語」はイタリア語では何と表記するのかが俺にはわからない。訳が分からないのでヤマ勘で頭文字がJのものを選んでみるとラッキーなことにあたりだった。

 しかし,万事こんな調子では仕事が捗らないのは明らかで,とにかく疲れた。普通の作業以上に疲れた。

 爆睡後の本日は某製菓工場にて器具洗浄機をいじる。洗剤供給装置の動作条件を変更して欲しいとの要請で,内部配線を一部やり直すことになる。
 本格的に内部をいじるのは今回が初めてで,それまで漠然と「ああ,これも輸入機械なんだな」と他人事のように眺めていたのだが中身をいじくり回す当事者となるとさすがに気分が切り替わる。
 使用者の方に配膳図のコピーを頂いて俺はここで焦る。またしてもイタリア製で表記が例の英語抜きの三か国語表記である。

 洗剤の供給装置は内蔵されていて,制御基盤上の専用出力端子から信号を貰って動作するのだが使用上不都合があるので改善策を考えて欲しいというのが使用者からの依頼で,俺は気安くそれでは本体給湯用の電磁弁と同期させましょうと答えたところまでは良かったがいざ配線図を眺めていると上に書いた通りの状況で,しかもEU圏での機器なので配線図のシンボルが日本製と異なる。
 配線の被覆の色が表記されているのだが俺にはさっぱりわからずに頭を抱えていると意外なところから救世主が現れた。得意先のパティシェが配線図中のフランス語部分を拾い読みしてここは青,ここは赤,と教えてくれたのである。

 パステライザーの一件とは違ってハード上の問題なので,実機を眺めて配管経路と配線経路を辿れば同期させたい電磁弁とその配線のあたりはつくがしかし,見慣れないシンボルと読めない言語で書かれた配線図を眺めて動作をイメージするのはやはり骨が折れる。

 思い出してみると俺が学生の頃,ある教官が「横文字に弱い奴はいい技術者になれない」とのたまっていた。ここ数日のイタリア語はおろか一度は勉強したはずのドイツ語まで手も足も出ないでおろおろした自分のことを考えるに、彼はこういうことをいっていたのだなあと今更ながら身につまされる。そして,既に折り返しを過ぎて下り坂真っ最中である俺のこれから先の短い人生に於いて語学力の向上は全く期待できない。
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上がったり下がったりする(3) [お仕事上のぼやき]

  ここしばらく思うのだが,言葉を扱う才能というのは詳述することよりも要約することの方により多くを求められるのではないだろうか。

最初のスレ:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16
二回目のスレ:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-08-23

 一つの出来事を記述することにこうも長引くのは俺の粘着性気質の強さを表すと同時に文才のなさをも示していると考えて良い。

さて本題の続き。
主観や願望で物事が変わるのなら苦労はないのだ。
イカれたコンプレッサーは逆立ちしたって正常にはならない。ここで選択肢が二つ発生する。
(1)コンプレッサーとドライヤーを交換する。
(2)冷凍機をそっくり交換する。

 修理業者と依頼元と利益はここでずれを見せる。
修理業者にとっては工程の多い(1)が好ましい一方,依頼元としては売上額の膨らむ(2)に誘導したい。
得意先との交渉過程は省略するが,方向性としては(2)に落ち着いた。
 いずれにしてもコンデンサーの洗浄を行った俺の労務経費はお預けであり,ついていない話であることには変わりがない。

 実入りの少ない冷凍機交換だが短時間でケリがつくという意味では助かる。何しろ店舗はいつも閉店後の深夜作業がお約束になってしまっているのでいい加減年寄りの俺としてはあんまり長い仕事をしたくないのが本音なのだな。

 冷凍ユニットは専用品なので工場在庫がなく,都度製作であり納期がかかる。上がりの時期を確認すると俺の生息地に到着するのが8月14日頃だと言う。依頼元は夏期休暇の真っ最中なのであとはよろしく,とのことで、面倒ごとは協力会社に丸投げで自分たちはいいとこ取りのつまみ食い体質もここに極まれり,いい気なもんだぜ。

 果たして冷凍ユニットはおよそ十日の製作期間を経て俺の住む田舎町に到着した。
お盆休みの真っ最中、しかも夜中の労務ではいかに働き者の(嘘つけ!)俺とは言え勤労意欲をかき立てるのにはいささかの努力を要する。
深夜の11時,背中をメキメキ言わせながら車からやっこらせと冷凍機を降ろし、『面倒くせえなあ』とかなんとかブツブツ言いながら俺は届いた冷凍機の梱包を解いて脱骨した。
なんと,届いた冷凍ユニットは冷媒管接続のカップリングがオス,メスあべこべに製作されているではないか!

 ここで状況を諸兄にご理解願うために本来的なペアリングの画像を再掲する。
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 故障品の個体についていたカップリングは以下の通り。
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 新たに製作されて届いたブツの状況は以下の通り。
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 並べてみる。
120815_2338~01.JPG


要するに,パスタフリーザー本体側と冷凍ユニット側,どちらも雄のカップリングであるため繋がらない。そういうことなのだ。

 「何てこった,バカタレが!」と俺は呻いた。あんまり頭にきて血管が切れそうになった。
自分自身のこれまでを顧みると総じて,ツキのない人生を送ってきたと俺は思っている。どう考えても俺には無用な苦労が平均以上にあったと確信しているのだが今回もその例に漏れない。冷凍機の型式はいうまでもなく製造番号まで伝えていながらこのザマだ。冷凍機を地面に叩き付けてやりたい衝動に駆られたが、ここしばらく背中が痛いことを思い出してこれは踏みとどまった。

 何せ,状況は告知しなければならない。割の悪い話だ。
大体,なんで製造責任もなく取引の窓口でもない俺がこんなぶざまなありようを白状して平身低頭しなければならんのか。
 しかし,誰かが引っ被らなければ物事は進まない。
俺は大変ばつの悪い思いで,夏の暑いのと出来事のお粗末さとを合わせて汗をかきかき店舗のスタッフに状況を説明した。店主は既に退勤したあとなので翌日の日中,同じ説明を繰り返さなければならない。これまた気の重い話だ。
 既に不具合の発生から半月を過ぎてパスタフリーザーは未だに動かない。店主は元々が放電し易い体質の男で俺が会社員だった頃から散々やり合ってきた関係だから馴れていると言えば馴れているが,このていたらくにボルテージを上げることは明白だ。
 ポーカーの役でいえばフルハウスくらいのツキのなさだ。何でこんな役どころを務めなければならんかと大変理不尽な気分を抱え込んで俺は退散したのである。(以下続く)
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上がったり下がったりする(2) [お仕事上のぼやき]

前回記事http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16

 俺は依頼元に二通りの見積りを提出する提案をした。
(1)冷凍ユニットの交換
(2)コンデンサー洗浄,冷凍ユニットの脱着作業を含む

 依頼元としては売上額が膨らむ前者が望ましい,加えて新品の冷凍機だから後々数年の安心感もある。一方の使用者から見れば修繕費が安くて済む後者で落ち着いて欲しい。処置を行う俺としては後者の方が工程が多い分作業経費の実入りはいいが冷凍機交換であればあったで時間単価としては悪くないので微妙なところ。それぞれの思惑は少しずつ食い違うわけだ。

 技術論としては7年の運用でコンプレッサーが焼損した事例が既にあるわけで,表面的には凝縮不良ではあるがその奥に過熱運転によるコンプレッサーの不具合が発生してる可能性を否めない。
一通りの状況説明は必要だが最終的には使用者の決定に委ねられる。そして殆ど全てと言っていいほどこういうケースでは最も安価な提案内容がチョイスされる。
 今回のケースもその例に漏れない。これは事前に俺としては充分予測できたことだ。そこで俺は依頼元の若い衆にこのような指示をしておいた。

 コンデンサー洗浄の修理見積りには備考欄に,作業後に試運転段階で発生する不具合については別途扱いとし,追加作業の見積りを作成させて頂きます。という追記事項を設けておくこと,というのがそれだ。
 しかし若い衆はこれを怠り、それは後々ややこしい事態に発展することになる。

 複数提案された見積書のうち,使用者が選択したのは予想通り安価な提示内容だった。
これを受けて俺は一抹の危惧を抱きながらもコンデンサー清掃の段取りに取りかかった。作業費についてはこちらの方が儲かるのでうまくいけばめっけ物。

 冷凍機を取り外して自宅の作業場に持ち帰ってコンデンサーを洗浄し,深夜のMD(ミスタードーナツ)に持ち帰って取付け,試運転をかけてみるとコンプレッサーの始動時に内蔵のOCR(Over Current Rellay:過電流継電器)が働き,俺は大いに慌てた。
 『やはりコンプレッサーにはダメージがあったか』と渋い気分でいたら”かっこん”と音がしてOCRが復帰し,コンプレッサーが回り出した。

 急いで運転電流を測ってみると6.3Aあった。芳しくない数字だ。コンプレッサーの定格出力は400Wだから歴然たる過電流だ。
 俺はクランプメーターの表示をぼんやりと眺めながら善後策についてあれこれ思案した。今回の作業はなかったものとして冷凍ユニットの交換を提案すべきだろうが、そんな追加出費を使用者があっさり呑むとはとても思えない。差し当たりコンプレッサーは回り,冷却は始まっているがこの値には問題がある。どのようにこの状況を伝えるか,追加措置の必要性をどう切り出すか・・・大体俺には金について使用者と交渉する権限などないのだ。グレーゾーンでの運転状態の中,俺の決断も揺れる。
 
 逡巡を続けているうちに電流値の表示が徐々に下がり始めた。
6Aを割って5A台となり,そこから更に下がり始めて4,5Aあたりでサチり始めた様子を見て俺はもしかしたらと甘い見通しを持ち始めた。定格電流値は4Aだからして、この辺の数値ならちょっと高めではあるがあり得ない話ではない。庫内温度は-10℃を割り,更に運転は続いている。
 
 翌日,様子を見に行くとパスタフリーザーは設定温度の-15℃をさして冷凍機の運転が止まっていた。
俺は懸念を覚えながらではあるが,一週間程度経過を見て問題がなければ請求書を発行する旨を伝えて現場を後にした。
 そんな風にして一段落ついたつもりになっていた半月ほど後,使用者から俺の携帯電話宛に直接,フリーザーの不調が伝えられた。現場に向かって調べてみるとコンプレッサーのケースがチンチンに熱くなりながら息絶えていた。正真正銘,混じりっけなしの起動不良だ。
 『何てこった』と『やっぱり懸念が的中したか』という二つの思いが入り交じる。
コンデンサーの洗浄は手遅れだった。それが理屈であり結論だ。これは曲がらない。

 俺は大変ばつの悪い思いで現況を店主に伝えた。発行されたコンデンサー洗浄の請求書は一旦破棄して,冷凍機の交換に対処法を切り替えさせて頂きたい、といった内容だ。
 本来,こんな類いの交渉は俺の依頼元がするのが筋であって単に労務提供するだけでしかない俺の役どころではないはずなのだが,依頼元は諸般の事情によりこの役目を俺に押し付けたいらしいのだ。理不尽には思えるが金のためだ,仕方がない。

 頭に来るのはこうした二度手間について正当な労務経費が精算されないことだ。依頼元の担当者である若い衆は最初のコンデンサー洗浄の作業経費は金の出所がないので貸しにしておいてくれと頼み込んできた。
 これまた大変理不尽な気分に駆られるが何せ元の勤務先だからあまり杓子定規に強硬な主張をするのも後々角が立って気まずいだろうからどこかで色を付けてもらうことにして一旦俺は呑んだ。
 そんな風にしてこの件での俺の稼ぎは当初の皮算用から約一万円くらい低いギャラで落ち着くかと思われた。(この項続く)
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バカンスのあおりを食う [お仕事上のぼやき]

残暑が厳しい。お盆を過ぎればいきなり涼しくなる土地柄だが今年は一向にそんな気配がない。
よって,俺のお仕事も瞬間風速としては忙しい。実入りが伴ってさえいれば忙しいこと自体は悪いことではない。何せ8月は休みが多いので例年売り上げは凹みがちだ。稼がねば!

 と、意気込み加減のここ数日,FMIより修理依頼があり,某アイスクリーム製造業者のところでお仕事となった。
 内容はパステライザーの絶縁不良とのことで,良くあるヒーター不良かとタカをくくっていた俺は現場で青ざめる。
htp4_main_img.jpg

画像は本文とは関係ありません。


絶縁不良の原因はコンプレッサーにあった。
絶縁抵抗値は0.04MΩと絶望的な数値だ。運転させて接地線の電流値を調べてみると33mAを確認した。ELBの定格不動作値は50mAだから結構きわどい数字だ。運転状態によっては感知領域に入っているのかもしれない。
これまでFrigomatのパステライザーをいじり続けていてコンプレッサーのトラブルは実は初めてだ。現行品の一つ前のモデルまではごつい半密閉式が乗っかっていてそれはそれは頼もしい造りだったのだが。

 現場からFMIに連絡を入れて相談となった。
案の定,コンプレッサーの故障事例はこれまで殆どないため恐らく補修品の国内在庫はないのではないかという厳しい見通しが返ってきた。

 仮にイタリア本国に問い合わせてみてもあいにく今はバカンスの真っ最中だ。工場はもぬけの殻で問い合わせが出来るのは来月半ば以降,仮に本国に在庫があったとしても出庫は10月で,送付方式は船便で,などということになったら届く頃にはこっちはそろそろの冬の入り口になりかねない,とんでもない話だ!

 先に書いたように今年は残暑がなかなか厳しい。おかげでアイスクリームの売れ行きが良く,明日から増産体制に入りたいので何とか短期で解決できる方法を考えてくれ!と使用者からのプレッシャーがなかなかきついので俺はない知恵を絞って考えた。
 
 その後の輸入元との協議で明らかになったことだが,問題のコンプレッサーは既に本国でも補修品のストックを持っていないらしく、ここで完全修復の望みは絶たれた。使用者は痺れまくって空中放電を起こしそうな緊迫感が現場に漂う。

 非常にギャンブルめいた可能性を使用者はここで提示した。汎用冷凍機のメーカー,例えば三菱なり三洋なりのコンプレッサーとの換装はできまいかというもので、頭痛がしてきそうな話だ。
 FMIによれば国内での正式な修理事例はないとのことで非公式に,ということはFMIの責任範疇外の使用者自己責任で改造例が一件あったかなかったかとのはなしだ。

 この事案はFMI本社技術部との間で改造の可能性について協議中である。本日,三洋(現パナソニック)せいのコンプレッサーで近いスペックのものが候補として示されたのであさって現調のため出向くことになる。毎度ながらなんだかババ抜きのババを引いている感覚に襲われる。
 仮にこの改造がうまくいったら,俺は正式にはFrigomat製のパステライザーのコンプレッサー改造を行った日本で初めての修理屋ということになるのだそうだが,こんな裏小路だか袋小路の仕事で国内初とかいってふんぞり返ってみても商売上その先格別いいことがありそうにも思えない。

 丸暗記の繰り返しでダラダラと稼ぐ日々を夢見て入るが現実はそういうわけに行かず,いつも切羽詰まった暗中模索ばかりが姿を変えて襲いかかってくる。通り一遍の修理ではないのだから一発特別加算でも請求したいところだがそんなに甘くはないだろうな。
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上がったり下がったりする(1) [お仕事上のぼやき]

 店舗によって扱いはまちまちだがミスタードーナツには飲茶のメニューがあり,俺は以前,関連機材の製造元で働いていた。会社員を辞めて自営を始めてからは元の勤務先の協力会社という立場でこれらを相変わらずいじり続けている。

ミスタードーナツ,飲茶のURL:http://www.misterdonut.jp/m_menu/yamucha/index.html

メニューの中には汁そばなる品目がある。
汁そばURL:http://www.misterdonut.jp/m_menu/yamucha/y01.html

 麺は冷凍麺であり,加熱は茹でるのではなく蒸すことによって行われる。保管は冷凍庫でなされており,保管温度は-15℃となっている。保管用の冷凍庫は汎用の業務用ではなく,特注品である。
パスタフリーザーと呼称するこの機材はファストフード店舗機材の通例に漏れず,全てがギリギリの構造で作られているので大変整備製が良くない。冷凍機の収納スペースは大変狭いので夏期など周囲温度の高い季節には凝縮不良を起こし易い傾向がある。

 今回取り上げる機体は14年前に納入されたもので,7年目にコンプレッサーが焼損して冷凍機の交換を行った前歴がある。
 コンプレッサー単品を交換することは勿論可能だが,社内での対応は通例として冷凍ユニットをベースマウントごと交換するものだ。高上がりに思えなくもないが,パーツの密集度合いが高いので労務経費がかさみ冷凍機交換もコンプレッサー交換も結果的には補修経費にさほど大きな差は出ないようだ。
 
 冷凍ユニットは現地での交換時間を最短で済ませるためにちょっとした工夫がある。 冷凍ユニットと冷却器は一体ではなく、途中低圧配管で結ばれている。
 通常一般の冷凍機と異なり,パスタフリーザーの冷凍ユニットは膨張弁と一部の低圧配管までを含んでいる。低圧配管に割り込む形で冷媒用のカップリング二個が組み込まれている。
img124nh1819_1.jpg
 画像は本文とは関係ありません

スプリングで動作するシール弁が組み込まれており,ポンプダウンによる冷媒回収や回収機による抜き取りを行わずに切り離しや再接続が出来る優れものだ。過去の使用例に於いても再接続時の空気混入による障害発生の事例は今のところない。自分で仕入れたことはないがきっと安くない継ぎ手なのだろう。

 と,ここまでが例によって俺の悪癖であるところの長い長い前置き。

 故障の発生は今月初頭のこと。ミスタードーナツ某店舗からはパスタフリーザーが冷えないとのサービスコールが入り,協力会社であるこれが現場に入った。
 コンデンサーに埃が詰まっており,凝縮不良が発生している,というのが俺の初見である。
差し当たり,対処として冷凍ユニットを切り離して取出してコンデンサーを洗浄する作業は行うことになる。問題なのはそこで症状が治まるのかである。先に書いたように冷凍ユニットの収納スペースは大変狭いので運転温度が高い状態が続くことでコンプレッサーがどの程度ダメージを負っているか。

 最初の冷凍ユニットは7年目で交換した,その前例からいえば安全サイドの対策としては今回も同じ措置が好ましい。しかしもしかしたらコンデンサーの洗浄だけで済めば補修費からいうと儲け物ではある。さて,どちらで行くか。
(以下続く)
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2012-07-25 [お仕事上のぼやき]

俺が勝手にご同業と思い込んでいるたくぞう様のブログより転載。
建設業界は大変である。俺のような業者は一部屋だけの商売でこれだけきついのだから建設業ともなるとその数倍のきつさということなのかもしれない。施工現場では建築屋の代人というのは天敵というか,厳然たるヒエラルキーの上部階層だとばかり思いがちだが。


滅私奉公にも程がある
会社の業績はあまりよくはない。
仕事はあっても利益を出す現場は少ない。

社長は親会社の会長に怒られっぱなしで売り上げを増やそうと躍起になっている。
仕事をとる為に、意味のない値引きばかりして仕事をとってくる。
当然利益は少ない。赤字(実行予算割れ)になってしまう現場がほとんどだ。

有能な主任クラス(現場所長クラス)の人間が、会社に愛想尽かして数人去ってしまった。
人数を補填しようとして某転職サイトに求人を出したが、内定出しても誰もこない。
一回求人出したっきり。結局人数不足のまま。
その後求人を出した形跡はどこにもない。

でも売り上げを伸ばそうと、仕事を取ってこようとしてばかりだ。
元々、社員は少ない小さな会社だ。当然積算部なんてない。
見積は現場に配属されている連中が、現場管理の合間にバタバタと見積もるだけだ。
日常業務が多すぎて、なかなか積算に時間をかけることができない。
当然、拾い落としも多い。
そこから更に意味もなく値引きして仕事を取ってくる。
そんな現場をあてがわれた現場員にしてみれば、なんかの罰ゲームに感じるわけだ。

しかも社員の絶対的な人数が不足していて日常業務でさえ処理しきれないというありさまだ。

上記の赤字の責任は全部、現場所長のせいになる。
ボーナスは出た事は出たが、赤字現場の所長は、入社2~3年目の係員のそれより安い。
そんなんでやる気が出るとでも思っているのだろうか。

係員も育たない。
慢性的な現場員不足のせいで、現場担当者の業務内容が膨大すぎて、
予定の工程に合せて準備ができない。チェックをする時間すらない。
そんな訳で工期の終盤になると、どこの現場でも火を吹く。
現場が火を吹いてから空いてる係員の投入。
係員のほとんどは現場の火消しの旅ガラスを続けている者も多い。
当然、まともに監督業務なんかしたことないんだから、仕事も覚えていかない。

現場もなんとか終わらせても、ドタバタで終わらせるから、仕上がりは悪い。
施主の評判も悪くなり、設計事務所も仕事を紹介してくれなくなる。

現在、弊社は負の無限ループに突入しております。

体力の限界は近い。
なんかもうつきあってらんないよ。
バカバカしいにも程がある。
俺は社畜にはなりたくないので、どこかで見切りをつけないといけないときは近々くるとは思うが。






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現金代引き決済とタキゲンのこと [お仕事上のぼやき]

 タキゲンというパーツメーカーがある。

URL:http://www.takigen.co.jp/jp/index.do

 建築用とか産業用の金物あれこれの製造を生業としている。
大げさな話ではなく,建物が一軒あり,家具や建具,什器類があったらな殆ど必ず何かしらタキゲンの製品がどこかで使用されていると言ってもいいくらいここの製品は我々の生活のどこかにくっついて回っている。

 それは俺の棲息する厨房屋業界に於いては大変顕著なものだ。
身も蓋もない話だが,ヒンジ(蝶番)だとか把っ手から自前で製造している厨房屋はまずない。各社各様の樹脂成形品のハンドルはカスタムパーツとして外注されているものだし金属製だとすればかなりの割合でタキゲンの製品を組み込むことになる。

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画像は本文とは関係ありません。


 俺の仕事の慣例として,取っ手やハンドル,ヒンジの破損についてはタキゲンの製品であることが確認できれば厨房機器メーカーから購入しないでタキゲンから直接購入する事にしている。
 理由は明快で,安くて済むからだ。どうせ機器メーカーに注文してもタキゲンの製品が届くのだから直接パーツメーカーから購入した方が安いに決まっている。
 タキゲンは良くも悪くもオープンな会社で,製造用にロット発注でないとNGという販売姿勢ではない。送料の負担さえすれば(発注額が一万円以上であれば送料無料)一個からでも受け付けてくれるので修繕費を少しでも安く上げたい使用者や業者はタキゲンをバンバン利用すべきだ。どうせ把っ手やヒンジの交換なんていうのはドライバー一本とかレンチ一丁で終わる作業なのだから。

 リンク先を調べてみるとわかるがオンラインショップの構成が大変親切であるし、カタログを請求すれば大変立派なやつがタダで送られてくるので、現調のときにも寸法を照合する場面で大いに助かる。

 ここまで書くといいことづくめだが困ったことがないわけでもない。
しかしそれは何もタキゲンに非があるわけではない。俺の事情だ。タキゲンの製品購入は到着時の代引き決済となる。
 最初俺は,自分が零細自営業で怪しい商売だからそのように扱われているのかと少しばかり面白くない気分だったのだが実情は日常的にロット購入するような大口顧客以外は全て現金代引きなのだそうだ。現金代引き自体は時代の趨勢だから納得するとして,何が困るかというと俺の運転資金が心細くなればなるほどタキゲンに製品発注をしなければならない場面の発生確率が上がってくる。また,懐具合の心細さとタキゲンへの発注額は正比例の関係にある。これはもう,グラフに描いたら実に明快な一次関数になるのではないかと思える位はっきりした相関関係だ。

 修繕の依頼元との関係でいえば俺は修繕費を抑制するために一時自分の持ち出しで立て替えていることになるわけで,得意先諸兄,俺に感謝せいw!
 話題が違ってもオチは毎度一緒で,とどのつまりなかなか金が貯まらないというぼやきである。
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爆発するテスター [お仕事上のぼやき]

タイトルにある爆発というのは実は嘘である。

本日のメニューはFMIからのご依頼で某レストランにてコーヒーマシンの設置工事である。
機種は以前散々手こずったFlesh-Oneだ。

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 単なる接続工事ならちょろいものだが、いざ現場に入ってみるとコンセントは隠蔽箇所で配膳が切られていて死んでいるわ給水は取出しのバルブがどこにもないわでグダグダな展開となった。俺は腰道具をつけて天井裏を這い回り,これじゃあ一体何屋なんだかわかったものじゃない。若い頃に電気工事士の資格を取っておいて良かったわいとは思うがこの労務は追加請求させてもらえるのだろうか。

 この周辺環境の無茶苦茶さは書き出すとひどく長くなるのでここでは詳述しない。
屋内配線の図面がない上にこれまで何度もわけの分からん増設工事が複数の業者によってバラバラになされてきた結果,このレストランの電気系統は錯綜を極めており、どの線がどの開閉器に繋がっているんだかさっぱりチンプンカンプンで大いに手間取った。
 
 それで、やっとこさコーヒーマシンのためのコンセント回路を一つこしらえて確認のために電圧を測ろうとテストリードを突っ込んだその時,バシーッという物凄い音とともに俺の眼前には直径20cmくらいのアークが炸裂し、爆弾スイッチならぬ爆弾コンセントをこしらえたかと俺は大いに焦った。

 一体何年この商売をやっているんだこの俺はと自分がイヤになった。配線を調べるために一度開閉器を切り,短絡箇所を調べようとテスターを持ち出したところさっぱり表示が動かない。
 変だと思っていテスターを調べているとリード線の根元が焼けている事に気づいた。
6577991.jpg


 このテスターは買ってから大体3年くらい使い続けてきたものだ。考えて見ると最近、リード線の根元は被覆が裂けて芯線が露出しており,何かの弾みにショートでもしたらイヤだなあ,と心配しながら使い続けてきたのだ。さっきの短絡事故はその懸念が顕在化した一幕,というわけ。

 問屋に聞くと修理は受け付けるが期日がかかるので多くのお客さんは新調してしまうという。いっそのこと俺もそうしようかと考えるがどうして金のない時を狙い済ましたかのようにこういうハプニングは発生するのだろうかと首をひねる今日の出来事である。
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